異世界チハたん(九七式中戦車)無双〜聖女召喚されたけど捨てられました~   作:LA軍

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第15話「露店販売」

 チュンチュン、チュン♪

 

   チチチ……。

 

 

 朝。小鳥がさえずる中。

 スラムの一角ではちょっとした人だかりができていた。

 

「押すなって!」

「そっちこそ!」

 

 わーわーわー! 

 

 その騒動の中心は、もちろん私ッ!

 そして、ガソリンスタンドの前であーる。

 

「はーい。並んで並んでー」

 

 その列をうまく(さば)きながら、私は商品をコンビニのバックヤードから引っ張り出した長机に並べていく。

 

 食パンにロールパン。

 そして、総菜パンに菓子パンと店内にあったパン類をありとあらゆる種類を掻きあつめて、そのほとんど全部をだ。

 

「はーい、毎度アリー」

 

 そして、朝早くから先に並んでいた人たち。

 とりわけ昨日からずっと同じ位置にいた立ちんぼをしていた色っぽいおねーさんや、ボロボロの恰好の子供たちに銅貨1~2枚ほどでパンを渡していく。

 

「ありがとー」「いただくわね」

 

 そして満足気に去っていく彼らを見送ったところで、俺も俺もとやってきた人たちが、はたと気づく。

 

 

  あれ?

  有料なの、と?

 

 

「……そりゃそうでしょ。ただではあげないよ?」

 

 子供たちが銅貨で買っていく姿を見て硬直したスラムの人を邪魔だ邪魔ーと、肩でのかして、商品を追加していく。

 

 っていうか、

 買わないなら、どいたどいたー。

 

 まったく、炊き出しじゃないんだから。

 

「いいですかー。これはただじゃありませーん。それぞれ、銅貨1枚から2枚でーす。子ども達もちゃ〜んと買ってましたよー」

 

 そう聞いた瞬間、

 有料だと知ってがっかりしていたスラムの人たちが再び顔を上げる。

 

「…………ん? なに? 銅貨1枚?!」

「それって、子どもでも買える値段じゃねーか?」

「……高くても、2枚だと?! あのでっかいパンが!」

 

 はいはい。

 その通り、銅貨1~2枚ですよ。

 

「むむ。しかしなぁ……」

「なんだ、買わねぇのか? なら場所譲れよ。俺はさっきからずっと並んでんだ!」

「そうだぜ。みろよ、白パンだぜ! さっきの坊主なんか甘そうなパンを銅貨で食ってやがったぞ」

 

 なんだと、白パンだと!?

 固くないパンなのか!

 

 安い、買った!!

 

 

  わーわーわー!

 

 

 再びそんな声があちこちで飛び交う。

 そのせいもあってか、炊き出しと勘違いして去っていた人たちも再び戻る。

 

 こうして、パン類を中心に長机に並べた商品が飛ぶように売れていくので、休む暇もない。

 

「はーい! 押さないでくださーい」

 

 まだまだいっぱいありますよ。

 

「あ、そこぉ! 勝手に持って行ったら承知しませんよ!」

 

 ……ったくもー。

 

 反射的に拳銃嚢に伸びかけた手を押さえつつ、注意喚起!

 油断も隙もないね。

 はい、それは銅貨2枚でーす。

 

「う、うめぇぇ!」

「やわらけー!」

 

 とくに人気なのが3~5枚入りの食パンに、5~6個入りのバターロールだ。

 それぞれ銅貨1~2枚で販売してもあっという間に()けていく。

 

「はいはい、はーい! 慌てない慌てなーい。まだまだいっぱいありますよー」

 

 とはいえ、凄い勢いだ。

 

 準備していたオリコン(折り畳みコンテナ)から補充品を並べつつ、切れない列にちょっと遠い目。

 

「いやーマヂか〜。無料の炊き出しじゃないのに、こんなに盛況になるなんて……」

 

 まぁ、多少は予想していた。

 

 貴族しか食べれないような白くて大きな柔らかいパンを、黒パンと同じかそれ以下の値段で売るのだ。

 

(まー、そりゃ売れるよねー。しかも日本製だし。だけど、思ったよりみんなお腹すいてそう……)

 

 実はこんな露店を思いついたのには理由がある。

 ……昨日の夜のことなんだけど、カメラで外の様子を窺っていた時に見てしまったのだ。……やはりというかなんというか、スラムの栄養状態があまりにも悲惨なんことに。

 

 なので、ちょっとした親切心で……あ、いや。ち、違う違う!

 同情とか、そーいう安っぽい感情じゃないからね! 商売……そう、商売心(・・・)で露店販売をすることにしたのですっ!

 

 あー、ほら。

 

 この場所を使っていいかドミトリさんに聞いた感じでは、スラムでの商売許可はいらなかったはずだし、だからでーす!

 

 私は手前勝手な同情心でモノを配るような偽善者ではないのだッ。

 なので、最初に声をかけた子供やオネーサンたちからも、しっかりお金を貰いましたよー!

 

 だから、

「はいはいはいはーい、ほら、並んだ並んだー! 全部有料でーす!」

 

 こうしてね。

 ちゃ~んとお金もとって利益も出しているのですよ!

 

 それでも飛ぶように売れるのは、安心安全の日本製であることと、

 なにより毎日、銅貨数枚を死ぬ気で稼いで、硬い黒パンを買う人たちには、白くて柔らかいパンが相当な御馳走だということ。

 

 並ぶ人並ぶ人、みんなが銅貨を大事そうに握りしめてやってきては、食パンやら、ロールパンやらスティックパンなんかの量が多めのを買っていく。

 なかには総菜パンやら菓子パンを買えるくらいには、ちょっと余裕のあるスラムの人たちもいたりして、そういう人たちは総じて美味しさに感動していた。

 

「うめぇぇえ!」

 おう、日本のパンはうめーのな。

「なんだ、これ……甘いぞ! 黒い砂糖みたいなのがはいってる!」

 チョココロネな。

「こっちは、ジャムとクリームだ、とろけるぅ……」

 あの2種類のが入ったシリーズな。

 

 そして、そのうまそうな表情が、また客を呼んで呼んで、呼んでー……あわわわ!

 

「ちょ、ちょっと、まって、補充補充!」

 

 ひぇぇー。

 す、凄い売れてる。

 オリコンを抱えて店内に戻り、そっと外を見ればすっげー行列。

 

「さ、さすがは日本のパンだね。試しに並んで買った人が、また並んでるし……」

 

 リピーターになるのが早すぎるよー。

 

 このままでは品切れ真っしぐらなので、バックヤードに戻って、ステータスから入金し、ジョブを回復させて、商品を補充・回復!

 

 どうだー!

 これぞ、ジョブの活用じゃー!

 

 さらには、店のカートとカゴをつかって大量にパンをかき集める。

 つーか、コンビニでカート使ったの生まれて初めてだわ。

 ガッサガッサと上下ダブルにしたカゴに商品をうめていくと──。

 

「あ、ついでにこれとかどうかな。牛乳と卵」

 

 ……それと、

 おでんに中華まんにチキンナゲット~!

 冷凍のブルーベリーとかもいいかも!!

 

「はいはい、追加でーす」

 

 長机にドーーーーン!

 

「いよぉぉ! 待ってました!」

「お、汁物じゃねーか! それくれ!」

「俺はそっちの肉ー」

 

 はいはい。

 ちょっと待ってねー。

 

 さっそくおでんに食いつく人たちに、プラ容器に一個銅貨1枚でよそっていく。

 おでん汁? もちろんたっぷりさー。

 

「はーい、熱いから気を付けてくださーい」

 

 ……というか、ヤバい。

 おでんを出したら余計に忙しくなっちゃった。

 

「あちーけど、汁までうめーぞ!」

「野菜がとろとろのホクホクだー!」

 

 はいはい、大根ね。

 美味しいよねー。

 

(うーん。……本当はお店の中に入ってもらった方が早いのかもしれないけど)

 

 チラッと振り返る店内。

 

 ……このコンビニは異世界仕様なので、レジは異世界通貨に対応している。

 まぁ、銅貨が最低単位なので、ちょっと端数を飲み込んじゃうけど。それでも、補充の手間がない分、楽だ。

 

(──だけど、まぁ……その。治安がねー)

 

 並んでいる人たちにとやかく言うのもアレだけど、体臭が凄いし、平然とナイフに棍棒なんかを手にしている。まぁ護身用具なのは分かってるんだけどね。実際、私だってこれ見よがしに冒険者認識票を垂らしているし、腰には軍刀と拳銃を下げている。小銃は重いから近くに立て掛けてるだけ。

 

 まーそんなわけで、武装必須なこの世界なので今のところ対面販売のみで、ってことで勘弁してー。

 

「って、私はその物騒な世界でな〜にをしてるんだか……」

 

 わー……。

 もう、さっき以上にめっちゃ売れてるしー。

 

 栄養状態の改善とか考えてたけど、こりゃ売れ過ぎでしょ。

 

 おでんや中華まんはもとより、卵も牛乳も端数切り上げ単位で売ったのに、スゲー売れていった。

 そして、売れたら売れただけ、ひとだかりが全然きれなーーーい!

 

「つーか、これ。スラム以外の人も買いに来てない?」

 

 どう見ても、冒険者風の人もいるし、

 なんなら、ちょっと身なりのいい人まで並んでいるんですけどぉ……。

 

「え? ど、どうしよ。これ、ちょっと終わりがみえないんですけどぉぉ!」

「…………いや、ナガセ。あんたこそ何やってんだい?」

 

「へ? あっ!」

 

 この声と色々デッカイ人は──。

 

「ドミトリさーん!」

「おう。昨日ぶりー」

 

 大量のお客さんにてんやわんやしていたら、なんと見知った顔が4つ。

 

 言わずと知れた『赤い旋風』の皆さんだ。

 

「いやー。ちょうどよかった! はい、これ」

「あん? なんだいこれ」

 

 ん?

 ガソスタの帽子だけど。

 

「被れってことか?」「へー。かっこいいじゃん」」

「僕はちょっとブカブカかなー」

 

 まぁ、ミルヒ君はね、

 だけど大丈夫。こうして調整すれば──はい、ぴったし。

 

「んー。いいね似合うじゃん。じゃ、よろしくね」

 

「は?」

「よろしく?」「何の話だ?」

 

 顔を見合わせているドミトリさん達。

 

「えーっと、もしかして、手伝えってことじゃ……」

「そーでーす」

 

 いやー助かった。

 まさに、猫の手も借りたい忙しさだったんだよね。

 

「んじゃ、そっちのテーブルのは銅貨1枚。こっちのは2枚ねー。あと、補充のオリコン(折り畳みコンテナ)はそこー」

 

「いやいやいや」

「待て待て待て待て」「おいおいおいおい」

 

「き、き、き」

 

 

 

 うんうん。

 よかったよかった。ちょうお人手が欲しかったんだー。

 

 

 

「「「「きいてねぇよー!」」」」

 

 

 

 

 そりゃー言ってないもん。

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