異世界チハたん(九七式中戦車)無双〜聖女召喚されたけど捨てられました~   作:LA軍

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第16話「バイト」

「はーい、完売でーす! ご利用ありがとうございましたー」

 

 いやー。

 終わった終わった。

 

「つっかれたー」

 

 最後の客を見送ったところでドッとパイプ椅子に座りこむ。

 

 マーヂで疲れた。

 火照った顔を手でパタパタ。

 

「ふぃぃー……結局朝から昼前までずっと露店をする羽目になってしまったよ」

 

 おかげで足がパンパン。

 

 途中でキリがないので、強引に品切れ宣言をしてあとからくる人には諦めてもらった。

 

 だって、あのままだと延々と売り続けることになったもんね。

 

「いやいやいや!! 疲れたはアタシらのセリフだよ! なんなのさ、いきなりー!」

 

 ガソスタの帽子をかぶったままのドミトリさんが、同じくパイプ椅子に座るなり、烈火のごとく怒り狂う。

 

「てへへ。ごめんごめん。……ほら、借りがあるって言ってたじゃん」

 

「か、借りって……。お、おいおい、アタシらの命の恩をそんなんに使ったのかい? 安ッい借りだねぇ……」

 

 そんなん(・・・・)いうなし。

 見ての通り結構なピンチだったっしょ?

 

「俺たちの命は半日バイトだってよ」「命のバーゲンセールだね」

 

 双子もそんなに拗ねないの。

 

「まぁ、でも確かにあのままだと暴動一歩手前でしたから、ある意味命の恩ではあるんじゃないですか?」

「でしょー」

 

 って、

「ええ? 暴動一歩手前だったの?!」

 

 なにそれ?

 怖いんですけど。

 

「何言ってんだよ。当たり前だろナガセ。こんなスラムで安売りなんかしちゃダメだっての……。この辺の顔役に目を付けられても知らないよ?」

 

 う、そうなんだ。

 

 そりゃそうか。こんな治安の悪い場所だし、マフィアまがいの連中だっているよね。

 

「き、気を付けます」

「ふん。まぁ、いいさ。アタシらがバックについてるって知ってる連中ならバカはしないだろうしね」

 

 おぉー。

 なんか、さっきと言ってること違うけど。

 

「さすがAランクパーティ。頼りになるぅ」

 

 いやー。

 ほんとこの世界で知り合ったのがドミトリさん達で良かったよ。

 

「いいってことよ──そんじゃそろそろお(いとま)しようかね」

 

 え、もう?

 ってそうか、結構いい時間だね。

 

「あ、そうだ! せっかくだし、御馳走するよ──お昼まだでしょ?」

「ん? あぁ、そう言えばそうだね。……でも、ここはスラムだよ? ろくな飯なんて──」

 

 ちっちっち。

 

「スラムの御飯屋じゃなくて、こっちこっち」

 

「こっちって……これ(・・)のことか?」

「そういえばなんか建物増えてるなーとは思ってたけど、なにあれ?」

 

 双子が気付く。

 

「そーいや、さっきからナガセさんがここから商品を出してましたね?……まさか倉庫ですか?」

 

 んー。

 ミルヒ君、惜しい!

 

「倉庫じゃなくて、コンビニだよ。まー、入って入って!」

 

 新しいジョブスキルだし、自慢しなきゃね。

 それに、この4人なら中に入れても大丈夫でしょ。

 

「入ってって言われてもなー……お? 明るいね」

「しかも、清潔だ」「床がピッカピカ」

 

 ピロリロリローン♪

 

 恐る恐る覗き込んだドミトリさんたちに響くのは、来客を告げる軽快なベルの音。

 そして、同時にエアコンの快適な温度が身体をつつむ。

 

「本当だ。しかも、狭いのに空気がなんか──いいですね」

「でしょ。空調ガンガンに聞かせてるからねー」

 

 日本が誇るダ●●ンのエアコンのパゥワーだもん。

 そりゃー快適だよ。

 

 夏は涼しく、冬は暖かい。

 そして、春と秋はその日の気温に合わせて調節可能!

 まさにこの世の天国……そう。

 それが、コンビニ!

 

「それより。ささっ、皆なら好きなの食べていーよ。どれでも欲しいのを、どーぞ!」

 

 麺でも米でもパンでも、

 ど〜んとこーい!

 

 ふふん。

 なんせ、今なら懐があったかいし、夢のコンビニ食べ放題ができるよ!

 

「どんとこーいって言われてもなー……。お、卵」

「これは──焼き菓子か」

「おい、見ろッ。ミルクがこんなに!」

 

 最初は訝しがっていたドミトリさん達であったが、

 弁当や総菜コーナーを見るなり、わっ! と群がる。更には、卵に牛乳やらをみて度肝を抜かれていた。

 どうやら、乳製品系は貴重っぽいね。そんな反応だ。

 

「ナガセさん。これ、何の材質です?……ガラス、ではないですよね?」

 

 そして、ミルヒ君はといえば、一人視点が違って、カルビ弁当の容器に興味津々。

 

「プラスティックだよ。食べたらあっちのゴミ箱に入れてね」

「な、なるほど」

 

 ちなみに、店内の隅に置いてあるゴミ箱。

 あれはしばらくすると中身が消える不思議仕様だったりする。分別の心配もいらないので超便利~!

 

「な、なぁ、ナガセ」

「ん? なにドミトリさん」

「い、いやさ。さっきなんでもいいって言ってたけど──……まさか、これを二個とかいいのかい?」

 

 これって?

 あー、卵のこと。

 

「いいですよ」

「マジかい!」

 

 卵好きなのかな?

 

 なら、二個と言わずに6個パックでも10個パックでも丸ごといっちゃっていいです。

 どうせこっち換算で銅貨2~3枚だし──。

 

「──あ、そうだ。それもいいですけど、こっちとかどうです? ほらこれ、味玉」

「味玉?」

 

 うん。

 味玉。出汁たっぷり!

 

「あとは、卵サンドとか、おでんの煮卵とかいろいろありますけど、お好きなのあります?」

 

 なんなら総菜の卵焼きだってあるし、

 オツマミの卵の燻製もある。

 

 ……ドミトリさん卵好きっぽそうだし、どれでもいけそう。

 

「た、卵だけでこんなに?! す、すごい! じ、じゃ、これをいただくよ」

「どうぞどうぞ。むしろ全部いってもいいですよー」

 

 なにも一品縛りとかじゃないんだし、好きなものを食べてほしいな。

 

 生の卵なんて醤油なしだときついし……。

 

「……ゴクリ。ってことは、ナガセよー。こっちの焼き菓子とかも何個もいいのか?!」

「いいですよー」

「マジか! じゃー俺は、これとこれと……これ!」

 

 双子たちは甘味に目を奪われている。

 シュークリームにエクレア、あとプリンだ。

 

 そんなん、一個200円とかだし、好きなだけ食べればいいと思うね。

 つーか、コイツら双子は甘党か。

 

「ま、待て待て! そんな簡単に……。これ、砂糖とか入ってんだろ? あ、あとから払えとか言われても無理だぜ?」

「言いませんよー。甘いのがお好きならこっちとかもどーです?」

 

 生クリープたっぷりのフルーツサンドに、

 あとはショートケーキに──アイスクリィィィイム!

 

「アイスだって?! って、ことは……な、なんてこった、これ全部氷菓子かよ!……え? それを全部?!」

「どーぞどーぞ」

 

 はい、全部。

 そういや、子供のころはご飯にアイスを食べたかったけど、今は無理だわ。……5個が限界!

 

「すげー。じゃ、じゃ遠慮なく」

 

 マジで遠慮なしに生クリーム入りのエクレアに、チョコアイスなんかを両手に抱える双子。

 ……いや、いいけど昼御飯だよ? それでいいの? さすがに胸焼けしない??

 

「ミルヒ君は?」

「僕はこっちのパスタを……これってペッパーですよね?」

 

 ん?

 あー大盛のペペロンチーノか。

 

「うん。それと、ニンニクと唐辛子かな。ちょっと味が薄かったら、テーブル胡椒で調整するといいよ」

 私は胡椒たっぷり派です。

 なんなら追いチーズもします。

「い、いいんですか?! ペッパーですよ」

「いいよー」

 

 テーブル胡椒なんて一瓶300円程度だし。

 

「なんてことだ。こんなの貰ったらまた貸しが……」

「そんなの気にしないでって。奢り奢り!」

 

 胡椒くらいで借り増やしてどうすんのよ。

 

 そもそも、昨日でどんだけ稼いだと思ってるんだか。わっはっは!

 ぶっちゃけ、金貨70枚あればこの店舗の物を全部買ってもお釣りがくるからね。

 

「じゃー、皆好きなの選んだみたいなんで、食べましょうかー。あ、お酒欲しい人はお好きにどーぞ」

 

「飲む」

「貰う」「貰う」

「あ、僕も──」

 

 全員かーい!

 ええけど。

 

 どれが好みかわからなかったので、皆にお酒コーナーを案内したら、また腰を抜かさんばかりに驚いていた。

 

 なんでも、ワインが透き通ってビックリだそうだ。うーん着眼点が違うねー。

 

 て、結局、ワインとビールを所望されたので、紙コップをかかえて全員にお酌して回った。

 

 うんうん。

 お酒に食べ放題と聞いて歓声を上げるドミトリさん達。

 

 もっと飲んでいいよー。

 バイト代にしては安いけど、遠慮しないでほしいね。

 

 

 

 ……私?

 

 私はさすがに昼間からの飲酒は遠慮する。

 あとで運転するかもしれないしね──。

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 

「いやー。食った食った。うめーうめー」

「一生分の甘味だ」「さすがにもう食えん」

 

 全員でお腹ポンポンにしてコンビニの床に転がっていた。

 そして、漫勉なくみんなして顔が赤い……。

 まーワインを一人で二本も三本もあけちゃあねー。

 

 ちなみに、私はお上品にオニギリを3個をお茶でいただきました。

 

 えへへ。

 ツナマヨに梅干しに明太子~♪ これが鉄板だよね。……異論は認めなくもない。

 

「ホント、これだけ食ったらもう、思い残すことはないねー。それじゃ、今度こそ、そろそろお暇(おいとま)…………って、そうじゃなぁぁぁああいッ!」

 

 愛し気に腹をさすっていたドミトリさんが、グワバッ! と身体を起こすなり私の肩を掴む。

 

「え? ど、どうしました?!」

「いや、どうしたもこうしたも。あーもー! なんか成り行きでバイトしたり、飯食ったりしちゃったりですっかり忘れかけてたけど、そうじゃないんだって!」

「ええー? 食べてから言いますぅ?」

「あ、ごめん──……って、だからもー」

 

 はいはい。

 冗談ですよ。

 

「で、何か用事があったんですよね?」

「そうだよ。つい夢中になってたけど、仕事の話をしに来たんだった」

「え? 仕事、ですか?」

 

 なんだろう?

 私に仕事??

 

 洗車とか給油とかじゃないのは確かだと思うけど……。

 

「あぁ、この前の御礼ってわけじゃないけど、儲け話さ」

「儲け話ですかー……」

 

 ちょっと身構える私。

 

「……いや、なんでそんな警戒してんだよ。ギルドの正式な依頼だよ」

「あ、ギルドならいっか」

 

 それなら安心。

 

「え……。なに? アタシらって、信用ない?」

 

 や。そう言うわけじゃないけど、友達と仕事のやり取りはまた別の話だし──……あと、割とドミトリさんたちはグレー寄りですよ?

 私は先日盗聴したときのことをまだ忘れてはいないのだ。……みんなは知らないだろうけどね。

 

「ま、まぁ、いいや。依頼料は金貨で100枚。基本的にBランク以上の任務だから、ナガセは無理なんだけど、ギルマスはオッケーを出した。とうか半分指名依頼だね。アンタだけの特例さ」

 

「ほえー」

 

 随分、信用されたもんだね。

 そして、報酬が金貨100枚と言えば、日本円で…………1000万?!

 

「え、やる」

「……は、はやいね」

 

 いや、そりゃそうでしょ!

 1000万ですよ、1000万!

 

「やるに決まってるじゃないですか!」

「そ、そうかい? あ、もちろん、依頼料以外に、素材や戦利品は別だよ」

 

 おー!

 

「ぜひぜひ!!」

 

 さらに、成果物は別ときた。これは美味しいね。

 この前の素材代だけでも結構な額だったし、そこに依頼料がのれば万々歳だ。

 

「だから、話は最後まで聞きなって……まったくー」

「あ、そうでした。てへへ」

 

 で、

 

「どんな依頼ですか?」

「あーうん……。まぁ、いいんだけどさ。──ナガセ、あんたさー。冒険者やるなら、話は聞いてから受けな?」

 

 はーい。

 

「……大丈夫かね、この子は。まぁいい、それで依頼ってのは討伐任務だよ」

「討伐、ですか……?」

 

 また魔物かな?

 それくらいなら、いけるかな。

 

「あぁ、こっから西に馬車で二日。そこに大昔の砦跡があるんだが、最近そこに商人を襲う(たち)の悪いオークが住み着いたらしくってね。そいつの討伐だ」

 

 

 

 え?

 オ、オークとな??

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