異世界チハたん(九七式中戦車)無双〜聖女召喚されたけど捨てられました~   作:LA軍

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第21話「【ガソリンスタンド】Lv3」

「よーし、そっちを押さえろ! 気合をみせなッ」

「こうかぁ?」「お、重てー!」

 

 ゴギギギギ……!

 

 硬質な音を立ててひん曲がっていく城塞の扉。

 

 ──現在、私たちは陥落せしめた城塞を絶賛クリアリング中だ。

 

 もっとも、その先頭にたつのは私ではなく、もっぱらパーティの斥候役のミルヒ君を筆頭に力仕事専門のドミトリさん達が続く。

 

 そんなミルヒ君が見つけたのが、この隠された倉庫の入り口だった。

 

「よ、よーし! もうちょい、もうちょいだよッ」

「うごごご、ナガセも手伝えよー」「そうそう──お、重いー」

 

 手伝う?

 

 無理無理。あたしゃ、女の子だよ、箸より重い物はもったことないでーす。

 警戒用に百式短機関銃を構えてるけどね。

 

「まぁまぁ、ナガセさんは警戒しててください。ここは僕たちがやりますから」

「んー! ミルヒ君は女の子の扱いわかってるねー」

 

 うーりうりうり。

 可愛いミルヒ君の頭を抱きしめて、なでまくる。

 

「あ、あははは……。え? 女の子??」

 

 はい、殴るねー。

 

「いや、ちょ! すみませんって、手ぇボキボキするのやめてくださいよ!」

 

 じゃ、拳に息を……。

 

「はー……」

「それも──あいだー!」

 

 まったくもー。

 

「ドミトリさーん。男たちの(しつけ)がなってないんじゃないですか?」

「いやいや、アタシは関係ないよ。アンタの手が早いだけさね」

 

 ぶー。

 

 だって、失礼なんだもん────って、開いたかな?

 

  ガシャーーン!

 

「ぶはっ、やっと開いたー」

「オークの奴、馬鹿力で無理やり開け閉めしてやがったな?」

 

 おかげで扉が歪んで、開閉困難になってたみたい。

 一生懸命に開けた双子が、肩で息をして汗だくだ。

 

 まぁ、それはそれとして──お宝、お宝……。

 

「おっと、まちな。……ミルヒ」

「へ?」

 

 なになに?

 さっそく中に入ろうとした私を制するドミトリさん。そのまま、なぜかミルヒ君を先行させる。

 

「了解。しばしお待ちを──」

 

 なにかを察したのか、ミルヒ君は真剣なまなざしでカンテラを手にそっと室内に踏み込んでいった。

 

 そして、彼の姿が暗い中にぼんやりと浮かんで見えて──しばらくして、ぴたっと、止まったかと思うとドミトリさんに向けてなにかの合図を送ってきた。

 

「あー……やっぱりかい?」

「えぇ、酷いもんです」

 

(んんー?)

 

 酷いって??

 

「はぁ……。ナガセはいい所の育ちっぽいから、刺激が強いかもしれないねー。でも、見といたほうがいいかも」

「え? どゆことです?」

 

 ──お宝じゃないのだろうか?

 

 頭にハテナを浮かべた私であったが、ドミトリさんについて中に入ってすぐに察した。

 

「う! なんですか、この匂い……」

 

 ……扉が開いた瞬間、嗅いだこともないような悪臭が鼻をつく。

 まぁ、その段階で何となく察してんだけど──……おえー。

 

「こ、ここってなんですか?」

「捕虜収容所──……オーク風にいったら、食糧庫かねぇ」

 

「しょ、食糧庫……?!」

 

 ってことはこれまさか──。

 

「あぁ、幸いにも全部、馬だね」

 

 馬……。

 あー、商人さんたちが使ってた馬車のそれか。

 

「まぁ、魔物に捕まるってのはこういうことさ。覚えといて損はないよ」

「…………はい」

 

 なるほど。

 まぁ、オークだって何かしら食べるよね。

 

 そして、ミルヒ君が掲げたカンテラの明かりのさきには、陰影に浮かぶ血痕やら骨やら……。

 細かくは語れないけど、テーブルの上には血まみれの包丁にハサミ。

 あとは、鍋の中ではなにか嫌~な形の物体がグツグツと煮えていた……。

 

「幸いにも、捕虜連中はここにはいないね。……お前ら! 生存者を捜しな。まだいるはずだ」

「了解」「任せてください」

 

 物怖じしない双子が、ドカドカと室内に踏み込んでいく。

 だけど、私は……そこから一歩も動けなくなった。

 

 ここには解体された馬しかないけど──。

 この先のことを考えると、気が滅入る。

 

「うー……。私、浮かれてたのかも……」

「んー? 何の話だい?」

 

 うん。

 

 不思議そうな顔のドミトリさんだけど、私はそれに答える術がない。

 ……だって、今は異世界を舐めてたかもしんないと、猛省しているんだもん。

 

 不思議な力を貰って──。

 ゲームのような世界に来たんだーって。

 

 だけど、だけど……。

 

「……行くよ。私も手伝う」

「いいのかい?」

 

 うん。

 いいも悪いもないよ。

 

 ここはゲームの世界なんかじゃない。

 現実と地続きの異世界なんだ。

 

「ドミトリさんも言ってたじゃん。見といたほうがいいって」

「あー……まぁね。わかった。だけど、先頭はアタシらがいくから、あんたはその後ろだ」

 

「うん。わかった」

 

 とはいえ、

 最初の衝撃から回復した今──実は、あんまり驚いていない自分もいる。

 

「……これも召喚者特典かな?」

 

 心が鈍くなるというか。

 戦闘に特化していくというか──。

 

「ん、なんか言ったかい?」

「あーいえ。なんでもないです。……んん?? こっちはもしかして」

 

 コツーン。

 

 ミルヒ君たちが調べきれなかった床を踏んだ時、妙に乾いた音を聞いた気がした。

 

 コンコン……。

 

「あ、やっぱり下に空洞だ。だけど、これって……──」

 

 どうやら床下収納のような空間があったらしい。

 薄汚れて気づかなかったけど、取っ手がついてる。

 

「よいっしょっと……」

 

 ガコンッ!

 

「う、凄い匂い──……って、」

 

 開けた瞬間、ムワッと生臭い匂いが鼻をついたが、刹那、暗闇の先できらりと光る無数に瞳に気づいた。

 

 ひぇぇ!!

 誰がいる!

 

 こ、これって……。

 

「わ、わぁぁあ!! ド、ドミトリさん。人だよ! 人! 人がいたー!」

「なに!? 見つけたのか!」

 

 うん!

 

「いた。生きてる……ひーふーみーの、いっぱいいる!」

 

 慌てて、スマホのライト機能で暗がりを照らすと、

 いるわいるわ、たくさんの人が!

 

「子供も! 大人もオジさんも、お姉さんもいるよ! 皆はやく!」

「わかってる!──ミルヒ達はそっちの捜索を継続しな。アタシはここを!」

 

「「「了解!」」」

 

 双子たちは先に進み、ドミトリさんが慌てて駆けつけてくれた。

 

「おぉ! お手柄だよナガセ。アンタやっぱり持ってるねー」

「え? そうですか?」

 

 うーん。

 特別運がいいと感じたことはないんだけど──。

 

「ともかく、救出だ! アタシが引っ張り出すから、ナガセはその辺で毛布かなにか探してきてくれ」

「わ、わかったー!」

 

 うーんと、毛布毛布っと……。

 

 食糧庫と言われていただけあって、

 中にいた人の扱いは雑だった。ほとんどが裸で、衰弱しきっており、栄養状態もひどく悪そうだ。

 

 これはよくないね……!

 

「姐御ー! こっちにも捕虜です!」

「お宝もみつけましたー!」

 

 双子たちのほうにも、捕虜がいたらしく。

 こうして本隊が来る前に全員の解放に成功したのであった。

 

 あと、なんとお宝までー!

 

 しかし、これはどっちも凄い量になりそう。

 人も、お宝も──……。

 

「よーし、よくやったお前ら。お手柄だよ!」

「あざーす!」「分け前期待していいっすかねー」

 

 あはは……。

 双子は相変わらずだ。

 

「……姐さん。それより、そろそろ本隊も来るし、まずは捕虜達を介抱しませんか? 服に食事──幸いにも全員無事みたいですし」

 

 そして一番大人なミルヒ君が現実的な意見をだす。

 

 そうだよ。

 まずは衣・食・住だよ!

 住はともかく、ご飯と着る物!

 

 だのに……。

 

「ド、ドミトリさーん。こんなのしかないですー」

 

 肝心の私はと言えば、

 探してきてと言われた毛布が──トホホ……。

 

「ああーん? なんだいそりゃ。ぼろきれかい……?」

「はい……。考えてみれば、ここって元は廃城ですよね? それをオークが占領して改修しただけの……」

 

「あ──」

 

 ドミトリさんがそこでようやく気付く。

 いや、私も気づくの遅かったわ……。

 

「あー、たしかにそうですね。オークはそれなりの知恵は働きますが、衛生観念はちょっと……」

 

 だよねー。

 

 城塞を見てて思ったんだけど、食べかすはその辺に放置してるし、

 なんならウ〇コもそのへんに……。

 

 武器くらいは自前で持ってたり、城塞を多少は修理できるくせに、衣類や寝床に関してはその辺豚と変わらないという──なんというか、チグハグな生物だね。

 

「参ったねー。とりあえず、そのボロを渡して……あとは、本隊待ちかー」

 

 うーん。

 それもどうなんだろうなー。

 

 女性や子供もいるし、そもそも本隊いつくるんだよ。……遅くね?

 

「あとは飯とか寝床……欲を言えば医療支援もいるね」

 

「姐御ぉ、そんなのあるわけないっすよ」

「オークの寝床っすよ、ここ」

 

 うんうん。

 

 つーか、ほとんど豚小屋だわ、ここ。

 なんか匂うし……。

 

「とりあえず、外に出てもらいましょう。奴等に喰われなかったとはいえ、かなりの恐怖だったはずです。──たしか、この城塞の中庭はかなり広かったので、ひとまずそこに……」

 

 おお!

 

「だね! さすがミルヒ君、気が利くぅ」

 

 

 しかし、

 広い中庭──衣・食・住が必要。

 

 んー。なんだろう?

 なにか、引っかかるような──……。

 

 

「…………あ!」

 

 

 そうだ。

 これ、いっぺんに解決するかも──!!

 

「ドミトリさん、それでいきましょう」

「は? なにがだい?」

「ナガセさん?」

 

 ミルヒ君たちがハテナ顔。 

 だけど、それでよし──なんたって、今私も気づいたんだもん。

 

「はい。とにかく、全員を中庭へ!……というか広いとこならどこでもいいです!」

 

 というわけで──……レッツGO!!

 

「「「「どうしたの、この子??」」」」

 

 

 それは見てのお楽しみ────というわけで、はい。

 

 

 

    ドーーーーーーーーーーーン!!

 

 

 

「な、

「な、

「な、

「「「「なんじゃこりゃぁぁぁああ!」」」」

 

 わははははは!

 いいね、いいね、その反応!

 

「その反応が見たかったのだー」

 

 わーっはっはっはー。

 腰に手を当てて大笑いする私。

 

 そして、ドミトリさんや、彼女らに連れられてやってきた捕虜の人たちもポカーンと全員口を開けて固まっている。

 

 だって、まーねー。

 

「いきなり、スーパー銭湯だもんねー」

 

 

 

 ブーンン……。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

ジョブ:【ガソリンスタンド】

能 力:任意(一定条件あり)の場所にガソリンスタンドを召喚できる。

    また、Lvに応じて召喚するスタンドが進化。

 

Lv1→田舎のガソリンスタンド(仮眠室付き)

Lv2→地方のガソリンスタンド(コンビニ付き)

Lv3→県道沿いのガソリンスタンド(スーパー銭湯付き)

 

 

Lv3『購入オプション』

    Wifi  :購入済み

    上下水道  :購入済み

    ガス    :購入済み

    自販機(※): 10ポイント

    車検セット :100ポイント

    自動車保険 :100ポイント

    商用車(※):300ポイント

    ATM   :100ポイント

    おでん   :購入済み

    中華まん  :購入済み

    フライヤー :購入済み

    コーヒー販売:購入済み

    物産展   : 50ポイント(NEW!)

    漫画コーナー: 80ポイント(NEW!)

    マッサージ機: 30ポイント(NEW!)

    垢すり   :100ポイント(NEW!)

    岩盤浴   :100ポイント(NEW!)

    食事処   :100ポイント(NEW!)

 

(次)

Lv4→都市郊外のガソリンスタンド(MEGAモール付き)

 

備考:(※)表記はカタログあり。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 そりゃーあんだけオークを倒して、

 デッカイのも吹っ飛ばしたらレベルも上がるわなー。

 

 

 わははは!

 スーパー銭湯が異世界に爆誕じゃー!!

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