異世界チハたん(九七式中戦車)無双〜聖女召喚されたけど捨てられました~   作:LA軍

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第22話「スーパー銭湯」

 ──かぽーん♪

 

 

 わいわいわい、

  がやがやがや

 

 人々の声が高い天井とタイル張りの壁に反響する独特の空間に、湯気が満ちている。

 

「はー……いいお湯ー」

「いや、まったくだよー。……つーか、入っといてあれなんだけど。なんなんだいこれは?」

 

 ざばぁぁあ!

 

 色々とデッカイ、ドミトリさんがお湯につかるなり猛烈な勢いであふれていくお湯。

 その量たるや、私では一生真似できないものだろう。

 

 つーか、アレって浮くのね……。

 

「んー。ウチの故郷によくあるタイプの御風呂屋さんですねー」

 スパ銭。

 いまやどんな田舎にも、国道沿いに一軒はあるやつ。

「風呂屋ぁ?! はー……こんな立派な……。アンタってもしかしていい所のお嬢さんかい?」

 

「そう見えますー?」

「……ないねぇ」

 

 はい、そうです。

 ありません。

 

「まぁ、ただの大衆浴場ですよー」

「こんな大衆向けの浴場あるもんかい……。見ただけで何種類の風呂があるってんだい?」

 

 何種類?

 えーっと、ひーふーみー……。

 

「……何種類でしょう?」

「知らないのかい?」

「あはは……」

 

 だって、この湯船に釣られてフラフラと入っちゃって確認してないもん。

 

 でも、パッと見、大浴場だけで、炭酸泉、シルク湯、薬草湯に電気風呂──ジェットバスに……あー、一杯あるね。

 

 そのほかにも壺湯に打たせ湯、露天風呂。

 

 ひゅ~♪

 

 数えるのもバカバカしいくらいの種類があるね。サウナとかも入れると何種類あるんだか。

 改めて、日本人のこのお風呂に対する飽くなき熱量を感じるねー。お風呂なだけに!

 

「姐御ー! こっちにはサウナが3種類っす!」「湯舟も何個もありますぜー」

 

 そして、

 私たちの浸かってる露天風呂の垣根からニュッと顔を出して、双子が指折り数えて──…………スパコーーーーーン!!

 

「(あいだー!)」「(うぎゃぁぁ!)」

 

 ザッパーン!!

 向こうに湯舟に上がる湯柱。

 

 おー。

 命中したー。

 

「って、何を平気な顔して覗いてんのよアホたれー!」

「は、はは。まさかのダブルヒットかい──さすがだねぇ」

 

「いや、そこじゃないから!」

 

 パシィ! と、ブーメランのように戻ってきた桶を受け取りつつ、ドミトリさんの堂々としたあり様に軽く突っ込み。

 

「(すみませーん。こっちは人がいっぱいでして、油断しましたー)」

 

「あー、ミルヒ君ゴメンねー。男の人はよろしくー」

「(もちろんでーす)」

 

 そして、良識派のミルヒ君が、垣根越しに謝ってくれた。

 ……なんかいいね。こーいうの。

 

 恋人みたい──。

 

「(あとぉ、そっちには子供たちをお願いします。さすがに負傷した男性も多くて手が余りまして……。それと僕は既婚ですよー)」

 

 ……あー。

 そういやそうか。ちぇ、気を使ってくれたのだとばかり。

 

 つーか、なんで既婚アピールした?

 

「……はぁ、しゃーない。私達は、子ども達の面倒をみますかー。ドミトリさんもお手伝いお願いします」

「あいよ。っと、あの子たちか……」

 

  ぞろぞろぞろ……。

 

 戸惑った様子で風呂にやってきた子供たちをみて、渋い顔のドミトリさん。

 

 その視線のさきには、巨大な風呂に呆気にとられた、薄汚れた多種多様な子供たちがいる。

 皆、その場で固まってぼーっとしているし……。

 

「……もしかして子供苦手ですか?」

「いや、そんなことはないよ──ただねぇ」

 

 パーティにミルヒ君がいるくらいだしね。

 

「ただ?」

「いや、なんでもないよ。それより、どうする? 男の子もいるみたいだけど……」

 

 ん?

 あぁ、ホントだ。

 

「いいんじゃないですか? 小さい子たちだし。こっち等で面倒を見よう」

 

 男女一緒。

 ま、12才までは女湯オッケーだしね。

 ……あれ、12才までだっけ? ま、いいや。

 

「んー。できれば解放された女どもには手伝ってほしいとこだけどねぇ」

 

 あー……。

 

「まぁ、今はそっとしておきますか」

 

 オークに捕まっていた女性たちはその……かなり扱いが酷かったので、ささっとシャワーだけすませて、今はスパ銭の仮眠室で寝かせている。

 そして、比較的元気な子供たちはこうしてお風呂につれてきたわけだけどわけだけど──……。

 

「いや、しかし。この風呂は広いねー」

「何を今更。こんなの普通ですよー。もっと広いとこだと、滑り台とかもついてますし」

 

 スパランドとかそーいうとこ。

 

 だけど、ここは県道とか国道沿いとかによくあるスーパー銭湯なので、浴槽がいくつかに、サウナといった、ありきたりなタイプだ。

 

「いやいや! こんな普通は聞いたことないからね──って、ああー! アンタら、まずは身体を洗いな!」

 

 いきなり湯船に入ろうとした子供の首根っこを抑えるドミトリさん。

 最初に使い方を教えただけあって、さっそくスパ銭に馴染んでいるし。

 

 この人もなんだかんだで大物なんだよねー。

 

 全然物怖じしないし、馴染むのが速い。

 デッカイのは伊達じゃないぜー。

 

「じゃ、君たちはこっちねー」

「は、はい」「あつーい」

 

  ジャバー。

 

 小さい子たちの手をひいて、掛け湯をしてやり、洗い場に直行──。

 

 うひゃー。

 かわいー!

 

 エルフなのかなこの子。耳がなーい。

 こっちはドワーフかな? 小さいのに筋肉がすごーい。

 

「わぷ! き、君はぷるぷるしないでー!」

 

 そして、獣人の子ときたら、お湯を浴びるなり全身でブルブルして湯を跳ねる。

 

 ひぇー。

 可愛いけど、子どもを風呂に入れるのって大変かもー。

 

「とにかく、洗ってやんな! そのあとで、湯船につっこみゃいい!」

「はーい!」

 

 くそー。

 

 ミルヒ君のやつ、子供の世話が大変だと知ってやりやがったな……。

 しかし、男風呂のほうまで文句も言えないし、介抱した人は男の人が多かったので、仕方ないともいえるんだけど──あーこらぁぁ!

 

「お風呂場で走らないのー!」

「「キャハハハハ!」」

 

 ありゃま。

 さっきまで死にそうな目をしてたのに、子供って順応力がたっかーい!

 

「「うきゃー!」」

 

 ほーら、いわんこっちゃない。

 さっそくステーーーーン! と、すっ転んだ子供たちを起こしてやりつつ、小脇にかかえて、湯船にいれてやる。

 

「ほらー。肩までつかったなら、10秒かぞえなー」

「「「はーーい!」」」

 

 ふぃー。

 世のお母さんたちは大変なんだね。

 

 そうして、こうして、暴れてはしゃぎまくる子供たちをとりあえず、片っ端から湯船に突っ込んだあと、少し落ち着いた私とドミトリさんはサウナにはいってぐったりするのであった。

 

 

 こりゃ、スパ銭を楽しむのも、もうちょっと落ち着いてからだね──。

 

 

※ ※ ※

 

 

  あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ー。

 

 われわれはー

  どおい、ほじがらやっでぎだー

 

「ふぃぃー……この扇風機ってのはいいね」

「あ゛あ゛あ゛ー……わがりまずー?」

 

 この良風が、

 サウナで火照った体にきもぢえっぇえ……。

 

「……ってか、ナニやってんだい?」

「様式でずー」

 

 涎をたらしながら、

 脱衣所で涼みがてら休んでいた私とドミトリさん。

 

 ほんとうは水風呂とかも浸かってのんびりしたかったけど、子供たちのお世話をしなければならないので今日は断念。

 

 まぁ、いつでも出せるしね、これ私のガソスタだしー。

 

 なので、今日の所は子供たちをタオルで拭いてやり、館内にあった室内着(子供用)に着替えさせてやる。

 これでとりあえず衣食住のうち、衣の方が何とかなった。

 

 ──あとは、住と食だね。

 

「とりあえず、子供たちは仮眠室で寝かせるとして──ご飯はどうします?」

「んー。コンビニでいいんじゃね? あ゛あ゛あ゛ー……」

 

 私の真似して

 扇風機前から動かないドミトリさん。

 

「ですかー。そんじゃ、適当に見繕いま──」

「あ、姉御、いた!」「飯どうしますー?」

 

 シャっと、女湯と男湯を区切る暖簾を堂々と開けて入ってきた、双子──……って、ごらぁぁ貴様らっぁああああ!

 

「ここは女湯じゃぁぁぁあ!」

 2回目やぞー!

「ひぎゃぁぁあ!」「オークがまだいたぁぁあ!」

 

 誰がオークじゃ!

 これは、護身用のこん棒じゃぁっぁああ!

 

 ドタドタドタと、双子を追いかけまわして、スパコーーーーーン! とケツにイイ一撃をそれぞれくれてやってから、再び脱衣所に。

 

「まったくもー。油断も隙も無い」

 のっしのっし。

「ナガセ~……。服くらい着なよー」

「い~んですー。どうせ子供と同じ扱いですからー」

 

 タオル一枚でこん棒(かつ)いでても、なんも全然恥ずかしくないわー。

 

 ──がっはっはー!

 

「はは……。豪快だねぇ。まー、なんだかんだでアイツ等アンタを女扱いはしてるよ」

「そーですかぁ?」

 

 どうみても修学旅行の男子生徒のノリだ。

 あ、だから覗いてきたとか?……いや、それならこっそりやるよな? アイツ等堂々というか、ナチュラルに来るからなー。

 

「それより。結局のところ、この『スパ銭』ってのはなんだい? コンビニと同じ能力っぽいけど──」

「あー、やっぱ気になりますよね」

 

  えっと、

  ステータスオープーン!

 

 

 ブンン……!

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

レベル:27(UP!)

名 前:長瀬あかり

ジョブ:【ガソリンスタンド】Lv3(UP!)

スキル:【せんしゃ】

 

● あかりの能力値

 

体 力:  61(UP!)

筋 力: 162(UP!)

防御力: 258(UP!)

魔 力:  58(UP!)

敏 捷:  61(UP!)

抵抗力:  54(UP!)

 

残ステータスポイント「+260」

 

 ◇ ◇ ◇

 

 うん、やっぱりジョブレベル3になってるね。

 これをどう説明したものかー。

 

「えーっと、たしか前にコンビニとか見せたと思うんですけど。その関連ジョブに含まれてる能力でして──」

 

 えへへ。

 説明むずいわ。

 

「レベルアップって……。あー、そうか。あんた、オークジェネラルを倒したし、城塞のオークも殲滅してたから、それでかー」

「……いや、殲滅はしてないよ!」

 

 なにそのジェノサイドなガソスタ店員は?!

 殲滅系除女子ですか?!

 

「いやいや、してたからね? 単身で援護に駆け付けて来たかと思えば、バリバリバリ──! って、そりゃもう勇ましかったねー。アンタが男だったら惚れてたよ」

「うー……あれかぁ」

 

 まぁ、ちょっと確かに夢中だったけどぉ。

 なんか、こう、チハたんをインストールしてから、むくむくと沸きあがる大和魂がおさえられなくなる時があるー。

 

  せ~めるも~ま~もるもー……あ、これ海軍だっけ?

 

  ──知らんけど。

 

「でも、助かったよ。改めてありがとね」

「い、いえー。……で、その時の戦闘でレベルアップしちゃったみたいで──」

 

 てへっ。

 

「まぁ、そりゃね……。しかし、それでこれか」

「はい。Lv3はこの施設が付属するみたいです」

 

 ──もはや、どっちが付属かは知らないけど。

 

 あと、その分だけ広めに敷地が必要になるのは言うまでもない。

 何度か試したけど、敷地が狭いと呼び出せない仕様だった。

 

 ……Lv低めのコンビニとかだけならいけるッポイけどね。このへんは使い分けだろう。

 

「へー。たいしたジョブだよ。こりゃ、列強諸国が知ったら、アンタを放っておかないよ」

「そこは是非とも放っておいていただく方向で──」

 

 なんだよ、列強諸国って。

 

 いやだよ。

 私はただのガソスタ店員だっつーの。

 

「なので、ここはできれば穏便に内緒のほうこうで」

「ははっ。もちろんさ」

 

 助かるぅー。

 

「それより、飯どうしよっかね? 解放した人数があれだから、分けて運ばないと面倒だねぇ」

「あ、それなんですけど──」

「ん?」

 

 うん。

 コンビニもいいけど、せっかくスーパー銭湯に来たんだし、ここはひとつ!

 

 

 

 

 

お食事処(・・・・)と行きませんか?」

「はい?」

 

 

 

 ふっふっふー。

 和食と、風呂上がりのおビールと枝豆の暴力を知らしめてくれるわー!!

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