異世界チハたん(九七式中戦車)無双〜聖女召喚されたけど捨てられました~   作:LA軍

26 / 27
第26話「サウナ」

 むわぁぁ……!

 

 

 室温90度。

 湿度70%。高温多湿の超環境に籠るは3人の男女。

 

「──で、話ってのはないんだい?」

 

 商人たちが戦利品を馬車に積み上げ、城塞の後片付けをしているのを尻目に、

 スーパー銭湯のサウナ室にこもった私たちは開口一番、むっつりと腕を組んだギルドマスターに話しかけた。

 

 ちなみに、メンバーは上記の通り、男女3人。

 ドミトリさん、私、そしてギルマス──……って、おーい!!

 

「ギルマスが女湯の、しかもサウナ室にいるのってどうなんです?!」

「いや、お前が静かな場所って言って教えてくれたんだろ?!」

 

 だ、だって、内密の話があるって言うから……ゴニョゴニョ。

 

「まぁまぁ、コイツはオッスオッス派だから、女の裸なんて気にしないよ」

「いや、私が気にするよ!!」

 

 タオル巻いてるけどさー!

 

 つーか、オッスオッスなの?!

 たしかにハゲでマッチョだわ!!

 

「関係あるか! あと、オッスオッスじゃねーよ!」

「あーん? アンタ、嫁いねーじゃん?」

「だから、関係ねーわ!! ただ婚期逃しただけだよ!!」

 

 いや、それって……ただの飢えた中年マッチョじゃん。

 こわー。

 

「ドミトリさん、ちょっと席を外していいですか」

「待て待て、お前(かたな)取りに行くんだろが、やめとけってシャレになんねーよ」

 

 いや、だって、女湯のサウナにマッチョな中年のオッサンって事案ですよ事案。

 そんな斬るしかねーべ? 主にバー()を。

 

「……コイツこえーよ」

「あぁ、ナガセは怖いよ」

 

 怖くないよ?

 ただのガソスタ系女子です。

 

「「いや、怖いから」」

 

 むー!

 息ぴったりでムカツクー。

 

 ちょっと、ガルダ撃墜して、オーク城塞を陥落させただけじゃん。……あ、結構怖いかも。

 

「はー……。まぁ、そう言うわけで、お前らに話があるんだが──ほら、あのオークどもがどこから来たかについて、ある程度予想が立ったんだがな」

 

 あー。

 

 そういや、あのオークたちってどっかから流れて来たんだっけ?

 その原因が捕虜たちの証言から予想ついたと……ほうほう。

 

 って、

 

「……え? ここにアタシいる?」

 

 どう考えても場違いだし、もう関係なくね?

 私、Cランクだけど、ほぼ新人冒険者ですよ?

 

「いるいる。むしろお前が主役だよ。子どもたちの件もあるだろうが」

「えー……」

 

 それを盾にされたら嫌な予感しかしなーい。

 

「そう嫌そうな顔をするなよ。役割は今回と同じ、輸送だけでいい」

「とかいって、毎回戦ってるんですけどぉー」

 

 ダイアーウルフといい、

 オークといい、

 

 いっつも移動だけのはずだったんだよなー。

 

「できればお断りさせてくださーい」

 

 オーク討伐は時間との勝負だったから仕方なかったにしても、今回の件を引き受ける義理はない。

 いくら子供たちの件を盾にされても、危ない橋は渡れな──。

 

「──ふふん。残念だが、Cランク以上は中堅とみなされてな。ギルドからの指名依頼は基本断れないんだよ」

 

 どやぁ。

 

「うん……ちょっと、席外しますねドミトリさん」

「待て待て待て! だから、刀を取りに行くなって!」

 

 あはは。

 まっさかー。

 

「刀じゃないですよー」

 ニコッ。

「いやいや! ってことは銃か?! 銃なんだな?!」

 

 イエース。

 

 銃も銃。

 しかも、拳銃じゃなくて、こういう奴は百式短機関銃の錆びにしてくれるわー。

 

「笑顔が怖いって! もー……ほら、マスターも謝っとけって! ナガセまじで怖いぞ」

「怖くないですよー」

 

 ──ジャキンッ!

 

「いや、もう持ってきたのかよ! こえーよ!」

 

 怖くない怖くないよー。

 昔セーラー〇と機関銃って映画あったじゃん? あれがこう、サウナタオルに変わっただけですよー。

 

「何言ってんのかわかんねーよ! あーもう。アタシが謝るからさ!……あ、そうだ! ほら、そろそろ水風呂タイムだろ?」

「む……」

 

 そういえばそうか。

 

「納得すんのかーい」

「そりゃそうですよ。──サウナは長々と入るもんじゃないです。なにより水風呂に機関銃は持っていけないしね」

「い、いや、まぁ……。アンタがそえでいいならいいけど、できれば水風呂以外でもやめとくれー」

 

 つーか、サウナ室もダメっちゃダメですけどねー。

 

「…………え? いま、俺死ぬ寸前だった?」

 

 おせーよ、ハゲ。

 

「……コイツ、こえーな」

「だから、そう言ってんだろ。コイツ、その気のなればサンズベルトくらい吹っ飛ばせるからね? ほら、謝っときな」

 

 吹っ飛ばしはしない。

 チハたんで蹂躙するだけであーる。

 

「す、すまん」

 

 ふん、謝ればよろしい。

 

「っていうか、別にCランクなんて返してもいいんですよ? 頼み方に気をつけてくださーい」

 

 子供たちの件があるからって、調子に乗んなっつの。

 私は権威をかさに着て調子に乗るやつが嫌いなのだ。

 

 ブラック企業時代しかり、

 えみりしかし、

 クソおーじしかりね!

 

 嵌められたり馬鹿にされたりするのはもううんざりなのだ。

 

「わ、悪かったよ」

「わかればいいよ──はー。きもちー」

 

 ザバー。

 

 掛け湯をして、汗を流して水風呂に入ると一気に上がったボルテージも下がっていく。

 ドミトリさんも火照った身体を水につけて一気に温度が下がって気持ちよさそうだ。

 

「……っていうか、アタシは肝が冷えたよ。あんたマジでヤル目してたしよー」

「え? ヤりますよ?」

 

 当たり前じゃないですか。

 なんで異世界きてまで我慢しなきゃならんのです?

 

「だ、だから、悪かったって──」

「はいはい。もういいよ。……っていうか、ハゲ。水風呂入るなら汗ながしてねー」

 

 水風呂は汗を流してから入る。

 これ常識ね。

 

「わ、わかったよ──ふぃぃーちめてぇ」

「でも、きもちいいっしょ?」

「まーな、で──」

 

 あ、ストップ。

 

「次、行きますよー。ほあ、ドミトリさんも」

「お、おう。──ほれ、マスターもいくよ?」

「ええー? まだ入ったばかりだぞ? 1分くらいしか……」

 

 1分も入れば十分!

 そんで次は──……。

 

「はい、寝ころんで寝転んで」

「あいよ」「お、おう」

 

 あー……。

 きもづぇぇえ……。

 

 露天風呂横の、外気浴用の寝ころびチェアに3人そろって、ゴローン!

 

「おー。オーク城塞から見上げる月夜はいいですね~」

「いいねー。……なんか頭がぼーっとしてきたよ」

「本当だな。いつの間に夜になってるし、蒸し風呂ってのはこんな楽しみ方が────……って、話がすすまねぇーよ!!」

 

 あーん?

 うるさいハゲだな。

 

 いま、ととのってんだよー。

 

「いや、なにを口たらーっと開けてし涎たらしかけてんだよ!」

「いいからいいから、マスターも涎たらしときな」

 

 そうそう。

 この、の~んびりとした空気がたまんねーのよ。

 

「あーもう! 一回一回中断されて話になんねーわ」

 

 はいはい。

 

「次のターンで聞いたげるから」

「えー……。これローテすんのかよ」

 

 当然でしょ。

 サウナ→水風呂→外気浴→水分→サウナ~のローテションを最低3回はするよー。

 

「はー……わかったわかった」

 

 わかればよろしい。

 そんじゃ、次は水飲んで次のターンだ。

 

「はいはい。もうとことんまで付き合うから話は聞いてくれー」

 

 話せばいいのに、

 一応聞いてはいるよー?

 

「目の焦点があってねーっつの。あ、この水キンキンに冷えてやがる」

「サウナの冷水器って優秀だよねー……ぷはー」

 

 うめー。

 

「で、なんだっけ?」

「さすが、ナガセ。流れるようにそのままサウナに」

 

 当然っしょ。

 むわっとした熱気を感じつつ、第2クール突入。

 

「──で、なんだっけ?」

「あーもう……サクッと話すわ」

 

 そうしてー。

 

「オークの連中が流れてきた原因が、おおよそわかったんだよ。端的にいうと、王都近くの大森林を根城にしていた奴がさらに強力な魔物に追われたらしい」

 

 へー?

 

「強力な個体って……マジか? オークたって、ジェネラル込みだよ」

「あぁ、それを追いやるほど強力な個体さ。だからの緊急依頼さ。……それの調査をお前らに頼みたい。首都のギルドからの緊急依頼だ」

 

 えー?

 緊急依頼の調査ぁ?

 

 そして、お前ら(・・・)ってアータ(アンタ)

 

「……それ、私いりますー?」

「いるいる! むしろお前のその『魔の山脈』を踏破する非常識な生存能力と、移動能力がないと始まんねーの」

 

 ひ、非常識って失礼な。

 

「それに、さっき言ったろ? 首都の近くだって。向こうも結構な騒ぎらしい──オークがあちこち荒らしてここに来たからな」

 

 なるほど。

 それなりに緊急っと……。

 

「んー、でもなぁ。もう、オークはいないわけじゃん?」

 

 なら首都の冒険者でやりなよー。

 

「だからこその肝入りだっつーの。各地は分散したオークの対処で手一杯なんだと。そんなところ、ウチだけが早期に殲滅に成功。上位種も倒したってんで、手が空いたと思われてんのさ」

 

 ──あー、私のせいだわ。

 

「なるほどねぇ。それなら仕方ないか」

「えー。やるんですかぁ?」

 

 調査ってことはなんもわかってないってことですよね?

 それに報酬がいくらだっけ?

 

「金貨10枚」

 

 やっす!

 

「その代わり貢献度は高いぞ?」

「いや、私Cランクで十分っす。むしろ便利使いされるくらいなら、Dでもいいよー」

 

 いつぞやのギルマスはマヂむかついたし。

 

「う、あの時は悪かったよ」

「はいはい」

「だ、だけど、それを差し置いても、お前はドミトリと協力して受けたほうがいいと思うぞ?」

 

 は?

 なんで?

 

「首都のギルド案件だぞ? 成功したら、お前にもかなり有利だと思うがな?」

「有利って、子供たちのこと? 引き取ってくれるんじゃないの?」

 

 むしろ、後見人の私が死んだら危険な気がしてならないけど……。

 

「そっちは問題ねぇよ。ドワーフも獣人もウチの町ではほぼ主力みたいなもんだしな。職員としても歓迎だ」

「ならいいじゃん?」

 

 ん?

 あれ?

 

「……二人だけ?」

「ん? あぁ、そこからか──。すまんが、もう一人のガキ。あっちはさすがに無理だぞ?」

「もう一人って……エルフの子?」

 

 褐色肌で銀髪。

 赤い目をした綺麗な子──……え? なんで?

 

「そうか。やっぱり知らなかったか」

「ナガセはよくわからん田舎出身らしいからねー」

 

 田舎っつーか日本だしね。

 

「なら教えといてやる。あのガキ──ありゃエルフじゃねぇ。魔族だ」

「え? 魔族?!」

 

 それって、なんかどっかで聞いたような──……あ、クソおーじ案件だ。

 

「ってことは、まさか人類の敵?」

「おう、知ってるじゃねーか。ってなわけで、この国は目下魔族の権利を認めてねぇ。ガキでも例外じゃねーよ」

 

 ……え。

 

「えええええええええええええええええええええ?!」

「うわ、うるさ!」

「み、耳元で……」

 

 い、いやいやだってぇ!

 

「そんな、まだ子供じゃん!」

 

「魔族は子供でも一騎当千だよ」

「腕力は人間の比じゃねーし、魔法を覚えたら無尽蔵だ」

 

 で、でもぉ。

 

「あんな可愛いのに!」

「「いや、それは関係ない」」

 

 うぐ。

 

「だ、だけどぉ……」

 

 あーでも、それで奴隷市場であんなに喧々囂々(けんけんごうごう)だったのかー。

 

「まーよ、とはいえ、俺もあのガキを実際に脅威と思ってるわけじゃねーよ?」

「そうなん?」

「そりゃそうだろ? アタシの見た感じでも危険はないと思うよ。そも、つぇー魔族ならオークになんか捕まるもんかい」

 

 それはそうだ。

 

「まぁ、そう言うわけでよ。なおのことお前には今回のクエストを受けて欲しいわけだ」

「ん?……話はわかりましたが、クエストと関係なくないですか?」

「いやいや、よく考えろよ。魔族たって子どもだ。一騎当千で邪悪という噂もあるけど、お前という優秀な冒険者の下で大人しくしてるという実績があればだ──」

 

 あれば?

 

「首都の冒険者ギルドに口利きくらいしてやれるってもんよ」

 

 おぉ!!

 

「な、なるほどー!!」

 

 たしかに、実績と後ろ盾があれば、向こうの孤児院でも受け入れてくれるかもしれないか。

 

「そういうこと。さらには、首都初の緊急依頼を受けて、むこうのギルドや町に貢献してみな。……うまくすりゃ、冒険者登録。さらに貢献度が高いと認められればお前さんを後見人として首都の孤児院に受け入れてもらえるかもしれんぞ」

 

「……ふむふむ! ハゲにしてはいい提案じゃーん」

 

 どうせ、治安のいい街まで移動しようとは思ってたしね。

 そのついでに手柄を立てて、子供を受け入れてもらうようにするってわけかー。

 

「のった!」

 

 スパーン!

 

「いって……。え? なに? なんで叩かれたん?! 俺舐められてる?」

「日頃の行いだよ。ナガセを舐めたつけさ」

 

 わはは。

 そんなつもりはないけど、さっきのでハゲ──おっと、ギルドマスターの株はかなり下がってるからね。

 

 ま、それも今回の件でチャラだー!

 

「むー。納得いかねーけど、頼んだぞ」

「まーかせて。調査と輸送でしょ? よゆーよゆー」

 

 調査につきあって、王都のギルドまで送ればいいだけなら、何も問題なし!

 チハたんは最強だしねー。

 

「…………言っといてあれだけど、コイツで大丈夫か?」

「まぁ、腕前だけならアタシらより上なのは間違いないねー」

 

 なにやらコソコソ話している二人をガン無視して、私はとりあえず水風呂に向かうのであった。

 3クールはしないとねー。

 

 

 

 

(しっかし、魔族かー…………)

 

 

 

 

 クソ王国とクソおーじを思い出してしまいちょっと渋い気持ち。

 なんか、縁があるんだかないんだか──。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。