異世界チハたん(九七式中戦車)無双〜聖女召喚されたけど捨てられました~ 作:LA軍
ギェェェエエエエエエン!!
「ひぇぇぇええ! な、なにあれー?!」
「見てわかんないのかい?! ドラゴンだよ!」
ホントだ!
見てわかりやすーい!
赤くて、
羽根があって、
でっかいトカゲみたいなのが、ボボッ! って感じで火ぃ吹いてるー!
「──って、そうじゃなくて、なんであんなのがー!」
今日も今日とて、調査のために森の奥地へ踏み込んだ私たち。
チハたんは森林地帯でもなんのその。
戦車にしてはスリムな体と、小柄ながらの大馬力で、樹木をメキメキバキバキとへし折り、多少の湿地ならドルルルと推し渡って、三日ほどの調査を続けていたわけでーす!
そこまで問題なし。
道中はオークどもの移動の痕跡がありありで、慌ててどこからか逃げてきたのがよくわかる様子だったんだよね。
しかも、オークジェネラルを伴う本隊の痕跡はばっちりと追跡しやすく、
途中で分派した連中はそのままに、まっすぐ奥地へと向かっていたのですよ。
そしたら、その途中にも襲われて壊滅した村とか、踏み荒らされた街道とかがあったんだけど、基本はほど森や山の中の移動ということで中々神経をとがらせていた私たち。
そのせいもあって、夜はジョブのガソスタで休むんだけど、適切な広さの敷地がないと大型のガソリンスタンドは呼び出せないらしく、しかたなく、小型なLv1かLv2のそれで我慢していたんだけどねー。
ほ、ほらぁ。
私はともかく、皆が疲れるじゃん?!
だから、三日後はちょっと奮発しちゃったわけ!
な~~~~~~んか、森の奥に妙に広い空き地があったから、「おー! お風呂だお風呂だ!」って感じで全員で盛り上がったもんで、
早速スーパー銭湯を呼び出して、ちょっと早めの休憩としゃれこんでいたんだけど、その最中にこれですよ、
ギェェェエエエエエエエエエエエン!!
「ひ、ひぇぇえ! た、対空戦闘、対空戦闘………!! いや、対戦車戦闘?」
「対ドラゴン戦闘!」
あ、それ!
ドミトリさんにそう突っ込みされたけど、チハたんにそんな戦闘実績あったかなー。
太平洋戦争でドラゴンって、出てきたっけ?
「っていうか、しまったー。閉店看板だしてないから、認識疎外が効かないんだったー」
「馬鹿! ドラゴン相手にそんなのあったって、気休めだよ!」
ですよねー!
アイツ、空を飛んできて、バッチリここを視認してたもん!
ルルちゃん含めて、ドミトリさんと私たちの3人で呑気にサウナ後の外気浴コースをしゃれこんでいる時に、これだー!!
「あ、そっか!! そういえば、ここってもしかして──」
「あ、あぁ、うっかりしてたよ……! 考えてみれば、森の奥深くに、いきなりこんな広い空き地があるなんてどう考えてもおかしいのさ!」
ですよねー!
私も今気づきました!!
「そ、そう言えば、今さらですけど……。この広場って、なんかが暴れた形跡ありましたねー」
「あったねー。建材も埋もれてたし、ちょっと獣臭いし──……」
うん!
わかった!!
──ギェェェエエエエエエエエエエエエン!
「で、アイツがオークを追っ払った奴と?!」
「多分ね! っていうか、それしか考えられないよ。そんでアタシらは
あっはっは。
「「そら、お怒りになるわっぁぁあああ!」」
「おこってるー!」
きゃっきゃ♪ とテンション高めのルルちゃんを抱えて慌てて露天風呂を飛び出す。
「わぁぁあ! 武器武器! 早くー」
えーっと、百式百式──百式短機関銃ー!
拳銃でもいいや!
「馬鹿! そんなの利くもんかい。その前に隠れるよ!」
「えー! 隠れるったってどこに?!」
ここ女湯ですよー。
──シャッ!
「姐御!! 敵は古代竜級ですぜ!」「あんなの勝ち目ないっつーの!」
おう!
それは分かるけど!!
「って、ここは女湯だっつーの!」
おらぁぁ!
「「あだー!!」」
なんでナチュラルにコイツ等は入ってくんねん!!
「ま、まぁまぁ、緊急事態って言うことで──」
そして、大人なミルヒ君はこんな時でも、女湯の
おー、脱衣籠まで行ってる暇も惜しいので、助かるぅ!
「それより、ナガセ! チハたんは動かせるかい?!」
「今すぐにでも──!」
スチャ!!
チハたんはチハたんであって、本物の帝国陸軍のそれというより──あれはあくまでも私のスキル!
なので、このスイッ〇っぽい専用コントローラーで遠隔操作も可能なのだー!!
ちなみにこれ、完全防水なので肌身離さず持ってまーす。
「なら正面に付けとくれ!」
「──それじゃ間に合わないよ!!」
パンツをはいて、服を着替えて、靴を履いて、館内を横切って玄関まで?
絶〜対間に合わないって!!
なので──。
来いっ!
来いッ!!
来ーいッ!!
「チハたーーーーーーーーーーん!!」
某ロボットアニメ風に呼び出すと、
脳内のBGMが流れて、チハたんが、グポォォン♪ と
そして、一気に駐車位置から突っ込んできた!
──グォォオオオオン!!
「来たー!」
ナイスぅ!
「アンタらは着替えてるかい?!」
「「「パンツだけ!」」」
履いてるだけ上等!
「なら、こっちに来ることを許ーす」
そして行くよ!
ササッ! と手早く館内着を着た私は、ガソスタのキャップをかぶり、戦車兵用のゴーグルだけを下げると、女湯入り口に立てかけて置いた武器を手にする。
「ドミトリさん!」
「おうよ!」
バシィ! とクッソ重い彼女の大剣を投げ寄越すと、
私も薄着の上に略帯皮を巻き付け軍刀を、そして拳銃を吊るして、
あーっと、百式短機関銃は──……。
「──ルル!」
持ってて!
「あーい!」
ポーイと、小柄な褐色肌の少女に短機関銃を投げ渡す!
この子には自衛もかねてここに来る道中で一通りの武器の使い方を教えておいたので、問題なーし!
「危ないときは使うんだよ」
「りょー」
可愛らしく敬礼するルルちゃん!
マヂかーわいいの!
「ほら、アンタらもいくよ!」
「「「失礼しまーす!」」」
男どもが脱衣所に突入するのと同時に、遠隔で呼び出したチハたんが、ドッガーーーーーン! と、スーパー銭湯の女湯の垣根を破壊して出現した!
あとはそのまま、ザプン! と湯船につかると。
んー?
な、なんだろ??
なーーーーんか既視感のある光景だけど、今は良ーーーし!!
「──よーし、チハたんきた!」
総員乗車ぁぁあ!
「「「「合点!」」」」
「がってーん!」
こうして私たちは湯煙立ち込めるスーパー銭湯から戦車に鈴なりに
※ ※ ※ ※
『ギェェェェエエエエン!!』
ズズーーーン!!
「うわわっ! お、降りて来たよ!」
「そりゃドラゴンは、そこまで飛ぶのはうまくないからね!! 地上で仕留める気なのかも!」
な、なるほど!
たしかにデカいし重そうだし、ガルダみたいな軽快な空中機動は望めなさそう。
だけど、地上に降りたら降りたで、なんか余計に威圧感が凄い!!
「とにかく森へ!! まともに戦おうなんて考えちゃダメさ!」
「ですよね!」
つーか、勝てる気がしない!!
サイズ的にも向こうの方がはるかにデカーイ!!
「えーっと、どっち行きましょうか?!」
「あっちだよ! 森の切れ目に正面からツッコミな!!」
「了解! ト、トレーラーの荷物は……」
「「「諦める!」」」
ですよねー!
こっちも、トレーラーを回収している暇もない。
なので、ドミトリさん達を含めて全員をタンクデサントさせているけど、せまーい!!
「ルルは中に入ってなさい!」
「わかったー」
素直なルルちゃんは、こういう時たすかる!
「──んで、この後どうします?!」
「逃げるに決まってんだろ! ガソスタは──」
ぐしゃーん!
どかーんん!!
「ああ、破壊されてるー」
わ、私の城が……。
チハたんが逃げ出した女湯を中心に地上に降りて来たドラゴンがスーパー銭湯の上で好き放題に暴れている。
(あっのやろー!)
だけど……。
「……だ、大丈夫です! あれはジョブなんで、あとから消せますし、治せます!」
まぁその……。
修理にめっちゃ金掛かるっぽいけどね!
施設の維持といい、
商品の入荷と言い、私のジョブは拝金主義なのだー。
「う、うん! ならいいさね。このままガソスタを囮に逃げるよ!」
「え? 逃げちゃっていいんですか?!」
ドラゴンですよ!?
「ばか! あんなのに勝てるわけないだろ! そもそも、アタシらの依頼は『調査』だよ!」
「あ、あああー! そうだった!!」
なら、これでオッケーじゃん!
このまま帰っていいやつじゃん!
「そういうこと! あとはこのことを首都の冒険者ギルドに報告して終わり!」
おぉ!
そいつは僥倖。
オークを蹴散らしたのはドラゴンでーす! って報告すればいいわけね!
なら、これでめでたく金貨10枚をゲットして、ルルちゃんを安心安全の大きな孤児院に入れたげられるのかー……。
ギェェェエエエエエエエエエン!!
「──あれから逃げられたらだけどね」
「それなー!」
そして、
それが一番難しそう!
ズシンズシンズシンッ!
ひ、ひぇぇぇ!
「来た来た来たー!!」
しかも、結構早ーいッ!
あの速度から全然逃げられる気がしないよー。
「ナ、ナガセ、もっと急げないかい?!」
わかってるよ!
これでも全速ぅ!!
「だぁっぁあ、急げ急げ! アイツこっち向いてるぞぉぉお!」
「なんか口の中が赤いぞぉ!」
わ、わわ、だから、分かってるって!
見えてるよー。
だけどあれって──……。
「ド、ドミトリさん、あれってなんですか──?!」
なんだか凄く嫌な予感がする。
「わ、わかんないよ! アタシもドラゴンは初めてだし」
ですよねー!
なら、ここはミルヒ君!
「た、多分ブレスです! 赤い肌からして奴は火炎系ドラゴンです──つまり、」
つまり……?
「業火が来ます!!」
キュボポォッァァアアアアアアアアアア!!
「「「「あっちー!!」」」」
き、きたーーーーーー!
慌てて砲塔内に潜り込んだアタシでさえ、ムワッ! と押し寄せる熱気を感じるほどだ。
車外にいる彼らはたまらないだろう。
幸いにも、チハたんが蛇行運転していたこともあって直撃を免れるが、あ、あんなの当たったら骨まで溶けるかもー!!
「とにかく森まで急ぎます! なので、もうちょいで我慢して!」
森までは数百メートル!
チハたんが全力で走っても一秒、二秒というわけにはいかないのだ。
「我慢って、ああもう! わかってるけど、次は躱せないよ! さっきのは多分牽制だ!」
「ええ? け、牽制って、あれでー?!」
キューポラ越しに見れば、大地がメラメラと燃え盛っている。
牽制という名の地獄の業火だ!
「いやいや、まるでホースで水でも撒くかのように火を吹いてますよ! どうみても範囲攻撃にしかみえないんですけどぉ!?」
「あぁ、この周辺一帯を焼き尽くすつもりかもね!」
ほらぁ、やる気満々じゃん!
牽制とか絶対嘘でしょ?!
「あーもう! どーりでオークが集団で逃げ出すわけだよ」
こんなの歩く災害じゃん!
いや、飛ぶこともできる災害か!
「くっそー! このままじゃマズイかも──!」
チハたんは全力で走っているが、
ドラゴンはすでに第二射の準備に入っている。
──そして、さっきのが牽制だとしたら、今度は躱せない……!
「いや、いい!! ナガセはそのままぁぁ!」
ええ?
「そ、そのままって……」
いいのぉ?
無理くさいけど?!
「いいから、森に逃げ込めぇぇえ!」
「あーもう、わかったよ! 真っ直ぐだね?!」
他にやりようもないんだし、ここはドミトリさんを信じよう。
そして、追いかけてくる火炎から逃げるようにチハたんは全速前進!!
(でも、これって絶対間に合わないやつ──!)
そして、来たぁぁぁああ!
──キュボォォォオオ!!
「大丈夫!
ふんがーっ!!
言うが早いか、気合一閃!!
ドミトリさんが向かうブレスに大して、砲塔の上に立つや否や、真っ向から立ち向かう。
そして、そのまま大剣を持ち替え、刃の腹を正面にすると──……振りかぶったー!
「うらぁぁ!」
ボーン!!
刹那、彼女の起こした風圧が、ドラゴンの炎を直撃し──。
──そのまま、ぶわっ! と強烈ば風圧でブレスの進路を妨害した!
「お、おぉぉー!
「あっはっはー! どーんなもんだい!」
ひゅ~♪
さすがはAランクぅ!
しかし、勢いまでは消せなーい!
直撃は免れたけど、
鞭のようにしなる炎のブレスが、肌を……空気を……大地を炎が焼いていく!
「あわわわ! ど、どーしよ!」
回りが大火災だー!
「いいからそのまま直進んん!」
「りょ、了解ー!」
──わ、わぁぁぁあああああああ!!
言われるままに、炎から逃げるようにチハたんを走らせるッ!
そして、森に一気に逃げ込んだ!!
バキバキバキバキッ!
メキキキッ────!!
「あちちち、あっちー!」
ひぇぇぇ!
危機一髪!
だけど、森の中まで火が追いかけて来た!
「あ、姐御ぉ! 背中が燃えますよ?!」
「おわっ、マジだ! 消せ消せー!」
そして、ブレスに立ち向かったドミトリさんの館内着がすごい勢いで燃えていく。
「うぎゃー! はやく消しとくれー」
あっちあっちと砲塔の上で暴れるドミトリさん。
「こ、これ使って!」
戦車に備え付けの消化器でーす!
ブシュぅうう!!
「ふ、ふぃぃ、死ぬかと思ったよ」
「いやいや、無茶するからですよ?!」
ブレスに剣一本で立ち向かうとか人間業じゃないよー。
でもそのおかげで助かった。
かわりに、あれよあれよと服が燃えてあられもない恰好になったドミトリさんであったが、髪をチリチリにしながらもなんとか炎を消し止め、九死に一生を得る。
そして、そのままプスプスと黒煙をあげたまま私に親指を立てた。
「だけど、なんとかなっただろ?」
「……ま、まぁそれはねー」
嫌な成功体験だけどね!!
とりあえず、空気をよんで親指たてとこ!
いえーい。
「いえーい♪」
前方機銃手席から顔を出したルルちゃんも同じく親指を立てて、皆でサムズアップ…………って、
あ、あれれ?
「……な、なんか、進路の先。燃えてません?!」
「あ、あぁ。先っつーか……もう、周囲全部が燃えてるねー」
ゴォォォオオ!
バチバチバチッ!
あ、あー。
やっぱりそう見えますねー。
「……って、ぎゃぁぁああ! や、山火事だー!」
「あっちゃー。そりゃそうか! あの熱量だし、逸らしても周りは燃えるわなー!」
そうでしたー!
くっそー!
「こ、後退しますか?!」
「ああ、それしかないね!」
前もだめ、
横もダメならバックオンリー!
なので慌てて、チハたんのバックギア。
速度は落ちるけど、炎に巻かれたらおしまいだ。
あ、だけど、待って。
「逃げた道を戻るってことは……」
──グルルルルルル!
「げぇっ! や、やっぱりぃ……!」
炎の壁に囲まれた私たちであったが、後退するにつれて森の先で待ち構えているドラゴンがよーく見えるようになってきた。
つーか、そりゃそうだよね!
今、そっから逃げて来たんだもーん。
「くそッ! あ、あの野郎、最初からそのつもりかぃ! わかってて待ってやがるんだ」
「マヂ?! せ、性格わるーい!」
追いかけてこないと思えば、そういうことかー?!
なるほどー。効率重視!
周囲を燃やし尽くして、自分から出てこいと誘っていやがるのだ。
「ど、どーします?!」
行くも地獄!
引くも地獄──!!
「ど、どうもこうもないよ……なんとか、逃げるしか──」
「なんとかって……」
逃げるも何も、すでに、前も横も燃え盛る業火に変わり果てている。
そして、後退したとて、その森を焼いた下手人が虎視眈々と待ち構えている。
つまり、もとより道は一つしかないのだ──。
だったらぁ……!
「やっぱり下がりますね」
「そ、それしかないけど、大丈夫かい?」
大丈夫か、どうかで言われたら
だけどね。
奴は誘っているのだ。
ブレスで強行すれば仕留められたはずなのに、わざわざ炎で周囲を焼いてリングを用意しやがったのだ。
「……あはっ。
どうやら、ドラゴンちゃんは決闘をお望みらしい。
いいよー。
そっちがその気ならぁぁあ……!
「チハたん舐めんなよー!」
大和魂!
帝国陸軍パぅワーをみせてやるー!!