異世界チハたん(九七式中戦車)無双〜聖女召喚されたけど捨てられました~ 作:LA軍
ズシン、ズシン、ズシン……。
『──ギェェェエエエエエエエエエエエエエエエン!』
びりびりびり……。
ボイラーが破裂し、蒸気を噴き上げるスパ銭と、半壊し煙を噴き上げるチハたんを背景に真っ赤なドラゴンが咆哮する。
それはまさに勝鬨と言わんばかりで、その前にひれ伏すかのように突っ伏した私は、実に矮小だった。
「い、いってー……!」
かくして激しく地面にたたきつけられた私は、危うく失いそうになった意識をなんとかつなぎ止める。
だけど、身体はボロボロ、コントローラーも転がっていき、チハたんを動かす術もない。
「がはっ!」
オマケに吐血ぅー。
口から血ぃ吐くとか、アニメかよー。
「くっそぉー。デカすぎでしょ……」
戦車の上からでもでっかく見えたのに、
地べたのはいつくばってちゃ、なおさらだ。
「オマケに砲弾を弾くとか、マヂ、規格外ー」
やっぱり、戦車じゃゴジ〇には勝てないかー。
そのうえスーパー銭湯を踏みにじり、
今もまさに、頑丈なガソスタを破壊しつくす様はまさに、怪獣だ。
コンクリート製の防火壁がガラガラと崩れ落ちていく。
く、悔しー!
私の城になんてことをー!
「……っていうか、ずるくなーい?」
そっちだけ最初から無敵モードじゃん!
デカいし、飛ぶし、硬いし、火ぃ噴くしー!!
『ギェェェエエエエエエエエエエエエエン!』
ひぇ!
ご、ごめんなさい!!
間近で見るとマヂ迫力ぅ。
「えへへ。こーさんしたら、許しくれたりする……? あ、無理ですか」
そうですか。
ジロリと強者の風格で睨まれちゃどうにもならない。
視界の隅では「ナガセぇぇぇえ!」と、叫ぶドミトリさんたちが慌てて駆けつけてくる姿が見えたけど、間に合いはしないだろう。
そも、間に合ったところでどうにもなる物じゃない。
相手は最強種ドラゴンだ。
それも、戦車の砲弾を弾くタイプ。
かないっこなーい。
「…………ま、だからって降参する気もないけどねー!!」
ジャキッ!!
言うが早いか、ホルスターに手を伸ばした私!
そこには拳銃が一丁。
──愛用(?)の九四式拳銃ちゃんだー。
「あはっ。まだまだだよ」
そうだ。
まだだ。
まだまだだ。
マガジンを取り出し、ポケットの中の弾丸をジャラジャラと取り出すと、震える手で一発一発込めて──……装填ッ!
ガシャコッ!!
「えーいッ!」
──パンッ!
コキンッ!!
「あはっ! あたったぁ〜」
ニヤーリ。
挑発するように不敵に笑ってやる。
私はまだまだ負けていないんもん。
ちなみにドラゴンに向けて火を噴く拳銃弾は、口径8mmの南部弾。
当然、効くはずもない。
だけど、やらないよりは──と、さらに撃つ。
パンッ!
カキンッ!!
パンッ!
コィーン!!
パンッ!
『ゴルルルルルルルル……!』
命中弾をものともしないドラゴン。
ただ、まるで何やってんだとでも言わんばかりに、軽く頭をふるドラゴンは、ゆっくりとこっちに近づきてきた。
ズシンズシンズシン、と──。
スパ銭を踏みつぶし、
半壊した戦車を無視して、ガソスタを破壊しつくして──。
「あはっ。なんか、映画でこんなシーンあったなー」
パンッ!
カーーーーーン!
え~っと、あれって戦争映画だっけ?
あの時は空軍が間に合って助かった(?)けど……私には助けに来てくれる空軍はいない。
……いないんだけどさー!!
ジャキン!
残り一発!
『ギェェェエエエエエエエエエンッ!!』
不敵に拳銃を構える私だけを見下ろすと、
ようやく一息で倒せるところまで近づいて来たドラゴンは大きく吠える。
まるで、私の無駄な抵抗をあざ笑うかのように、巨体をみせるかのごとく!!
そして、最後は、
ブレスでもなく、
尻尾での攻撃でもなく、
多分、食らいつくんだろうなーと思う。
…………そして、思うからこそ、その時を待っていた。
待っていたんだよ!!
パンッ────!
「そうやって、舐め腐って近づいてくるってわかってたよ」
ニッ。
だから私は会心の笑みを浮かべる。
そして、最後の一発を放った。
奴に向かってではなく──…………。
「アンタが今どこに立っているのか、教えたげる」
そう……。
そこはガソリンスターーーーンド!
「オクタン価90以上のレギュラーとハイオクを数万リットル蓄えた、超超超危険物の真上ということをね!!」
カンッ……!
ボシュッ!
あとはそう。
ガソスタの隅に設置されたタンクローリーからの給油口に向かって、8mm南部弾を撃ちこむだけ!
すると見事に命中!
その瞬間、密閉された地下タンクの気圧が抜けて一斉に吹き出す、気化したガソリン!
その強烈な臭気にドラゴンがハッ! とするも、もう遅ーーーーーーーーーーい!!
「ルルーーーーーーーー!!」
撃って!
うって!!
「撃ちまくれぇぇぇええええ!」
「ん!!」
ジャキンッ!
奴から目を逸らした中破したチハたん。その中から顔を出したルルが、言われるがままに百式短機関銃をドラゴンに向けて発射!
パパパパッパキパキパキパキッ!!
と、独特の音を盾ながら撃ち放たれる30連発弾倉の8mm南部弾がドラゴンの皮膚に命中!
それは一発たりとも貫通しなかったが、それはそう!
──それでいい!!
その代わり、出るのは火花!
そして、火花は気化したガソリンに引火する!!
そうとも、この世界で一番危険な可燃物に引火する────!
オクタン価90以上を蓄える。
数万リットルのガソリンの地下タンクとともに……!
ボンッッ!!
それは、森の奥を揺るがすほどの大爆発となった。
まぁ当然だろう。
なにせ、気化からの引火、そして壊れた給油口からとめどなく吹き出すガソリンに点火!
さらには散々に破壊されたせいで密閉を失ったスタンドの地下に格納されていた1万リットル級のタンクが炸裂したのだから────!
そして、大地はガソリンの炎に包まれた。
※ ※ ※ ※ ※
「わーっはっはっは!」
見ぃたかー!!
これが私の奥の手じゃぁっぁああ!
『ギェェェエエエエエン!!』
地獄のように吹き上がった数万リットルのガソリンの一斉爆発に、さしものドラゴンも大ダメージを食らったのか、あの巨体が数メートルは浮かび上がる。
そして、そのまま翼をひろげると、バッサバッサと上空へと舞い上がりやがった。
がははははーっ、そのままくたばるがいいわ!
「……って、あー! アンタ、さては逃げる気?!」
飛ぶとか卑怯くさいぞ!
くっそー!
「ルル、それ貸して!」
「ん!」
半壊したチハたんから、てててー! と駆け寄ってきたルルから、百式短機関銃を受け取ると、残る弾を上空に向けて乱射する!
「おらぁぁあ! 降りてこーい!」
パパパパン!
パパパパパーン!
「逃げてんじゃねーぞぉ!」
ごらぁっぁああ!
パパパパン!
パパパパパーン!
『(ギェッェェン! ギェエエエエエエン……)』
ギエーン! じゃねーわ、
日本語喋ればーか!
──カチカチカチッ!
あ、弾切れか!
「ちっくしょー。どんどん遠ざかっていくしー」
チハたんは破壊するし、
スパ銭は踏みつぶすし、
「あと、私のガソスタをボッコボコにしてただで済むと思うなよ!」
今度会ったら、焼きトカゲにしてやるー!
「ナ、ナガセ! もういい、もういいよー!」
「そーだぜ、向こうが逃げたんだし、ほっとけって!」
「十分な成果だっつーの! なにも挑発せんでも」
あーん?
なにを
私の城の仇ぃぃ!
「あと、ガソスタにトドメを射したのはナガセさんかと──」
むー。
それはそう!
「だけど、それはそれ! これはこれ! あれはあれー!! あのトカゲぜってー許さねぇ!」
パーンパーンパーン!!
だから、今度は九四式拳銃に弾を込め直して上空に遠ざかりつつあるドラゴンに向けて、撃ちまくるのであった。
ま、さすがに当たらんかー。
ちくしょー。
「おいおい、ナガセ! アンタ死にかけてんのに、元気だね?!」
「……つーか、こえぇよ、この女」「すっげー凶暴だしなー」
やかましいわ双子。
「と、とりあえず治療だよ、治療! ミルヒっ!」
「あ、はい。って、わわわ、ナガセさーん?!」
ん?
あれ、なんか体に力が入らな…………あ、これ血ぃ流し過ぎたかもー。
ふら~り。
どうやら、戦闘時の興奮で分からなかったけど、私ってば結構な重症でしたー。
──どさっ!!
そのままドミトリさんの腕とミルヒ君の胸に倒れこむ。
「ひぇー、結構な血だよ!! は、速く、薬草薬草っ!」
「ポーションありったけ持ってこーい!」「軟膏も手あたり次第に塗れ塗れ塗れー!」
あははは。
脱がすな脱がすなー。
ま、死にはしないよー。
調査結果の報告のため首都まで送る、そのクエストを達成するまではー…………ぐふっっ。
「「「「ナガセぇぇぇええええ?!」」」」
「ながせー」
こうして、激闘の末。
私とチハたんは、ドラゴンを見事(?)に撃退するのであったー。