異世界チハたん(九七式中戦車)無双〜聖女召喚されたけど捨てられました~   作:LA軍

46 / 47
第46話「ゴルドの大穴」

 ひゅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぅ……。

 

 

 かつーん、かん、かんっ…………しーん。

 

「……ふ、深ぁっ!」

 

 恐る恐る覗き込んだ竪穴は下は真っ黒。

 陽の光が届かないくらいの深さだったので、思わず石を落としてみたら、途中で跳ねる音の他はなんとなんと──まったくそこに落ちた気配すらない。

 

「いや、(ふっか)ぁぁあ!」

 

 そして、こわーっ!

 いやいや、これ無理でしょ?!

 

「え、えぇー……こんなとこから魔物が湧いて出てくるの?」

「そりゃそうじゃろ。ベヒモスはああ見えて、かなり機敏ぞ」

 

 砲塔に括りつけられた肉壁がなんか言っとる。

 

「……なに。アンタなんか知ってんの?」

「当然じゃ、ギルドで取り調──……ごほんっ、交渉をしとったしの。今回の一連の騒動のことも知っとるし、ギルマスにここの話も聞いとるぞ」

 

 ほほーう。

 

「……むしろなんでお主が詳しく知らんのじゃ」

 右から左に聞き流してたー。

「ここはゴルドの大穴というての。その昔、獣の王がここより出でて、世界を闇に包まんとしたという伝説がある。……しかして、時の勇者によって倒され、封印されたそうじゃ。以来──ここはただの魔物が徘徊するだけのダンジョンとなっておるが、その獣の王が時折、封印を解かんとして、自分の分身たる魔物を穴より解き放ち、魂を集めるとかなんとか、うんたらかんたら、ふんだりけったりじゃ──」

 

 いや、最後のほうよ。

 

「えーっと、つまり、中にやべーのがいえ、魔物を使役してる的な」

「そんな感じ」

 

 なるほど。

 

「つまり。ここってただの穴にみえるけどダ、伝説級の魔物が封印されてるラストダンジョンってこと? で、やっぱりなかに魔王がいるみたいな?」

「獣の王じゃつーの。……伝説じゃがな」

 

 獣の王。

 ライオンかなー?

 

「──で、ダンジョンかといえば、まさにそうじゃな。しかも、お主の言うようにランクはぶっちぎりのSじゃー! かーっかっかっか! Bランクのお主では手も足も出──って、ちょわぁぁあ?!」

 

 げーしっ!

 

「あ、あ、あっぶなー……! え? なに? 今我を突き落とそうとしたぁ?!」

「ん? うん。なんか笑い声がイラっときたし、ほら、アンタ飛べるし大丈夫かなーって、」

 

 捨てるのにちょうどいいとは……思ってないよ。

 

「と、飛べるかぁ!! こ、こわぁあ! 笑っただけで蹴り落とすとか──……こわぁ!」

「いや、TPOは弁えなよ?」

「そ、それはこっちのセリフじゃぁぁ! み、見てみぃ! どっからどう見て飛べると思った? 今の我はただの可愛い子供じゃぁぁあ!」

「いや可愛くはないでしょ。生意気でムカツクガキはいるけど」

「それが我じゃ! どっちにせよ、ガキってことは子供じゃぞ?! そ、それをー」

 

 いやいや、アンタドラゴンじゃん。

 

「飛べる飛べる」

 落ちても硬いし、いけるいける!

「飛べないつってんの! 硬くても落ちたらヤバいの!! そもそも、お主にこのトゲトゲのロープ(鉄条網)でグルグル巻きにされてるし、なんなら、人化してるせいで翼がないわーい!」

 

 あーん?

 人化してるたって……。

 

「前飛んでたじゃん。そんで首都の屋根をべりべりと──」

「そ、それはもう、謝ったし……」

 

 ごにょごにょ。

 

「なんて? ルーフ・デストロイヤーさん」

「ぐぬぅ……その二つ名、マジで止めて欲しいんじゃが」

 

 なら屋根を壊すな。

 

「ともかく、この姿じゃと、そこらの子供と大差ないんじゃわ」

「はーん? すぐにパパッと変身すりゃいいじゃん」

「あっほぅ! そんな簡単に出来たら苦労はないわ! この術はカロリーを馬鹿食いするんじゃい!!」

 

 カロリーって……。

 

 曰く、

 ドラゴンの大きなになるには、それ相応のカロリーを蓄えないとなれないとかなんとか──……。

 

「あー。それでアンタってば、ギルドで馬鹿食いしてたのね」

「そうじゃ!」

「いや、威張るな威張るな。そういうことするから追い出されれんのよ?……そして、馬鹿食いしてギルドでドラゴン化して何するつもりだったのよ」

「そんなもん決まっとろう──って、無言で武器を抜くのはやめてくれんかのー?」

 

 だって、物騒なんだもん。

 

「そも、町中でドラゴン化したら危ないでしょーが! アンタ自分が歩く危険物だって自覚あんの?」

「お主にだけは言われたくないんじゃが……。まぁ、あのギルマスも国の連中も我の話をちっとも聞かんし、こう──ちょっとはひれ伏させようかなーって思っただけじゃい」

 

 だから、それをやめいっつーの。

 

「そんなんだから、結構な二つ名がつくのよ」

「あーもー、それでええわい」

 

 あっそ?

 じゃ、ルーフデスと呼ぶわー。

 

「で、ルーフデス」

「あ、固定なんじゃそれ」

 

 うん。

 

「それで──ここがダンジョンってのは分かったけど、どうやって入るの? ケイブダイビング(※洞窟でのスカイダイビング)でもしろっての?」

「そんなわけなかろう。我も死ぬわ! そうでなくて──ああ、あったあった、あれ(・・)じゃ」

 

 あれぇ?

 縛られたまま、ルーフデスが顎をしゃくる先には、なんとスロープが!

 

「まさか、あれで下に?」

 

「おうよ、ベヒモスもあそこから這い上がって来たんじゃろうて。……つーか、お主、マジで何も調べとらの? どうやって調査する気だったんじゃ?」

 

 んなもん出たとこ勝負よー。

 

「うわー……結構ギリギリの幅だな」

「聞けよ」

 

 ベヒモスが昇ってくるくらいに幅はあるとはいえ、それなりに狭いスロープが大穴に張り付くようにして底まで続いていた。

 なんだろう、あれかな? 海外とかのダイナミックな露天掘り高山みたいな感じ──あれより禍々しいけど。

 

「ったく。ここを下っていけば、底につくぞい。その先に獣の王が封印されているというのー。もしそ奴が原因なら、ベヒモスや他の魔物も大勢折るじゃろうの」

 

 マヂかー。

 狭い所の戦闘って、チハたんには向いてないんだよね。

 

「ま、調査がクエストだし──別に倒す気もないしね」

 

 獣の王だかライオンだか何だか知らないけど、

 そういうのは私の役目じゃない。これが原因で魔族がどうの──っていうのなら、そのうち聖女エミリがきてなんとかするだろう。

 

 私は私で生きていく。

 それだけのこと──。

 

「とりあえず、準備しよっか。ルルー、コンビニ出すから、好きなの買っといでー」

「んー♪」

 

 ルルがチハたんからてててーと離れたところを見計らって穴の縁に、

 

  はい、ドーーーーーーーーン!!

 

「お、おわー!! な、なんじゃっぁああ?!」

 

 そして、初見のルーフデスが目をむいて驚いている。

 わはは!

 

 これが、ガソリンスタンドLv2~♪ コンビニであるぞー。

 

「ふふん。特別にアンタも好きなの買っていいよ。その代わり、ちゃんと道案内しなさいよね」

「お、おう。ありがたく食わせてもらうぞ」

 

 うんうん。

 働かざる者くべからず──その逆もしかりだよ。

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

「ひょぉぉぉぉおおお♪ なんじゃこりゃー!」

「んー。お弁当だね。あと、そっちはサラダとパスタ」

 

 目をキラキラさせているルーフデス。

 もちろん、自由にはさせない。コイツは前科持ちで、危険な奴だからね。

 

「こっちはなんじゃ! パ、パンか?!」

「んー。菓子パンだねー。あと、付ける奴。蜂蜜とかジャムとか」

 

 んほほーと歓声を上げるルーフデス。

 

 どれにしようかあれに仕様かといううちに、助手みたいになったルルがルーフデスが欲しがったものをポンポン籠に入れていく。

 もちろん、ルルはルルで買っているよー。

 

「あ、そうじゃ! あれも食いたいぞ!! あの──ほら、顔につけられた奴!」

「顔? あー、おあげか」

 

 カップなウドンの奴ね。

 

「いいよー。好きなの選びな」

 

 カップなうどんも数種類あるし。

 

「なんと、いいのか!! じゃ、じゃあ──この棚の端から端まで全部じゃー!」

「いや、金持ちの買い方かよ。あと、遠慮はしろ」

 

 まーコンビニの物だし別にいいけどさー。

 もちろん、金はあとでしっかりとるけどね。

 

「おうおう、すまんのぉ」

「そう思うならもうちょい控えなー。一応女の子でしょ?」

 

 何歳か知らんけど。

 見た目はルルと同年代……よりちょっと上かな?

 

 太るぞ。

 

「大丈夫じゃ。竜化すればすぐ元通りよ」

「ほーん、羨ましいことで」

 

 それ、世の女性が喉から手が出るほど欲しがる能力ですこと。

 

 ん? 私はどうかって……?

 私はもっと肉をつけろとよく言われる。……主にセクハラ系でな!!

 

「それより、そろそろ買っていくよー」

「うむ。であるの──あ、これも買っていいかのー?」

 

 肉まんに唐揚げ。

 

「も、好きにしなー」

 

 安いもんだし、はよしてくれ。

 

「すまんのー。お、そこなガキ、食わしてくれ」

 

 縛られてるのに、相変わらず偉そうなことで。

 

「あーん♪」

「あー……ん、んまぁ!!」

 

 さっそく買ったばかりに肉まんを一口。

 相変わらずの昭和チックな喜びに、思わずこっちも笑いそうになる。

 

「んんまいんまいんまい! こんなにうまいもん食ったのは初めてじゃあ!

 

 肉まんでこの喜びよう。今までどんな食生活だったんだか……。

 

 しかし、美味いもん食う時のコイツだけは割と平和だな。

 瓦を剥がして、ガソスタは爆破するけど。

 

「──あと、カップうどん食いたいぞ」

「それはあとにしてくださーい」

 

 調子にのんなよ。

 食ってばかりで先に進めんわ。

 

「あと、今買ってるのは、調査用の食料だからね!」

「そうなのか? 召喚できるなら、中で出せばよかろうに」

「そうもいかないの。ガソスタの能力は優秀だけど、広い場所が必要なのと──あと、ダンジョンとかの屋内では使えないって制約があんのよ」

 

 それで以前痛い目をみた。

 おもに屋根を破壊せし龍のせいで──。

 

「だから、調子にのって食べ過ぎたらだめだからね」

「わかっとるわかっとる、一個だけじゃ! 一個!」

「はいはい。その間に準備進めとくから。ルルは荷物まとめて」

「んー♪」

 

 よしよし。

 ルルはどっかの大食いドラゴンと違って素直だねー。

 

「……そういや、どうやって我は食えばいいんじゃ? 縛られたままなんじゃが?」

「口があるだろ、口がー」

 

 犬のように食うがいいわ!

 

「ぐぬぬー。お主、あとで覚えとけよ!」

「そのセリフそっくりそのまま返すよ」

 

 アタシャ、信用したわけじゃないからね!!

 

 なんか悪戦苦闘しながら、お湯の入ったカップうどんを前にうんうん唸るルーフデスをイートインスペースに放置して、こっちはチハたんの最終チェックだ。

 

 さて。

 

「車幅は2.3m──で、スロープがだいたい2.5mかー……マヂでギリギリだな」

 

 戦車なので壁をこすりながら言っても問題なんだけど、それでも余幅が20センチ。

 人が立つ隙間もない。

 その状態でこのくらい穴を降りるのか──……。

 

「まぁ、しゃーない。なんかあったら、その時はその時だ」

 

 そもチハたんじゃなければ降りることもできないしね。

 小さい戦車で良かったよ。

 

「あとはルーフデスをどうするかだけど──……」

「たんくでさんと?」

 

 うん。

 

 それしかないかなー。砲塔に括ったままだと邪魔だし。かと言って、イマイチ信用しきれないアイツを中に載せるのもなー。

 急に竜化して暴れ出したら、さすがにゼロ距離だと、こっちが死ぬ。

 

「あ、そうだ──!!」

 

 

 

 

 

 

 いいこと思いついたーっと。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。