異世界チハたん(九七式中戦車)無双〜聖女召喚されたけど捨てられました~   作:LA軍

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第49話「九七式自動砲」

 ──グルァァァァアアアアアアアアアン!

 

 

 ズシン、ズシン、ズシンッ!

 

 それは散々に聞いたあの咆哮であった。

 森で、首都前で、燃え盛る炎の中で!!

 

「また会ったね、ベヒモーーース!」

 

 ブォン!

 

 語るに及ばずとばかりに、燃え盛る身体をものともせずにベヒモスが突っ込んできた。

 

 さすがに以前見た奴より少し小ぶりだが、間違いなくベヒモス。……そして、ルーフデスの炎に絶えたように、百式火炎放射器の連続照射をものともせずに一気呵成にこっちまできたー!!

 

「あっぶ!」

 

 容赦ない突撃&食らいつき攻撃を危うくかわした私。

 しかして、ベヒモスはそんな一撃で満足するはずもなく、次々に連続攻撃を加えて来た。

 

 一発、

 二発、

 三発!

 

「ひ、ひぇぇえ!」

 

 それぞれ辛うじて躱すも、私は近接戦闘のプロではない。

 どれもこれも、たまたまだ。

 そのせいか、ついに危うい一撃をくらって、背中の火炎放射器のタンクを食い破られてしまった。

 

「きゃ!」

 

 めりめり、バキィ!!

 

「あ、あっぶねー」

 ギリギリのところで背負っていたそのパッキングを解いて食らうに任せる。

 すると、バキバキと奴の口に消えていく火炎放射器!

 

 だけど、それがどうした──!!

 燃料切れの火炎放射器なんていらない。

 

 そんなことより、

 

「アンタがノコニコと出て来たところを待ってたんだよ!」

 

 そして、こっちに気を取らているということは、間抜けにもその他が疎かになっているということ!

 

「ルルー!」

 

 パチンッ♪

 

 飛び退りざまに指を弾く私。

 その音にやつが振り仰いだ瞬間身を翻す。

 

 すると、奴の瞳に私が映る。

 

 だが、それも一瞬。

 横にそれた私の姿が奴の瞳から消えて、かわりにその背後──待機していたルルが映る。

 

 その姿は小柄にして、まっすぐ。

 そして、長い棒のようなものを構えていて──……。

 

「んっ!」

 

 ガシャキ!!

 ピタリと狙いをつけるルルを見てひと言。

 

「うてーーーーーーー!」

 

 

 ズドーーーン!

 

 

 刹那、もの凄い発砲音とともに、ダンジョンが揺れる!

 

 直度、ベヒモスも揺れる!!

 

 あの巨体が、まるで巨人に正面から殴られでもしたかのように!!

 顎を持ち上げ、震えて痺れる!

 

『グ、グルォォオ……?!』

「あは! 効いたでしょ! 早めの徹甲弾!!」

 

 九七式自動砲はチハたんの主砲には劣る。

 ましてやアンタの正面装甲が分厚いことは知ってるっつの。

 

 だけど、それ以外は案外疎かだってこともね!!

 

「そして、顎ぉ……そいつをみせたら終わりだよ」

 

 あとは、そのまま死ね!

 

 ビシィ! と中指を立てると、ベヒモスがグラリと揺れる。

 まさか真正面から対戦車ライフルを食らうとは予想もしていなかったのだろう。

 脳震盪だってあるに違いない。

 

 ……しかし、踏みとどまった!

 

 そのまま最後に目の光を宿すと、

 せめて貴様だけは──と言わんばかりに、食らいついて来た!

 

『ゴルァァアアアア!!』

 

 ──だが、甘い!!

 

「誰が一発だなんて言ったよ!」

 

 ルルが構えているのは日本軍の対戦車ライフル──九七式自動砲だよ!

 

 口径は驚異の20ミリにして、

 その装弾数は……7発!

 

 ──つまりー!!

 

「連射ぁぁぁあ!!」

 ルルー!

 トドメをさせぇぇぇえ!

「りょー!」

 

 ズードン!

 

  ズドン、

   ズドン、

    ズドン、ズドン、ズドーーーーン!!

 

 連射、連射、連射!!

 

 凄まじい連射音のあと、ルルがペイッと空になった弾倉を投げ捨てるのが見えた。 

 

 それが地面に落ちるとともに、

 

『ごぽぉ……』

 

 全身を穴だらけにされたベヒモスが呆気なく倒れ伏す。

 

 そして、

 おくれてズシーンと地面が揺れた。

 

「……ふーっ」

 

 あ、あっぶねー。

 さすがに食らいつかれたときはチビったわー。

 

「ま、まぁ。勝ったし? 一回戦えばこんなもんでしょ」

 

 らくしょー、らくしょー。

 

「や、やりおるのー……」

 

 関心したようなルーフデスの吐息。

 ま、実際のところ楽勝というほどでもなかったけどね。

 とはいえ、一連の戦闘はほとんど一瞬だ。

 

 多分、3分もかかってない。

 だけど、その短時間でこの周囲にいた魔物はほぼ一掃。

 

 まさに鮮やかなる勝利だ。

 

「はんっ。舐めて貰っちゃ困るよー」

 

 ベヒモスならどうとでもなると豪語したんだし、有言実行だよ。

 

「ほんとそれ。お主ら、怖いわ」

「ふふーん」

 

 逃げようとしたら、アンタもコイツでズドンだぜー。

 

「こっわー」

「ま、これで、調査は終わりかな? ベヒモスはここにいた──今後、要監視対象です、って感じかなー」

 

 手柄としては弱いけど、

 討伐はクエストじゃないしね、一体倒しただけでも褒めて貰わなくちゃ。

 

「いやいや、ナガセよ。……どうも、そう甘くはないみたいじゃぞー」

「へ? でも、ベヒモスは──……」

 

 

  ギガァッァアアアアアアアアアアアア……!

 

「ッ!」

 

 ビリビリビリ……!

 

 な、何この声?

 身体が……本能が震えている。

 

「ほっ。我も伝承でしか聞いたことがないが、本当におったようじゃの」

 

「は? 伝承でしか聞いたことがないって……」

 

 っ!

 ま、まさか!

 

『ゴルルルルルルル……』

 

 ずしん、ずしん、ずしん。

 

「う、うっそ。あれってまさか──」

 

 ベヒモスを倒した向こう。

 ゴルドの大穴の底。

 

 ぽっかりと開いた洞の先には……かの王がいた。

 

 

 

「……獣の王」

 

 

※ ※ ※

 

 

『ギガァッァアアアアアアアア!』

 

 ビリビリビリッ!

 

 その咆哮はダンジョンを揺らし、

 空気を凍らせ、人を畏怖させるに十二分に強大で巨大であった。

 

 それはまさに獣の王。

 

 ルーフデス達、竜人族が伝承で語るほど(いにしえ)に存在し、世界を恐怖に叩き落したと言われる正真正銘の化け物だ。

 

 しかして、そいつはかつての勇者たちによって封印されたはず。

 

 ときより、自身の分身たる魔物を放ち、魂を集めて復活を目論むとされているが──これでは、まるで……。

 

「くっ! や、やはりか。こ、こやつ封印が解けかかっておるぞ!」

「ええー?!」

 

 な、なんでぇ??

 そんな大昔に封印したものが何で今更?!

 

「しるか!」

「それって大丈夫なの?!」

 

 ──ギガァァァアアアアア!!

 

 ベヒモスの亡骸を追うようにして、洞から飛び出そうとした巨大な化け物であるが、ある一定の場所からは動けないらしい。

 突然、まるで括りつけ垂れた番犬のように、身体が縫い留められたように身動きを止める。

 

 どうやら、そこから動けない様子だが……。

 しかし、その凶暴な風貌に暴力的な雰囲気よ!

 

 ベヒモスが可愛く見えるほどだ。

 

「大丈夫なわけなかろう! あと何年持つとかそう言う話ではない! これは、今すぐにでも解かれても、おかしくはない!!」

「は? はぁぁー?!」

 

 い、今すぐぅぅ?!

 

「この伝説級とかいうの化け物が?!」

「そうじゃ! たしかに、ベヒモスがここら一帯にだけこれほど出現するのはおかしいと思っておったが……くっ! こういうことか!」

 

 こういうことってなに?

 

 あれですか?

 封印が溶けかかって、かつての力が戻りつつある──みたいな?!

 

「つーか、顔こわぁあ!」

『ギガァァァアアアアアア!!』

 

 洞の奥で大暴れをしているのは、真っ青な炎を全身にまとった……三つ首の巨大なオオカミといった要望。

 

 しかし、オオカミのようなのは容貌なだけであって、イヌ科のような、どことなくある愛嬌など皆無──犬のような形をしているだけで、この世の嫌悪感を寄せ集めたような顔が三つだ。

 

 あえて近い物を選ぶなら、グロテスクな深海生物だろうか? ほら、あのホウライエソ的な? ぶっちゃけ、あっちの方がマシだけどね!!

 

 それが、それぞれタイプ違いのキモさで三つの首!

 

「んら あれれ?」

 三つ首の犬ってもしかして──……。

「あーん?! 何を冷静に分析しとるか! いいから逃げるぞ! これは我の里に緊急に報告せねばならぬ案件じゃぞ、いそげ!」

 

 急げたって……。

 

「もう今すぐにでも封印が溶けてもおかしくないんでしょ?」

「それはそうじゃが──あっ」

 

 うん。

 どうやらもう遅い。

 

 見れば、奴を封印しているのは二本の剣だ。

 そのうち一本は何某かに破壊されたのか、無残に折り割られており、もう一本も今にもへし曲がりそうだ。

 

 おそらく、二本でギリギリ封印していたそれが、一本になり耐えきれなくなったのであろう。

 

 その剣から伸びる不思議パワーの半透明の鎖のようなものがミチミチと音を立てているのだが、それもすでに限界……。

 

「つーか、一応確認だけど、あの聖剣を壊したの私じゃないよね?」

 

 さっき、撃ちまくったから心配でーす。

 

「アッホゥ! 物理攻撃で壊せるか! あれは勇者の剣じゃぞ! 選ばれし者しか抜けんとか、そういう──」

「あっそ! それだけ聞ければ安心!!」

 

 つまり──。

 

 

 

  バッキィィイイイイイイイン!!

 

 

 

「私のせいじゃないってことでしょ!」

 

 言うが早いか、ついに封印が切れる。

 限界を迎えた剣が折れ曲がり、地面から引き抜けると、もはやあの化け物を止めること相成らず!

 

 奴を縛っていた鎖も、バリンバリンと霧散していく。

 

 直後、あのバケモンが──巨大なあの化け物が、三つ首をもった犬にして、通称『獣の王』が猛然と駆け出した!!

 

 千年単位の怨念を抱えてついに!!

 ついにぃぃぃい!!

 

 

『ギガァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!』

 

 

 あはっ。

 上等じゃん。

 

 ……私とやろうってのかい???

 

 

「いいよ。かかってきな!!」

 

 相手にとって不足なし。

 

 ルル、

 そして、ルーフデス!

 

「対戦車戦闘よーーーーーーい」

 

 やるってんなら、相手になるよ!!

 

 私は笑う。

 ただただ笑う。

 

 

 

 だって、あれ──……ただのグロイ犬じゃん。

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