異世界チハたん(九七式中戦車)無双〜聖女召喚されたけど捨てられました~ 作:LA軍
ズドーン
ズドーン
ズドーン!
三八式榴散弾の三点バースト射撃は凶悪の一言に尽きる。
オーガ級の大型モンスターに対するストッパー効果は勿論のこと、面での制圧効果が半端ない。
なので、私はと言えば、ノコノコと焼け森から出て来たオーガの群れに存分に榴散弾をブチかましてやるだけだ。
あはっ。
──その威力と数よ!
「ナガセ! 背後に何匹か抜けたぞ!」
「見えてる!……だけでルルならなんとかするよ!」
「ほっ! 信頼しとるのー」
当然っしょ!
あの子は自慢の愛娘さー。
「あ゛~ん?!……なら、なーんで孤児院に預けたがるんじゃ? 気に入っとるならお主が引き取ればよかろう」
「えー。それ聞くー?」
聞いちゃうのー?
アラサー女子の子育て事情に、あえて首突っ込んじゃうー?
「……わ~かるっしょ? 私は見ての通り、根無し草で独身だよ。子育てなんて、無理無理ぃ」
「いや、お主が育てんでも、ルルは勝手に育つと思うぞ?……乳飲み子でもあるまいし」
むー。
そう言われるとそうなんだけどさぁ……。
「責任がさー……持てなんだよ、っとぉ!!」
──ズドーン!!
だいぶ分散してきたので、今度は榴弾に切り替えて爆風と破片で吹っ飛ばす。
榴散弾だけで、すでに300体は倒しただろう。
しかし、そのおかげで連中も固まっていると不利だとようやく気付いたのか、散兵となりこちらを包囲する構えを見せて来た。
また、そのうちの何体かが、榴散弾の雨を抜けて後方のルルを目指す。
どうやら、ようやく狙撃しているのが、最後尾のあの子だと気付いたらしい。
「かっ! 責任もなにも、孤児院に預ける方が無責任じゃろう、がッ……!」
「う」
そ、それは……そう。
白兵を仕掛けて来たオーガを切り伏せながら
「だ、だけど、あの子の将来を考えたら、私なんかといるより、絶対まともな大人に育ててもらった方がいいって!」
「まともではない自覚はあるんじゃな」
うっせーわ。
「そう言う意味じゃないよ、っとぉぉ! こっちにも来たよ!」
ちぃ……!
鬱陶しいなー。
ばらけられると、次弾発射までの間隔を突かれちゃうじゃん!
「フンッ! 近づかせはせんよ──って、おわぁぁあ! ま、前からも乗り込んできよるぞ! そっちは手が回らーん!」
「くっ! 見えてるけど、この距離は死角すぎるかも!」
一式砲戦車は砲塔が固定式の自走砲だ。
おまけに防盾は半開放式で正面と側面にしかなく、跨乗するには向いていない構造。
つまり、位置的に前は死角になりやすいのだ。
そこを数体のオーガがつく。
榴弾の射撃に絶えて、猛然と肉薄攻撃だ!
どうやら、背後や横合いからせめてもルーフデスの剣に追い払われると気づいただろう。
もはや、玉砕覚悟で真正面から突っ込んできたー!
「ちぃぃ──主砲装填は……間に合わないよね!」
ガコッ!
砲弾装填の僅かなタイムラグ。
それすら間に合わないと判断した私は、コントローラーを放り捨て、
代わりに、防盾の正面に取り付けられた拳銃を突き出すためのピストルポート用の装甲板を跳ね上げると、そこから九四式拳銃を突き出して、連射!
パンパンパンパンパンパンッ! と軽快な射撃音とともに、なんとか一体をなぎ倒し、そのまま
──しかし、弾切れ!!
撃ち尽くした九四式拳銃のスライドが下がりホールドオープンの状態に。
「くそっ! 百式、百式、百式!!」
拳銃を投げ捨て、
慌てて、ガチャガチャと、足元に置いておいた予備火器の百式短機関銃を取り出すが、果たして間に合うかー……?!
「ぬー! ナ、ナガセぇ!
「あーん?!」
何の話かと振り仰げば、
背後の敵を切り捨てたルーフデスが正面の敵を排除しようと、防盾の上に据えた
「……
──あとは撃てぇ!
「心得た!!」
ガキンッ!
ダンダンダダダダダダダダダダダッ!
「ぬわー!」
あー!
「下ッ手くそー!」
しかし、正面の敵を薙ぎ払うどころか、構えの甘いルーフデスが射撃の衝撃に振り回されている。
おかげでせっかくの近接火器もむなしく空を薙ぎ払うのみ!
「なにやってんの、アンター!」
「あばばばばば?!──止まら―ん!」
もー!
こいつ、頑丈で怪力なくせに軽いんだよなー。
物理法則どーなってんだか。
「あーもう! 邪魔するなら剣を振ってなさいよ!」
「ぬー! しゃあないじゃろ!」
あっという間に一弾倉を打ち尽くしてしまったルーフデス。
しかし、弾倉交換をしている暇も、教える暇もない。
ただ、幸いなことに今の射撃に驚いた正面のオーガが数体、首をすくめていた。
そして、そんな隙を見逃す私ではなーーーーい!
「──しゃらくせぇぇえ!」
ガチャキッ!
弾倉を叩き込んだ、百式短機関銃の銃口をピストルポートに突っ込んで今度こそ前方を薙ぎ払う!
パッパパパパパッパパパパッパキーン!
「しゃおらぁぁ!」
一弾倉撃ち尽くすと、ドサドサッ! とオーガが倒れていく。
だがそれを見届ける間もなく、そのまま車体で体当たり!
グシャァッァア!!
あはっ!
銃撃で死ななくてもこれなら堪え切れまーい。
「おーし、邪魔者は排除したよ!」
「よ、よし! 残りは逃げていきおるぞ!──その背中に数発ほど榴弾を叩き込んでやれ!」
ろんのもちよ!!
さすがに最後の特攻まで蹴散らされたのを見て、圧倒的に不利を察したのかオーガの群れが逃げ散っていく。
なにより、後方からパカスカと射撃するルルによって、大型種がたちどころに撃沈しているのが効いているらしい。
「はっはー! なーに逃げてんだ! デケぇのは図体だけかー!」
「言ったれ言ったれー」
おーよ!
主砲装填、弾種∶榴弾!
信管は着発ぅッ!
「ってぇぇぇえええ!」
ドーン!!
放物線を描いて飛んでいく砲弾が、逃げるオーガの集団に飛び込み爆裂!
十数匹をまとめて吹っ飛ばす!
それに驚いて足を止めたところを、さらにトドメの一撃!!
「吹っ飛べぇぇぇ!」
ファイヤー!!
「いいぞ撃てぇい! ぶっ飛ばせぇぇえいッ!」
ガーハハハ! と、もはやゼロ距離榴散弾でないことに気をよくしたルーフデスが防盾の上に載って射撃を指示──……って、あぶないから!
──ズドーン!
「ぬがー! あっづぁ!!」
「当たり前でしょ! アンタ、ばかぁ?!」
75mm砲をぶっ放してるのだ。当然発砲の吹き戻しは強烈。
そのための防盾だっつーの!
「くっそー。顔が真っ黒じゃー」
「自業自得──次は顔を引っ込めてなよ!」
それよりも、トドメのトドメ!
ダメ押しじゃぁぁ!
「次弾装填、目標、弾種、信管ともにおなーじ!!」
ズドーン!
ズドーン!
ズドーン!!
そして、それからはほぼ掃討戦となった。
逃げるオーガの背中に、75mmの榴弾を何発もつるべ打ち。容赦なくバラバラに吹っ飛ばしてやったぜ。
さすがに砲撃だけで全滅させることはできなかったが、あきらかに数を減らしたオーガどもは
おそらく、残りは30体いるか、いないかだろう。
その中でも、大型種は狙いやすかったこともあり全滅だ。
さらには、後方に抜けた数体も、重機関銃を乱射するルルによって見事に打ち取られていた。
「いーぞ、ルルー!」
「(いえー♪)」
重機関銃で薙ぎ払ったオーガに、トドメの九七式自動砲を至近距離で叩き込み、一体残らず打ち滅ぼすと満面の笑みを浮かべているルル。
その近くに後退して車体を寄せていく。
「にー! 10ぴきー♪」
「お、おう。え? マヂ?」
す、すげーな、おい……。
どうやらこの子ってば、単独で10匹も打ち倒したらしい。
そのことを誇る様に、「打ち取ったり~!」とでも言わんばかりに、ジャイアントオーガの死骸の上で九七式自動砲を構えて胸を張っていらっしゃる。
……いや、この子強すぎん?!
魔族がすごいの?!
「やっぱ、どうみてもお主の娘じゃよ」
「娘ではなーい!」
私、そんな歳ちゃうもん!!
いや、まぁ、愛娘っちゃあそうなんだけどさー……。
今更ながら魔族について何も知らないことを認識しつつ、それでも無邪気な顔のルルに悪意を抱けな私がいる。
「うー……。育て方間違ったかなー」
「どう見ても勝手に育っとるがのー。まぁ、お主の影響ありありじゃがな」
わ、わかってるよー。
「ま、それはさておき、今は仕事を完遂しちゃいますか」
「うむ、そうしようか。ルル──乗るがいい」
「あーい」
弾切れの自動砲を一丁投げ捨て、
かわりに九九式軽機関銃と九七式自動ほうの二丁拳銃スタイルとピョンと軽々と移譲する我が娘よー。
今更だけど、その自動砲って、生身の人間が構えたまま打てるような代物じゃないからね?
ま、ほんと今更だけど。
「……さて、ナガセよ。向こうもそろそろケリがつくようじゃぞ」
「あ、ほんとだね! ちょっと損害出てるっぽいから、恩を売るためにも援護しとこうか」
「うむ。側面から付けば完全勝利じゃ──いくがいい」
あいあい。
「そんじゃ。全員掴まってなよー!」
「おうよ」「あーい♪」
いっくぞー!
「戦車、前へー!」
「前へ!」
「まえへー!」
わーははははははは!
チハたんがいくぞー!!