異世界チハたん(九七式中戦車)無双〜聖女召喚されたけど捨てられました~ 作:LA軍
『ゴルルルル……!』
「ふんっ」
──ズブシュ!
山岳の中途で死にかけていたオーガにとどめを刺したルーフデス。
これで、ここに来る前に何体倒しただろうか?
「10ひきくらいー?」
「うん、それくらいかな──……しかし、参ったね。さすがに疲れて来たわー」
ふぅ。
汗を拭うと、ツナギが黒く汚れる。
首都前での戦闘を終えてからので追撃なので、全身が
オマケにこの山道……。
道らしい道もないので、無茶苦茶疲れるぅー。
「あーもー。チハたんに乗りたーい」
「無茶を言うな。オーガの踏みあとに、岩石だらけじゃぞ? いくらチハたんでも腹がひっかかるわ」
それはそう。
戦車が不整地走行が得意とはいえ、限度がある。
とくにこういう山道は超苦手なのだ。
なので、おかげでこうして山岳地帯を歩く羽目になっているわけ──。
「はぁ~……。乗り掛かった舟だし、街からの援軍が無理なのはわかるけどさー。これは思った以上にきっついわー」
冒険者の皆さんに同行してもらう案もあったけど、
皆、防衛戦闘で疲労困憊だったからなー。
「じゃからこそ、今までみつからなかったのだろうのー」
まーねー。
いくら冒険者でも、こんな険しい地形にわざわざ来ようとは思わないだろうしね。
今回はこうして、逃げたオーガを追って、
死体と負傷者の道しるべを辿ってようやく見つけた次第だ。
もっとも、だからこそ急遽追撃したというのもある。
時間の置けば、死体やらの痕跡は消えてしまうし、しゃーなしの強行軍だ。
「そも、
「アタシゃ〜、アンタたちみたいに若くないのー」
アラサー舐めんなよー。
「我はお前より年上じゃ」
「ちっ……ロリBBAがー」
「なんか言ったかー」
なんもー。
しっかし、こんな本格的な登山をするつもりだったら、もうちょっとマシな格好してきたんだけどなー。
トレッキングシューズとか登山ポールとかー。
「おんぶするー?」
「……気持ちだけありがと」
ルルならナガセも軽々担いでくれそうだけど、さすがにそれはちょっと見栄えがね……。
ただでさえルルちゃん重武装だもん。
背中に擲弾筒、腰には14年式拳銃。そして両手に軽機関銃といつもの自動砲だ。
それだけでも重武装なのに、さらには肩掛けバッグにはたくさんの手りゅう弾とか擲弾筒の弾とか、行動食などなど。
私?
私はほら──……いつもの軍刀に四四式騎兵銃と九四式拳銃だけだよ!
悪いか、畜生ー。
「何をむくれとるが知らんが──……ほれ、もうちょいじゃ」
「え? マヂ?!」
つーか、別にむくれてはいない!
「ほーれ、見るがいい、あそこ見張りがおるじゃろ?──ボロボロの恰好じゃし、逃げて来た下っ端じゃろうの」
「あー、ほんとうだ」
首から下げている双眼鏡で確認すれば、どうやらこの山岳地帯の目立ちにくい位置に洞窟があるらしい。
なんか人骨やらが散らばっているそこには、二体のオーガが力なく座り込んでいる。
一応、見張りのつもりなんだろうけど、見張りになっていな~い。
「……どうする? 地形的にもうちょい近づけるけど、さすがに接近しすぎると気づかれるよね?」
「うむ。オーガは鼻が効くゆえな」
だよねー。
うーん。こういう時、魔法とかあったら便利なんだろうけど──我がファミリーは脳筋しかいないからなー。
「誰が脳筋か。お主といっしょにするな」
言ってない、言ってないよー。
口には出してないよー。
「それよりアンタさ。なんか、いいのないの?」
「雑な聞き方をするでないわ。……しかし、そうじゃのー」
うーんと、考えこむルーフデスも、そう簡単に妙案は浮かばなさそう。
ちなみに、ロリBBAのこいつは、私よりも軽武装。
いつもの二本の剣に
オヤツなんかが詰まったリュックと、ギルドで強奪──……もとい貰った魔法の鞄を別にさげているだけ。
……そらぁ、息一つ切れませんて。
「専門の冒険者がおれば、匂いを消して暗殺するか、遠距離から矢で狙撃するなどの手があるのー」
「うん。私たちどれもないけどね」
……つーか、暗殺ってなんだよ。
私らは忍者じゃねーよ。
「んー。矢の代わりに銃はあるけど?」
「やめとけ、銃はうるさい過ぎるわ」
それな。
「サプレッサーとかあればねー」
「さぷれっさー?」
ん?
「知らない?……こう、特殊部隊みたいにプシュンプシュン! ってやつ」
「知らんわ。なにそれ?! こわっ!」
怖くないって。
あれば、気分はスパイ映画だぜー!
「ないものをねだっても仕方あるまい。……うーむ、遠距離から音を立てずに仕留める方法、仕留める方法──」
「いし、なげたらー?」
うん?
「いし?」
「いしとな?」
「いしー」
いし……。
あ、石か。
「…………なるほど。ありだね」
「は? いや、ありってお前──」
まぁまぁ、
「今、思いついたけど、荷物の中にいいサイズの石──っていうか、重量物あるじゃん」
「重量物じゃと?」
うん、
でっかくて、程よいサイズ。
「例えばこれ!」
ゴソゴソッ。
「じゃーん!」
「ぬ。……
「でしょー?」
そういって取り出したりますわ、ルルちゃんが肩掛けバッグに入れていた砲弾。
「八九式重擲弾筒用の榴弾~♪」
パッパラ~♪
「……それ投げたら爆発するんじゃないのか? 小型とはいえ砲弾じゃろ?」
「しない、しない。安全栓を抜かない限り
ま、やり過ぎたら爆発するかもだけど。
「しかも、これ。重さ793gだってー」
「ほう、いいサイズじゃな。……つまり、ほぼ一キロの鉄か。えぐいこと考えるのーお主」
えへへ。
「一個も褒めとらんわ。じゃが、いけるの」
「でっしょ~♪」
ナイスアイデア!
投石に
「あ、もちろん、弾は二発だよ、二匹いるし、同時に撃破しないと意味ないしー」
「当然よ」
不敵に笑ったルーフデスは差し出されたそれを受け取り、軽くお手玉して見せる。
「ふふんっ。たしかに丁度いいのー。……この距離なら十分届くじゃろうし──ルルもいけるな?」
「もちー」
うんうん。
この距離っていってもまー、50mくらいあるんですけどね。
「なーに、我の腕力を甘くみるなよー」
「ルルもー」
知ってる知ってる。
甘く見てない見てない。
「では、行くぞ!」
「ルルもー」
しくよろー。
私がおどけて敬礼して見せると、なにやら二人とも独特の投入フォームを見せると、「むぐぐー」とか「んぎぎー」と運って溜めを作る。
すると、なんか知らんが──妙なオーラが……。
「……あー、二人とも?」
「しっ! 黙っとれ! 今、集中しとる!」
「ん!!」
あ、はい。
……いや、はい。なんですけど──アンタらの腕、やばくない?!
なんか筋肉がビキビキ言ってるし、血管がミチミチと浮き上がって、ボディビル選手の腕みたいになってるんだけど──。
「うりゃー!」
「てりゃー」
──ゴゥ!!
「きゃ?!」
な、なになに?!
一瞬、真空が生まれなかった?!
そう思ったのも束の間、バサササッ! と山の木々と下生えが揺さぶられたかと思うと、
およそ、人間が出すとは思えない、キーーーーンとかいう風切り音を響かせて、なんか黒い弾がものすごい勢いで飛んでいき──……『ごるぁ?』
ゴッパァァァアアアアアアン……!
オーガが異音に振り返ったが最後。
その剛速球が同時着弾!
そして、同時に──スイカが破裂したかのように、オーガの頭部が一発でぶっ飛んでいったー。いったー。……いったー。
「……って、こッわぁっぁああああ!」
え?
な、なに?!
今のが投擲?!
「こ、こ、こ、こッわっぁぁあああ!」
この子ら、こわぁっぁあああ!
オーガぁ?
そんなもん、もちろん即死だよー!!
「ぬーはははは! みーたか!」
「みたかー」
二人してハイタッチ~♪
「いやいや、見た見た!」
めっちゃ見てたっつーの!
「見たうえで言ってんの!!」
アンタら、
こわぁぁぁあああ!!
「……もう、武器とかいらないんじゃない?」
素手の方が絶対強いでしょ。
「いやいや、当たったの偶々じゃしのー」
「ルルもー。なげるのはじめてー」
「あーなるほど、そりゃ、まぐれだわ」
……って、うぉーい!
初めてで同時に着弾させてるとか……。
「つーか、そーいうのは、初めに言おうね?」
外れる可能性のほうが高いじゃん。
ま、いっか。