異世界チハたん(九七式中戦車)無双〜聖女召喚されたけど捨てられました~ 作:LA軍
そうして、見張りを駆逐したあと、私たちは素早く洞穴に近づいていく。
思った通り、オーガの巣穴らしい。
生臭い匂いとともに、内部から生き物の気配が濃厚に漂っていた。
「ふーむ。血の跡やら、この辺の骨の数から察するに、確かにオーガの巣穴で間違いなさそうじゃ」
「他に隠れる場所もないしねー」
負傷した個体も多かったのだろう。
血痕が奥まで続いているので、中にいるのは間違いない。
オマケに入口付近には、食べカスっぽい人骨やら冒険者の物らしき装備が散らばっている。
「じゃが、こんな巣穴では多数は暮らせまい? 中は広いかも知れんが、せいぜい、10数匹が隠れ住む程度じゃろうの」
「それはそうだね」
とはいえ、今は中に百以上はいる気配がする。
もっとも、正確に確かめる
「ところで、どうする? 中入ってちまちま倒すのは私的にはちょっと……」
「む? そうか?」
いや。
「そうか?」……じゃないからね?
私は、か弱い女子ですからね?
チハたんがないとただの美人ガソスタ店員だからね?
「いや、美人か?」
「殴るわよ」
ごんっ!
「殴ってから言うなし!──つーか、今刀で殴ったじゃろ!!」
「峰打ちだって。アンタも人の心読むんじゃないよ!」
美人とは口にはしていない!
心ではそう思ってるけどね!
「その自信どこからくるんじゃ?」
「だーから~」
「なーがーせー!」
あ、しまった。
珍しくルルちゃんが呆れた声だ。
まぁ、静かに接近しときながら、ここでギャーギャー言ってちゃ世話ないわな。
「とりあえず、中の偵察するー?」
「むー。お勧めはせんのー。奴等の巣穴なのは明白じゃし、鳴子トラップくらいあるんじゃないかのー?」
むー。
それもそっか。
「そして、お主──絶対、我に行けっていうつもりじゃろ?」
「え? だって、他にいないじゃん?」
私は雑魚だし、
ルルは女の子だし。
「我も女の子なんじゃがのー!」
「BBAじゃんー」
可愛いけど、年上じゃん。
「むきー! 誰がBBAじゃ! あと、今は手を組んでおるが、我はお主の配下でも、娘でもないわーい!」
「そりゃ知ってるけどー……うーん? じゃー私がいく?」
オーガの巣穴に、若い身空でのこのこと?
「まぁ、おススメはせんのー」
「だよねー。一人で行ったら、ひん剥かれて、あーれーな展開だよ」
R18ですよ、R18。
「うむ。たぶん、別の意味で、ひん剥かれてあーれーじゃと思うぞ、そのへんの骨と同じようにな」
あー……。
皮向かれて、塩られて、炙られて。
そんで食われるのね、物理的に。
……それはそれでR18だな。
「なら……あ! そうだ!」
「む? なにか良い手があるのか?」
あるある。
最近使ってなかったから忘れてたけど……。
「私、『鑑定』できたわ」
「んな?! か、鑑定とな?!」
うん。
正式な名前下んけど、じっと見たらモンスターもアイテムも判別できるんだよねー。
ガルダと戦った時はそれなりの距離でも鑑定できたし、ひょっとすると──。
じーっ
巣穴の暗闇に目を向けると、
……ブンッ!!
◇ ◇ ◇
オーガナイトシーカー
脅威度(A)
・大陸全域に生息するオーガの変異種。
一般的なオーガ―よりも小型で力も弱いが、その分、夜目が効き、夜間行動を得意とする。
実際に、オーガに襲われて一番被害を大きくするのはこの種である。
遭遇率は稀だが、オーガの群れには必ず一体はいると言われている。
◇ ◇ ◇
「お、成功したー」
ってことは、他にも──……お、おぉ!!
ブンッッ、
ブブンッ……!!
◇ ◇ ◇
ジャイアントオーガ
脅威度(AA)
・大陸全域に生息するオーガの変異種。
一般的なオーガ―よりも大型で力も強い。ただし、数は少なく、目立つため、あまり脅威度は高くないとされる。
ただし、群れを形成した場合は、軍隊でも太刀打ちできない脅威となるため、発見次第の駆除が推奨される。
◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
オーガ
脅威度(B)
・大陸全域に生息するオーガの一般個体。
ゴブリンの上位種族とされるが、近縁種ではないともいわれる。
単純な脅威度ではオーク以上だが、気性が荒いため、群れを形成することは稀である。
仮に群れであっても、10人以下の家族単位である。
◇ ◇ ◇
「おぉー! なんか一杯でてきたー」
モンスターの種類こそ、これだけではあるが、現れたウィンドウの数は無数だ。
ざっと数えただけでも、おそらく百はあるんじゃないだろうか?
「む? 何かわかったのか?」
「うん。やっぱり、逃げてきた連中がここに集まってるみたい。ナイトシーカーだっけ? 夜行性の奴もいるね。それらを全部あわせて100匹はくだらない感じー」
しかも目視できる範囲だから、多分、奥とか死角にはもっといるだろう。
やはり、ゴルドの大穴のように、ここが発生源らしい。
「ほう……ナイトシーカーがおるか。ならば、奴等の拠点で間違いなかろう。あの種は日中はあまり表に出てこないからの」
夜間斥候って感じだし、それはそうだろう。
実際、今日の戦いでも見かけんかった気がする。
「つーか、多いなー」
「うむ。内部が相応に広いのはさておくとしても、どうやって増えておるのやら」
「それな」
ゴルドの大穴は、『獣の王』が召喚といった方法で魔物を少しずつ増やしていた。
「ということは今回もそう言うのがいる可能性が高いのかな?」
「うーむ。オーガを召喚する魔物とな?……聞いたこともないのー」
ありゃ?
違うのかな?
「そも、召喚なんぞできる魔物は早々おらんぞ。この前の『ケルベロス』が異常なのじゃよ」
「へー」
まぁ、王を名乗るくらいだし、相当に特殊な個体なのだろう。
そも、召喚で魔物がドンドン増やせたら、この星はとっくに魔物で埋もれてるぜー。
──例、ド○○○んの、バイバ●ン〜♪
「ってことは……?」
「それを探りにきたんじゃろ?」
それはそう。
「でも、中には入れないしなー」
軽く見積もって100体のオーガだ。
しかも、チハたんなしで、地の利は向こうにあり……無理ゲーだね。
「やっぱアンタが行くしかなくね? 固いし、オーガくらい余裕っしょ」
「硬くても痛いと言っとろうが! あと、丸飲みされたらさすがに死ぬわーい!」
あー。
コイツちっこいからなー。ジャイアントオーガ当たりなら一口だわな。
「むー。ならどーする? 皆でここからチマチマ撃ちまくるとか?」
「それもいいが、弾だって、無限じゃなかろう? チハたんがないと補給もおぼつかんのではなかったか?」
それはそう。
私はとことん、チハたんとガソスタがなければ何もできない女なのさー……。
「そも、入口がここだけとは限らんしね~」
「そこは大丈夫じゃ。匂いが籠っておるし、空気が流れておらん。ほぼここくらいしか出入口はなかろうて」
ほう。
それはいい情報かも。
まぁ、どのみち中に入るのは無理だけど。
「んー。……ルルはなんかいいアイデアある?」
「ひー」
ひー?
……あ、火か!!
「なーるほどー」
「それはいいアイデアじゃな!」
うんうん。
せっかく連中が、洞窟にひしめき合っているのだ。火責めは有効──…………。
「「いや、エグイな!!」」
もう、ママびっくりですよ!
「ルルちゃんたら、いつの間にそんな残酷に育って……」
「いや、絶対お前の影響じゃからな?」
にひーっと満面の笑みを浮かべるルルの頭をなでりこなでりこしつつ、
よよよと泣き真似の私をするどく突っ込む、クソドラゴンはさておき、
「ま、火のアイデアは悪くないんじゃない?」
「まーのー……しかし、どうやって火をつけるんじゃ? 我にやえというのは却下じゃぞ」
わぁーってるよ。
役立たずドラゴンに期待してねーよ。
「ガソスタ召喚して、流し込むとかどうかな?」
「無理じゃろ? お主自身が言っておったではないか。ダンジョンとか、建物内部では召喚できぬし、よしんば外で展開が可能であったとしても、それなりに敷地がいると──」
あー。
そうだった……。
「洞窟は──ダンジョン判定だよね?」
「そうでなくとも、狭いしのー」
ちらり。
まぁ、狭いとは言ってもジャイアントオーガが中にいるくらいにはそこそこの規模だ。
入口は2m程度の高さで、幅3mほど。
ジャイアントオーガでもかがめば入れるのだろう。そして、内部はそれ以上に狭かったり広かったり──……一応、下に傾斜しているし、その先は相当に広いと思われるが、
そこまで行けば、ガソスタを召喚した時点でオーガにバレバレ〜。
一方、外の敷地もそこまで広くはない。
なにせ、今の今まで誰にも発見されなかった洞穴だしねー。
「じゃーむりー?」
「んー。アイデアはいいよ!」
しゅんとしちゃったルルに、グー! と、親指を向けるとたちまち笑顔ー。
ん~、可愛い!
「いやいや、可愛いって、お主。……提案は一個も可愛くなかったんじゃがのー」
「そこ。うっさいよー」
ウチの子がナイスアイデアだしたんだし、そこは褒めるの!
私は褒めて伸ばす方針なの!
「わかったわかった──で、アイデアはいいというのは?」
「ふふーん。ようするに、火とかなんとかで一網打尽にすればいいってことだよ──中に入らず倒すなら、色々やり方があるってものさー」
ニヒッ。
私は笑う。
だって、こうみえて私はガソスタ店員! そして、危険物取扱者の資格持ちであるぞー!!