異世界チハたん(九七式中戦車)無双〜聖女召喚されたけど捨てられました~   作:LA軍

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第69話「人の心」

 そうして、見張りを駆逐したあと、私たちは素早く洞穴に近づいていく。

 思った通り、オーガの巣穴らしい。

 

 生臭い匂いとともに、内部から生き物の気配が濃厚に漂っていた。

 

「ふーむ。血の跡やら、この辺の骨の数から察するに、確かにオーガの巣穴で間違いなさそうじゃ」

「他に隠れる場所もないしねー」

 

 負傷した個体も多かったのだろう。

 血痕が奥まで続いているので、中にいるのは間違いない。

 

 オマケに入口付近には、食べカスっぽい人骨やら冒険者の物らしき装備が散らばっている。

 

「じゃが、こんな巣穴では多数は暮らせまい? 中は広いかも知れんが、せいぜい、10数匹が隠れ住む程度じゃろうの」

「それはそうだね」

 

 とはいえ、今は中に百以上はいる気配がする。

 もっとも、正確に確かめる(すべ)はないんだけど──。

 

「ところで、どうする? 中入ってちまちま倒すのは私的にはちょっと……」

「む? そうか?」

 

 いや。

 「そうか?」……じゃないからね?

 

 私は、か弱い女子ですからね?

 チハたんがないとただの美人ガソスタ店員だからね?

 

「いや、美人か?」

「殴るわよ」

 

 ごんっ!

 

「殴ってから言うなし!──つーか、今刀で殴ったじゃろ!!」

「峰打ちだって。アンタも人の心読むんじゃないよ!」

 

 美人とは口にはしていない!

 心ではそう思ってるけどね!

 

「その自信どこからくるんじゃ?」

「だーから~」

 

「なーがーせー!」

 

 あ、しまった。

 珍しくルルちゃんが呆れた声だ。

 

 まぁ、静かに接近しときながら、ここでギャーギャー言ってちゃ世話ないわな。

 

「とりあえず、中の偵察するー?」

「むー。お勧めはせんのー。奴等の巣穴なのは明白じゃし、鳴子トラップくらいあるんじゃないかのー?」

 

 むー。

 それもそっか。

 

「そして、お主──絶対、我に行けっていうつもりじゃろ?」

「え? だって、他にいないじゃん?」

 

 私は雑魚だし、

 ルルは女の子だし。

 

「我も女の子なんじゃがのー!」

「BBAじゃんー」

 

 可愛いけど、年上じゃん。

 

「むきー! 誰がBBAじゃ! あと、今は手を組んでおるが、我はお主の配下でも、娘でもないわーい!」

「そりゃ知ってるけどー……うーん? じゃー私がいく?」

 

 オーガの巣穴に、若い身空でのこのこと?

 

「まぁ、おススメはせんのー」

「だよねー。一人で行ったら、ひん剥かれて、あーれーな展開だよ」

 

 R18ですよ、R18。

 

「うむ。たぶん、別の意味で、ひん剥かれてあーれーじゃと思うぞ、そのへんの骨と同じようにな」

 

 あー……。

 

 皮向かれて、塩られて、炙られて。

 そんで食われるのね、物理的に。

 

 ……それはそれでR18だな。

 

「なら……あ! そうだ!」

「む? なにか良い手があるのか?」

 

 あるある。

 最近使ってなかったから忘れてたけど……。

 

「私、『鑑定』できたわ」

「んな?! か、鑑定とな?!」

 

 うん。

 

 正式な名前下んけど、じっと見たらモンスターもアイテムも判別できるんだよねー。

 ガルダと戦った時はそれなりの距離でも鑑定できたし、ひょっとすると──。

 

 

 

  じーっ

 

 

 

 巣穴の暗闇に目を向けると、

 

 

 ……ブンッ!!

 

◇ ◇ ◇

 オーガナイトシーカー

 脅威度(A)

 

 ・大陸全域に生息するオーガの変異種。

  一般的なオーガ―よりも小型で力も弱いが、その分、夜目が効き、夜間行動を得意とする。

  実際に、オーガに襲われて一番被害を大きくするのはこの種である。

 

  遭遇率は稀だが、オーガの群れには必ず一体はいると言われている。

◇ ◇ ◇

 

 

 

 

「お、成功したー」

 

 ってことは、他にも──……お、おぉ!!

 

 

  ブンッッ、

   ブブンッ……!!

 

 

 

◇ ◇ ◇

 ジャイアントオーガ

 

 脅威度(AA)

 

 ・大陸全域に生息するオーガの変異種。

  一般的なオーガ―よりも大型で力も強い。ただし、数は少なく、目立つため、あまり脅威度は高くないとされる。

  ただし、群れを形成した場合は、軍隊でも太刀打ちできない脅威となるため、発見次第の駆除が推奨される。

◇ ◇ ◇

 

◇ ◇ ◇

 オーガ

 脅威度(B)

 

 ・大陸全域に生息するオーガの一般個体。

  ゴブリンの上位種族とされるが、近縁種ではないともいわれる。

  単純な脅威度ではオーク以上だが、気性が荒いため、群れを形成することは稀である。

  仮に群れであっても、10人以下の家族単位である。

◇ ◇ ◇

 

 

 

「おぉー! なんか一杯でてきたー」

 

 モンスターの種類こそ、これだけではあるが、現れたウィンドウの数は無数だ。

 ざっと数えただけでも、おそらく百はあるんじゃないだろうか?

 

「む? 何かわかったのか?」

「うん。やっぱり、逃げてきた連中がここに集まってるみたい。ナイトシーカーだっけ? 夜行性の奴もいるね。それらを全部あわせて100匹はくだらない感じー」

 

 しかも目視できる範囲だから、多分、奥とか死角にはもっといるだろう。

 やはり、ゴルドの大穴のように、ここが発生源らしい。

 

「ほう……ナイトシーカーがおるか。ならば、奴等の拠点で間違いなかろう。あの種は日中はあまり表に出てこないからの」

 

 夜間斥候って感じだし、それはそうだろう。

 実際、今日の戦いでも見かけんかった気がする。

 

「つーか、多いなー」

「うむ。内部が相応に広いのはさておくとしても、どうやって増えておるのやら」

「それな」

 

 ゴルドの大穴は、『獣の王』が召喚といった方法で魔物を少しずつ増やしていた。

 

「ということは今回もそう言うのがいる可能性が高いのかな?」

「うーむ。オーガを召喚する魔物とな?……聞いたこともないのー」

 

 ありゃ?

 違うのかな?

 

「そも、召喚なんぞできる魔物は早々おらんぞ。この前の『ケルベロス』が異常なのじゃよ」

「へー」

 

 まぁ、王を名乗るくらいだし、相当に特殊な個体なのだろう。

 そも、召喚で魔物がドンドン増やせたら、この星はとっくに魔物で埋もれてるぜー。

 

 ──例、ド○○○んの、バイバ●ン〜♪

 

「ってことは……?」

「それを探りにきたんじゃろ?」

 

 それはそう。

 

「でも、中には入れないしなー」

 軽く見積もって100体のオーガだ。

 しかも、チハたんなしで、地の利は向こうにあり……無理ゲーだね。

 

「やっぱアンタが行くしかなくね? 固いし、オーガくらい余裕っしょ」

「硬くても痛いと言っとろうが! あと、丸飲みされたらさすがに死ぬわーい!」

 

 あー。

 コイツちっこいからなー。ジャイアントオーガ当たりなら一口だわな。

 

「むー。ならどーする? 皆でここからチマチマ撃ちまくるとか?」

「それもいいが、弾だって、無限じゃなかろう? チハたんがないと補給もおぼつかんのではなかったか?」

 

 それはそう。

 

 私はとことん、チハたんとガソスタがなければ何もできない女なのさー……。

 

「そも、入口がここだけとは限らんしね~」

「そこは大丈夫じゃ。匂いが籠っておるし、空気が流れておらん。ほぼここくらいしか出入口はなかろうて」

 

 ほう。

 それはいい情報かも。

 

 まぁ、どのみち中に入るのは無理だけど。

 

「んー。……ルルはなんかいいアイデアある?」

「ひー」

 

 ひー?

 ……あ、火か!!

 

「なーるほどー」

「それはいいアイデアじゃな!」

 

 うんうん。

 せっかく連中が、洞窟にひしめき合っているのだ。火責めは有効──…………。

 

「「いや、エグイな!!」」

 

 もう、ママびっくりですよ!

 

「ルルちゃんたら、いつの間にそんな残酷に育って……」

「いや、絶対お前の影響じゃからな?」

 

 にひーっと満面の笑みを浮かべるルルの頭をなでりこなでりこしつつ、

 よよよと泣き真似の私をするどく突っ込む、クソドラゴンはさておき、

 

「ま、火のアイデアは悪くないんじゃない?」

「まーのー……しかし、どうやって火をつけるんじゃ? 我にやえというのは却下じゃぞ」

 

 わぁーってるよ。

 役立たずドラゴンに期待してねーよ。

 

「ガソスタ召喚して、流し込むとかどうかな?」

「無理じゃろ? お主自身が言っておったではないか。ダンジョンとか、建物内部では召喚できぬし、よしんば外で展開が可能であったとしても、それなりに敷地がいると──」

 

 あー。

 そうだった……。

 

「洞窟は──ダンジョン判定だよね?」

「そうでなくとも、狭いしのー」

 

 ちらり。

 

 まぁ、狭いとは言ってもジャイアントオーガが中にいるくらいにはそこそこの規模だ。

 

 入口は2m程度の高さで、幅3mほど。

 ジャイアントオーガでもかがめば入れるのだろう。そして、内部はそれ以上に狭かったり広かったり──……一応、下に傾斜しているし、その先は相当に広いと思われるが、

 そこまで行けば、ガソスタを召喚した時点でオーガにバレバレ〜。

 

 一方、外の敷地もそこまで広くはない。

 なにせ、今の今まで誰にも発見されなかった洞穴だしねー。

 

「じゃーむりー?」

「んー。アイデアはいいよ!」

 

 しゅんとしちゃったルルに、グー! と、親指を向けるとたちまち笑顔ー。

 ん~、可愛い!

 

「いやいや、可愛いって、お主。……提案は一個も可愛くなかったんじゃがのー」

「そこ。うっさいよー」

 

 ウチの子がナイスアイデアだしたんだし、そこは褒めるの!

 私は褒めて伸ばす方針なの!

 

「わかったわかった──で、アイデアはいいというのは?」

「ふふーん。ようするに、火とかなんとかで一網打尽にすればいいってことだよ──中に入らず倒すなら、色々やり方があるってものさー」

 

 

 

 ニヒッ。

 

 

 

 私は笑う。

 だって、こうみえて私はガソスタ店員! そして、危険物取扱者の資格持ちであるぞー!!

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