異世界チハたん(九七式中戦車)無双〜聖女召喚されたけど捨てられました~   作:LA軍

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第7話「対空戦闘ッ!」

『クケェェェエエエエ!』

「うひゃー!」

 

 砲塔に飛び乗ったところを危うい一撃が襲い掛かる。

 低空飛行からの鋭い爪だ!

 

「ひ、ひぇぇ……! あんなの当たったら一撃だー」

 

 チハの車体をこすって火花が散ったところがまざまざと見えた。

 つまり、少なくとも鉄に近い強度を持っている証拠だ。

 

「──だけど、さすがはチハたん!」

 

 ガルダの攻撃にびくともしない。

 そして、中に入ればこっちの物!

 

「あたれー!」

 

 

  ドーーーーーーーーン!

 

 

 緩やかに旋回しているガルダ目掛けて、コントローラー越しに57mm戦車砲を発射ぁぁー!……って、あれ?

 

「め、めちゃくちゃ外れた?!」

 

 おもくそ外れて遠くの山で爆発する砲弾。

 

 あっれれー?

 おっかしいな〜。

 

「うーん……。ならこっち(・・・)!」

 

 グルンと砲塔を旋回。

 主砲の後についている副武装の機関銃を空に向ける。

 

 あ、そうそう。

 なんか知らないけどチハたんの機関銃って戦車の後についているんだけど、それって普通なのかな?

 

「って、言いつつも発射ぁぁ!」

 

 ダダダダッ!

  ダダダダッ!

 

「あ、くそーっ! これも当たらないの?!」

 

 主砲よりもマシだと思ったのに余裕で避けられる。

 その直後、ガッツーン! と振動が襲った。

 

「きゃー?!」

 

 な、なになに?!

 どっから攻撃されたの?

 

「って、うげげー! 耐久力がごっそり減ってる……!」

 

 見れば、あの鳥野郎が真上から()を落としやがったらしい。

 しかも、装甲が、ジュウジュウと嫌な音を立てていた。

 そ、そういえば鳥の糞って凄い酸性が強いとか聞いたことがあるけど、まさか、その酸で溶かしているってこと?!

 

「ゆ、許しがたし……!」

 

 ダメージそのものよりも、尊厳がぁぁ!

 

「よくも私のチハたんに脱糞したなー!」

 

 だけど、どうしよう。

 このままじゃ攻撃が全然あたらないし……。

 

「……あ、そうだ! これとかどうかな?」

 

 

   ブンンン……!

 

 

 手詰まりを感じていた私は、ステータスを開く。

 そして……、

 

 

 ◇ ◇ ◇

スキル:【せんしゃ】

能 力:任意の場所に召喚可能。

    世界中のありとあらゆる『せんしゃ』(※)が選択できる。

戦 車:九七式中戦車

 

   『改造オプション』

    追加装甲Lv1: 5ポイント

    補助装甲(シュルツェン)Lv1: 5ポイント

    増槽50L  : 5ポイント

    土嚢     : 2ポイント

    鉄条網    : 3ポイント

    対空機関銃  : 5ポイント

    煙幕発射器  :15ポイント

    排土板(ドーザーブレード)   : 3ポイント

    拳銃穴(ピストルポート)    : 2ポイント

    新型砲塔Lv1:50ポイント

    暗視装置   :15ポイント

    アンテナ強化 :10ポイント

    牽引トレーラー:30ポイント

 

備 考:(※)表記はカタログあり。

 ◇ ◇ ◇

 

 

「あった、これ!」

 

 改造オプション!

 

 そうそう、これこれ。

 戦車を購入したことで、スキル『せんしゃ』に新項目が追加されていたんだっけ。

 

 もちろん、どれもみるのは初めてだけど、今の私には戦車の知識がある!

 そして、それによると……これッ!

 

 

「対空機関銃~♪」

 (※某ネコ〇ロボット風に)

 

 

 

 しかも、こちらポイント5ポイントとお買い得でーす!

 

「よーし。いけるいける。まだまだボーナスポイントには余りがあったし、迷わず購入だよ!」

 

 そのまま、すばやくポイントを割り振ると、一瞬、チハたんが光り輝く。

 そして、気づいた時には砲塔に上に、簡易対空銃座が増設されていた。

 

「おぉー!」

 

 相変わらず仕事が早い!

 

 そして、これなら狙えるかも!

 実際、コントローラーには新しく対空銃座の項目が増えて、上空のガルダを狙いやすくなっている。

 

「よーし、あたれっぇぇえ!」

 

 ──ダダダダダダダッ!!

 

『ケェェェ?!』

 

 ビシバシッ! と確かな手ごたえ。

 遠目にも血飛沫が舞うのが見えた!

 

「やったー! 当たったー!」

 

 さすが対空火器!

 これならいけるかも!

 

 だが、さすがに相手も巨大な鳥だ。

 一発二発で落ちるほど軟ではない。だけど、それでも真下からの反撃に驚いているのか、飛行姿勢が明らかに不安定になっていた。

 

「よーし、もう少し!」

 

 

  ダダダダッ!

   ダダダダダッ!

 

 

『クケェェェエ! ケェェェエ!』

「む、むむー!」

 

 

  ダダダダッ!

   ダダダダダダダダダダンッ!

 

 

「く、くっそー」

 

 どうやら、さすがに一撃されて懲りらしい。

 無理な接近はせずに、射程外ギリギリと飛びながらこちらの死角をみつけると急襲し、装甲が解けた部分を鋭い爪で襲い掛かる戦法に切り替えたらしい。

 

 ガツーン!

 

「ぅきゃーーー!」

 

 おかげで、何度も何度も振動が戦車を貫くと車内に火花が散る。

 

 こ、これはマズイ。

 装甲が相当禿げてきているのかも……。

 

「が、がんばってチハたん!」

 

  ──グォォォオオオン!!

 

 私の声援にこたえるように、傷ついた九七式中戦車が咆哮する。

 まるで一心同体だ!

 

(……いや、まって。一心同体?)

 

『ケェェェエエ! ケェェエ!』

 

 ドカーン!

  バシーン!

 

 度重なる強撃。

 飛び散る火花……、そして、車内には避けた血管のように鋼管からもれたオイルの香り漂い始めている──だのに!

 

 一心同体??

 

「違う……!」

 

 こんなの、

 こんなの……。

 

「こんなの一心同体なんかじゃない!」

『ケェェエエエエエ!』

 

 そうだ。

 違う、違うよ!

 

「わ、私はチハたんに隠れてるだけだ!」

 

 バターン!

 

 車内に隠れていた私は、なにかに突き動かされるようにしてハッチを跳ね上げた。

 そして、車外に体を晒すと一心に外の風を浴びる。

 

『グェェエエエエエ!』

「ああ、そうだよ! 私はここだよ!」

 

 そうだ。

 そうだった。

 

 チハたんが傷ついているのに、自分は安全な社内からコントローラーで攻撃するだけ。そんなの……そんなのずるいよね!

 

「だから、いくよ。チハたん!」

 

 ジャキンッ!

 改造オプションで買ったばかりの対空機関銃にとりつくと、砲塔脇の予備弾薬入れから、弾倉を取り出すと、脳内にある知識を頼りに初弾を装填!

 

 ジャコン!

  ガシャキッッッ!!

 

 ──そう、これは『九七式車載機関銃』だ!

 

 

「口径7.7mm、装弾数は20発!」

 

 うん、いける。

 これだけあれば上等だよ!

 

 そして、私は!

 

「これでお前を落とーーーーーす!」

『ケェッェエエエ!』

 

 き、来たー!

 

 気合を入れた私。

 一方、鳥野郎も、顔を出した私を明確に獲物と認識したのか、かなりの高速で突っ込んできた。

 

 その迫力は、車内にいる時に比じゃない!

 

「──だけどぉぉお!」

 

 落とす。

 落とす。

 

 落とーーーーす!!

 

「わーーーーーーーーーー!!」

 

 

 ダダダダダダッ!

 

 

『ゲーーーーー?!』

 

「よーし、当たった!」

 

 やっぱり、コントローラー越しより、狙いやすい!

 鳥野郎も、まさか、身体を晒して真正面から狙って来るとは予想していなかったのか、反応が遅れる。

 そのせいか、まっすぐに突っ込んできたガルダの羽が血しぶきとともに散っていく──命中の確かな手ごたえだ!

 

「あとは、トドメぇぇえ!」

 

 そのまま体勢を崩したガルダを追うようにして、簡易対空銃架(ピントルマウント)をぐるりと回して──ぴったりと追従しながら撃ちまくる!

 

「うわぁぁあああ!」

 当たれぇえぇえ!

 

 

   ダダダ

     ダダダ

       ダダダ

         ダダダダダーンッ!

 

 

 身体ごと、半円を描くように対空機銃を乱射する。

 すると、弾数20発なんて一瞬で撃ち尽くすけど、ここまでくればぁぁああ!

 

『グギャーーーーー!』

 

 バパパッ! と命中弾とともに血と肉片が飛び散る。

 その刹那。ものすごい悲鳴があがった!

 どうやら、致命的な一撃(クリティカルヒット)があったらしい──。

 

 遠目にも飛び過ぎていったガルダがグルンと白目をむく様がみえた。

 

「やったー!」

 

 だけど、飛行姿勢はそのまま──なんと、クルンとターンを決めると、気を失ってなおこっちに向かって特攻機動に切り替えやがりました?!

 

「う、うそでしょーー」

 

 まさか、体当たりする気?!

 

「ええ? ちょ、ちょっと──!」

 

 しかし、相対速度でみるみる近づくのはグレーターガルダ!

 

 そして、そのまま真っ直ぐに突っ込んでくると、今にも身体がチハたんに激突せんばかりに接近し──…………ゴゥゥ!!!

 

 ギリギリを掠めていったッ!

 

 

「ひぇ!」

 

 

 ま、まさにギリギリ!

 ほんの数ミリ先を、ものすごい質量と風圧が真横を駆け抜けていった。

 

 あ、あっぶねー。

 こっちは弾切れだったよー。

 

 だが、幸いにもガルダの激突は免れ、チハたんを掠めるとほぼ同時に地面に振動が走る……!

 

 

  ドーン……!!

 

 

「お、おぉー」

 

 少し先で立ち上る砂煙に、思わず上がる歓声。

 

 や、やったのか、な?

 フラグっぽいことは言いたくないので口には出さない。

 

 ただ、濛々たる煙のあとに妙な姿勢で墜落しているガルダをみて、ついに倒したと確信。

 

 その場には無数の羽根がヒラヒラと散っていた……。

 

「や、やった! チハたんやったよ!」

 

 バシバシと装甲を叩いて、チハたんとの健闘を称えあう。

 

  ──グォオン!

     グォォオオオン!!

 

 チハたんも機嫌よさげにエンジンを鳴らす。

 ……しかし、装甲溶けたなー。

 しかも、なんか酸っぱいような匂い……。

 

 これウ〇コだよね? 最悪ー。

 

「はぁー、すぐ直してあげるからね」

 

 待っててね。チハたん。

 

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

  ブーンン……!

「え? こ、これって……」

 

 ◇ ◇ ◇

 グレーターガルダの魔石(風)

 レア度(AAA)

 

 ・魔の山脈の中腹に生息するグレーターガルダの魔石。

  個体差が大きいものの、非常に高い。

  基本的に風属性の物が多く、風の魔力の補充(大)、風系統の魔道具の補給に最適。

 ◇ ◇ ◇

 

 撃墜したガルダを雑に解体し、体内から転がり落ちた魔石を拾って鑑定すると、なんと属性付きだった。

 

 どうやら、このままではスキルの回復に使えないらしい。

 

「ええー。そんなぁ」

 

 がっかり。

 一応、他にないかと、銃弾で穴だらけの身体をまさぐると、ポロリと爪と(くちばし)が落ちるのみで魔石はない。

 

「あ、だけど、これもドロップ品かな?」

 

 

 ◇ ◇ ◇

 グレーターガルダの爪

 レア度(S)

 

 ・魔の山脈の中腹に生息するグレーターガルダの爪。

  常に高空に遷移しているため、部位を採取するのは困難を極める。

  自然死した身体も基本的には、高山の巣穴でしか見つからないため採取はほとんど不可能。

  仮に入手できた場合は様々武具やアイテムの加工品として重宝される。

 ◇ ◇ ◇

 

 

 お、おぉー?

 嘴の方も似たような説明で、こっちはレア度がSSだったりする。

 

「すごい。多分貴重品だ」

 

 きっと町で高く売れると思う。

 ……でも、

「チ、チハたん、ゴメン。すぐに修理できそうにないや」

 

 手持ちのハイゴブリンの魔石(無)は前に検証で使ってしまったので、今の手元に魔石はない。

 あれはもったいないことをしたなと今更ながらと思う。

 

 だけど、幸いにもエンジンが無事だし、弾薬もまだまだ問題ない。

 装甲は醜く剥げたままだけど……。

 

「うぅ、ごめんねー」

 

 綺麗に治してあげたかったけど、今は無理っぽい。

 

 そのせいか、チハたんが痛そうでしょんぼりして見える。

 

「はぁ、モンスターを舐めてたツケかなー」

 

 侮ってたつもりはないんだけど、どこか戦車を過信していたのは事実。

 

「どうしよ。動くには動くんだろうけど……」

 

 このままだと、チハたんに申し訳なくって消沈していたまさにその時であった。

 

 

 

「いたぞ、こっちだぁぁ!」

 

 

 

 ガサガサガサッy!

 揺れる草木に思わず背筋が震える?

 

「……へ? え?」

 

 な、なになに?!

 見れば、突然、ガルダを撃墜した方から鋭い声があがり人影が飛び出して来たではないか!

 

「慌てるなよ! 地上に降りてもガルダは危険だからな──……って、だ、誰だ?!」

 

 え?

 いや、こっちのセリフ……。

 

「って、嘘。……人間?!!」

 

 ……だ、だよね?

 

 しかも、それはなんと、一つじゃない。

 木々の向こうからは続々と複数の人影が現れたのだ。

 

 それも全員武装した人たちが……ひーふーみー、

 

(全部で4人?!)

 

 その、あまりにも突然の遭遇にどちらも硬直してしまう。

 

 

 

 

 それが、私がこの世界に来て──二度目の異世界の人との遭遇であった。

 




お読みいただきありがとうございます!
高評価。お気に入りいただけると幸いです


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