異世界チハたん(九七式中戦車)無双〜聖女召喚されたけど捨てられました~ 作:LA軍
「ふぃー。あちかったー」
顔を手扇でパタパタとするルーフデス……って、うぉぉぉおおい!!
「(し、死ぬ気かアンタはー!!)」
コシュー……!
「あーん? 死ぬとは大げさじゃのー。それより、なんか頭がぼーっとするのー」
「(そりゃそうでしょうよ!)」
いいから、マスクを被────あああああああ!!
「(す、捨てんなし、バカっ!!)」
コシュー……!
もう少しで出口だというのに、この馬鹿ドラゴン!
な~~~んで気密マスク脱いじゃってるのよ!?
しかも、そのマスクをよりにもよってポテ~ンと地面に落としやがったもんだから、もう拾う暇すらない!
つーか、オーガの口にスポッと入っちゃったわよ!!
「大〜丈夫じゃってー……」
「(大〜丈夫じゃ、なーーーーい! アンタ、フラフラじゃん! いいから、息止めて!)」
マヂで死ぬぞ?!
もちろん、すでに重篤な中毒症状の出ているルーフデスに言葉は届かない。
なので、やむを得ず──口を押えて、ボンベの栓を抜くと、そのままボンベの管を口にぶち込んでやったー!
「も、もがもがー?!」
「(いいから吸う!)」
ブシュウゥゥゥ……!
マスク越しじゃないので、ほとんど意味はないけど、ないよりマシ!
ルーフデスが背負っているボンベの弁を小まめに調整しながらなので、こっちも動きにくくてしょうがない。
「(あーもー! ほらっ!)」
ちゃんと咥えろや!
そんで歩け!
「あにふんじゃー、もがー!」
「(こ、こら! 暴れるな!)」
いいからその口にねじ込むんだよ!
ほれほれほれー!
(って、うわー……この、絵面ヤバー!)
なんか色々ヤバーい!
「(だ、だけどもうちょっとだから我慢してね!)」
「もがもがー?!」
少しでも酸素を吸わせて、一酸化炭素を身体から抜いたほうがいい。
幸いにもルーフデスは思ったよりも軽いので、そのままホースを口に突っ込んだまま、ズルズルと引きずるように出口に向かうが、
そんな使い方をしていたからあっという間にボンベの方が尽きてしまった。
シュゥゥゥ……プスン。
「(ありゃ? も、もう空っぽ?!)」
「もご……! ペッ! うぉぃい!」
「(はいはい、うっさいうっさい)」
ルーフデスの抗議なんてガン無視でいい。
もう、こうなってしまったら、一刻も早く出口を目指したほうか健康被害が少なくて済むだろう。
そして、一酸化炭素を吸わせないためにも、口を押えて引きずっていくしかない──。
「(ちょっと我慢してなよ?)」
「う、うおーい! ナガセぇぇ、お主何の真似──もがッ?!」
「(喋るなっての!!)」
あと、息もするな。
吸うな、吐くな!
口閉じてろ!!
酸素もないけど、あと少しなら一酸化炭素を吸うよりマシ!
「むーむーむー!!」
面倒になって口を押えた私に抵抗して、ジタバタするルーフデス。
「(もー! 手が焼ける奴!!)」
しっかし、
改めて、その絵面よ……!!
背後からはオーガエンペラーが顔と腕だけで追っかけてきて、
私はと言えば全身防護スーツで、ちっさな女の子の口を押えてズールズル……一発通報案件であーる!
「(だ、だけど、もうちょ~い!)」
コシュー……!!
「むー!!」
口をふさがれ全く呼吸の出来ないルーフデス。
そのせいか、だんだん顔色が真っ青から土気色になっていくけど……も、もうちょいだけ我慢せーい!
幸いにも、着実に一歩一歩出口に向かえばだんだん一酸化炭素濃度が薄くなってきたのだろう、空気が冷たく感じ始めて来た。
『ゴルァァァアア!!』
しかして、それはオーガエンペラーにとっても同じこと。
じりじりと這うように追ってくるあの野郎も新鮮な空気を吸って、少し正気を取り戻したのか、そのまま筋力だけで洞窟を圧壊させんばかりに起き上がるではないか!
メキッ!
メリメリメリ!
「(うげげー! や、やめろやめろー!!)}
そ、それ以上無理すんな!
マヂで落盤するからー!
『ゴルァァァアアアアアアアアアアア!』
しかし、オーガ・エンペラーにそんな願いなど通じるはずもなく、
むしろ死なば諸共と言わんばかりに、最後の猛攻を仕掛けて来た。狭い通路を無理くり進んで、手を伸ばして私たちを掴まんとする!!
その動きだけで、もう洞窟鵜の通路は限界だ──!
ミシミシミシッ
メリリリリリッ……!
そしてついに天井に大きな亀裂が入り、今にも崩落しそうになる。
このままいけばあと数秒と持たずにこの通路は崩落する!!
だったらいっそのこと──!!
「(か、かくなるうえは……)」
ピィン♪
ここに至り、私は最後の武器を取り出し──その
もちろん、弾切れの14年式拳銃でも、ルーフデスの聖剣でもない。
──そう!!
お腰につけた黍団子ならぬ、
お腰にぶらさげておいた、手りゅう弾だー!!
「(そっちがその気なら手伝ってやるわよ!)」
落盤するかもしれないなら、いっそ落盤させてやるぁぁ!!
つーか、今アイツに反撃しないと、このまま洞窟諸共潰されるー……!
──だったら、ここでケリをつける。
そう覚悟を決めると、手りゅう弾の使い方を脳裏に浮かべる。
「……
え~っと確か、九七式手榴弾の使い方は──。
● ピンを抜く。
● そして、先端の頭部を
よし、完璧──……。
「(…………って、
え?
固いモン??
「(そ、そんなもんあるかぁぁ!)」
コシュー……!
慌てて手元のそれを見ると、なんてこった。
この手りゅう弾ってば、映画とかで見るあの手りゅう弾じゃないしー!
──ほら、あれ!!
あの、
ピン抜いたら、レバーがパィィーン♪ って弾けるあれじゃないのよ、これ!!
『打撃式』っていう、
なんか頭頂部に突起がついてて──これを、硬い物に叩きつけて発火するって仕組みらしい。
「(……いや、誰よ、こんなわけのわからん発火システムにしたやつー!!)」
あーもー!
そんな都合よく硬いモンがその辺にあるかーい!
「むぐー?!」
「(……って、
あったわ。
あや、あるやん。
「(
「むー??」
「(うりゃー!)」
気合一閃!
その硬い部分めがけて──ガッツーン!
「もがががーーー(あいだーーー)?!」
やかましっ!!
いいから、お口チャックー!!
「(そして、すかさず──投擲ぃ!!)」
振りかぶってぇぇー……。
「(しゅりゅ~~~~~~だんッ♪)」
シュゥゥ……! と、
白煙を引きながら日本軍の手りゅう弾「九七式手りゅう弾」が洞窟のなかを放物線を描いて飛んでいくと──。
『ゴル──』
バァァァアアアアアアン!!
「うひゃぁぁあ!」
「あぎゃー!!」
直後、見事にさく裂し、直撃ッッ!
しかし、そのあとに猛烈な爆風が吹き返してきて、思わず私はルーフデスとともにひっくり返ってしまった!
「あいったたたた……」
「むぎゅ~……」
し、しまったー。
ち、近すぎたかー。
だが生きているし、十分十分。
すっかりのびてしまったルーフデスを抱え直そうとして、ふと気づく。
なんか、空気の匂いが──。
「って、ああああああああ!」
プシュゥゥゥウウ……!
「し、しまったー!」
濛々たる爆炎の先のオーガエンペラーの顛末よりも何よりも、
自分の声がやたらと良く聞こえると思ったら、なんと私の機密マスクまでもがバックリと割れてしまっているではないかー!
これはマズイ……!
い、一酸化炭素がー!!
「って、ありゃ?! 息が吸える?」
「当たり前じゃぁぁぁ!」
グワバッ!!
「あ、ルーフデス。……なんだ、元気そうで良かったー」
「──馬鹿垂れッ!! 『元気そうで良かったー』ではないわ!!
え?
あー、ごめんごめん。
「ちょうどいい硬さの物がなくてさー」
てへぺろっ。
「な~~~にが、てへぺろ~♪ じゃ!! み、みてみぃ、これを! この
おーいてぇ……と、キンキンと良く響く声で叫びながら、おでこをさするルーフデス。
見れば、なんとまぁ、手りゅう弾の信管を叩きつけたルーフデスのオデコが赤くなってるしー。
ぷぷ~ッ!
「いや、赤くなってるしー(
「えへへ」
「褒めとらん、褒めとら―ん!
まぁ、
一酸化炭素でフラフラだったくせにピーピーとうるさいこと。
つーか、なに?
「私の状態って……?」
手りゅう弾の爆風と破片で機密が壊れたのは知ってるけど──……って、
「ふ、ふぉぉぉおお?!」
な、なにこれ?
なにこれー!!
「よ、よく見たら、手りゅう弾の破片が機密マスクにぐっさりと刺さってるしー!」