異世界チハたん(九七式中戦車)無双〜聖女召喚されたけど捨てられました~ 作:LA軍
「こ、こわぁっぁあ!」
確かに気密が抜けたのは知ってたけど、
まさから手りゅう弾の破片が深々と刺さってるなんて──。
そのマスクを改めてみて、ゾゾゾーと背筋が震えあがる。
「しかも、結構でっかい奴じゃん……!」
オマケに、
顔のど真ん中にぐっさーって!!
「い、一歩間違えれば即死じゃーーーん!」
それに気づいて顔面蒼白。
あと数ミリ深く刺さっていれれば、今、蒼白している顔面に直撃していたのだー。
「いやいやいや!『していたのだ~!』 じゃないわっ、
「してるしてる。メッチャしてる──」
だけど、邪魔。
──ぷはぁ!
機密がないならもうマスクは用無しだ。外してフードのように後ろに下げおく。
おー、開放感がすっごいわ。
そして、一酸化炭素の濃度が薄くなってるならなおのことだ。
「よし! 色々ギリギリだったけど、あとは脱出すれば万々歳だね」
「その前に、ひとこと謝ってほしいのー……」
え?
やだよ。
「むしろ御礼を言ってほしいねー。命の恩人だよ、アタシしゃ。まずはそっちを感謝してから言ってどーぞ」
「ぬー……。口にホース突っ込まれたり、頭で信管発火させたり、あげく、口を押えて引きずられた記憶しかないがのー」
全部合ってるけど、言い方ぁ……。
「つーか、結局なにか探すどころじゃなかったねー」
「それな。しかも、洞窟はオーガエンペラーの死体で埋まって二度と入れんし──……ぬ?」
同時に振り返った私たち。
手りゅう弾の爆炎が晴れて、そこにはきっとオーガエンペラーのグッチャグチャになった顔があ……あれ?
『ゴ、ゴルルルル……!』
う、うそーん!
生きてるしー!!
「こ、こやつ動くぞ!」
「へ、へへ、怯えてやがるだけかも──」
だって、手りゅう弾の直撃を食らったんだよ?
そんなん絶対即死だしー。
『ゴァァァァアアアアアアア!』
ドッカーン!
しかして、即死級の攻撃を食らったはずのオーガエンペラーは存外平気な顔をして起き上がりやがりました。
…………そう、起き上がったのだ!!
この、せっまい入口付近の通路で!!
「ど、どわー! ぜ、全然元気じゃぞー!!」
「ひぇぇえ! それよりヤバいって! このままじゃ崩れるー!」
ただでさえオーガエンペラーが無理やり通路に体をねじ込んだせいで圧壊寸前だというのに、
さらにダメ押しで手榴弾を爆裂させ、トドメはオーガエンペラーが最後の力を振り絞って起き上がったのだ。
そりゃーもう、あの巨体があの筋肉で起き上がれば、ば当然の帰結として洞窟が轟音を立てて崩れ始めた。
それも、入口だけでなく全体を鳴動させながらー!
あ、あわわわ。
ええええ、えらいこっちゃ!
「に、
「に、
に──!?
「「逃げろぉぉぉおお!」」
一瞬顔を見合わせて、お互いを指さすと、そのままどちらともなく頷き、脱兎のごとく駆けだした!!
だけど、私もルーフデスも悲しいくらいに足が遅い!
どっちもぶっかぶかの防護服を着ているし、正直、一酸化炭素を吸ったせいか、頭がフラフラ!
だが、走る!!
……そう走るのだ!!
死ぬ気で!!!
「うわぁっぁあああああ!」
「うひゃぁっぁああああ!!」
逃げろ逃げろ逃げろぉぉぉお!
頭上からはズシンズシンと岩石が降り注ぎ、
背後からはズンズンズン! とまさに鬼の形相を浮かべたオーガエンペラーが追ってくるけど、とにかく逃げろぉぉぉお!
「つーか、なんなのアイツ?! 瀕死じゃなかった?!」
「あれでも上位種じゃ! 回復力は半端ないって前に似たようなこと言ったじゃろ!」
あーそういやどっかでそんなこと聞いたような。
ってことはなに?
あいつ、どうやら一酸化炭素中毒から多少は回復したらしいってこと?!
「そんなでたらめな!」
「事実は事実じゃあー……って、ああああもう走りにくいのー!」
いっそ脱ぐ?
いや、そんな時間もないか!!
「くそー! 追いつかれるぞ」
「その前に逃げるの!!」
武器も何もない状態であんなのと戦えるかー!
つーか、喋ってる暇があった走れー!
「ほら、あと少し──もうすぐ見えている出口の先まで──」
『ゴルァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』
……あ、駄目だこれ!
「「間に合わない~!!」」
振り返るまでもない。
もうほんの指呼の距離に奴がいる。
その事実と、背後に迫りくる巨大な質量に顔がひきつる。
それは落盤する天井だけでなく、それを跳ね飛ばしながらズンズンズンッ! と、憤怒の形相で這うようにして迫ってくるオーガ・エンペラーのそれだ。
「うぎゃぁぁぁあああああ! 私は食べても美味しくないよー! こっちの小さいの食べてぇぇぇえ!」
「んが?! な、なんちゅうことを! わ、我は固いぞー。こっちの人間はほれ、喰うとこ少ないが、柔らかいぞー……あいだ!」
ごんっ!
「誰が食うとこ少ないじゃ! あたしゃ、グラマスじゃけんのぉぉお!」
「どこの方便じゃそれ!! つーか、ああああああああああ、そんなこと言ってる間に掴まるー!」
そのまま、降り注ぐ岩石が直撃しても死ぬだろうし、オーガに掴まれば骨まで食われて死ぬ。
そう、死んでしまうのだ──────。
「「って、感じでビビると思ったか、ば~~~かめ!」」
何を思ったのか、クルリと反転し、奴に向き直った私たち。
それを驚いた顔で見ているオーガエンペラー。
はっ!
まさか、私達の行動が予想できなかったかい?
「残~念! 私のファミリーは3人なんだよ!」
「うむ! 一人は留守番兼──」
そして、
その三人目は入口に残してきた愛娘にして──……。
「「──火器担当だよ!」じゃ!」
パチンッ!
言うが早いか私達が、同時に指を弾く。
そして、すばやくステップ、左右に飛びのいた!!
刹那ッ!
──ジャキンッ!!
物騒な金属音が鳴り響き、
逆光で姿ははっきり見えないけど、満面の笑みを浮かべてルルの綺麗な歯と、銃口の金属がきらりと光る。
そうとも、
入口付近に据え付けていた機関銃のギラリと輝くのだ!!
射撃合図をいまや遅しと待ち構えながら!!
そしてぇぇ──
「「撃てぇぇぇええええ!」えええい!」
「あーい♪」
可愛い返答とともに、
ドガドガドガガガガガガガガガガガ!! と降り注いだのは、最初っからの全力射撃だー!
「あーっはっはっは! のこのこと入口までご苦労さん!」
フルメタルジャケット!──7.7mm小銃弾を装填した九九式軽機関銃の乱れ打ちはいかがぁぁあ!
そして、ルーフデス!!
「アンタは落下物の破壊をよろしく!」
「心得たー!」
我が意を得たりと、すばやく聖剣を構えるルーフデス。
そのまま、頭上から降り注ぐ岩石群めがけて一閃!!
「落下物なら楽なもんじゃー」
ズパーン! と無数の斬撃を放ち、落盤の第一波を防ぎきってしまった。
「ひゅ~♪ 二人ともたよりになるー」
「そう思うなら、さっさと行くぞ!」
ルルの援護のおかげで生まれたわずかな時間!
あとはこの機に、
撤収、撤収、撤収、撤収ぅぅう!!
「今のうちに入口まで走れぇぇええ!」
「おうよ!」
聖剣を傘代わりにして、落下物から頭を守りつつ走り抜ける私たち!
ここまでくればもう一息!
そして、
「「だ、脱出ぅぅうう!!」」
トゥ!!
朝日を浴びるJKがごとくアニメの一枚絵のように光に中に飛び出した私たち!
もちろんただのイメージだ。
実際はもっさりとした防護服を着ているせいで、ノタノタ、どたどた──ぼてち~ん♪……って感じだったのはこの際どうでもいいだろう。
つーか、久しぶりに新鮮な空気と陽光だ。
いっそそのままそのままへたり込みたいところだけど、今はそれをぐっとこらえて、身体を横にするとルルにぴったり身を寄せる!
「弾は?」
「まだ、あるー」
ガシャキ! と空になった弾倉を捨てるルル。
その隣には、ひーふーみー……6本ほど予備の弾倉がある。
──お、いいね。
「よ~しッ! 上出来上出来ぃ! ルーフデス、アンタはルルの副射手ね!」
「お、おう! 任せい」
そんで私は!
「──こっちっ!」
ジャコンッ!
同じく、ルルが持ってきていた九七式自動砲だ。
しっかりと弾倉を装填した状態で隣に据え付けてある。
そこに向かって、
よっこらせっと、身体を横に転がして配置につくと、初段を装填し──照準! 連射を受けて
「ほっほーぅ。さ~すがはオーガの王! 7.7mmの連射を耐えきるかー」
ダダダン!
ダダダンッ!
見据える先には、連射を食らって身動きできないオーガ・エンペラー。
「ぬぅ~……。ナガセ、まだ撃つのか? あれはもう、動けんじゃろ?」
弾倉を交換しながら、洞窟を見降ろすルーフデスが気の毒そうに言うが、とんでもない話だ。
たしかにその視線の先では、顔面のまえで腕をクロスしたオーガエンペラーが自分で崩した洞窟の天井に埋もれようとしていた。
一見すればそのまま銃撃に釘付けにされたまま、落盤とともに生き埋めになりそうだが、そ~んなはずがない。
アイツがそんなタマかよ。
「──でしょ? オーガの王様」
ピクリ。
私の独白を聞きつけたわけではないだろうが、完全に埋まり切るその瞬間、奴が顔をあげる。
そして、ジロリと腕の隙間から私を睨むと咆哮した!
『ゴルアッァァァアアアア!』
全身全霊!
体中の筋肉をフル稼働し、一酸化炭素中毒で死にかけている意識を奮い立たせて、オーガエンペラーはついに大地に立つ!!
「あはっ! やっぱそうこなくっちゃね♪」
やはり目は死んでいない。
否、ひとつたりとも死んではいないのだ!
だって奴は誇り高き王。
鬼の王だ!
どこからか連れてこられて狭い洞窟に押し込められていた鬱屈した日々であっても、
その生活に終止符を打つかのように、今ここで青空のもとに躍り出て最後の決戦に挑まんとする!!
だけど──。
「それがアンタの最初で最後の突撃だよ!」
こっちは狙いは十分。
弾の威力も十分!
そして、トリガーを引く覚悟も十分さぁー!!
「目標、捕捉ッ!」
照準よし、弾速弾種全部よーし──────……ん、発射ぁぁぁあ!
ドカーーーーーーン!!
ためらいなく引き金を引いた私!
その瞬間、奴と視線が交差した気がしたが気のせいだろう。
笑っていたようにも見えたけど、絶対に気のせい!
だって、
あとはもう、狙いたがわず満を持しての射撃からの命中しかないもん。
そして、絶対に外さない距離!
そして、絶対に殺せる威力!
そして、絶対に打ち抜くから────!!
「グッバイ、キング」
ゴッッパァァァーーーン!!
ニヒルに呟いた直後、奴の頭部がさく裂。
それも当然、銃の性能からすればほとんど白兵距離での発砲だもん!
もちろん、外すわけもない。
だから、その威力がまごうことなくオーガの王に額に命中し──……そのまま脳漿をぶちまけながら貫き即死させた!
んんん!
「──っしゃぁぁああ!」
思わず雄たけびを上げる私。
そして、その声のさきに、ついに奴が──……ズズンッ! と倒れ伏した。
まさに完全勝利であーーーーる!