異世界チハたん(九七式中戦車)無双〜聖女召喚されたけど捨てられました~ 作:LA軍
──いぇ~い♪
二人で手を取りあって、ハイタッチ~♪
「あー。そうそう! そうだったそうだった! 孤児院のことあったね!」
「そうじゃろうそうじゃろう! 孤児院がむしろメインじゃったじゃろー」
頑張った! とない胸を張ってアピールするアークスちゃん。
「あ、あははは! うん、うん、もちろん忘れてないよ? ちょっとこう、頭から抜けてただけで──」
人はそれを忘れているというが、それはさておき。
「こじいん~?」
何の話ー? と、膝の上で見上げてくるルルの頭をなでりこなでりこ~。
「うん。ほら、あれ。ルルの面倒みてくれるとこ探すって話ー」
「ふーん?」
わかってない顔のルルちゃん。
「つーか。最初にギルマス経由で話持ってってたの忘れてたわ」
やっぱ忘れとるやんけー……という視線を受けたが、まぁ気のせいだろう。
「気のせいじゃないぞ。まったくお前という奴は……。忘れるほどなら最初から頼まんで欲しいの~」
「めんごめんご」
色々、文字通りゴタゴタしてたし。
「ふん。まぁよい。……これでも、滅茶苦茶、方々を駆けまわって調整したんじゃぞ~? 施設のことも、今後のことも含めてのー」
「あー。それはごめん」
ってか、
「どっかの爺さんが絶対反対してくると思ってたんだけど、その辺もなんとかなったのね」
「うむ。……副議長もさすがにこうまで実績を見せられてはな。……じゃろ」
ジロリとアークスが睨むと、引きつった顔で、樽爺こと副議長も頷く。
「わかっております。私とて、そこまで頑固ではないつもりですぞ。……そもそも、最初は急進的すぎると反対したまでです」
「ふんっ。なにが急進的か。……まぁ、よいわ」
副議長から視線を切るとアークスは言い切った。
「そう言うわけで、障害は全てクリアした。……これで晴れて、そこなチビな魔族はお前の縁者ということで我が首都に孤児院に迎え入れようぞ。なーに、色々心配事はあろうが、万事ワシに任せよ。後見人としてしっかりと面倒を──……どうした、ナガセ? 微妙な顔をして」
「いや、微妙な顔って失礼だね。ちみ」
どんな表情でも、アタシぁ~イイ女で通ってるのよ。
みてと、この美人フェイスを!!……ってのは、さておき。
「あー……。ゴメン。言い忘れてたけど、その件、なしで」
「は?」
「はい?」
「ええ?!」
「なんとー!?」
アークスを始め樽爺もその他議員も目を丸くする。
それくらいの発言。青天の霹靂。まさに爆弾。
「い、いやいやいや! い、いいい、今さらなんじゃー?! お前が子供の面倒を見る自信がないから~とか、まともな教育が~とか──うんたらかんたら~とか言ったんじゃなかったのか?!」
「いや、まぁそうなんだけどさー」
「なら、素直に受けい! もう、お前の縁者とばっちり知れ渡っとるし、この首都におる限り、その子は安全どころか英雄ぞ? そもそも、ワシも調整とか根回しにめっっっちゃ苦労したんじゃが?!」
いや、まぁそれはホントゴメン。
「だけど、やっぱりなしで。……確かに、教育面とか、根無し草の私についていくよりも子供の安全第一だと思ったんだけど、キャンセルの方向でお願い」
「り、理由を聞いていいか? さすがに『はい、そうですか~』とはのー」
「そうだそうだ!」
「こっちも苦労したのよ!」
「理由をいえ、理由をー!!」
「「「「ぶーぶーぶー」」」」
……おっふ。
ついには、アークスどころか全議員までもが声をそろえる。
どうやら彼らも彼らなりに魔族の少女の受け入れに腐心したのだろう。
だけど、すまん。
マヂで無理だ!
「じゃから、理由をだなー」
「うん、まぁそこまで言われたら、言っちゃうけどさ……」
ゴクリ。
「ここって別に…………………安全じゃなくね?」
…………。
……。
「「「「それはそう!!」」」」
──ずるぅ!
まさにそう! と、思いっきり頷く全議員。
そのまま、座席からずり落ちかける。
いやー。ゴメン。
ホント言うつもりはなかったけど、ルルを預ける大前提が子供の安全だもん。
そりゃ見過ごせないって。
「ぬ、ぬぅうー……言われてみるとそうじゃのー」
「でしょ?」
みんなしてしばらく顔を見合わせたりで硬直してたけど、事実は事実だもんね。
オーク災害に、
ベヒモスの襲撃。
近傍には「獣の王」ことケルベロスが封印されてたし、なんなら、近くの山の洞窟にはオーガの群れが巣食っていた。
一応、全部解決してみせたとはいえ、次がないなんて保証がどこにあるというのか。
自分の街も城壁も守れないところにさすがに子供を預けるのは──……。
(ないなー……)
うん。
ないない。
「まぁ、相分かった。たしかにお前の言う通りじゃ──」
「うん。ごめんね」
無駄な手間を取らせたのはマヂごめん。
「な~に、もう気にするな。ぜんぶ事実じゃしのー」
しょんぼりしちゃったアークスちゃん。
一応彼女の言い分としては、じきに軍の主力が返ってくるので、格段に防御力があがるとのことだけど、それもどこまで信じていいものやら。
「実際、返す言葉もないわ。町の防衛については、ワシの判断ミスもあるが、お前が言う通りじゃしのー主力不在のこともあるが、あの時はいつ陥落してもおかしくはなかった。……それがこうして会議室で管をまけるのも、全部お前の尽力あってこそじゃよ」
「あ、あはは、褒めたって私からは何も出せないよー」
「なんの、なんの。……じゃがそうじゃのー。このまま、報酬を払わんわけにもいくまい」
ん?
「もう十分貰ってるけど?」
なにせ金貨5万枚!
そして、本気でルルのことを面倒見てくれようとしたことだけでも十分。
そこはマヂさんきゅー。
「いや、金貨については最初から払う予定の正当な報酬じゃ。お前の活躍を思えば、全然安いくらいじゃ」
「じゃお金もっとちょうだーい」
金貨ならナンボ暮れてもええでっせー。
げっへっへ。
「金好きじゃのー。……そんで、すーごい不細工な顔しとるぞぉー」
「やかましいわ! なに? お金は無理?」
「すまんの。さすがにこれ以上は即金では無理じゃ──いずれ素材代で黒字になるとしても、今は借金みたいなもんじゃしの」
「まぁそれはそっか」
金貨5万枚でも相当な数だ。
そもそんなに貨幣を作っているかどうかも親しい所だし、下手すりゃ町から金貨が一時的に消えるかもだしねー。
「というわけで、代わりと言ってはなんじゃが──……おい、ギルマスの」
「あん? アタシかい?」
我関せずといった感じで鼻クソをほじろうとしていた、美人エルフがピタリと動きを止める。
……いや、凄い絵面だな、おい。
美人でエルフというだけで絵になる女なのに、
メガモールの制服着て、鼻くそほじる寸前の姿で硬直って……どっかのラノベの拍子になりそうだわ。
「うむ。お前のとこじゃ──ほれ、ギルドのなんといったか、あの資格」
「冒険者登録かい? なに、アンタ転職でもすんの? 議長やめて?…………お勧めはしないよー。アンタみたいなチビはオークにひん剥かれて、ぶっ刺されて昇天したあと、5匹くらい孕まされて、ひーひー言って、最後は舌噛んで死ぬのがオチさー」
えらい具体的ー。
「そこまで言わんでええわい! ったく、どこの18禁じゃー。つーか、誰が転職するか!! そうでなくて、ほれ──その冒険者登録とやらを、そこな魔族の娘をしてやるがいい」
「あーん? ルルをかい?」
ん?
は?
「え? なに、どーゆーこと?」
たしか冒険者登録に魔族なんか絶対無理とか言ってなかったっけ?
「無理じゃないの?」
「ふん。それくらいどうとでもなる──こうみえて、ワシはこの国のトップぞ、そのワシが後見人になろうというのじゃ──誰にも文句は言わせんわ」
そういいつつ、ジロリと副議長を睨んで釘を刺しておく念の入れよう。
実際、反対するのはアイツくらいだろうしね。
しっかしまぁ、ちょっと前まであの樽爺が苦手とか言ってたのに、まー成長しちゃって──前線でオーガとバチバチやり合ったの時にひと皮むけちゃったみたい。
「んー。……まぁ、アンタがいいなら、ギルドとしてはなんも言うことはないよ。……多分、よそのギルドでも後見人がしっかりしてるなら、どこからもクレームが入ることはないだろうね」
「え? マヂ?」
「マジもマジ。大マジじゃ──ギルドは情報を共有しとるからの。……ま、報酬に見合うとは思えんがこれでどうじゃ?」
いやいや。
全然、全然!
「めっちゃありがたいかも!」
冒険者登録があれば、この先、他の街に言ってお門前で止められることもないし。なんなら魔族であっても人間社会に溶け込むことができるだろう。
これは正直望外の報酬だ。
だってそうでしょ?
普通なら、いくらお金を積んでも有力者──しかも国のトップの後見なんて得られるはずがない!
「ほっ。よやくお眼鏡にかなったか。喜んでくれるなわワシも満足じゃよ」
むふーっと鼻息荒く椅子に深々と座るアークスちゃん。
よほど報酬のことが気がかりだったのだろう。……やっぱコイツ結構いい奴だわ。樽爺あたりだったら平気で踏み倒しそうだし、なんなら今もな~~んか不満そう。
(……こりゃ、仮に孤児院に入れたとしても、あとで難癖付けて追い出された可能性も十分にありうるねー)
アークスだって、四六時中ルルのことを気に掛けるわけじゃないだろうし、
樽爺ならほとぼりが冷めていたころに、追放くらいはするだろうな。
「うん。ありがとう。ホント嬉しいよ」
「なに、こっちこそお前のおかげで色々助かったわ──」
あはは。
色々が多すぎるけどね。
「んー。……代わりになんかあげたいけど、どうしようかな」
「あん? 別にいらんぞ。報酬は当然の権利じゃ」
やー。
まぁそうなんだけど。
「あ、聖剣もう一本いる?」
「聖剣? あー……あれか。んー……いや、いらんかな。ほれ──お前が相当量ばらまいたせいで、いま街ではは余った聖剣がその辺の民の家宝になっとるわ」
ありゃ?
そういや、オーガとの攻防戦の前に地雷やらと一緒に配ったっけ。
しかし、家宝って……。あれ刺突爆雷やぞ??
「んじゃ、代わりに銃とかいる?」
「いらんいらん。オーバーテクノロジーすぎるでの。刺突爆ら……聖剣はともかくとして、地雷も掘り出して、爆破処理しといた。この街には過ぎた力よ」
へー。
その辺はちゃんとしてんのね。
「うむ。アークスよ。よくぞ判断した。身の丈に合わぬ力は自らを蝕むからのー」
なんか知らんが、ルーフデスが満足気だ。
っていうか、いい感じに〆ようとすんなし。
「──しかし、その高潔な判断や良し!……代わりにこれを我がくれてやる」
へ?
アンタそれって──……。
「な! 大使どの、よろしいのか?! そ、それはまさしく聖剣なのでは……」
そう、聖剣だ。
本物の聖剣──あのゴルドの大穴でケルベロスを封印し、そこで回収されたルーフデスの武器のうちの一本だ。
「構わん。二本のウチの一本じゃしのー。そも、我は竜人族ぞ。武器に頼らずともドラゴンの炎で何モノも駆逐してくれるわー」
ペーッペペペッ!
「きったね!」
唾を吐くな!
そして、その仕草は火を噴くあれだろうが、まったくもー。
「で、ではありがたく──」
「うむ。折れたほうですまんが、腕の良い鍛冶屋にでも見せるがよかろう」
「ははー!」
そう言って破片と折れた部分を仰々しく渡すと、恭しく受け取るアークスちゃん。
つーか、ルーフデスめ……さっきまで泣きべそ欠いてたくせに、な~にを偉そうに。
なんか、聞きなれない言語で祝福を与えるような文言までとなえていらっしゃるしー。
「──……うむ。これで、剣の正式な所有者は……アークス、お主じゃ」
「ありがたき幸せ。竜人族の里には後ほど貢物を寄越しますゆえ」
「うむうむ。そうするがいい────……時にアークスよ」
「はい?」
ん?
まだなんかあんのかな?
「うむ。そのじゃ──あー……」
「どうされました?」
「う、うむー。………………屋根代の話どうなっとるかのー?」
ずるっ!
い、今のはさすがに私がずっこけたっつの!!
「アンタ、その聖剣って屋根代の替わりかーい!」
「ちゃ、ちゃうわー! こ、これはじゃなー……」
あーはいはい。
そういうことにしたげる。
つーか、もうちょいイイタイミングとか場面なかったの?
見てよ。厳かに聖剣を授けときながら、いきなりな庶民的な発言に議会の連中がついていけずにシ~ンと静まりかえってますがな。
「た、大使殿。とりあえずその件は後程──」
さすがにアークスがその場を収めたけど。
おーい、この微妙な空気どうしてくれんだよ~。
「はぁ、アンタらしいっちゃらしいね」
「るーふですらしー」
きゃっきゃとルルちゃんには受けとから良しとしてやろう。
しかし、まぁなんやかんやで、後日──晴れてルーフデスの屋根代は免除されたとかなんとか。
いや、もうね。
……いっそ、ルーフデスの名を返上でして、ルーフどう? でいいかもねー。
──そうして、こうして、首都での用事(?)をすべて終わらせた私は久しぶりにのんびりすることにしたのであった。
これからのこともあるしね、まずは、サウナサウナ~♪