異世界チハたん(九七式中戦車)無双〜聖女召喚されたけど捨てられました~   作:LA軍

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第86話「海路へ」

「……でもルルはFかー」

 

 たしか、

 サンズベルトだと私はいきなりDランク認定してもらったのになー。

 

「貰えただけでも奇跡みたいなもんじゃぞ? あのアークス、ちゃんと約束は守りよったわ、あとこれもじゃな」

「あ、通行手形」

 

 そういや、くれるって言ってたね

 

「忘れるな、馬鹿者。……これ一つで、殺し合いが始まりかねん代物じゃぞ」

「げ、マジかー」

 

 ま、まぁ、フリーパスだもんあー。

 しかも、元はいろんな国がゴチャ混ぜ国家のフリーパス。……改めて考えるとスゲーな。

 

「持っとけ」

「あいよ」

 

 ぽっけにゴソゴソ。

 

「いや、もっと金庫とかにしまわんか!」

「えー。いざって時に出せないじゃん」

 

 こう。この手形が目に入らぬかー……!

 

 ってやつ。

 茨城県の尻の穴様のごとくね!

 

「水戸の黄門様な? 茨城県民に刺されるぞ、お主」

「何もいてないんですがー」

「だから、顔にでとるわ」

「どんな顔?!」

 

 肛門な顔ってこと!?

 殴るわよ!

 

「ちょ?! な、なんで振りかぶるんじゃ!」

「アンタが失礼なこというからっしょ!」

 

 誰が、アナルフェイスか!

 

「言っとらん言っとらん、一個も言っとらんわ!!」

「ほんとにー。……まぁ、いいや。つーか、アンタ、日本文化に馴染みすぎでしょ」

 

 水戸黄門まで見てんのかよ。

 つーか、あれ、とっくに終わってるぞ? まさか再放送とか見てる系?

 

「一般知識として、じゃ」

「そんな一般知識しらねーよ」

 

 コイツは知らんかもしれないけど、今の若い子に「この紋どころがー」ってネタ通じないんだぜ? 知ってた?

 つーか、2011年に終了とかオネーサンびっくり!! あれって終わるもんなんだねー。いやはや、歳を感じるわ。

 

「何をがっくりしとるんじゃ? 相変わらず、忙しい奴じゃのー」

「なんでもいいでしょ。っていうか、アンタもしかして、そっちが目当てでついてくるんじゃー……いや、目ぇ逸らすなや」

 

 ったくもー。

 まぁ、日本文化は魅力的だし、わからなくもないけどね。

 

 私だって、あの世界の便利さを知っている今、ガソスタ能力は絶対に手放せないもん。

 

「しょ、しょうがないじゃろ。この味とか知ったら、そう簡単に手放したくはないわい!」

「正直ねー」

 

 ビールと中華まんを手に、力説するルーフデスを見て苦笑するしかない。

 

「ま、さっきも言ったけど、私は別にいいよ。アンタのこと割と気に入ってきたし」

「そりゃ光栄じゃ」

 

 最初の出会いが最悪だったけどねー。

 

「ま、そういうことなら、改めてよろしく──」

「ん? お、おう。よろしくの」

 

 握手握手ー。

 

「…………なんじゃろ。我、今人生……もとい竜生においてターニングポイントだった気がしてるんじゃがー。あと、握手が悪手に空目したぞ」

「何言ってんの?」

 

「何言ったんじゃろのー」

 

 ほんとほんと。

 

「それよりも、ついてくるなら、色々聞いていい?」

「ん? 我で分かることならなんでもええぞ」

 

 ビールをもう一本開けつつ、

 

「実際、魔族領ってどんな感じ? このままいける?」

「おっふ……。そこからか」

 

 ズルリとずっこけかけたルーフデス。

 辛うじてビールを零さないままに、一口ぐびり。

 

「……ふーむ。そうさのー」

 

 顎に手を当てつつ。

 

「我も実際には行ったことがないので、伝聞程度じゃが──……。寒い地方じゃの。それと、広大な土地はあるが痩せておるし、冬には海も凍る。……魔物も多く、正直住みやすい土地ではないと聞く。……それが故に、しゅっちゅう人類の文化圏に侵入しているそうじゃー」

 

 へー。

 海が凍る、寒い土地。

 

 

 …………ソ〇(れん)かな?

 

 

「え?……魔族領ってそんな場所?! っていうか、ルルってばそんな遠くからきたの?」

 無理くね?

「じゃから、それも含めておかしいから調査したいと言っとるんじゃ」

 

 あー。

 たしかにおかしいな。

 

 魔族が主に出没するのは・陸でつながった例の王国だ。

 あの国が魔族領の平坦な土地を蓋をするようにして抑え込んでいるとかなんとか、それ以外は急峻な地形ばかりなんだって。

 

「そりゃ、たまには魔族の商人だの武者修行だのと、変わり者もおるぞ? まぁ、どこに行っても、めちゃくちゃ嫌われとるが……」

 

 あー。

 まーね。

 

 今は王国が抑え込んでるけど、昔は結構ヤんちゃだったらしいし……。

 まぁ、昔は昔だと思うし、ぶっちゃけどーでもいい。

 

「そんなわけで魔族領はある意味、陸の孤島じゃ──まぁ、孤島というには広大すぎるがの」

 

 まぁ、イメージは分かる。

 

「そんな国にルルの助の親元を捜すともなれば──。この国経由として、主に二通りかの。前にアークスと話した『王国』経由で行く方法と、」

「それはパース」

「う、うむ。──で、もうひとつは海路じゃの。それが一番確実じゃて」

「ほう」

 

 海路とな?

 つまり──海。

 

 インザオーシャ~~~ン♪

 

「…………え? チハたんで?!」

「いや、別にチハたん限定ではないが、それが確実じゃ。この国の北端にデカい港町があったはず。そこからなら魔族領近傍の人類の支配権にもいけようぞ」

 

 ぬー……。

 なるほど、海かー。

 

「なんか他に手段ないの? つーか、それも含めて、魔族領って無茶苦茶遠いのでは?」

「遠いぞー。魔族でもない限り、人類の文化圏からは踏破は困難な厳しい道のりじゃて。ま、空でも飛べるなら別じゃが──……いや、我は飛ばんぞ? あの辺はドラゴンでも厳しい気候に、なにより無数の魔物の群れがおる」

 

 ちっ。

 飛んでいく案は無理か。

 

「じゃー、マヂで海路だけ?」

 正直乗り気じゃな~い。

「陸路経由の王国が嫌となれば、それしかないのー」

 

 げー。

 じゃあ、海一択かぁ……。

 

「んー。ちょっと考えるわ。一応、目的地はそのデカい港町とやらにするけど」

「うむ、それがいいじゃろ。街道沿いを行けばそう時間はかかるまいて」

 

 ──りょ。

 

(しかし、参ったなー)

 

 ビールをグビグビ飲んでいるルーフデスをよそに、どうしたもんかと思案する。

 

 ん?

 なにをそんなに悩んでるのかって?

 

 そりゃアンタ。

 海っていったら船でしょ?

 

「酔うのか?」

「いや、酔わないと思うけど──ほら、なーろっぱ世界の船っていったらあれでしょー?」

 

 くさい、きたない、機関銃が使えない

 

「その3Kでしょ?」

「いや、最後のがわからんが──まぁ、一般的にはそうじゃなー」

 

 ほらー。

 やっぱり。

 

「あと、まぁ、女子供が早々乗るもんではないの」

「あ、やっぱし?」

 

 こういった世界の海って、やっぱ男社会だよねー。

 

「うむ。水夫の海兵も基本的には女じゃ──当然、海賊も私掠船もおるし、そいつらも男じゃろうな」

「げー。そんなとこに私みなら美人が言ったらヤバいじゃん」

 

 三日で孕まされる自信しかないぜー。

 

「その自信は捨てていいが──……って、殴るモーションやめーや」

「失礼なこと言うからでしょ!」

 

 まったくもー!

 

「いや、失礼かどうかは置いておき──ちゃんとした客船に乗ればよかろう」

「客船~?」

 

 ……あんの?

 

「そら、女子供とて、海路で旅をすることくらいはある。他国や他の大陸に移民だっていきよるし、その船便もあるに決まっておるが」

「あーそりゃそうか。なるほど、客船ね」

 

 あの氷山に当たっちゃう奴ね。

 

「もっとマシな例えはないのか?」

「他に客船のイメージってないもん」

 

 だから、嫌なのだ。

 海は……。

 

「なにより、チハたんは絶対載せらんないよね?」

「無理じゃろうのー。そりゃ、大型船なら積み込める船もあるじゃろうが、さすがにデカいし重いしで難しいとおもうぞい」

 

 むー。

 そこなんだよなー。

 

「チハたんがなかったら、私ただの美人だよ?」

「また自分で……。しかし、そんな心配はせんでよかろう」

 

 はい?

 ど~いう意味かなー??

 

「い、いや悪い意味ではなくてじゃ。お主にはルルがおろう」

「ルルが?」

 

 チラリ。

 

「むふーっ」

 

 預けた14年式を腰にして、ドヤ顔。

 あー……確かに、この子一人で一個師団くらの戦力はありそう。

 

「むろん、我もな」

「二個師団になったわ」

 

 うん。

 

 なるほど。たしかにこの二人がいるなら、『ぐへへ、お嬢ちゃん~』な展開になっても問題なさそう。

 そも私だって、武器もってるし、簡単にはやられないか。

 

「了解。そういうことなら、海路もありだね」

「じゃろ? まぁ、お勧めは普通に陸路なんじゃがのー」

 

 やだー。

 

「さよけ。まぁ、それなら港町に向かうがよいじゃろ」

「オッケイ。そうと決まればチハたんでいけるとこまで行こっか」

 

 どうせ街道沿いだし、のんびり行こうぜー。

 

「ホントお主はまず行動タイプじゃのー。しかし、まぁ、魔族領にいくのはたしかに理に適っとるか……。どうも、先の首都での騒動も含めて、裏にはなにかしら魔族あたりの思惑潜んでいる気がしてならん」

 

 そうかなー?

 

「それホントに魔族? やりかたとしてはまどろこしくくない? そもそも、首都とか関係ないし……」

「そこはなんともな。じゃが、急な活発化をみても、偶然ではなかろうて」

 

 まぁ、ゴルドの大穴の『獣の王』の封印の件とかあったしねー。

 あとはオーガの巣穴でみた転移ッポイ魔法陣のそれ。

 

「──だけど、まぁいいや、私は興味ないしー」

「おいおい、お主の娘の話じゃろうが」

「それこそ関係ないよ。ルルはルル──それ以上でもそれ以下でもないもんねー」

 

 んね~♪

 

「にーっ」

 

 んふー。

 可愛い可愛い、ぐりぐり。

 

「やれやれ、なんだかんだと親バカになっておるわ」

「やかましいよー」

 

 つーか、別に人類がどうのとか、魔物の異変とか超どうでもいい。

 

 それで魔族に滅ぼされんだとしても、勝手にしてどーぞ。

 そもそも、そういうのを止めるのは、私の仕事じゃない。それは「えみり」の仕事だもんね。

 

 

「……えみり、か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そういや、アイツどーしてんだろ?

 

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