異世界チハたん(九七式中戦車)無双〜聖女召喚されたけど捨てられました~ 作:LA軍
「ふわっぁぁ、よくねたー」
「良く寝たのー」
お目目しょぼしょぼ。
大きく伸びをして、みんなで揃って起床──ガソスタの事務室越しに太陽を拝む。
「おー、今日もいい天気」
「快晴じゃのー」
「おひさままぴかぴかー」
んねー。
……まぁ、そのくらい滅茶苦茶寝てたわけだけど、急ぐ旅でもないしね。
なので、さらに3人で事務室のソファーからアホ面で空を見上げてぼけらーとすること20分。
そのあとで、ようやくシャコシャコシャッコと、皆でそろってハミガキ~♪
んぺっ!
「……さーて、今日も行きますかー」
顔も洗って、軽く化粧だけ済ませると、
髪を軽く束ねた私は、その勢いで、事務室を出ると、中々に強烈な日差しが顔に当たる。
あっちー……。
「このまま海に言ったらもっと、日差しも気持ちいいいのかねー」
「まーのぉ。あっちは北じゃから、多少は気温は落ち着いとるぞ」
「なら、ちょうどいいじゃん」
「うむ。まさに絶好の海日和となるじゃろうて。それに北のほうは、魚が美味いぞー」
ほほ~う。
そりゃいいこと聞いた。
「そんじゃ、魚を食べにいきますかー」
「いや、目的が変わっとるが──まぁよいか」
うんうん。
目的なんて、動くための口実みたいなもんだよ。
ってことで、
「総員乗車ぁ!」
「おうよ」「あーい♪」
さっそくガソリンスタンドを収納すると、チハたんに乗車する私達。
ちなみに、一式砲戦車のまんまでーす。
じつは最近知ったんだけど、砲塔は自由にLv1とかLv2に変更できるみたい。
なので、いつでも旧タイプのチハに戻ったりもできるけど、この日差しだし、開放型戦闘室をもった一式砲戦車のほうが気分がいいのだ。
だから、今のとこ継続でそっちにしてるー。
まぁ、難点は、外から中が丸見えなので、いきなり奇襲を受けると危険だってのがあるけどね。
ただし、その辺はルーフデスバリアーがあるから、その時はこう……。
「いう、『こう……』じゃねーからな? なにを人を盾にする算段を立てておるかー!」
「やー。だって、ほら。私ってはか弱い女の子なわけで──……いや、なんだその目は」
知ってる。
その目は知ってるぞー。
か弱くもないし、
女の子って歳でもないじゃろ──って目だね!
「な、なんも言っとら──あいだだだ! 頭ぐりぐりすなー!」
「やかましいよー。ウチのファミリーに加わるなら、私に敬意を払いなさーい!」
ぐーりぐりぐり!
「い、今の、このどこに敬意があるんじゃー! あいだだだ! あと、我は人にあがめられる竜人族ぞー」
「安心していいよ。私は八百万の神と、仏様しか信じてないから」
それだって、かなり緩い方だしね。
はい、終了ー。
「い、いったいのー。……日に日に我の扱いが雑になっていきよるわ」
「誰のせいよー」
「いや、どう見てもお主が悪いじゃろ? 我、なんも口に出してないからの?!」
「顔が言ってるの、かーおーが-!」
そして、その顔も知ってる。
そんな理不尽な! って顔だね。
「わ、わかったわかった。我が悪かった、なにが悪いのか知らんが、悪かった!……と、とりあえず、今日は北上しようぞ。なるべく、楽なルートを進むなら、街道を行けば間違いないわ」
ん、了解。
これ以上殴られては堪らんと一気に言ったルーフデス頭を撫でつつ、
車長席にどっかり座ると、ルルを膝にのっけてさっそくコントーラーを起動だぜ!
グゥォオオオオン!!
グォォォオオオオン!!
エンジン良好~!
「よーし、街道だっけ。……この道をまっすぐでいいってこと?」
「多分のー。地図は貰っておるが、縮尺は無茶苦茶じゃし、あてにはするな?……じゃが、道なりでよかろう」
オッケオッケ!!
「それだけ分かれれば上等だぞ──ってことで、よーーーーーーーし!」
チハたん、
「「「前へー!」」」
わーい!
こうして、女3人のんびり旅で北の港町に向かってレッツゴー!
朝は遅くまで寝て、昼は街道脇にコンビニを展開。
夜はちょっと奮発してお肉とかお魚とか──そして、たまに広い敷地にはスーパー銭湯なんかも出したりしちゃいながら、一路北上していったわけなので~す。
キュロキュロキュロキュロ
やははー。
快適会敵。
そんな感じで数日後。
そろそろ、目的に海岸線に近づいて来たッポイ。なんとな~くだけど、潮の香りがする気がするねー!
……ん?
その道中なんもなかったのかって?
「いやいや、そらアンタ色々あるに決まってるじゃ~ん」
こっちは美人と美少女2人の3人組だよ?
そりゃーもう、ちょっかいの嵐、嵐、雨あられよー。
とうぜん、快適と、会敵とを兼ねてたのさー♪
「……誰と話しとんじゃ?」
「向こう側ー」
「あ~ん?……向こうがどこか知らんが──それよりもさっきの盗賊はそのまま警備隊に渡してよかったのか? ギルドの方が報酬がいいらしいぞ」
「いい、いい。臭くてむさくるしいオッサンどもなんて、チハたんに乗っけたくもない」
「トレーラーに載せればいいじゃろ──と言いたいが、その辺は我も賛成かのー。そも、すでにお主はAランクじゃったの」
えへへ。
「金もあるし、小銭くらいで余計な苦労を背負うものでもないか」
「そゆことー」
なんせ道中、次々に襲って来るゴブリンだの盗賊だの、一々捕まえて近くの街のギルドに突き出すなんて、手間がかかってしょうがない。
まぁ、ゴブリンくらいなら履帯で蹴散らせばいいんだけど、さすがに人間をひき殺すのは
けど、
「そのたびに、止まって・縛って・転がして──街道の巡察帯に引き渡すだけでもたしかに、面倒じゃの~」
「めんどー」
「でしょー?」
と言いつつも、盗賊相手にはルルが無双してるけどね。
私は銃とかチハたんしか攻撃手段がないから、そういった連中相手に戦うには火力が過剰なのだー。
その点、ルルはすげーよ。
もう、会敵からの即パンチ。文字通りのワンパンですよワンパン。
ちなみに数が多くても無双は変わらず。
たとえ敵が飛び道具持ちでも、ルーフデスをタンクにして、ルルを突撃させればそれで終了です──はい!!
「──おかげ、巡察隊に名前覚えられてしまったのー」
「え? マヂ?」
まいったね。
これは、美人ハンターとして有名になっちゃった感じー?
「……どっちかっていうと、盗賊ホイホイじゃの。なにせ、女3人組でチハたんじゃろ?……比較的、治安に良いはずの街道でコレじゃから、我らは相当に目立つのじゃろうのぉ。──実際、見たか? さっきの巡察隊の連中」
さっき?
……あぁ、盗賊を引き渡した街道の警察さんね。
「見たね。……あれは、私の美貌に惚れ惚れしてたよ」
「いや、二度見はしとったが、お主ではなく、チハたんしか見とらんかったぞ?」
んな!
し、失礼な連中だね!
「ちょっと、抗議してくる!」
「やめーい!……そういうとこじゃぞ、名前覚えられるのは──」
えー。
「なんもしてなくない? ちょっと礼金が少ないとか言って毎回絡んでるだけじゃん」
「毎回絡んどるじゃないか。……我でもちょっと恥ずかしかったぞ! あと、ルルが真似するからほどほどにしとけ」
……なんで?
「なんでも、じゃ!!──っと、そうこう言うてるうちに見えて来たぞ」
「ん? なにが──……っと、っぉぉおー!!」
対空銃座について、ブチブチと愚痴をこぼしていたルーフデスが顎で進行方向の先を射す。
そこは何ということでしょう~!
街道の先、丘のように少し上った傾斜の向こう側。
その道の行きつく先には、な、なんと…………!!
「う、海だー!!」
「うみー?」
街道の先を上り切ったとき、視界が一気に開ける。
そして、地形に隠されていた風の流れが全身を貫いた!
──ぶわっ!
うっは!
潮くせー!!
「うーん、臭い! これは間違いなく、潮風の匂いだねー」
ずるっ。
「いや、一言目がそれかーい!」
あーん??
「……他になにがあんのよ? まぁ、景色はすっごくいいけど」
「なら、そっちを言えぃ」
うるさいなー。
匂いが一番気になったの!
「ながせー? あれなにー?」
ん?
くいくい袖を引っ張るルルちゃんが、眼下に広がる広大な海を指さす。
それは見渡すかぎりに青一色。
「ありゃ? ルルは初めて? あれが海だよ」
「海ー……」
むむ?
この反応はマヂで初見っぽい?
「見たことない?」
「こくり」
ほほう。
海を知らないのかー……え?
「ってことは、どうやってこの国まで来たの?」
「陸路じゃないのか? 前にも言うたがそっちが主流ぞー」
あ、そうだっけ。
「しかし、こっちが主流でもよくね? なんか街もすっげーデカいし!」
そう!
海も広大だが、眼下に広がる海に沿って広がる港町もまた広大だ!!
カランカラ~ンと抜錨をつげる鐘の音に、
ざわざわ、わいわいと、
海の男たちの騒がしい調べが風にのってくる。
「うむ。海はデカイはデカイし、輸送量も桁違いじゃが──魔物がのー」
「げっ。やっぱいるんだ」
異世界の海とくれば、やっぱり魔物か―。
「……そっちもデカい?」
「デカいぞー。一口で船を食らうクラーケンに、我らの親戚の海竜なんかもおるの。ほかにもリヴァイアサンやら、なんやらと!」
げげー。
それ、海の中で遭遇したら一発で死ねる奴じゃん!
そして、海洋恐怖症にはだいぶキツイ奴じゃ~ん!
「……なのに、なんでこんな栄えてるの?」
ここから見るだけで、大型船が数十隻に、小型船が唸るほどひしめき合っている。
「かっかっか! そりゃ、デカい奴は浅い海は好まんからのー。近海やら沿岸地域は人間の独壇場よ」
「あぁー、なるほど……」
たしかに、それはそうか。
つーか、大航海時代までは、地球の海だってそんな感じよねー。
「でも、それだと沖合は相当ヤバイってこと?」
「やばいやばい。我も見たことはないが、クラーケンにリヴァイアサンは獰猛ぞー。しかも、そいつ等同士で食い合いもしとるしの。……雑魚の人間なんぞが、のこのこと底の深~い沖まで出たら一瞬で餌食よ」
げげー。
「ってことは、沿岸をへばりつくようにして、行き来しているのね」
「そうなるのー。まぁ、快速船で一気に渡り切るという力技もないではないがな」
それは遠慮しとこ。
あ、でももしかして……。
「魔族領って沖までいくの?」
「さて、どうじゃろの。知識としては知っておるが、実際の便についてはなんとものー」
そりゃそうか。
「ま、その辺は現地で聞けばいいか」
「うむ、そうしようぞ。……ちなみに、アークス曰く、あそこはこの国一番の貿易港らしい」
「へー」
どーりで。
巨大国家の一番の貿易港というだけあって確かにデカイわー。
「よーし! そんじゃ、そのデカい街で魚を食べよう~!」
「たべるー」
魚の匂いに慣れた日本人の嗅覚には、かすかに生臭いような何とも言えない漁港のような香りもバッチリつかんでいるからね!
とはいえ、別に魚そのものはまぁ、ガソスタのおかげでそこまで困っていないけどねー。
なんせ、メガモールだせるし、コンビニでも最近はちょっとした魚なら買えるもんね。
ただ、現地の珍しい魚が見れて食べられるとなればまた話は別だ。
「というわけで──……」
グッ!
全員で拳を構えて、構えて──。
「「「チハたん前へ~♪」」」
ババーンと突き出して、そのまま一式砲戦車を爆進させるのであった。
……ちなみに、街道上の人だかりは結構な数。
もちろん、滅茶苦茶目立ってたぜ。えへへー。