『大空スバルのひまわり観察絵日記。〜我が愛しのマダオ』 作:しまうまP
【○月×日 てんき:さいこーに現実(修羅場)】
コミケでの大爆発(と、マリンのビッグサイト逃走劇)から一週間。
あの不審者騒ぎもなんとか警察の方に事情を説明して事なきを得て、我が家にはまた、いつものやかましい日常が戻ってきた。
......はずだった。
学校から帰ってきたスバルが、居間のドアを開けた時のことだ。
そこには、スバルのジャージを着てゴロゴロしているマリン……ではなく、**信じられない量のアクリルスタンドと、うず高く積まれた大量のダンボール箱**に囲まれて、必死に電卓を叩いている宝鐘マリンの姿があった。
「よし……。これだけ増刷して、アクスタのセットも付ければ、次回のコミケで確実にあと〇〇〇万円は固いわね……。ふふ、ふふふふふ……❤️」
「って、おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!! 何やってんだよあんたはーーーーー!!!!!(絶叫)」
スバルのツッコミに、ダンボールの山がガタガタと揺れた。
マリンが叩いていた電卓の画面には、あからさまに生々しい数字が表示されている。
「あ、スバルちゃん! おかえりなさぁ〜い❤️ 見て見て、前回のコミケで『大空家の日記』が瞬殺だったからさ、お姉さん、職権乱用して自費で5000部ほど【豪華限定版・おケツアクスタ付き】を増刷しちゃったのぉ〜❤️」
「5000部ぅぅぅ!?!? 自費!? どこにそんなお金あったんだよ!!! ガチャ我慢したのかよ!!!」
「そうよ! ガチャを3ヶ月分我慢して、すべてをこの『スバルとマリンの愛の結晶(同人誌)』に注ぎ込んだわ!!! これを次のコミケで全部捌けば……」
マリンは立ち上がり、スバルの両手をギュッと握りしめて、信じられないくらいキラキラした(死んだ魚の目じゃない)本物のトップアイドルの瞳でスバルを見つめてきた。
「スバルちゃん……! 私達の、本当の『結婚資金』**が貯まるわぁぁぁぁぁぁ!!!!! 新居の頭金よ!!! 2LDKよぉぉぉぉぉ!!!」
「ガチでその目的で売ろうとしてたのかよコラァァァァァァァァァァ!!!!!!!!(怒髪天)」
前回のコミケでの「結婚資金を稼ぐ」っていうセリフ、スバルはてっきり、部数を伸ばすためのマリンの悪質なホラだと思ってた。
なのに、コイツは本気だった。
本気でスバルとの結婚生活(妄想)のために、自分の同人誌をビジネスとして大増刷してやがったんだ!!!
「ちょっとぉ! なによそのドン引きした目は! お姉さん、こんなに真剣にスバルとの未来を考えてるのにぃ〜! 」
そう言って、マリンはへらりと笑った。
「な、何言ってんだよ!!!!!(爆発) 誰がこんな強引に実力行使してくるお嫁さん迎えるかよ!!!」
スバルが叫ぶ中、居間のドアがガラッと開いて、お母さんがお盆を持って入ってきた。
「あらあら、マリンちゃん、次のコミケも頑張るのねぇ。お母さん、2LDKの間取りなら、日当たりのいい南向きの部屋がいいと思うわぉ❤️」
「お母さんまで間取りの相談に乗るなァァァァァァァァァァ!!!!!!!(絶望)」
結局、大空家のリビングは、次のコミケに向けて完全に「宝鐘マリンの結婚資金調達本部」として不法占拠されることになってしまった。
スバルは、段ボールの山に挟まれながら、日記の本当の最後のページに、涙目でこう書き殴った。
◇◇◇
【スバルの貞操の危機管理:マリンがコミケの増刷分を売って、ガチでスバルとの結婚資金を稼ごうとしていた。
前回の『お嫁さん発言』が、まさか1ミリもギャグじゃなくて100%の「本気(マジ)」だったと知った瞬間、スバルの全身の毛穴から冷や汗が噴き出して、部屋の温度がマイナス40度になったのを、スバルは一生忘れないと思う。
っていうか、5000部も売れたら本当に結婚しなきゃいけない空気になりそうでマジでヤバい。
お母さん。お願いだから誰か早く、あいつのスマホの『ガチャ禁止の呪い』を解いて、物欲を全部ソシャゲに戻してください。大空スバルの貞操の危機です。】
◇◇◇
(続く)