「だから、悪かったって言ってるでしょう?」
「・・・へえー。」
「・・・私は、もう気にしてないよ?」
下校時間。そして、下校風景。大勢の生徒が帰りPTAのオジサンやオバサンが旗を持って笑顔で声をかけてくれる、いつもの風景を3人並んで歩いていた。まさか、俺が別の誰かと並んで帰るとは、夢にも思ってなかった。
しかも、女の子となんて、絶対になかった。これが、アニメの中だけで実現していると言う伝説のシチュエーションか。
まあ、嬉しくはないけどさ。
「がっ!」
拳が飛んできた。なんで!
「むかついたから。かっ!となってつい。」
「そんな、少年犯罪的動機で殴られたの!」
「・・・大丈夫?」
時田さんに貰ったティシュで、鼻を抑える。今度から”不慮の事故”を常時発動状態にしておこうか?
そんな、殺意を表していると、分かれ道がやって来た。
「じゃ、私こっちだから。また、明日ね!南?鈴音ちゃんは、縛ってでも連れてきなさいよ!」
「俺が?」
人に見られたら、大問題なんですけど?
「大丈夫よ~多分。罪はアンタがかぶってくれるから。」
「何も大丈夫な要素が無いんだけど?」
「じゃ!」
シュタッと手を上げると、日野さんは、マンションの方角へ走って行った。・・・さて。
「時田さん?」
「・・・うん」
俺は、時田さんから、一枚の紙を受け取った。それには、朝見た絵と同じモノが描かれていた。
「やっぱ、そうか。これ以外は?」
「・・・ごめんなさい。分からなかった。」
時田さんは申し訳なさそうに頭を下げるが、これだけあれば十分である。
「ありがとう。これで、確信が得られた。」
「・・・でも、どうして?」
「それは、秘密と言う事で。まあ、一つ確かなのは。」
「・・・日野さんが危ないって事?」
「ああ。しかも今夜だ。」
俺は、もう一度絵を見る。その中で、日野さんは赤い肉塊と化していた。こうなるのに俺の予測だと5分もかからないだろう。
あの力ならば、尚更だ。しかも、あの力は、俺にとっては天敵と言っても良いだろう。
「まだ、転生者共と戦った方がマシだっただろうな。」
敵が異能だったら、右手で打ち消せる。チートなら”反射”や”不慮の事故”で対応出来る。だが、俺の予想が正しかったら。
相手が”悪夢”なら?
「勝てるのかね?俺の力で?」
なんで、こんな厄介な事に首を突っ込んだのかね?俺も。
「・・・絶対に生きて帰って来てね。」
そう言ってくれる、時田さんの言葉が重かった。その後、時田さんを家まで送り1人アパートへと戻る。
時間は、多少ある。とりあえず、寝とこうか?夜は長くなりそうだから。