「ん、ん、ん、プハー!ああ、やっぱ風呂上がりは、牛乳よね。」
「ホホホ。左様でございますか。ですが、まだ就寝の時間は早いですぞ?」
「分かってるわよ。ジィ、宿題の準備をして頂戴。」
「ハイ。では、勉強部屋にて、用意させて頂きます。」
ジィは、そう言って風呂場を出て行った。あのジジイいつか解雇してやる。そう心に誓うと私は身体に巻いていたタオルを取って、服をきた。そして、メイドに夜食はいいと伝え勉強部屋のある階へと移動する。
「ハア。」
私は、エレベータに貼ってあった紙を見てため息をつく。またか。
「お嬢様。シュレッターです。」
「ジィ。ご苦労様。でもいいわ一応目を通すから。」
「左様でございますか。」
私はそう言うと、ジィと共にエレベーターへと乗り込み手紙を開く。内容は、まあ、予想通りだった。
「また、”バニングス”の事ですかな?」
「ええ。私を養子に取りたいそうよ。大事な娘の影武者にでもするつもりなのかしら?」
「でしょうな。または、下手な事をする前の人質か・・・どちらにしろ信用なりません。」
「全く。いつまで、家に2年前の誘拐事件の犯人疑惑が付き纏うのかしらね?」
「まあ。あの”バニングス”と”月村”のご令嬢様が2人揃って誘拐されましたからね。内部犯疑いが強いのでしょう。」
ジィの言葉に私はウンザリすると、勉強部屋の階へと到着した。
「はあ、じゃあ、今日の宿題を終わらせて来るわ。」
「家庭教師の宿題もお忘れなく。」
「分かってる。ジィも迷惑な電話やメールの処理をお願いね。」
「ハイ。では、お休みなさいませ。」
恐らくまた、2時間後辺りに背後から現れるのだろう。
「さーて、始めますか!」
腕をまくると私は、机に向かった。
二時間後。
「ふむ・・・サトルは、きっとハツコが憎かったのね。きっと、この後惨劇が起こるわ。」
国語の問題をとき終わり、一息付くと、私は、机に突っ伏した。もう今日は動きたくない。
時計を見ると、11時を刺していた。予定より少し遅く終わったらしい。
「ファアア~ねむ・・・。」
静かな室内を歩き近くの電話を取る。
「・・・もしもし、トメさん?部屋に毛布持ってきてくれる?なんか寒いわ。」
何故か、今日はとっても冷えるわね。もうすぐ夏のはずなのに・・・息も白くなってるし。
そう、思っていると、違和感を覚えた。
「もしもし?トメさん?聞こえてる?トメさん!」
いくら、呼びかけてもトメさんの返事は、帰って来なかった。
「故障?」
いや、それは無い。ここのメンテナンスは週1でやってもらってるし。どうなってるの?
「ジィ!いないの?」
呼べばいつでもやって来るジィすら来ない。私は、怖くなって、部屋を出た。すると。
「なに・・・・・・ここ。」
目の前には、学校にグラウンドが広がっていた。・・・確か、勉強部屋はマンションの23階だったはず・・・。
「今晩わ~。」
そんな、声がしたので上を向くと、一人の子供が、笑って木の枝に腰掛けていた。そして、私は見た。
「なんで・・・どうして?」
冷たい空にはとっても透き通った星々と輝く黄金色の月が浮かんでいた。
月は、少しも欠けていない見事な満月だった。
そんな、私を見て子供は笑う。両手を広げ楽しそうに言う。
「ようこそ!墓地へ!グレーブヤードへ!アタシは、ここの管理人兼葬儀人。さて、お前もここで、人生を終了しましょう?」
すると、どれと同時に暗闇から、昨日の黒犬が2匹も現れた。
「ヒィ!」
私は、悲鳴を上げると、学校の中に逃げ込んだ。何なの?一体何だって言うのよ!
「逃げた?」
少女は、そう言って、首をかしげると直ぐに納得した顔になった。
「って、事は、もう一人の方だったか。・・・まあ、良いや。アタシの殺しの邪魔をしたのは変わりないしね。」
そう言って、残酷な表情を作った。さて、今回の獲物ちゃんは何分もつかな?
そう小さく呟くと楽しそうに女の後を追った。