決着。
「うわあああ!死ねぇ!!!」
「フシュ・・・」
私の地鉄剣を肉切り包丁で受け止める殺人鬼は、流れる電流もなんのその。遠慮うなく私を切りつけてきた。
それを紙一重でかわし、再び切りつける。今度の狙いは、殺人鬼の上にいる余世だ。
「死ね!!!!」
「ケケケ・・・ムダ・・・」
しかし、殺人鬼は、巨体を動かしてかわす。見かけによらず俊敏なので気持ち悪い。
「ハアハア・・・チィ、ちゃんと当りなさいよ。悪は滅びるのよ?」
「フシュ・・・」
さっきからこのやり取りをずっと続けているものの、事態は全く進展していなかった。いや、長引けば、体力の減っているこっちが不利だ、それに外で戦っている南も負担が大きくなるだろう。なんとか、早く終わらせないと。
「ねえ、一つ良いかしら?アンタ、なんで人を殺したりしてんの?」
「ドウデモイイコト・・・」
「いや、気になるわね。そんな力が有れば、たくさんの人が助けられるんじゃないの?」
「・・・オマエニハ、ワカラナイ。・・・アタシノジンセイハ、最アクダった」
すると、余世は、ゆっくりと”マッド・ブッチャー”の上に立った。見た感じは完全に焦げ付いていて、不気味だったが、その目には、どうしようも無い憎悪が浮かんでいた。見た感じは、私より年下の子に一体どれだけの憎しみが渦巻いているのだろうか?
少なくとも私は、分からなかった。
「騙サレ、ステラレ、また、騙され。サイアクだった。死んだトキハ、ココロからヤスラゲた。ナノニ・・・また、人生が・・・シカモわけのワカラナイチカラをモラッテ・・・キモチ悪がられて・・・憎い・・・皆憎い!コロシテヤル・・・コrス・・・ああああああ”!!!!!!!」
一つ分かった事がある。超能力者って、ヤッパリ解からない。でもこの子の人生が最悪だった事は理解出来た。
この子は、未来の私の姿なのかも知れない。”日野”も”バニングス”から裏で大きな被害を受けてきた。分家と言う事で本家を守るために盾になり、他の家を攻撃する矛にもなってきた。その為”日野”は、多方面から怨みを買い様々な攻撃を受けてきた。
裏の”バニングス”家の事を知らない奴らから、悪の象徴として。まるで、身代わり人形の様に。
「コロシテヤル・・・・コロシテヤル・・・コロシテヤル・・・ああああああ”!!!!!!!」
この子の人生もそうだったのかも知れない。他の人間の盾になって、利用価値が無くなれば捨てられる。
捨てた奴は、平然とした顔で生きて行く。最悪な世の中で生きてきたのかも知れない。そして、訳が解からないけど、また、やり直そうとした時に超能力に目覚め、周りから拒絶され完全に狂ったのかも知れない。
私も今は夢の中だとは言え、南の力の一部を使って戦っているけど、この力は、はっきり言って怖い。人間をたった一回で丸焦げに出来る電流を出せるなんて、本当に恐ろしい。もし、南の事をよく知らず、この力の発動を見ていたら、恐らく絶対に避けていただろう。漫画などで、過ぎた力は人を孤独にする。と言う言葉があるけれど、まさにその通りである。
「ねえ、ちょっと良いかしら?アンタのその絶望の一旦には、その超能力が関わっているのよね」
「あああああ””!!!!!!!」
「今、外で戦ってる奴。南って言うんだけどさ、アイツも超能力者なのよね。知ってる?アイツ今でこそ私や鈴音ちゃんと話してるけど聞いた話じゃ、転校してきて一年間ずっと、一人で誰とも関わらずにいたらしいのよ」
「ダカラ・・・ドウシタ?」
「・・・アンタと同じなんじゃないのかなと思ってさ。大きな力を持っているから孤独で誰とも関わらない。いや、怖いんだと思う。拒絶されるのが、奇異の目で見られるのが・・・。」
「アイツとワタシはチガウ。絶望シタモノがチガウ・・・」
でしょうね。でもさ、もしアイツがアンタと同じ理由で暴走でも起こしたら、最悪な事になるわ。全身から電流を流す奴にこの国の法律で対応したら一体どれだけの被害が出るんでしょうね。・・・だからさ、私は・・・。
「アンタ程度の奴に負ける程情けなくないし、絶対になんとかなるって思ってる。アンタは南の反面教師よ」
「ソウ。ナラドウスルノ?」
「アンタを倒して更生させる。超能力者だから、気持ち悪がれるって言う幻想をぶっ壊してあげるわ」
「アハアh・・・所詮はコドモのカンガエね・・・」
「笑うと良いわよ。でもね”日野”はね結構約束は守るのよ?」
私は、そう言うと心の底から念じた。最強の奥の手を出せと。南ならそのくらいの武器ぐらい持っているだろうと念じて。
すると、何かが現れた。それは、一枚の鏡だった。そして、その中にあるのは1本の螺子。
”却本作り”その知識が脳内を駆け巡った。本来なら絶対に出せる訳もない物。何故出たのかは分からなかったけど。
「使わせてもらうわよ?」
「ナンデ・・・タイヨウノ・・・鏡が・・・あノコドモにアタシが共感したとデモ・・・」
余世が、何かを言っているが、空気を読まない事に定評のある私です。
「フシュ・・・」
自らの主の危機に動いた”マッド・ブッチャ”の肉切り包丁を恐れずそのまま突っ込んだ。最初は、左腕が私から切り離された。
激痛が走ったけど関係無い。所詮は夢なのだ。次に、胴に包丁が食い込んだが構わず。進む。そして・・・。
「アアアアアアアアア!!!」
「そんな・・・」
私が真っ二つになるのと同時に”脚本作り”の螺子が余世に食い込んだ。
「やった・・・」
薄れゆく意識の中で私は理解した。つまり今本体の方にはあの太さの螺子が突き刺さっている状態なのだろう。・・・
そりゃ、ジイも怒るわ・・・。そうして笑うと同時に今度こそ意識は消えて行った。
最近パソコンの調子が良くないので夢夜の殺人鬼編を最後までだそうと思います。これからも少し間があると思いますがよろしくお願いします。