とある市民の自己防衛   作:サクラ君

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主人公。やっと活躍!


第22話 破壊と自己保身

さて、俺の目の前には、まるで、某光の巨人が出てくるべきクラスの敵が立っている。”ヨトゥン”雪の女王の切り札にして、一般的な人間には手出しも出来ない、絶対的な力の塊である。

 

「さーて、日野さんには、強がったけど・・・どうするかな?コレ」

 

体の巨大さは元より俺の力は元々自己防衛第一。その上どうにか出来る有一の能力である”大嘘憑き”は、使用不可に等しく”不慮の事故”は・・・・・・・・・とある理由により使用出来ない。

 

「せめて、日野さんを消せれば・・・」

 

俺は、両腕で抱えている日野さんを見た。腹部には太い螺子が食い込んでおり、猟奇殺人の被害者の様な感じになっている。

まぁ、そのおかげで、黒服や武装メイドさん、バケモノ爺さんに追いかけられた訳だが。

 

「ォォォ!!」

 

突然”ヨトゥン”は、俺の体より太い腕を俺に向かい振り下ろしてきた。巨大だが、動きはけして緩慢ではなく、むしろ速い程だ。

 

「クッ・・・地鉄の盾!」

 

そう言った瞬間、黒い塊が盾の様に広がった。前回と違い今回は、砂場のある学校である。厚さは、昨日の比じゃない。

だが・・・それは甘い考えだった。

 

「ォォォォォォォ!!!」

 

”ヨトゥン”は、すぐさまに反対側の腕で再び殴ってきた。そして、また殴る。

 

「ォォォォォォォ!!!!(僕は、コレが壊れるまで殴るのを止めない!!)」

 

まるで、そんな声が聴こえる。幻聴か。

 

「”ヨトゥン”って、ここまで、頭が良かったか?」

 

俺が知っている”ヨトゥン”は、少なくともここまでじゃ無かったはずだ。つまりこの”ヨトゥン”は、俺の能力と同じく強化されたモノと言う事か。厄介な。

 

「だが、所詮は、力押し第一主義の巨人だ。このままガードしていればチャンスは来る」

 

そう。いくら、殴るスピードが上がり腕が何本に見える様になったとしてもだ。怖いよ~。

 

「ォォォォォォォ!!」

 

すると、”ヨトゥン”は、突然殴るのを止めた。

 

「なんだ?知能が付いた分諦めが早くなったのか?」

 

だが、それは甘い考えだった。突然、地鉄の盾が何かに吸い寄せられる様に引っ張られた。そして、俺から完全に引き離されどこかへと飛んで行った。その先には黒い球体が浮かんでいた。って・・・。

 

「”欲望”だと!」

 

俺は、唖然としてその球体を見上げた。バカな!有り得ない!って、言うよりなんで”ヨトゥン”がそんな能力を使うんだよ!

 

 

”欲望”その力は、ズバリ、相手の能力をコピーするモノである。しかもその方法は、あの球体に吸い込むだけと言うチートな力だ。と言う訳で、アイツは今から”超電磁砲”の力が使える訳なのである。アハハ・・・笑えねー。

 

「ォォォォォォォ!!!!!!」

 

そして、”ヨトゥン”は再び咆哮を上げると、空が消えた。その代わり見えるのは、大量の銃器。

 

「・・・ガンズウォール」

 

ガンズウォール。読んで字の如く、銃の壁が一斉に対象に向かい発泡すると言う荒技である。原作では、確かこれの100分の1位の規模で”ヨトゥン”の頭を消し飛ばしてたっけ?

 

「・・・・・・」

 

しかも、”超電磁砲”の力を加算しているようで、銃口は皆青白い光を放っていた。単純計算にして”超電磁砲”×1000000位か。

アンナのをまともに食らったら、体すら消し飛ぶだろう。原型すら残るのか怪しい位だ。いや、無理だろうな~。

 

「ホホホ・・・お困りのようですな」

 

絶望的な状態に浸っていると背後から聞きなれた声が聞こえてきた。ジジイである。

 

「うん。正直ピンチです」

 

「そうですか。それはそれは。流石のジィもあのクラスの巨人は骨が折れますぞ」

 

ジジイは、ホホホと笑うと巨人を見上げた。つうかアンタ、アレをどうにか出来るのか?

 

「無理ですな。被害ゼロと言うのは、不可能です。少なくともお嬢様が死んでしまうでしょう」

 

「そうだよな・・・まるで、被害さえ出せば、アレを倒せる様な言い方だけど・・・」

 

「ですが、アナタには、それが出来るのでは?」

 

「どうして、そう思うんだ?」

 

「勘で御座います。昔から言うでしょう?女と爺さんの勘は鋭いと。何か出来る事は御座いませんか?」

 

「その、とんちんかんな格言は放っとくとして、一つ頼みたいことがある」

 

俺は、そう言うと、日野さんをジジイに渡した。ジジイは直ぐ様日野さんの脈を取ると安心した表情になった。

 

「生きておりおますな。この螺子は?」

 

「その螺子は絶対に外さないでくれよ。日野さんが死ぬかも知れないからな。日野さんを抱えて、出来るだけ遠くに逃げてくれ。良いか絶対に遠くだ。じゃないと即死するかも知れないからな」

「ほう。分かりました。では、ご武運を」

 

ジジイはそう言うと、明らかに人外のスピードで直ぐ様小学校から出て行った。本当にあの人は人間なのだろうか?・・・まあ良いか。

今は、あの巨人が先決だ。

 

「さーて・・・チョットばかし本気で行くから覚悟しろよ?」

 

どうやら、さっきの会話の時間でチャージが完了したらしく、空全体が、まるで朝の様に青く輝いていた。これだけの事が起こっているのに誰も来ないと言う事は、やはり結界の類が張ってあるのだろう。

 

「ォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

名付けるのなら、”超電磁砲包囲壁”と言った所だろう。まさに破壊の境地いや、消滅の形と言った所か。空が降って来る。そんな感じだ。

最早、触れた場所は破壊ではなく消滅してゆく。単純に力の破壊がそこにあった。・・・だが、俺の能力は自己保身の為にある力だ。

 

「墓穴を掘ったな。・・・学校が消滅してくれたおかげで、狙いが絞れたぜ。」

 

”大嘘憑き”に継ぐ俺の能力の中でも上位の力”不慮の事故”。実は、この力はまだ、コントロールが不十分だった。それ故、日野さんを近くに置いたまま発動すると、最悪の場合、日野さんは昨日の本棚の様に砕け散る可能性があったのだ。まあ、それだけなら別に良かったのだが、今回日野さんは、夢の中で戦っていた。つまり本体が死ぬとどうなるのか分からなかったのだ。それ故戦闘中も日野さんを

”大嘘憑き”で消すことが出来なかった。どうやら、俺の力は、仲間がいると効果が半減する仕様らしい。

 

「だけどな、日野さんがいなくなったおかげでやっと本気でやれる。それにお前は、学校を消した。どう言う事か分かるか?」

 

光が俺に近付く。だが、これは俺の勝利の光だ。”不慮の事故”は対象を選べない。でも、対象が一つしか無かったら?簡単だ・・・。

 

「自分の力で消し飛べ!”不慮の事故輝めきバージョン”!!」

 

 

 

 

全てが終わった後には、その場には、一人の少年しか残らなかった。本当に。たった、一人しか。

そこにあった建物は消え失せまるで、空き地の様な虚しさを醸しだしていた。

 

 

 

 

こうして、殺人鬼との戦いは、完全に終了した。

 


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