とある市民の自己防衛   作:サクラ君

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番外編 とある悪意のナイトメア(後)

 

 

「『世の中にはさ、2種類の人間しかいないんだとボクは、思うんだよ』」

 

そいつは、そう言うと私の両親を踏みつけた。既にグチャグチャになっていた両親は、軽い水音しか出さなかったが。

 

「『さて、じゃ問題だ。キミは、どっち側かな?』」

 

「『ボクと同じかな?それとも違うのかな?』」

 

「『まあ、良いや。』」

 

「『答えは、今度聞くからさ』」

 

 

 

 

俺が、病院に到着すると、院内は、真っ赤に染まっていた。一体何があったなんて分かる訳もない。

 

「なんだ、こりゃ・・・。」

 

俺は、拳銃を抜き中に入る。既に入口の自動ドアは、開きぱなしになっており、まるで化物の口の中に入っていく感覚がした。

 

「・・・・・・。」

 

2日に1回は、お世話になっている受け付けカウンターに進むとそこも真っ赤に染まっていた。そして、その近くには、何かの塊が転がっている。

 

「・・・・・・」

 

俺の中の感覚がそれが何かを伝えた。

 

「死体か・・・」

 

殆ど人間としての原型を止めていなかったが、香る内臓の臭いと刑事としての感覚からそう判断した。被害者は、女性。死因は、何かに食い殺された用だ。

 

「ッ!・・・・・・・・・夢ちゃん!」

 

俺は、急いで、エレベーターに向かうその間にも同じような死体が、転がっていた。間違いない。犯人が、ここに来ているんだ。エレベーターに到着しボタンを連打するが・・・。

 

「クソ!」

 

配線が切られているのか、全く反応しなかった。

 

「階段を・・・」

 

俺は、急いで非常用の階段を目指す。真っ赤な水溜まりを踏みながら非常階段の前にやって来ると少し笑いたくなる光景がそこには、あった。

 

「グルグル・・・」

 

「ガア!」

 

テレビでしか見たことの無いような巨大な黒い犬が、何匹もそこにはいた。口からは、真っ赤な何かを滴らせ何かを貪っている。

 

「うっ!!!」

 

その何かを見て一気に吐き気がこみ上げて来た。

 

『また、アナタですか!いい加減にしてください!』

 

『全く最近の刑事さんは・・・』

 

そんな言葉を毎回かけて来た江頭さんは、物言わぬ肉塊に成り果てていた。彼女の近くでは、小さな肉塊が転がっていることから恐らく最後まで子供を守っていたのだろう。全く彼女らしい最期だ。

 

「畜生!くたばれ!!!!」

 

犬に向け5発の銃弾を浴びせる。

 

「キャン・・・」

 

「ガ・・・」

 

犬は、頭を砕かれ動かなくなった。俺は、死んでいる事を確認すると新しく銃に弾を込め階段を駆け上がった。

 

 

 

 

 

結果的に言うとあの犬は、まだまだいた。あの銃の音に感付いたのか集まってきた犬を8階に到着するまでに7匹も仕留めた。全く間に合わなかったらどうするんだ?

 

「待ってろよ。」

 

俺は、ゆっくりとした足取りで夢ちゃんの病室を目指す。拳銃の中の弾は、後1発しか無いからだ。

 

「ゲームじゃあるめえし・・・まったく・・・」

 

残念ながら、現実にはそこら辺の箱に弾は入っていない。

8階も真っ赤に染まっておりナースステーションや病室には、食い殺された亡骸が転がっていた。恐らく犯人は、この病院の配線を切り外部との連絡手段を断ち切り出入口を封鎖した後大量の犬を送り込んだのだろう。

 

「どんな手際のよさだよ」

 

外部に一切気付かれずそんな無茶苦茶な事が出来る。

 

「ん?」

 

そんな事を考えていると、夢ちゃんの病室の前にたどり着いた。俺は、拳銃を構えゆっくりドアを開いた。

 

「ッ!!」

 

「夢ちゃん!良かった無事だった」

 

病室の中のベッドに隠れる様にしていた夢ちゃんを見つけた。俺は、安心するように声をかけようと近付く。

 

「大丈夫だよ・・・もう安心していい」

 

「駄目・・・来ちゃ駄目・・・」

 

しかし夢ちゃんは、何かに怯える様にそう言った。

 

「?」

 

そんな時だった。突然背中に熱が走ったのは。

 

「ガッ・・・何だ?」

 

身体に力が入らず、逆に抜けてゆく。そして、振り向くと・・・。

 

「まさか・・・お前が・・・」

 

犯人は、ニタリと笑うと言った。

 

「そうですよ“先輩”」

 

新入りは、そう言うと更に銃弾を打ち込んだ。どうやらサイレンサーでもついているのか、音は全く聞こえない。

 

「どうしてだ・・・どうしてお前が!」

 

「どうして?決まっているじゃないですか?可愛い犬達の餌の時間ですからですよ?」

 

「犬?」

 

新入りは、軽く笑うと狂った様に言う。

 

「知ってます?古代では、犬は人肉を喰らう時代があったそうなんですよ?人の身体って実は、栄養価が高いんです。戦時中でも犬は人肉を喰らって生きていたぐらいですしね。古文などでもよくあるでしょう?」

 

「・・・狂ってるぞお前・・・」

 

「いいえ、僕は狂っていませんよ?だってそうじゃないですか。」

 

そう言うと新入りは、ぐにゃりと表情を歪めた。

 

「だって。僕は“人間”なんですよ?欲望に従うしかない!そんな正直な生き物なんですよ?だったら、自分のワンちゃんに良い物を食べさせたい!そう思うのも当然じゃ無いですか!アハハ!!」

 

笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い笑い。

狂った様な笑い声が響く。

 

「と言う事は、これまでの事件も・・・。」

 

「さぁ?これからエサになる動物に話すことなんてないですよ。」

 

新入りは、そう言って何かを吹いた。すると周りにいた犬たちは、一斉に俺へと群がって来た。

 

「う・・・うわぁぁぁ!!!」

 

肉を食い千ぎられる感覚を感じながら“俺”は死んだ。

 

 

 

 

きっかけは、とある占い師に出会ったことだった。

 

その占い師は、出会った瞬間俺を虜とした。

 

絶対的何かがそこには、あった。

 

「『好きな事をすれば良いよ。』『君は、人間なんだから、悪意に逆らうなんて無理だよ。』」

 

人は人を殺す事をよく考えるが、実際に行うものは少ない。

人を喰う事を考える事は少ないが、緊急時には、喰らう。そこに悪意は無い。

 

矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾矛盾。

そんな、事の答えをあの人は、教えてくれた。

 

単純だったよ。僕は、犬が好きだ。人が嫌いだ。なら・・・犬の為に人を狩ろう。栄養満点の嫌な人を。

 

 

 

 

肉が喰らわれる音を聞きながら僕は、今回の事件の生き残りである女の子を笑って見据えた。女の子は、怯えもせずただただ僕を見ていた。

 

「・・・。」

 

「アハハ!!やっぱりあの人の言った通りだったね。わざわざ最期まで生かしておいてあげたのにその目には、希望すら映らないみたいだ。」

 

「・・・どうして・・・どうしてそんな簡単に人を殺せるの?」

 

「ん?そんなの決まってるだろう?人なんて僕にとっては、エサ以外の何者でも無いからだよ。君は、自分の食べる肉や魚に同情でもするのかい?しないよね。僕にとって人間なんてそんなもんなんだよ。」

 

子供は、アリを殺す。虫を殺す。そこに罪悪感など無い。只の興味だけがある。

 

大人は、害虫を殺す。動物を殺す。そこに罪悪感など無い。目的だけがある。

 

僕は、人を殺す。罪悪感なんて無い。あるのは満足感だけだ。

 

「そう・・・。」

 

「一応は、最初は、吐いたよ?同格だと思っていた同類を食わせたからね。でももう慣れた。所詮は死んだら只の肉でしか無いからね。そこの先輩みたいにね。」

 

未だに喰われている人間に目を向ける。相当旨いのか犬たちはまだ離れない。

 

「さて、無駄話ももここまでにしようかな。一応僕は、逃げるからね。」

 

「逃げられるの・・・?」

 

「アハハ!!!逃げるさ。証拠は、残していないよ。一応は僕は用心深いからね。」

 

後は、ワンちゃんに夢ちゃんを食わせるだけだ。

 

「さて、フィナーレと行こうか?君を食べる為に死んでいった人達と仲良くね。」

 

「・・・ヒトじゃない・・・そうだよね・・・ワタシは・・・アタシは・・・」

 

何か言っているが、僕は、彼女を食わせる為に犬笛を吹く。

 

「グルル・・・。」

 

「グルル・・・。」

 

その音に反応して、2匹の犬がやって来た。他の犬はまだ先輩を喰っている。全くしょうがない奴らだ。

 

「さあ、食べてもいいよ。」

 

「「グルガァ!!!」」

 

犬は、同時に飛び掛った。

 

 

 

 

 

僕に。

 

「へ?」

 

肉が食い千ぎられる。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

「アッハハハ!!!」

 

痛みの中夢ちゃんを見ると夢ちゃんは笑っていた。その笑顔は、まだ、小学校入学前の子供の様に愛らしいものだった。そして、どこか残酷な子供のものだった。

 

「そうだよね!アタシと他人は違うんだ!アハハ!馬鹿みたいそんな事で5年も!5年間もアイツ等から気持ち悪がられたり避けられたりしていたなんて!その事で泣いたり・・・アハ!」

 

狂った笑い。

 

「・・・もうコロシテイイヨ?”ダークネスハウンド”。」

 

「ガウ!!!」

 

そんな声と共に黒い犬が僕の頭に食らいついた。ミリミリと音を立てて頭蓋が砕ける音が聴こえた。

 

 

 

 

殺した・・・初めて人を・・・。

 

「アハハ・・・なんだ。人って簡単に死ぬじゃん・・・」

 

前の人生で出来なかった事。どんなに望んでも行え無かった事が簡単に出来る。

 

「アハハ・・・最高じゃない・・・復讐してやる・・・こんな人生にした。アイツを・・・幸せそうな奴らを・・・。」

 

と、ここで迷いが生まれた。果たして自分にこれからも人を殺せる覚悟があるのか?

 

「このゲスは、殺されるべき相手だった・・・。」

 

果たして、私は、何も罪のない人を・・・。

 

「『へえー。』『キミって殺す相手を罪の重さで決めるんだ?』」

 

「!!」

 

そんな時だった。そんな声が私の耳に届いてきた。

 

「『いやぁー見てたけどさ、結構グロイ殺し方だよね~』『頭を噛み砕くなんてさ』」

 

声の主は、大量の犬の中から現れた。

 

「なに・・・これ・・・」

 

その人物の体の肉は、削げ落ち骨が露出しており首は有り得ない方向へ曲がっていた。いや・・・皮一枚で繋がっていると言った方が正しい。

 

「『うん。』『人を食べる犬って美味しいね♪』」

 

ムシャムシャと“犬”を食べながら私を見ている。首は後ろだけど見ている。

 

「『さて、キミの“悪意”は見せてもらったけどさ』『足りないよね~点数的には80点って所かな?』『うん!追試にしては、良い方だけどね』」

 

「追試?何を・・・」

 

「『アレ?覚えていないのかな?』『ボクだよ!』」

 

ぐにゃりとその人物は、姿が変わる。アタシのよく見知った刑事さんから・・・アタシの忘れた事の無い“アイツ”へ。

 

「うわあああ!!!!!」

 

グチャグチャになった両親。血塗の私・・・そして、それを引き起こした張本人。

 

 

 

 

『世の中にはさ、2種類の人間しかいないんだとボクは、思うんだよ』

 

『さて、じゃ問題だ。キミは、どっち側かな?』

 

『ボクと同じかな?それとも違うのかな?』

 

『まあ、良いや。』

 

『答えは、今度聞くからさ』

 

 

 

 

「『あ、思い出した?久し振りだね。で、結局キミは、どっちなのかな?』『ボクが思うにキミは・・・』」

 

「うわああ!!!“マッド・ブッチャー”“ダークネスハウンド”!!!」

 

アタシの今持てる全ての悪夢をぶつけてやる!!

 

「『まだ、補習かな?』」

 

 

 

 

 

「『全く。酷いよね』『行き成り襲い掛かってくるんだからさ』」

 

「『だからさ、今キミがそんなになっているのは、ボクのせいじゃ無いよ』」

 

「『だから・・・』『ボクは、悪くない!』」

 

「『ボクは紙より弱いんだよ?』」

 

「だと、思うのなら、少しは、自重して下さい」

 

血塗の病院の談話室にて、2人の人物が話していた。両方ともまだ、10にも満たない子供だった。

 

「全く。今回は、長い遊びでしたね。殺人鬼まで作り上げて遊ぶなんて・・・」

 

「『アハハ』『良いじゃん~楽しかったしね』」

 

「こちらは、大変でしたよ。あの男を見つけたり、刑事を分らない様に葬ったり」

 

「『情報を操作したり』『病院の監視カメラや警報システムを止めたり?』『流石の手際だと思ったよ』」

 

血塗の子供の笑いに無表情な子供は、ため息をつくと立ち上がった。

 

「さて、もう行きましょうか?この町にアナタの望む“悪意”は、有りませんから」

 

「『そうだね』『行こうか!』」

 

血塗の子供は、嬉しそうに窓に駆け寄る。そして、そのままガラスへと走る。

 

「『アハハ!!』

 

ガラスが、砕ける音が辺りに響く。ここは8階である。

 

「・・・全く・・・アナタも厄介な方に目を付けられましたね?」

 

無表情の少女は、部屋の隅に転がっていた肉塊に声をかける。その肉塊は何かの音を発しながら少しずつ動いていた。

 

「全身を串刺しにされても回復する・・・私も悪夢を使いますが、アナタ程ではないですね・・・。」

 

少女は、肉塊にカーテンをかけた。

 

「余世さんでしたか?“悪意”が有る限りまたお会い出来る機会があるでしょう。その時は、アナタの“悪意”がどの程度成長しているのか楽しみです。」

 

そして、少女も窓へと向かう・・・ハズもなく普通にドアから出て行く。

 

「“悪意”と“罪”は、無限に成長します。“無かった事”には、なりませんよ?どんな“転生者”の力でもね」

 

ゆっくりと音を立ててドアが閉められた。その音は、悪夢の少女の未来を閉ざす音のようだった。

 

 

 

 

 

 

「許さない・・・コロシテヤル・・・ミンナ・・・。」

 

アタシは、余世夢。只の殺人鬼。

 

これから、何人でもコロシテヤル・・・そして必ず“アイツ”に合う。

 

 

この事件より1年と少し後。殺人鬼は、他の転生者とぶつかり“自己”を書き換えられる事となる。それと同時にこの事件の真相は一時封印される。“悪意”この意味を理解するのは、いつの事になるのかそれは、誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

「おや?もういいのですかな?」

 

「ホッホ・・・そうでございますか。では、出口は、そちらで御座います」

 

「ん?また、来ても良いかと?ホッホホ。私めも部屋に再び入って来れたらよいですよ。では、またいつか。」

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