「ズリー私も学校に行きてぇ!」
主はやてが、小学校に通う事が決まった日ヴィータが突然そんな事を言い出した。
「私も、はやてや翼兄ちゃんと同じ学校に行く!」
まぁ、気持ちは分からなくもないが、それは無理だろう。
「ヴィータ。あまり翼達を困らせるな。我々はこれまで通り陰から主を守護していれば良いではないか。」
「ああ。そうだぞ。」
私にシグナムも賛同してくれてヴィータを諦めさせようとするが。
「それ、面白そうやな!」
「「へ?」」
主はやては、ポンと手を打って悪そうな顔をした。
「兄ちゃん。何とかならんかな?」
その問いに、主はやての兄であり私達の恩人の一人である八神翼は腕を組んで言う。
「うーん…寿也に頼めば何とかなるとはおもうけど…。」
「じゃあ、さそっく電話や!ヴィータ。受話器を持ってきて。」
「おう!」
眼をキラキラさせて、ヴィータは受話器を取りに行った。
「じゃあ、早速3人分用意せな。」
「主。1人分の間違いでは?」
「うんん。3人分やで。ヴィータにシグナムにリーン。」
「「はい?」」
「シャマルとザフィーラは今まで通りでとして、皆で行こう!」
「しかし、ヴィータならともかく我々では、見た目とかが問題なのでは?」
「フフフ…その点は寿也君に頼めば問題無い。ダメなら、兄ちゃんも居るし晴樹君も居る。」
「しかし…。」
「ああ、楽しみやな…学校。」
こうして、我々の説得は主に届く事無く消えて行った。
あれから、しばらく。私達は、主と同じ聖杯小学校へ通うことになった。体のプログラムを少々書き換え、主と同年代の外見になる。これで大丈夫のはずだが…。大丈夫だよな?
「ウガーなんで、はやて達と同じクラスじゃねえんだよ!」
私の隣では、調節の心配無用な騎士の一人がそう愚痴をこぼしていた。
「ヴィータ。仕方無い、主のクラスは、テスタロッサや主の編入が決まっていたのだ。我々が入れる可能性は低かったのだ。」
「うう…でも…。」
「シグナムが同じクラスになったのだ、我々の目的は達成出来ると言うものだ。」
目的。それは、主はやてに何かあったとき、直ぐに駆けつけると言うものだ。私とシグナムは、これで無理矢理納得したものだ。
そう、しみじみ思っていると、大人1人と子供1人が、やって来た。
「えっと、八神ヴィータさんと八神リィンフォースさん?」
「はい。」
「俺は、2組の担任の甲田哲二だ。で、この子は、今日一緒にクラスに入る後藤君だ。」
「後藤聖一だ。気軽にゴッチャンとでも呼んでくれ。」
後藤は、そう言うと手を差出してきた。
「よろしく。」
「……フフ……。」
後藤は、何が可笑しいのか、小さく笑った。
「じゃあ、教室に案内するから付いてきて。」
私達は、甲田先生の後を付いて行った。
「「おおおおおおお!!!」」
2組の隣の1組から大歓声が上がっていた。何があったのだろうか?そう思いながら、先生の合図で教室に入る。
教室の中には約40名近くの人がいた。ここまで、多くに注目されたのは初めてなので、少々緊張する。
「えー前々から言っていたと思うが、今日からこのクラスの仲間になる。じゃあ、挨拶を。」
先生に促されるまま私は言う。
「えっと…八神リインフォースです。よろしくお願いします。」
こんな所だろうか?その後も同じような挨拶が続き、最後に先生が、私達の偽造情報を口にする。主と私達が親戚と言うものである。しかし、そんな中、後藤と言う少年は。
「僕は、後藤聖一と言います!好きなものは、幼女!!よろしくな!」
と我々以上に目立っていた。目が限りなく本気を物語っており皆ドンビキだった。
「え…個性豊かな子達だが、皆仲良くな。」
後藤と同格なのか?私達は。
「「はーい!」」
主に私とヴィータに向けて、クラスの声が集まっていた。
噂には聴いていたが、転校生の質問攻めは厄介だった。ヴィータも随分苦労していた様で、昼休みは走って、主達との待ち合わせの場所である屋上へ行った。私も後を追うとすると。
「ちょっと、八神さんだっけ?良いかしら。」
突然知らない子供から話しかけられた。
「あ、ごめん。私は、日野渚。」
「あ、ああ。なんだ?」
しまった。主からは、もう少し子供の様に振舞えと言われていたのに…いつもの喋り方で話してしまった。
「えっと…何かな?」
「あ、良いわよ?素で喋っても。私は別に気にしてないし。」
「…そうか。」
「えっとね。大した要件じゃ無いんだけどね。先生が、八神さん達の入る部活の既望を聞いてきてくれって頼まれたからさ。」
部活?…ああ、そういえば、主も何か言っていたな。
「済まない。まだ、決めていないのだ。」
「そっか、まぁ来たばっかりだしね。色々クラスの人に聞くと良いわよ。因みに私は、文芸部。」
我々の入る部活は、主はやてと同じになると思うが、一応聞いておく。下手にあしらえば、主に余波が及ぶかも知れないからだ。
「今の所。部員は、私と時田さん。あと、南だけね。」
「へ?南?」
今、一瞬かつて、私の目を醒さしてくれた、超能力者の事を思い出した。
「南一夜。色々あって、今は休んでるわ。来週くらいには、登校すると思うけど。知り合い?」
「あ…いや…。」
名前まで、同じ…偶然か?闇のカケラに恋をして、それを私によって砕かれた。哀しい少年。そして、カケラの死後も願いを聞き届けた、律儀な者。…確かに歳は主達と同じ位だった。
「そいつは…。」
不思議な力を使うのか?とバカな事を聞こうとした時。
「文芸部!僕も入れてくれ!」
後藤が、割り込んできた。しかも、頭から。
「却下。」
瞬殺!?
「何故!」
「だってね…。」
「頼むって、運動系の部活は全て断られたんだ!ただ、幼女が動いているのを見て愛でたいと言っただけなのに!」
世の中には、変態と言うカテゴリーがあると言うが、この男がその見本なのだろう。ある意味初めて見た。
「アンタを入れたら、身の危険を感じるわ。」
「安心しろ。俺が好きなのは、汚れなき純粋な幼女だけだ。アンタや転校生その1の様な歳離れをした奴には興味がないから。」
何だろうか?今、一瞬イラっときた。
「…OK入れてやるわ……。」
何だうか?今、猛烈に寒い。
「お!本当か!」
「…この一撃に耐えたらねぇ!!!!!」
日野の振り向き様の右ストレートとそれとほぼ同時に放たれた、キックの一撃を受け後藤は…飛んだ。
「…!?」
…何だ?今の違和感は?
「イチチ…耐え切ったぜ?」
「チィ…OKようこそ文芸部へ。問題起こしたら、消すからね。」
「ああ。」
…気の…せいか?
「八神さん…あーもう!メンドイ!」
と、突然日野が、叫んだ。
「同じ苗字が5人って、面倒よ!今度から、リインフォース…長い。リンちゃんで良いかしら?」
「あ、ああ問題無い。」
主からもそう呼ばれるし…それにたまに『なんで、こんな長い名前にしたんやろ?』と言っていたからな。
「そう。じゃあ、リンちゃん。気が向いたら文芸部に来てね。」
「ああ。そうする。」
「ヴィータちゃんも連れてきてね?」
「黙りなさい。変出者。」
「ロリコンと呼んでほしい。」
「黙れ!」
明らかにオーバーキルなダメージを後藤に与え、日野は、死体を引きずってどこかへ行った。
「…文芸部…それに…南一夜か…。」
興味が無いと言えば嘘になる。…行って見るか…文芸部へ少なくとも、”南一夜”の真相を確かめるために。
こうして、闇の化身は、自らの意思で初めて動く。この先の事など考えずに。ただ、一つの真相を確かめる為に。