とある市民の自己防衛   作:サクラ君

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後藤のターンは続く。
投下!


第30話 永遠の少女を求める天使

「南は、まだなの!」

 

『ごめん…道が分からなくなちゃって…』

 

「…今、何が見える?」

 

『えっと…翠屋って店が…』

 

「逆方向じゃ無いの!ああ!もう!」

 

『…え?ねえ、今どこにいるの?南くんが、もし消えた地点にいるなら、夢ちゃんだったらどうにかなるって言ってるんだけど?』

 

「夢ちゃん?」

 

「?」

 

 

 

 

誰も逃げられない結界の中に三人の兄妹と一人の変態がいた。

 

「さあ、お兄ちゃん達を生き返らせてあげたよ…言う事を聞いてくれるね?」

 

「コウに近付くんじゃねえ!」

 

「お前には、聞いてねえよ」

 

「なっ!」

 

男の身体に再び有刺鉄線が巻き付いていた。後藤は、それを興味なさそうに無視し目当ての少女に迫る。

 

「っ!」

 

が、ここで、少女の姉が、立ちふさがる。一度自分の頭蓋を砕いた相手に恐怖しながら妹を守るために立ちふさがる。

 

「邪魔…」

 

後藤は、持っていた刺バットを振り上げ再び顔面を抉る為に振り下ろす。…が。

 

「止めやがれ!」

 

「ゴバ~!」

 

それは、ヴィータの飛び蹴りにより阻止された。後藤は見事な曲線を描きながら文字通り吹き飛ばされた。

 

「リンフォース!」

 

「ああ。分かっている。”バインド”」

 

未だにピクピクと痙攣している後藤を光の輪っかで拘束した。いくら、魔力が拡散すると言ってもこれだけ時間があれば、この位は出来る。

 

「取り合いずこれを解いて貰おうか。お前達もこのままじゃただ殺されるだけだぞ!」

 

「そうだ!早く解きやがれ!」

 

奴を抑えられるのは、もう1分もない。魔力も拡散のお陰でな。だが

 

「…出来ない。この結界は、後2時間はしないと外には出られない使用になっているからな」

 

「は?」

 

「…アンタ達を確実に殺る為よ。…まさか、墓穴を掘る事になるなんて」

 

「「んな!バカな!!!」」

 

じゃあ、私達は、後1時間以上もここにいなくてはならない訳なのか?しかも…。

 

「あーやっと外れたか」

 

見ると”バインド”を引き千切る後藤がいた。…引き千切る?

 

 

 

”バインド”相手を拘束する為の強固な限定的結界。

人間の腕力で何とか出来る可能性は、0

普通は、砕けるが正解。

 

 

 

なのに…引き千切る?一体どんな事をすれば、そんな事になるんだ?

 

「ヴィータ!とにかく奴からその娘を守れ!」

 

「おう!なんか、最初の目的と大きくズレたけど分かった!」

 

ヴィータはそう言うと、後藤の持っていたバッドに手をかけたそして…

 

「あれ?」

 

「どうした?」

 

「何だ…コレ…重い」

 

ヴィータは両手で刺バッドを持つが、バッドは、少しも浮かなかった。ヴィータは、体は小さくても立派の騎士である。しかも、ディバイスである”グラーフ・アイゼン”はそれなりの重さがあるのだ。そんな、ヴィータが持てない…?

 

「当然だ。…”エスカリボルグ”の重量はおよそ2t。常人が持ち上げられる代物じゃねえよ」

 

ユラリユラリと後藤は、ヴィータに近付いてきた。

 

「チッ…」

 

ヴィータは舌打ちすると、一旦後藤から距離をとり最近ザフィーラに習っている空手拳の構えを取った。

 

「後藤…お前その子をどうするつもりだ?」

 

「ん?愛でるだけだけど?愛でて愛でて愛でる!!それだけが、僕の幸せだ。…そう…この世界は、腐ってる。皆が綺麗な心を持っていれば、争いは、起こらない」

 

「…」

 

「…だが、大人は駄目だ…もう手遅れなんだ。心も身体も汚れてる。だから、僕はロリを愛す!愛でる!そして、見守る。世界が、幼女だけになるその日まで!!」

 

後藤は、まるで、子供の様にだが、明確な意思を持って、そう言った。それに私は、寒気を覚えた。気味が悪い訳ではない。

その思いが、純粋だと分かるのだ。まるで…かつての”闇の書”の主達の様に歪んだ願いを感じる。

 

「ヴィーたん。この世の中変だとは思わないか?」

 

「変?…後、ヴぃーたん言うな!」

 

「人は、どうせ死ぬんだ。なのにさ…人は、成長するにつれて、欲を持って行くんだ」

 

「それが、人ってもんだろう」

 

「…確かにな…でも」

 

後藤は、有刺鉄線に縛られている男の方に向かう。そして、何かの瓶を取り出した。

 

「…命が無限で、成長しなければ…欲なんて、生まれるのかな?」

 

そして、それを男の体に掛けた。

 

「う…うわぁぁぁ!!!!」

 

瞬間男の体から煙が上がった。なんだ!

 

「あ”あ”あ”あ”あ”……」

 

煙の中のシュルエットがどんどん変形して行く。全体が縮んでゆき、声が、どんどん高くなってゆく。

 

「こ、これは…」

 

「嘘…だろう?」

 

煙が、完全に晴れた時そこには男はいなかった。その代わり小さな女の子がブカブカの男物の服を着て目をパチクリさせていた。

 

「え…なんだ?これは…」

 

「お兄ちゃん?…が、小っちゃくなっちゃった…」

 

困惑する一同をよそに後藤は高笑いを始めた。

 

「フハハハ!!成功だ!」

 

「何をした!」

 

”元”男が、服で体を隠しながら後藤につかかる。

 

「分らないのか?これこそ全人類の夢!浴びるだけで、美幼女になる夢の薬!どんな、オッサンでもこれさえ浴びれば8歳の幼女になれる!そのプロトタイプさ。」

 

「プ、プロトタイプ?」

 

どう言う意味なのだろうか。それ以前にそんな薬があった時点で驚きだが。

 

「本物は、永遠の命を授ける。つまり不老不死になるのだ」

 

「「「「「ハイ?」」」」」

 

不老不死?それは、なんと言うロストロギアだ?

 

「世界は、幼女だけになる。世界は、救われる…まさに、ヘブン」

 

後藤は、”エスカリボルグ”を拾うとクルクルと構えた。

 

「本当なら、もう少ししてから、始める計画だったんだがな…まあいいか。それじゃあ、皆様…」

 

瞬間私達の体が、何かに拘束された。これは・・・濡れタオル?

 

「さいなら~幼女の世界で再び会いましょう」

 

なんだ?このタオル…どんどん締まって…くっ…なんか、気持ち良くなってきた…。

その間にも後藤は、”エスカリボルグ”を構えてやってくる。全員ここで始末する気らしい。…不味い!

 

「おじゃましまーす!」

 

そんな時だった。とても場違いな声が、聞こえたのは。

 

「その声は、夢か?」

 

「うん!…何してるの?」

 

「話は、後だ。後藤を止めてくれ!」

 

とそこまで言った所で私は気付いた。何言っているんだ?夢は?…一体何なんだ?ナギサをよく迎えに来る子。私が、知っているのは、それだけだ。

 

「OK!なんか、分らないけど良いよ!”ワンワン”!」

 

夢が、そう言うと獰猛な獣の唸り声が辺りから聞こえてきた。何だ?

 

 

 

 

「上手く入れたみたいね」

 

『そうか、流石”無効”の力だな』

 

「前、そんな力使ってたっけ?夢ちゃん」

 

『…恐らく使う以前にボロボロにされたからだと思うぞ?』

 

「う…。アハハ~…ワスレロ」

 

『ハイ』

 

「とにかく、早く来なさい」

 

『はいはい』




次回前章ボスVS次章ボス。どっちが勝つか……明日あたりに投稿します。

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