とある市民の自己防衛   作:サクラ君

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第3の能力者
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第33話 いっちゃんです!

あの後、後藤は直ぐに何処かへと逃げて行った。一応直ぐにヴィータちゃんが追いかけたけど、結局見つからなかった。

私は、直ぐにジィに連絡し海鳴全域に監視網を張り巡らせた。これで、ネズミ一匹逃げることが出来ない。

 

「…そう。まだ見つからないのね。」

 

『ええ。申し訳ありません。』

 

「いいわ。ジィの捜査能力は知ってるし…とにかく捜索を続けて。」

 

『かしこまりました。』

 

電話を切りため息をついて皆の待っている24階へと向かう。

あの後皆(不審者3名も)を一旦私の家に保護する事にしたのだ。一体”超能力者”や”魔導師”にどの程度意味があるのか分らないけど、普通の家にいるよりは安全だろう。

 

「お待たせ。あの変態まだ、見つからないわ。」

 

「そうか…。」

 

リンちゃんが、少し残念そうに言った。

 

「でも、心配無いと思うわよ?南でもない限りたとえ”天使”だろうが、なんだろうが、絶対に発見されずに町を出る事なんて出来ないわ。」

 

いや、たとえ南だったとしても、ジィのいる限り逃げられないわ。…一体ジィってなんなのかしら?

 

「…なあ、リン。やっぱり、この事を翼兄ちゃん達に報告した方がよくねえか?」

 

「…いや、それは、無理だろう。考えてもみろ、確かに被害の大きさでは、”闇の書”と良い勝負だろうが、今回は”ロリコン薬”なんだぞ?まともに取り合ってもらえるのか…。」

 

「”闇の書事件”は、あの変態の野望と同格なのかよ…。」

 

「それに、今回は我々の部活動の仲間の問題だ。下手に協力を仰げば…。」

 

「…。」

 

何か、リンちゃんとヴィータちゃんがシリアスな雰囲気になっていた。なんだろうか?”闇の書”って?”ロリコン薬”と同格って事は…エロ本?…まあ、良いか。そんな事より今は、変態対策を練らなくちゃ。

 

「ヴィータちゃん。その”翼兄ちゃん”に相談するとして、その人達に何とか出来ると思うの?…南の能力は説明したわよね?その南ですら…あんな事になったのよ?」

 

「うう…。」

 

ヴィータちゃんが、唸ると同時に鈴音ちゃんと他のメンバーが部屋へとやって来た。

 

「鈴音ちゃん。夢ちゃんの状態はどう?」

 

「うん。”治癒”の能力で何とかなりそうだって。…でも、しばらくは動けないかも…。」

 

「そう…。」

 

南から聞いていた情報があって、本当に良かったと思う。夢ちゃんの力の一つには、”治癒”の力があり人体の欠損位ならパーツさえあれば2~3日で全快するそうだ。南曰く自分より何でも出来る能力らしい。

 

「大幅な戦力ダウンね。…南だって…。」

 

私は、窓際で外を見て目をキラキラさせている5歳位の女の子を見た。

 

「わー凄いよ!見て見て!さっきの部屋より高いよ!キレイだよ~。」

 

そう言うと女の子は、コウちゃんの手を引いてテーブルの上のお菓子を摘んで何処かへと走っていった。

 

「ああだし…ね。」

 

アレが、後藤によって薬をかけられた南の末路である。記憶が完全にとんでしまい、ここに来るまでとても不安な表情で泣きじゃくっていた。

今は、リンちゃんやコウちゃん、鈴音ちゃんのおかげで落ち着き、元気に走り回っている。因みに何故か私には近づかない。

 

「”大嘘憑き”があるから、直ぐに元に戻るって思ってたんだけどね…。変態の執念を甘く見てたわ。」

 

「”無かった事”にする力が、働かなくなった以上下手に”男”を出せば、ああなる可能性も高い。だからこそ”翼”達には、知らせない方が良い。」

 

「特別製とか言ってたしね。シュウちゃんがかけられた試作品とは別物みたいだけど。」

 

「シュウちゃんじゃない。…確かに俺は人格を保ったままだったが…。」

 

リンちゃん曰く”元”男のシュウちゃんが麦茶をコップに注ぎながらため息をついた。まあ、南と違って人格が残っている分、色々と辛い所もあるのだろう。

 

「まあ、殺されなかっただけマシだと思うがな。」

 

「1回位死んだらしいけどね。」

 

ランさんが、適当にお菓子を摘んで話す。聞いた話では、この2人は一度、後藤に殺されたらしい。そして、何らかの手段で生き返えらされた。

考えて見れば随分恐ろしい事だが…なんか、そう感じなくなりつつある自分が怖い。

 

「とにかく、後藤を見つけなくちゃね。下手をすれば、一週間後には、この町は、不老不死の少女だらけの町になるわよ。」

 

「…でもよ、どうやって、見つけるんだよ?一応操作網を張ってるんだろう?」

 

「…だな。手がかりが無い以上は、こちらからは…。」

 

文芸部2人は、不安そうな顔をしているが、実は問題は無かったりするのだ。

 

「フッフッフ…誰か忘れているようね。我が部の超能力者は、南だけじゃないのよ?」

 

「は?どういう事?」

 

「…”未来人”か…そういえば、鈴音がいたな。」

 

「?」

 

リンちゃんは、気付き、ヴィータちゃんは、未だに?マークを浮かべている。他の2人は、鈴音ちゃんを見ていた。

 

「…わ、私?」

 

「鈴音ちゃん。悪いけど今すぐ寝てくれないかしら?最早、この現場を打破出来るのは、鈴音ちゃんの”未来予知”しか無いのよ。”超能力者”も”殺人鬼”も行動不能になっている以上頼れるのは”未来人”だけ。お願い!あのバカが起こす事件は、絶対に大きな事件になるわ」

 

「で、でも、必ず予知出来る訳じゃ…。」

 

鈴音ちゃんが、不安そうな顔になる。当然だ行き成り最後の希望にされたのだ、私だって不安になる。

 

「あ、ナギサおばちゃんが鈴音お姉ちゃんをいじめてる!」

 

「だ、駄目だよ!いっちゃん!ナギサさんにそんな事言ったら。」

 

と、ここでチビ達が戻ってきた。…おばちゃんね…この南が…。

 

「鈴音ちゃん…お願いね。じゃないと…私この子を…八つ裂きにするかもしんない。」

 

「まて、ナギサ!一夜の首を締めるな!」

 

は!いつの間にか、首を締めてたわ。習慣って怖いわ~。

 

「フエエン~リンお姉ちゃん~怖かったよ~痛かったよぉ~。」

 

南が、リンちゃんに抱きついて泣いていた。絶対に普段では有り得ない光景だ。

 

「よしよし…怖かったな。良いか?ナギサは絶対に怒らせてはいけないぞ?」

 

「うん…。いっちゃん気をつける…。」

 

「良し、良い子だ。」

 

「エへへ…。」

 

親子かお前ら…。そんな様子を皆が呆れて見ていた。

 

「ハア…鈴音ちゃん。南を八つ裂きにしたいから早く予知してね。」

 

「…うん。なんか…私も身の危険を感じるから頑張るね。」

 

鈴音ちゃんは、何かに怯えるように部屋をさって行った。

 

これで、恐らく大丈夫のはず。後は…。 戦力確認ね。


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