海鳴キャンプ場は、異常な状態になっていた。
辺には、布団の山が空高く積み上がっており、その周りには、枕やシーツが散乱していた。
その中に騎士が一人いた。
“鉄槌の騎士”と呼ばれた、小さな騎士だった。
呼ばれた…そう。所詮は、過去の話だ。
騎士は、無惨に散っていた。
武器は、砕かれ、身はうちひさがれ、その身には、生気のかけらすら宿っていなかった。
騎士の倒れ付しているシーツに拡がっている赤い染みが、その絶望的な状態をより深く表していた。
騎士は、天使には勝てなかった。
ただ、それだけの話である。
正直、私はこの世界に絶望していた。戦いの日々は、確実に私達から生きる気力を削いでいった。
世界は、私達“闇”の騎士に冷たかった。
「うら!」
何度も絶望した。
「はぁ!」
何度も消えたいと思っていた。こんな戦いの日々はもう嫌だった。
「“アイゼン”!」
『Ja』
そんな、ある日だった。私達は、“闇”から開放された。戦いの日々は、終わったのだ。
「カートリッチ!3つ消費!」
『ギガント!』
嬉しかった。
「な!」
やっと、悪夢から開放された。
「なんだ!アレは!有り得ねえぞ!」
だけど…。
「…おもしれえ…」
退屈だった。…いや、別に、“はやて”や“なのは”達と過ごす日々は、悪いもんじゃ無かった。むしろ幸せだった。
何気ない出来事が幸せだった。
“シグナム”も
“シャマル”も
“ザフィーラ”も
“リイン・フォース”も
そして“ヴィータ”も
皆が幸せになった。そして、新しい生活が始まった。
「アハハ…本気で行くぞ!」
学校に行く様になって、私の世界は広がった。
“絶対支配者”のナギサ。
“超能力者”の南。
“殺人鬼”の夢。
“未来人”のスズネ(後藤談)。
そして…“天使”の後藤。
世界が広がった。これまで知らなかった、世界がそこにあった。
「やるね、ヴィーたん。ちとばかり驚いたよ」
「テメェこそな」
正直、私は、今とっても楽しい。全力で戦える相手がそこにいるからだ。
正直、自分より格上の相手と戦闘したのは、何度もあった。だけど…。
「行くぞ!」
「おう!」
なぜだか、わからないけれど、このまま打ち合っていたい気持ちになっていた。
相手が、後藤だからか?…分らない。
「まさか、孫の手+と、打ち合えるとはな…だけどコイツで終いだ!」
「どうかな?私を舐めんなよ?」
まだ、私が、学校に馴染めなかった頃だった。あの時の私は、皆と同じクラスになれずイライラしていた。そのお陰で、誰も私に話かけて来なかった。でも…。
「『ヴィーたん!一緒に文芸部に入ろうよ!』」
アイツは、一番初めにそう言って話しかけてきた。楽しそうに。笑顔で。
“後藤聖一”私の始めての友達。
「勇気のマヨネーズ+勇気のタオル」
「な!」
好きなものは、“幼女”。
「何だ?その巨大な布団たたきは!」
嫌いなものは、“それを傷つける者”
「…しぁーねえか…」
そして…
「安らかに眠れ…」
「“アイゼン”!行くぞ!」
『Ja』
私の…
「夜仮面!ソード!」
「ギガント・シュラーク!」
一番の友達。
以上が、事の全てである。
結果。騎士は倒れた。
武器は、破壊された。
最早、動くことは無いだろう。
永遠に…永久に…。