「『やあ!』『元気にしていたかい?』『僕だよ!』」
「誰に話しかけているのですか?」
「『うーん』『強いて言うなら、この世界の源かな?』」
「そうですか」
日野家所有のマンションの屋上で2人の少女が会話をしていた。
一人は、“元”南一夜のハズの少女。
もう一人は、“悪意”の源の従者の少女。
何故、この二人が会話をしているのか?簡単な事だ。
「『でも、面白くない戦いだったね』『せっかく、3番目になって、見てたのに』』正直不完全燃焼だよ…』」
「よく、言いますね。一番苦労したのは、私のはずですが?」
「『あ、そうそう』『彼は、どうなってる?』」
「はい。正直、とどめておくのも限界ですね。再生なんて生易しいものでは、ありませんから」
「『あ、』『そう』」
“南一夜”は、興味なさそうに言うと、少女を突き飛ばした。
「…」
「…」
そして、彼女がいた場所には、一人の人物が、立っていた。
「『やあ、久しぶりだね』『ファースト』」
「ほんとうだな。“セカンド”」
「『僕が、僕じゃない事に随分前から気がついてたよね?』『どうして、誰にも言わなかったんだい?』『ヒントは、色々とのこしたんだけど?』」
「余計な混乱は、避けるべきじゃないのか?」
「『うーん』『混乱は、起こった方が』『良いと思うけどね』」
「意見の相違だな…俺達は、だから相性が悪いんだ」
「『アハハ』『悪くしているのはキミだよ』『僕は、悪くない!』」
一見のどかな会話の様だが、油断をすれば、死ぬ事は、2人とも分かっている。
「それにしても、何故キサマが、“サード”に化けている?」
「『いやぁ』『初めは、夢ちゃんを見に来ただけだったんだけどね』『何か、面白そうな事が起こっててさ』」
「成る程な…相変わらずの悪趣味だ」
「『アハハ』『それを、キミが言う事かい?』」
「…意味が、解らないな」
「『今回の事件の一旦は』『キミが、一枚噛んでいるのは分かってるんだよ?』」
「さて、なんの事だか?」
「『まぁ、良いや』『それより“ファースト”』『今回の話は、究極につまらない話だったね』」
“南一夜”は、首をくるりと回し天使の戦場後の方向を見据える。実につまらなそうに実に下らなそうに。
「『天使?』『アレは、天使でもなんでもなかったよね』『少なくとも、“サード”が警戒していた、“天使化”を行わなかった訳だしね』」
「そうだな。今回は、“天使”は、本領を発揮しなかった…いや、出来なかったんだろうな」
「『好きな人がいたから?』『おかしいね』『所詮僕達なんて、世界とは、関わらない方が、楽なのに』」
「…」
「『あ、』『ゴメンゴメン』『キミも同類だったか』」
“南一夜”がクスクス笑うと、これまで傍観していた、少女が膝を着き苦しそうに表情を歪めた。
「早く、“サード”開放したまえ…さもなければ死ぬぞ?」
“ファースト”の言葉に従者の少女は、“悪意”の主人を見つめる。
「『ペッしちゃいなさい』『ペッ!』」
少女が頷くと、空間が、割れ何かが現れた。それは、この屋上と全く同じ景色の場所。正し、そこには、1人の人間しか存在していなかった。
「『ランランルー』」
“南一夜”はその中に倒れていた“南一夜”に近付き、その体を外にへと投げた。一体どれだけの力で投げたのか、“南一夜”体は、柵に激突し、ひしゃげた音を出した。
「『あ、いけね~』『生きてる?』」
“南一夜”は、全く心配なさそうに言うと、その空間から、抜け出した。それと同時に従者の少女は、糸の切れた人形の様に倒れた。
「『おー怖』『理論的には、永遠にその空間に隔離出来る力のはずなのにな~』『一日も持たなかったか…』」
「それだけ、“サード”の力は、特殊な様だ。その子の使うのは、“悪夢”の力。耐性はによってコントロール出来ているだけだ。“サード”の“不慮の事故”によって、“悪夢”が2倍近くに跳ね上がっていたんだ。暴走しないだけ上出来だ」
「『ふーん』『まぁ、分かっては、いたけどさ』『僕は“南一夜”本人になってたんだし』」
「確かにそうだったな。キサマの力も俺には、理解出来ない」
「『僕からすれば、キミの力の方が、理解不明だよ』『正直、戦っても勝てる気がしないんだよな』『まぁ、年月の差だろうけどさ』」
「そうだな…」
「『ねえ、いっそのこと、…!!』『アレ?』」
その時、空間が、歪み皆が消えた。
「『アレレ?何かな?』『これは?』」
気がつけば、何処かの神殿の様な場所にいた。辺りを見渡すと誰かが、いると言う雰囲気だけが、伝わってくる。
「『ねぇ、“ファースト”いる?』」
「ああ。久しぶりの場所だ」
その時、突然体から力が抜けてゆく感覚がした。そして…
「あの、皆様突然すみませんでした」
中年の何とも弱々しそうな、男が、現れた。
「『えっと…』『誰かな?』」
“悪意”の質問に男は、頭を下げて答えた。
「あ、すみません。申し遅れました。私は、あの世課で勤務させて頂いております。“ヤマダ”申します。前任の“マツモト”よりこの仕事を引き継ぎましたので、以後宜しくお願い致します」