あの後、後藤は見事に復活した。その後は、エンドレスで叩き潰されてたが…。
「…」
その直ぐ後に何故か日野さんからエスカリボルグで撲殺され気がつけば皆がドン引きになる程の状態になっていたらしい。
液体より酷いって…止めようか…。まぁ、結論から言えば皆が無事に戻って来たのだ。時田さんもシュウも皆が揃って…爆睡した。確かにフラフラになって帰って来たので、皆夜まで眠っていた。そして、気が付いた時には、後藤の姿は無くただ、ヴィータに対し“ありがとう”とのメッセージだけが紙に書いてあるだけだった。
「よし、今日はここまで。」
そして、日が明け月曜日。後藤は学校を休んでいた。これで、厄介な事からは開放された訳だ。
「あ、南」
すると、日野さんが話しかけてきた。
「なに?」
「今日、部活動があるから、早く行くわよ」
「…どうせ日野さんからは、逃れられないからね。すぐ行く」
そう言って、カバンを持って部室に向かう。その後を日野さんと時田さん。リンとヴィータが続く。
「あ、鍵…先に行ってて」
俺は、部室の鍵を取りに職員室に向かった。
結果的に職員室に鍵は無かった。何でも誰かが取りに来たらしい。誰だ?言わないのは?そんな事を考えながら階段を登っていると。
『ヴィーたん~』
『来んじゃねえ!』
と、いつも通りの騒ぎが聞こえてきた。…いつも通り?
「何事?」
別段急ぐわけも無く階段を上がって部室を覗くと、ヴィータにボコボコにされている後藤を発見した。何か幸せそうだ。
「後藤?何でいんの?」
すると、後藤はこちらに気付き言った。
「何でって、僕は、この学校の生徒だよ?居ても不思議じゃ無いだろう?」
「いや、そうじゃなくて。普通は、学校から去っていくものじゃないのか?」
あれだけの事をしたのに。
「ハハハ!アニメや漫画じゃ、あるまいし。僕は、まだ、小学生だよ?義務教育!親のお金でこの学校に通ってるのに辞めれるわけないでしょう?」
まあ、確かに。やられたからと言って、学校を簡単に辞める訳にもいかないだろう。
「じゃあ、何で朝から居なかったんだ?」
「いやー日野さんがさ、こんなものを届けに来たからさ~」
「こんなもの?」
後藤が、何か、の用紙をピラリと見せた。【請求書】そこには、はっきりとそう書かれていた。しかも、その金額は…どの位なのか判断に苦しむ桁だった。
「…日野さん?」
「何?当然でしょう?今回の原因は、そこの馬鹿なのよ。壊れた建物の建て替え費用にトラックのレンタル料金。あと、私達への賠償金ね。因みに土地の方は、日野で買い取るから含まれていないわよ」
あっけらんと答える日野さんは、凄いと思う。仮にも相手は殺さないとは言え簡単に人間をミンチに出来る実力者なのに…。まぁ、今更か。
「そこで、南。頼みがある」
と、後藤が何か苦笑いを浮かべて言った。大体の予想は付くが…。
「流石に天使と言えどこれだけの金額を用意するのは、きつすぎる…日野さんから聞いてんだが、お前の“無かった”事にする力で、建物を元に戻してくれないか?」
どうやら、そのほかの金額はどうにかなるらしい。流石は天使か。
「別に良いけど…」
「…安心しなよ。もう僕は暴走はしないよ。もろん幼女の世界も諦める。」
俺の警戒の目に気づいたのか後藤はそんな事を言った。
「怪しい…」
しかし、簡単に信じるほど僕は甘くは無い。最悪、後藤を洗脳し夢の様にする必要が出てくる。何よりこの変態が野望をたった一回くじかれただけで、諦めるとは思えないからだ。しかし後藤は、笑顔で言った。
「本当だって!何故なら理想の少女はそこに居るからだ!」
そう言うと後藤は、ヴィータを指差した。……は?
「彼女こそ、僕の理想のヒト!マイドリーム!」
「だから、こっちに来るんじゃねえよ!」
ヴィータが、近くにあった、ハードカバー本をフルスイングするが、後藤は平然と前進する。…見た目がヤバイ…。
「ほら!南も何か言えよ!」
「…成る程…ヴィータか…」
確かに彼女はデータの塊見たいなもんだし…リン曰く数百年前から姿は変わっていないらしい。
「…おい…南…テメェ何を笑ってやがる?」
「いや、ヴィータを一人生贄に捧げるだけで平和が手に入るなんて…オモッテナイヨ?」
「ゴラ!南!表に出ろや!」
「あら、気が合うわね?」
「あ、やっぱり日野さんも考えてたんだ?」
日野さんが2人の様子を面白そうに見ながら、俺を手招きした。取り合いず日野さんの隣に座ってカバンから水筒を出して飲む。
「取り合いず、後藤のヴィータちゃんへの気持ちは、本当みたいだしね。いざとなったら、ヴィータちゃんを盾に取れるし後藤のコントロールも容易になる。まさに一石二鳥ね」
相変わらず小学生とは思えない発言をありがとう。
「まあ、ヴィータちゃんも満更じゃないでしょうけどね」
「? どういう意味?」
「いつか分かるわよ…」
日野さんが、面白そうにヴィータと後藤を見ると、今度は、リンが手を招いてきた。
「なに?」
「ああ。ちょっと来てもらえないか?」
「別に良いけど?」
言われるがままにリンと廊下にでる。
「で?何の用だ?」
「いや…改めて礼をと思ってな…ヴィータの事は本当に感謝する」
「感謝って…友達を助けるのは、当然だろう?死んだのが、リンだったとしても助けてたさ」
「…そうか…」
リンは、どこか寂しそうな表情になったかと思うと少し声を潜めた。
「…まだ、私の事を恨んでいるか?」
その言葉の意味を理解するのに少し時間を有した。まだ、恨んでいるかって?そりゃあ…。
「ノーコメントだ。」
「…そうか…」
「正直アイツの事を思うと胸が苦しくなる事もある。それが、こちらの一方的な片思いだったとしてもな…。だけど…」
“今”は、その辛さを忘れさせてくれる程楽しいんだよ。
「…」
「日野さんが居て、時田さんがいて、後藤がいて、ヴィータがいて、そして、リン。お前のいる今の生活がな・・・」
いつの間にかそれが俺の日常になっていた。当たり前の日常に。皆ですごして、馬鹿騒ぎをする。日野さんからの無茶苦茶な難題を皆でクリアする。そして、また明日と言って帰って、また学校で会う。そんな当たり前の日常が俺はとっても楽しいのだ。
「さて、この話はもう終わりな!心配するな。もし、許せなくなったら真っ先に言うからさ。その時は、八つ当たりに協力してくれよ」
俺が、笑ってそう言うと、リンも笑った。
「そうだな。その時は、運命と受け入れよう。ただし…」
「ああ。」
お互いにニヤリと笑うと同時に同じ言葉を口にした。
「「自己防衛位はさせてもらうがな…」」
そして、2人して、廊下で大笑いをした。その声に文芸部の皆が出てきた。
「何よ?何かあったの?」
「…楽しそうだね」
「ヴィーたん!」
「だから、こっちに来んなって!」
楽しそうに愉快そうに自由に笑って生きている。文芸部それが、今の俺の居場所だ。そして、このメンバーは、大切な仲間だし掛け替えのない宝物なのだ。
「何でもないさ。所で、日野さん?」
「何?」
「今日の活動は何なんだ?」
「フフフ…」
「「「「(不気味な予感がするな…)」」」」
こうして、俺達は日常に帰っていく。メンバーが異常でも…メンバーの半数が人外だったとしても。俺達の日常は変わりはしないのだ。
さて、今日も放課後を皆で楽しみますか。
VS 撲殺天使篇 完
次回は番外編です。あの3人がどうなったのか?…などがあります。ではまた次回で!!