とある市民の自己防衛   作:サクラ君

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日常編開始!


日常編
第47話 新生文芸部始動


「…欝だ…」

 

季節は、めぐり6月。天気は、気持ちのいい程の雨だった。湿気でジメジメするし、服が身体に張り付くし気持ちが悪くて仕方がない。

 

「ああ。欝だ…やる気がでねえ…」

 

にもかかわらず、今は、テストシーズンでありこの結果によって、夏休みの楽しみが左右されるのだ。…まあ、友達がいない俺にとっては、どちらでも良いのだが。

 

「欝だ…」

 

「南…アンタね…」

 

そんな、俺を日野さんは呆れた表情で見て言った。

 

「誰のために文芸部の活動を勉強会にしたと思ってんの?」

 

「ヴィータのため?」

 

「アンタ達のためよ!!」

 

そう、ここは、文芸部の部室。つまり、本来なら雑談や惨劇が繰り広げられる空間なのだが、只今部活メンバーは全員がテーブルの上に教科書を広げ勉学に勤しんでいた。はっきり言って、カオスな光景がそこにはあった。

 

「はぁ…全く。この前のテストの結果を見て心臓が止まるかと思ったわよ!学年最下位から14番目って何?私立の小学校を馬鹿にしてんの?」

 

「いやー小学生のテストって難しいよね~。」

 

「ヴィータちゃんは、まだ良いわよ。クラスで下から19番目だから。でも、アンタは、どう考えても日頃から勉強してないでしょうが!」

 

日野さんの言う通り。俺は、勉強していなかった。だが、一つ言い訳をさせてもらうと、シュウさん達の両親の蘇生と細かい調整があったり、あの後のリンのメンタルケアーに時間を裂いたからである。けして、好きで勉強をサボっていた訳では無いのだ。

 

「アンタね、そんな事で将来どうするのよ?超能力だけじゃ社会には通用しないのよ?」

 

「まさかのリアルアドバイス!ボケは無しか!」

 

「…後藤。“エスカリボルグ”」

 

「へい」

 

只今、ヴィータに勉強を教えておて幸せな表情の後藤から受け取った“エスカリボルグ”をこっちに向ける日野さんは、とっても笑顔だった。

 

「ちょ…待って!撲殺禁止!助けて!クラス9位のリン!」

 

俺は、窓際に逃げながら、クラスで9番目の成績を収めたリンに助けを求めるが。

 

「…今、推理小説が面白い所だ。他を当たってくれ」

 

推理小説>俺 随分と軽く見られたものだ。

 

「そんなにあの時ズタボロにしたことが憎いか!」

 

「…被害者は、小学生。死因は、撲殺。その後、焼却炉にて焼却され歯型から本人と確定。その後事件は捜査されるが、謎の圧力により事件は迷宮入りっと」

 

「リン!それは、今から俺に起こる悲劇と見て間違いないんだな!助けてくれ!ただでさえ、最近焼却炉から異臭がするって、用務員のおじさんも頭を抱えていたから!」

 

人が燃えた時の異臭は、凄まじいものがある。毎回“大嘘憑き”で消しているものの、やはり遠くまで届いた臭いは、消せるはずも無く最近この聖杯に新たな七不思議として加えられつつあるのだ。

 

「全く。将来どうするのよ?ずっと、親に頼る気なの?」

 

「いや、親には、大体見捨てられてる様なものだからな。取り合いず最悪、深海にでも住むわ」

 

「…平然と言える所が凄いわね」

 

深海がダメならマグマの中でもいいが、その場合家が無いからな…。

 

「おっしゃ!やっと終わったぜ!」

 

と、その時ヴィータの元気な声が響きわたった。どうやら今回の課題を終えたらしい。

 

「フムフム…。100問中68問正解ね。ヴィーたん。頑張ったね」

 

「当然だぜ!私は、やれば出来る子だって、はやても言ってたしな!」

 

嬉しさの余り舞い上がっているヴィータの頭をここぞとばかりに撫でる後藤。実にシュールな光景だった。

 

「はぁ~良いわね後藤は、ヴィータちゃんが真面目で、爪の垢を南に飲ましてやりたいわ」

 

「駄目!南にやるくらいなら僕が、ヴィーたんのを飲む!」

 

「キメェ!」

 

どこからか取り出したハンマーで後藤が叩き潰された。どっちでも良いけどそれを直すのは、恐らく俺の仕事になるだろう。

 

「はぁ~なんで、後藤が私より順位が上なのかしら?」

 

日野さんが、潰されて幸福そうな表情の後藤を見て言った。

 

「たしか、日野さんが学年7位で、後藤が1位だったけ?」

 

「そうね。バーニングスの順位が下がったのは、爽快だけど。やっぱり納得出来ないわ」

 

まあ、そうだろうね。後藤の普段の姿を見る限り勉強が出来るキャラとは、思えないだろう。だけど、後藤は、転生者であり実年齢は、小学生より上である。だから、俺からすれば、別に珍しいことではないが。

 

「絶対何かあるわよ。実年齢を偽っているとか…」

 

時々、実は日野さんは全てを知っているのではないか?と思う事がある今日この頃である。

 

「まあ、天使だからね。案外当たってるかもよ?」

 

「天使ね…本当なのかしら?」

 

あの事件。“超能力者”に“殺人鬼”、“管理人格”に“騎士”、更に“未来人(予知能力者)”まで、いるにも関わらず、天使の存在を疑う日野さんは、きっと“魔女伝説の島”に行っても魔女を否定し続けるだろう。

 

「まあ、良いわ。それより問題は、アンタよ!このままじゃ夏休みが無くなるわよ?」

 

「別にいいけど?」

 

「良くないわよ!夏休みは、文芸部の合宿を計画してるんだからね!」

 

と、なにやら日野さんが、とっても分厚い紙を差出してきた。見ると“合宿予定地(ネオ海鳴キャンプ場)”とあった。何?ネオって。

 

「前に買い取った、あのキャンプ場を新しくオープンすることになったのよ。で、その第一号の団体客に私達を選んだのよ」

 

「…そう言えば、そんなことも言ってたっけ?…つうか、決定事項なのか?それ?」

 

「当然!」

 

驚いた。部員の返事も待たずに学宿を決行するとは。

 

「八神家の2人は、予定が合えば、行くらしいし、鈴音ちゃんも行くって。後藤は強制参加で、後は、アンタだけなのよ」

 

驚いた。知らなかったのは、俺だけのようだった。

 

「皆!全力で手を抜くぞ!」

 

「「「「おお!!」」」」

 

皆の心が一つになった。

 

「そんなに行きたくないの?」

 

逝きたくないんです。日野様が企画したキャンプの計画なんてきっと、殺人鬼がやってきたり、異世界からの侵略者がやってきたり、宇宙うからの使者がやってくるに違いない。

 

「大丈夫よ命の危険は、そんなに無いから。」

 

その言葉で、安心できるほど俺は、馬鹿では無い。

 

「命の危険がある限りそれは、キャンプとは、言わない」

 

「危険があってこその人生。そうは思わないの?」

 

「俺は、平凡に暮らしたいの」

 

「はあ、トンデモ能力を持っていて、よく言うわね」

 

別に好きで持っている訳じゃ…いや、好きで持ってはいるが、これは、あくまでも自分を守るための能力である。

 

「とにかく決定事項だからね」

 

「嫌だ!夏休みは、自由に過ごしたいんだ!」

 

「学校の補習のどこが自由なのかしらね?」

 

それを言われたら返す言葉もない。俺の人生で補習の無かった人生は無い。

 

「俺の人生は、補習と共にある」

 

「…」

 

日野さんの視線が痛い。

 

「はあ、分かった。つまりこう言いたい訳ね」

 

「うん」

 

「俺を連れて行きたければ、学校の革命を行え。つまり、理事長を失脚させれば良いわけね」

 

誰もそんな事は言ってはいない。つうか、そんな事を平然と言える生徒がいるとは、理事長も思ってもいなかった事だろう。

 

「…ふふ。遂に南が学校を…協力するわよ?」

 

「日野様、キャンプに是非とも参加させて下さいませ」

 

俺は、人柱になる気などない。

 

「じゃあ、気合を入れなさい。さもないと本当に学校は無理でも教師陣を買収するはめになるからね」

 

多分冗談だろうけど…近い事は、平然とするだろうな…。

 

「分かった、分かりましたよ。」

 

俺は、そう言うと、再び机に向かい鉛筆を取った。全ては、この学校の未来のために。

 

「そういえばさ」

 

俺が、問題集を解いていると、ヴィータが思い出した様に言った。

 

「今度、ある持久走大会なんだけどよ賞品があるって、はやてから聞いたんだけど、賞品って何なんだ?」

 

「賞品?」

 

そんなものあったか?たかだか、小学生の持久走大会に賞品なんて出るのか?メダルとか?

 

「あ、それ、こないだ斎藤が言ってたわね。何か、これまでの大会の参加者がやる気が無い人が多かったから、今年からは賞品が出るとか」

 

斎藤とは、クラスの委員長である。日野さんは、委員長では無い。が、クラス内で彼女の発言権が向上してきている今現在もはや飾りの委員長なのだが。

 

「賞品ね…」

 

「なんか、物凄く疲れた表情をしてたわね。まあ、全クラスの委員長が全員“あの”理事長先生に呼び出されたんじゃね」

 

「理事長先生ね…」

 

日野さんをもして、“あの”とまで言わしめる理事長先生。まあ、確かにあの人は、そこまで言われる程の人なのだが。

 

「そこまで、変な奴だっか?終業式の時も始業式の時も見たが、そこまでおかしな奴には、見えなかったが?」

 

「それは、校長先生ね。表だった、行事は、不要な混乱を避ける為に校長先生が、壇上に立つのよ。」

 

「へえーどんな奴なんだ?」

 

「「…」」

 

興味津々と言った様子で、俺達を見つめてくる文芸部の面々。確かに言われてみたら、殆どが、転入生だし、時田さんに限っては、ほどんど引き篭りだったのだ。理事長の事など知る由も無いだろう。

 

「えっと…簡単に言えば…えっと…」

 

「「「「簡単に言えば?」」」」

 

どうしよう?言えるのだが、答えづらい。

 

「えっと…後藤と日野さんの性格を足して割った様な感じかな?」

 

「「「「は?」」」」

 

「つまり、欲望に忠実で、そのための行動力があって、それを行うだけの資産を所有してるんだ。」

 

とにかく、あの人が考える事は、全く分らないのだ。

 

「なんで、私が後藤と足されたのかはともかく、そう言う事よ。1年生にお時なんて、『テストの答えか?欲しけりゃくれてやる。探せ!テストの答えをそこに置いてきた!』とか、言って、急に宝探し大会を開いたのよ」

 

「へえーそんな事があったんだ。俺の時は、転校初日に『この学校に暗い影あり!至急!占いの館に集合せよ!』と言われて、転校初日に学校じゃなくて、占い館に行ったよ」

 

あの時の占い師さんから『気を付けなさい。女の子には気を付けなさい』と言われたのは、今でも記憶に新しい。

 

「…よくそんな変人が、理事長なんてやってられるな…」

 

「リコールなら年に365回程起こってるわよ?1日に1回リコールが起こっている計算ね」

 

「良くここに残れてるな…」

 

「まあ、一応は、有能見たいだからね。」

 

絶対なにか。裏があると思うのだが、そこは小学生である俺達の知った所ではない。

 

「世の中には、いろんな奴が居るんだな…」

 

「ああ。あの人なら、小学生から、働く為に学校を休む事になっても平然と許可するだろうからな」

 

教育者として、どうかは兎も角な。

 

「チョイ待て。」

 

すると、後藤が手を上げた。

 

「俺の成分は、どこなんだ?それだけだと、進化した日野さんじゃないか?」

 

「ああ。いつだが、雑誌でインタビューされた時な『一番好きな者はなんですか?』という質問に理事長は、こう答えたんだよ」

 

 

 

 

『子供が、一番好きです』

 

てな。

 

 




さてあけましておめでとうございます。
というわけで、新年も無事スタートしたので、これからも一年間がんばっていこうと思います。
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