とある市民の自己防衛   作:サクラ君

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日常編スタート!!


第48話 愛を取り戻せ!

 

暗く巨大な空間が目の前に広がている。一体どこまで続いているのだろうか?

 

『集まった、様だな。選ばれし15人の戦士達よ』

 

そんな声が、俺の頭上に設置されていた高音質スピーカーから流れてきた。

 

「…毎度の事だが…どんだけ下らない事に金を懸けてるんですか?理事長先生!」

 

『おい。4年2組クラス委員長。斎藤進くん。そんな夢を壊すような発言は、避けたまえ』

 

理事長の威厳のある言葉に何も感じるモノはない。

 

『目覚めたら、謎の空間にいた。男なら誰しもが憧れるシチュエーションではないか!』

 

「いやいや!呼び出し喰らって、理事長室に行ったら、何故かダンジョンの入口の様な階段があって、そこに貼ってあった指示どうりに降りてきたら、ここにつながってただけだぞ!」

 

と言うより、何故4階にあった、理事長室からこんな地下空間に繋がる階段が出来ていたのかが不思議である。少なくとも校舎に変化は無かったはずだが…。

 

「黙るがいい!この背信者め!見てみるといい。この場でキサマ以外文句を言っている輩はおらんぞ!」

 

「皆呆れているだけだ!」

 

その証拠に時々ため息が聴こえる。

 

『夢の無い奴め。まあいい、さて、本日4年生から6年生までのクラス委員長に集まってもらった訳だが、本日は、7月にある持久走大会について、連絡をしたいと思って集まってもらった訳だが。』

 

瞬間、クラス委員長達の間に緊張が走るのが分かった。この暗闇のせいでお互いの顔は見えないものの雰囲気だけは伝わって来るのだ。何かヤバイと。何故ならば、この理事長が只の連絡だけで自ら動くなど有り得ないからである。このレベルの連絡なら校長先生でも十分な事なのだ。

 

『さて、近年モブキャラ不足が深刻な我が校なのだが、斎藤これをどう思?』

 

「知らん。」

 

『そうか。では、持久走に必要なものはなんだと思う?4年1組 月村。』

 

すると俺の隣にいた人影が動いた。どうやら1組の委員長である月村さんだったらしい。月村家の令嬢であり、綺麗な黒髪と落ち着いた佇まいが、人気の聖杯5大美少女の一人である。恐らく3人しか美少女の枠がなくても確実に脱落することはないと俺は確信している。

 

「えっと…掟ですか?」

 

『ルールか…へっ』

 

「よし、理事長!出てこいよ?その顔面に拳をくれてやるから」

 

聞いておいて馬鹿にしたような返答とは、いい性格してやがるじゃねえか。

 

『確かに、ルールは大事だ。だが、君達は何かを忘れてはいないかね?』

 

「何をだよ」

 

『走る事の根本的な目的だよ。人は何の為に走るのか?何故急ぐのか?長年生きている君たちになら分かるはずだ』

 

まだ、10年位しか生きていない俺等にそんな人生の到達点みたいな事がわかるはずもないだろうに。

 

「あの…目的って、一体…」

 

月村さん。理事長の話は、真剣に考えるだけ無駄だからね。

 

『フッ…それは“愛”だ。人は、“愛”の為に走るのだ』

 

ほらね。

 

『走るのは、皆愛するモノの為にする行為なのだ。メ●スだって、愛する友人の為にあらゆる困難を耐え抜き走り。●クラスの漢共も愛すべき●●ァの為に走り抜いた。これは、遥か古代から伝わる、通学途中でパンをくわえて全力でダッシュしていたら運命の人とゴッツンコの法則からくるものであると学者も証明している』

 

「嘘をつくな!メ●スが走ったのは、妹の結婚式に出るために身代わりとなった友人の為であって、けして愛する友人の為じゃねえ!●●ァについては、元ネタは知らんが、多分●クラスの連中は、●●ァにそんな感情は抱いていねえよ!後最後の奴だが、それが、流れたのは、1970年代であって、古代じゃねえ!後、それを証明した学者は、誰だよ!」

 

『長いツッコミご苦労だったな。斎藤君。後、パンについては、当時本当に実行する人がいたそうだぞ?結果は知らんがな。後、同時期に小学生の間では、コックリさんやら花子さん。人面犬等がブームとなっていてな、ぶつかった相手が将来自分を殺しに来ると言う怪談バージョンが流れた事があったそうな』

 

「知るか!」

 

「っ!待って!斎藤君!」

 

「何?月村さん?」

 

「メ●スだけど、確かにそう言う説もあるって聞いたことがあるわ…」

 

「知るかよ!て、言うか蒸し返さないで下さい!いや、マジで!」

 

『さて、斎藤君が五月蝿いので、なかなか進まなかったが、本題に入るとしようか』

 

「アレ?俺のせいなのか?」

 

「そうですね」

 

「月村さんまで!」

 

何?これって、イジメなのか?そんな訳で、一人落ち込んでいると、中央の空洞から、何かがせり上がってきた。

 

「…巨大なディスプレイ?」

 

そう。それは、明らかに体育館のステージより巨大なディスプレイだった。こんなのは、アニメでしか見たことがない。

 

『これを見たまえ』

 

そして、映し出されるのは、数人の生徒の写真だった。

 

「これは?」

 

『良い質問だ。見ての通りこの学校の生徒のモノだ。プロのカメラマンを雇って撮ってある、良い出来だろう?』

 

すると、眼鏡をクイッと上げる仕草をした、男子生徒がいかにも知的な声で言った。

 

「何故、女生徒の写真は、皆水着なのですか?」

 

そう。表示されている写真の女生徒は、皆水着姿だったのだ。その中には、“高町なのは”や“アリサ・バーニングス”、“フェイト・T・ハオウラン”等の4年を代表する美少女達の姿もあった。正直、プールの授業が男女別になった今現在では、この映像は、レア中のレアなのだ。

 

「あの…すみません…」

 

すると、月村さんがオズオズと手を上げた。まあ、無理も無いだろう。

 

「どうして、私の写真もあるんですか?」

 

そう。画面には、他の美少女に負けないほど可愛い姿の月村さんの水着ショットが表示されているのだ。正に眼福である。

 

『そう。そして、次だ』

 

すると、写真が消え新たな写真が表示される。次は、男の写真だった。

 

「おい!さっさとさっきの写真に戻せよ!(何だ?この写真は?)」

 

『斎藤君。本音と建前が逆転しているぞ』

 

おっと、しまった。

 

「コホン…。で…何をするのですか?理事長先生」

 

「…」

 

月村さんの視線が痛い。

 

『先程も言ったように人が走るためには“愛”が必要である』

 

「…」

 

『だが、最近の子供たちの走りはどうだ?弛みきり、本気で走らず、最後には、一緒に走ろうと言い出す。全く嘆かわしい限りだ!』

 

「まあ、持久走ごときで本気で走りたくはないからな」

 

『バカ者!誰かその斎藤を叩きのめせ!』

 

「ちょい待てや!その斎藤って!どう言う…」

 

「分かりました」

 

「…ゴバ!!!」

 

月村さんの左アッパで、俺の意識は点滅した。主に赤色に。

 

『斎藤君の体が、1m程浮かんだのは、気のせいとして、そこで、私は考えた訳だ。どうすれば、彼らは本気で走るのか?どうすれば、熱い勝負が見れるのか?』

 

「それは?」

 

『つまり、根本的な“愛”それを手に入れるチャンスを与えれば良い訳だ。つまり、この持久走大会の男女各部門優勝者には、それぞれの人気部門で、ランクインした、我が校の生徒とのデートを行う権利を与える事としたのだ!』

 

理事長が、まるで、自分が、さも偉大な事を言ったと言った感じで宣言した。因みに俺は、顎がヤバイ為ツッコミは不可能になっている。

 

「男女別…つまりは、女子と男子が別れて行う訳ですね」

 

『ウム、なお、各ルートにはチェックポイントを設けており、また、難関を設置してあるため、足が速いだけでは、簡単にはクリア出来ない仕組みとなっている』

 

「条件は対等…と言う訳か…」

 

「ちょっと待てくれ。6年と一緒に走るんじゃ、4年の生徒は不利じゃ無いのか?」

 

『さて、どうかな。確かに体の大きさは4年は6年に負けるかもしれん。だが、体力や気力は、この学校の生徒である以上は、互角に渡り合えると私は、思っている』

 

まあ。確かにね…。と言うより誰か…保健室へ連れていって下さい…。後、なんで、皆さんそんなにノリノリなんですか?

 

「と、言う事は…」

 

そして、何故か、皆の視線が俺に突き刺さる。

 

「…当面の障害は…」

 

「4年2組ダナ」

 

はい?

 

「4年1組に最近になって、身体測定と学力検査で追いついて来たのは、チート厄介だぜ」

 

「…」

 

え?え?え?

 

「ウフフ…恐れが“視え”ますよ?4年2組委員長さん?」

 

なに?この状況!

 

「安心しろ。キミは私が保護する」

 

何から!?

 

「…大丈夫だよ」

 

月村さん?

 

「勝つのは…私達だから。危険から守ってあげる」

 

そして、画面に理事長の姿が映し出される。

 

『これより、“愛”を賭けた、男女別のバトルロワイアルを開催する!各自知略をつくし他の生徒を駆逐せよ!』

 

いやいや、駆逐しちゃったらいけないだろう!

 

『では、解散!各自この事実を各クラスへ報告せよ!』

 

その言葉を最後に各クラス委員長は無言でその場を後にした。

 

 

 

 

 

「あの…皆さん…俺を置いていかないで…」

 

『…今から、医療藩を送ろうか?」

 

「お願いします…ガク…」

 




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