とある市民の自己防衛   作:サクラ君

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原作キャラ登場!キャラ崩壊注意!!

投下します!


第51話 斎藤進の華麗なる人間関係

「よし。こんなもんかな」

原田に希望を持たせてもらい、やる気になった俺は、ここ毎日朝と夜にランニングを行っていた。

 

「…後、3日か…勝てるのか?本当に」

ペットボトルに入ったスポーツドリンクを口に含み何十回目かの同じ事を考える。ドリンクの甘味と苦味が口の中に広がり心地が良い。

ドリンクを一気に飲み干し、ボトルを小さく潰し近くのゴミ箱に投げた。ボトルは、綺麗な放物線を描きゴミ箱のすぐ脇に落下した。

 

「はい。バズレね」

 

「ん?」

すると、いつの間にか、見知った顔がそこにはいた。

 

「シャマルさん?」

 

「フフ。相変わらずね、斎藤君」

金色の髪に青い瞳の外人さん。最近この町にやって来たらしい。彼女の名前は、八神シャマル。つまりは、1組の八神はやての親戚らしい。

彼女とは、正月に母さんに連れられて行った、料理教室で初めてあったのだ。別名“殺人兵器”

 

「どうしたんですか?こんな時間に?」

時間は、夜の8時過ぎ普段なら家にいる位の時間帯である。しかも、ここは、海鳴から少し離れたキャンプ場である。普通なら出会うハズは無いのだ。

 

「外食よ。はやてちゃんが、急に外で食べたいって言い出してね。せっかくだから少しいい店で食べて来たのよ」

 

「…ああ。今日台所に立ちましたね」

 

「!よく分かったわね。ほら、もう直ぐ持久走大会でしょう?だから、少しでも力になるものを食べて貰おうと思って、作ったんだけど…何故か皆外食にしようって、言い出したのよ。なんでかしらね?」

恐らく大会前に入院したくないからだろう。自己防衛の為に強行手段に出たようだ。

 

「せっかく、縁起を担いで、“カブト”を入れてみたのに」

 

「…」

植物か動物かで、KOか死に別れる事だろう。植物だったら、この世との別れが待っていることだろう。

 

「…八神の奴も苦労してんな」

家でも学校でも苦労している赤髪の少女を思うと涙が止まらない。

 

「でも、不思議な事があったのよ」

 

「なんですか?」

 

「それがね、一口も食べないで、行くなんて失礼だから、バイン…みんなを椅子に座らせて食べてもらおうとしたんだけどね」

気のせいか?今、この人家族を堂々と殺そうとしてるよ?

 

「料理を取りに行ったら、無くなってたのよ。まるで、最初から“無かった”みたいに」

 

「“無かった”?」

 

「ええ。どこを探しても見つからなかったのよ。不思議よね」

シャマルさんは、首をかしげて、考える仕草をした。しかし、何が、あったのかは、知らないけど皆の命が助かって良かった。

 

「まあ、それで、外に食べに行くことになったんだけどね。」

 

「そう言えば、他の人は、どうしたんですか?」

皆で、出かけたと言っていたが、今この場には、シャマルさんしかいない。…まさか、本当は全員死んでいて、俺には、見えないとか言うオチじゃないだろうな?

 

「ああ。帰る途中に斎藤君が、走ってるのを見てね。ほら、もうこんな時間でしょう?」

なるほど。時計を見ると、確かに8時過ぎ、塾にも通っていない小学4年生が、外にいる時間では、無いだろう。つまりこの人は、俺を心配して来てくれたのだ。

 

「もしかして、今度ある持久走大会の練習?」

 

「え…まあ」

 

「だとしても、ダメよ?こんな時間までいちゃ」

 

「え…すみません」

家族を手にかけようとした人にだけは、言われたくないが、我慢だ。

 

「好きな子に告白しようと思ってもルールは守りなさい」

 

「はい…ん?」

ちょっと待て。何で、知ってんだ?この人。

 

「全く、すずかちゃんが好きなら、こんなイベントじゃなくて、しっかりと告白したら良いのに。斎藤君は本当にヘタレね」

 

「ちょっと待って下さい!何で知ってるんですか!」

 

「ん?前に、はやてちゃんが、すずかちゃんが皆に斎藤君がジロジロ見てくるから気味が悪いって相談があってね。それで…って!何処に行くの!そっちは、崖よ!」

 

「うわあああ!!!!!」

まさか…まさか。気付かれていたなんて!しかもストーカー紛いに思われてたなんて!!

 

「シャマルさんの料理を食べて死んでやる!!!!」

 

「ちょっと!どう言う意味!って!本格的にマズイわ!止まって!!」

だが、走り出したら止まらない。それが、青春だ!そして、俺は崖へとダイブした。

 

 

 

 

 

 

「全く。危ないじゃないか!」

 

ところ変わって、とある喫茶店。

 

「いやー悪いな~」

 

「本当に反省してるの?」

俺の言葉にユーノ・スクライアは、ジト目になって、いた。あの後気が付くと、近くの公園に寝かされていた。シャマルさんの話では、真下にユーノがいたらしく、俺は、無傷で済んだらしい。しかし…人間一人を受け止めて無傷?…まあ、良いか。

 

「ハハハ…本当にゴメンナ。ちょっと…シヨックな事があってな…ハハ」

 

「全く。」

ユーノは、どこか深みのあるため息をつくと、俺を見て言った。

 

「月村さんを好きなのは、知ってるし、ストーカー扱いされて絶望するのも分かるけど…その程度で、死のうなんて、どうかしてるよ!」

 

「その程度って…」

 

「…好きな子に好きな人がいるよりは…100倍マシじゃないか…」

 

「あ…」

そうだった。ユーノには、高町さんが好きだったにも関わらず身を引いた過去があったんだった。あくまでも噂だけども、こっちへ仕事の都合でやって来たユーノに出来た始めての友達だった高町さん。そんな、彼女に恋心を抱くも彼女には頼りになる幼馴染(赤神君)がいた為にどんなにアプローチをかけても見向きもされず、今では、友達に固定された哀れな男だった。

 

「キミを見ていると、昔の僕を見ているみたいだ…1年前の伸ばせば手が届くと思っていた僕に」

 

「あ…えっと…」

どうしよう?なんていったら良いのか分からない…。相談しようにも近くには、知り合いはいない。シャマルさんは、家に帰ってるし…。

 

「斎藤君!」

 

「は、はい!」

 

「僕の様には、ならないでくれ…大好きな女の子に告白出来ず、戦う事なく散って行くような哀れな男には!」

 

「ユ…ユーノ君…首が閉まるんだけど?」

 

「僕の様には!!」

ダメだ、聞いちゃいない。むしろ声をかけた方が危険だ。何より眼が正気じゃない。

 

「僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕

 

の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕

 

の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕

 

の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕

 

の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕

 

の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕

 

の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の僕の・・・」

 

「ヒッ…」

底知れない恐怖だ。まるで、とある学校に閉じ込められ、無念の死を遂げた怨霊の様な感じだ。

 

「僕

 

の・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・」

 

「あ、もうこんな時間だ!じゃな!また!!」

恐るべき空間を代金を払って脱出し、俺は、恋の怨霊の成仏を願いながら逃げ出した。

 

 

 

 

 

「ハア…ハア…ハア…ここまで来れば…」

恐るべき閉鎖空間から脱出した俺は、夜の町を彷徨っていた。とは、言っても家路についているだけだが。

 

「全くユーノの奴…可哀想に…」

出会ったばかりの頃は、まだ、希望に溢れる瞳だったのに…最悪アレは、俺の未来なのかも知れん。

 

「このまま、何も起こさず気が付けば…月村さんは、結婚…幸せな家庭を持って…ア…アハハ…アハハハ」

脳内に駆け巡る最悪の映像。これが、未来なら俺は、ユーノと共に怨霊と化すだろう。

 

「斎藤?なに笑ってんの?」

 

「!怨霊か!」

 

「誰が、怨霊よ!失礼ね!」

笑っていると、知り合いからまた、声をかけられた。今日は、知り合いによく会う日である。

 

「…なんだ…ハズレの方か…」

 

「…その意味…じっくりと聞かせて頂こうかしら?」

何故か、怒りに満ちている、少女。アリサ・バニングスは、目にも止まらぬスピードで、俺の顔面を拳で打ち抜いた。

 

「ゴベバ!痛え~何しやがる!」

 

「私のパンチから始まるコミュニケーションに何か問題でも?」

 

「大有りだ!大体何だよ!その不良もびっくりなコミュニケーション術は!って!ガフー」

 

「継いで、キックで繋ぐ奥手な美少女のアプローチね」

 

「…誰が…美少女だと…」

 

「…最後に経済的に追い詰める支配者の特権を炸裂させましょうか?」

 

「済みませんでした!」

俺は、自分の親の仕事を守るためにこの傍若無人の少女に頭を下げた。

 

「土下座ね」

 

「くっ!流石は、あの日野様の本家本元。俺等、雑魚庶民んなんかとは、格が違うぜ!」

俺が、地面に頭をつけるためにしゃがむとバニングスは、慌ててそれを阻止した。

 

「冗談よ!だから、こんな町中で止めなさいよ!」

 

「冗談なのか?日野さんは、平然と教室でも後藤やらにさせているけど?」

まあ、主に後藤が八神にチョッカイをかけた時にだが。

 

「…あの子何やってのよ…」

バニングスは、頭が痛そうに額を押さえる。まあ、日野家は、バニングス家の分家であるわけで、その娘が、学校で目立っているのだ。心配にもなるだろう。ところで、日野さんは、バニングス家の事を毛嫌いしている様で、いつも話題が上がるたびに不機嫌になるのだが…まあ、色々あるのだろう。俺が考えるだけ無駄である。

 

「ところで、なんで、こんな時間にバニングスさんは、こんな街中に?鮫島さんは?黒服のお兄様方は?」

 

「…買い物に来てただけよ。別に一人でも良いじゃない」

 

「…ハハーン。はぐれたな?」

 

「う、うるさいわね!全くすずかと新しい水着を買いに来たのに…」

 

「その話詳しく聞かせて頂こう!」

月村さんの新しい水着。どんなのだろうか?

 

「ハア…ハア…ハア…」

 

「…」

おっと、また、息が乱れてきたようだ。

 

「しかし、バニングスよ」

 

「な…何よ」

 

「小4で、ビキニタイプはどうかと思うぞ?」

 

「っ!!!」

バニングスさんが、何故分かった!的な顔をしていらっしゃる。良かろう。この名探偵斎藤の名推理をご覧あれ。

 

「まず、何故、鮫島さんも黒服もいないか?これは、簡単。バニングスさんが、水着を買う為だ。しかし、普通なら絶対一人での行動はさせないはず。前の誘拐事件の件があるからな。しかし、いないとなるとこれは、バニングスさんの命令によるもの…つまり、少し大人っぽい水着を買いたいど、恥ずかしいので、男共を排除した。違いますか?」

 

「ッ!!」

表情は口ほど真実を語る。バニングスさんの表情は正に的を射ている事を伝えていた。

 

「しかし、流石に一人で買いに行くわけにはいかなかった。そこで、貴方は非情にも月村さんを利用した。…いや、正確には、月村家のメイドさんを!あの2人は、バニングス家の黒服レベルの使い手!しかも同性!そんな2人なら貴方を任せても良いと鮫島さんは引き下がった。」

 

「くっ…」

 

「しかし、悲劇が起こった。流石に小4でのビキニタイプは、恥ずかしい。恐らく月村さんあたりが悪気も無く言ったんだろうな。そして、彼女は、ワンピースタイプの水着を手にとった」

 

「…なんで、すずかの水着が分かるのよ!」

 

「ふ…俺の脳内月村さん予測システム。と“週間 月村さん春の特集号”があれば、予測等軽いな。」

 

「アンタのクラスのメンバーも大概だけどアンタも大概ね」

 

「で、自分が、そんな水着を買ったから、恥ずかしくなって飛び出たら、迷ってしまったと言う分けですな」

 

俺の名推理にバニングスさんは、真っ赤になり

 

「町中で!そんな推理を行うな!!!」

と、鉄拳が飛んできたのだった。理不尽だ!

 

 

 

 

「ほれ。着いたぞ」

 

「あ…ありがとう…」

危うく町中で気絶しそうになったものの耐えしのぎ、現在月村さん達とはぐれたらしいデパートの前までやって来ていた。俺の月村さんレーダーによると近くにいる事は間違いないと告げている。

 

「…」

 

「…」

取り合いず、近くのベンチに座り正面にある噴水を見つめる。吹き出す水の色が変わる噴水で、様々な色に変色して結構面白い。

 

「…ねえ」

 

「ん?」

 

「アンタ、こんな時間まで、走ってたの?」

 

「まあ…」

 

「それって、やっぱり…すずかの為?」

何故か、探る様なものの言い方だった。何か問題でも?

 

「…あ、ヤッパ良いわ。頑張ってね」

 

「あ、おう…っと、どうやら来たみたいだな」

見ると、噴水の向こう側にメイドさんが見えた。この日本であんな格好をするのは、メイド喫茶の方と月村さんの所のメイドくらいのものだろう。

 

「よし。じゃあな!」

俺は、ベンチから飛び降りると、バニングスさんに向かって手を上げ家に帰る為に歩き出した。

 

「ちょっと!すずかに頼んで送って行くわよ?」

 

「いや、良いよ。月村さんを直視するのは、今は、きついから」

 

「は?」

バニングスさんが、訳の分らないと言った感じに首をかしげた。君には分かるまい。ストーカー扱いされた俺の絶望など。

 

「じゃあ、アリサ。また、学校で!」

俺は、その場から全力で立ち去った。

 

 

 

 

「…なによアイツ…」

斎藤の後ろ姿を見ながら、私は何か分からないけど、イライラするど同時にどこかホッとしていた。

 

「アリサちゃん~」

すると、すずかとノエルさんとファリンさんが、やって来た。

 

「何処に行ってたの?」

 

「ごめん。ちょっと迷って…アハハ…」

 

「フーン。何か良い事でもあったの?」

 

「へ?」

 

「だって、嬉しそうな顔してるよ?」

 

「そ、そうかな?」

まさか、アイツに久しぶりに名前で呼んでもらえたからじゃないからね!あの、バカ!何で、昔見たいに名前で呼んでくれなくなったのかしら?おかげで、不意打ちだったじゃないのよ!

 

「何があったの?教えてよ~」

 

「な、何でもないんだってば~」

 

すずかの追求は、帰りの車でも続いたのだった。

 


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