とある市民の自己防衛   作:サクラ君

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第54話 逃れられぬ宿命。

「ふふふ…」

暗い表情を浮かべた少年がトボトボと海鳴の町を歩いていた。

 

「な…の…」

暗い表情には生気は感じられず、ただ虚空を見つめていた。

 

「なのは…」

そして、口元には微かな笑みが不気味に存在している。その姿は、処刑されることが決まり何事も悟った囚人の様であった。

 

「…ツライ?」

そんな、彼に後ろから声をかけて来る人物がいた。

 

「…ツライ…ナゼ、ボクハ、コンナニクルシイノ?」

 

「サア?ワカラナイ。デモ、ソレヲトリノゾクコトハデキルヨ」

少年は振り向く。ソコには、赤い影が佇んでいた。

 

「オイデヨ…キミナラ、イイ、ハグルマ二ナレル」

 

「僕は・・・僕は・・・アアアアアアアア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

次の瞬間、少年の足下に亀裂が走り、その下に虚無の空間が現れた。虚無の中の闇は、少年を逃がさない様に足を絡めとりそのまま、闇の中へ導いて行った。

 

「ヨウコソ…テンジン小学校へ…キャハハハ!!!!!!!!!!!」

赤い影は、狂った様に笑うと、闇の中に溶けて消えた。

 

 

 

この日以来、少年。ユーノ・スクライアの姿を見たものは、誰もいない。

 

 

 

 

                              BAD END

 

 

 

 

 

 

 

あの沼地から、しばらく行った地点。もう直ぐ折り返しのハズなのだが、先に行ったハズの赤神と八神に姿が見えなかった。

本来なら、すれ違ってもいいはずなのだが…。

 

「また、理事長のろくでもない難関でもあるのか?」

先程の沼地でも十分に地域の皆様にご迷惑をおかけしているのに…。

 

「まあ、いいか。それで、奴らに追いつけるのなら」

今より未来を選び取れる若者の為に地域の皆様にはご迷惑をお掛けします。そんな、事を考えていると、どこからか、甘い香りが漂っていきた。そして、前方に何やら巨大に建造物が見えてきた。その高さ100mはあるだろう。

 

「…って!ええ!!なんで、こんなもんが!さっきまで見えてなかったよね!」

それは、巨大な理事長の銅像だった。偉そうにふんぞり返っている姿にイラつきを覚える。つうか、お前は、何処の独裁者だよ?と、言うより、ここに本来あるはずの本屋は、何処に行ったんだ?本を予約してたんだが…。

 

『著事情により閉店させて頂きます。20年間誠にありがとう御座いました。 海鳴BOOKs店員一同』

 

「認めない!俺は、認めないぞ!」

昨日までは、皆笑顔でいたじゃないか!新刊を薦めてくれたじゃないか!

 

「おのれ!理事長!貴様はどれだけの人間を犠牲にすれば、気が済むんだ!」

商店街の人たちといい、本屋の店員さん達といい。お前は、何様だよ!っうか、どこから、買収出来るだけの金を持ってきたんだ?まさか、学校の金を使った訳じゃあるまいに。理事長とて、公務員。個人の力で、これだけの事をするとは思えないが…。

 

『なお、この跡地には、日野家プロリュースのケーキショップが開店予定。』

 

「日野さん!!!」

アンタか!理事長と共犯だったのかよ!確かに日野さんは、アリサの親戚とは、知っていたけど…ここまで、やるか?普通?

 

「…南も後藤も災難だな」

日野さんの恐ろしさの一部を垣間見た気持ちだ。いや、本当に商業的戦略の為に買収したのかもしれんが…。

 

「斎藤!伏せろ!」

その時、八神の悲鳴の様な叫び声が耳に入った。とっさに伏せると、何かが、俺の頭上を通過した。

 

「な、何だ!」

その何かは、張り紙のあった、木の立札に命中し粉々に打ち砕いた。

 

「斎藤!こっちだ!」

見ると、八神が、建物の影に隠れこちらに手招きをしていた。咄嗟にそこまで走った。ここにいれば、木の立札と同じ運命の様な気がしたからだ。

 

「怪我は、無いか?」

 

「ああ。っうか、さっきのは一体?」

 

「…ああ」

何故か、八神は、気まずそうな顔になり、視線を泳がしていた。俺もその視線の先を追う。すると、知った顔が2人いた。

 

「赤神に…ユーノか?」

 

「まあ…」

視線の先では、1組の代表格の一人である赤神と俺の友人のユーノが対峙していた。心なしか、ユーノの周囲にどす黒い何かがまとわりついている感じがするが。

 

「…どう言うつもりだ?ユーノ?」

 

「…二 ク イ …アハ…」

駄目だ。正気の表情じゃねえ。目の焦点があって無いし…。

 

「説明ヨロ!」

 

「ああ、俺達が、後藤を追ってここまで来んだが、突然地震が起こってな…気が付けば、ユーノがそこにいたんだ」

 

「フムフム…」

 

「後藤は、気にせず通過しようとしたんだが…ユーノに触れた瞬間吹き飛ばされたんだ」

 

「ん、な…」

あの、後藤を止めるだと?あの草食系男子の筆頭の様なユーノが?

 

「見ろ。坂の下のハチミツの池の中を」

 

「ハチミツ?」

少し移動し遠目から観察してみると、坂の周りには何か黄色いモノに満たされており、そこに後藤と思われる人影が浮いていた。ああ。甘い匂いの正体はコレだったのか…理事長よ…お前の目指すモノは一体…。

 

「急いで救出に向かったんだが…ユーノに邪魔されてな…」

 

「後藤なら、大丈夫だろうが…確かにあのユーノは、異常だな」

まるで、何かに憑かれている様だ。そう、まるで…。

 

「ん?」

 

「どうした?」

 

「いや、一瞬、赤い服を着た女の子がユーノの背後に見えた様な…」

見間違いか?

 

『キャハハ…ダメだねコイツ黒化が進んでる…』

空耳か?

 

『マアイイカ…次は、アイツダ…』

瞬間、鎖の様な光が無数に発生した。それらは、まるで意思のある生物の様に赤神へと絡み着いた。

 

「な!コレは!」

 

「ナ ノ ハ … ハ アハハハハ!!!!!!」

ユーノの笑いは、まるで、この世界が彼の恋する事を禁止している事を知り絶望しているかの様な哀しみに満ちた笑いであった。

 

「バカな!破れないだと!コレは…魔力じゃない!」

赤神は、そう言うと舌打ちする。すると、地震が突然起こり赤神の体が亀裂の中に落下して行った。

 

「っち!」

八神は、舌打ちすると自分も急いで、亀裂の中に飛び込んだ。

 

「アッ…アガガガ…」

ユーノは、壊れたラジオの様にガラス玉の様な眼をしながら、どこかに走っていった。俺は、隠れてやり過ごす事にした、誰が俺を責めれれようか?

しばらく経ち、俺は、恐る恐る坂道の前に立っていた。

 

「あれ?」

そして、気がつく。地震で起こっていた、亀裂が無くなっていることに。

 

「どう言う事だ…?理事長の仕業か…?いや、それにしては…」

ユーノの変貌に亀裂の消失…訳が分からん…。

 

「…一体…赤神達は何処に…」

そう言って、見渡すが、当然ながら赤神の姿も八神の姿もどこにも無かった。

 

 

 

 

自分でも一体何が起こったのか分かりません。ニンゲンに説明可能なトリックだったのか?それとも、何かの別の力が働いた現象なのか?誰かこの謎を解いて下さい。それだけが、私の望みです。

 

 

 

 

 

 

 

オマケ。

 

 

「ナ ノ ハ …ゲボ…ゲエエ…」

少年は口からどす黒い何かを吐き出す。こうなれば、死して怨霊と化すのは時間の問題である。

 

「…何だ?コレ?」

すると、どこからか、そんな声が聞こえた。姿も見えないし気配すらしないのに声だけは、やけにはっきりと聞こえた。

 

「まあ、いいか。苦しそうだし…それに危険そうだし…」

 

「アガガ・・・」

半怨霊と化してしる少年は、悟った。まずいと。一体何がまずいのか?そんなことは解らなかったが…ともかく。

 

「ヤ メ テ …」

 

「ん?ああ。安心しろよ。ただ…」

 

「アアアア!!!」

半怨霊は、悲鳴を上げて走る。圧倒的にマイナスな存在から逃れる為に。

 

「あああ  アア!!!!!!!!!」

ただ。彼は、半怨霊つまりは、この世に未練のある(プラス)の存在である。故に。

 

「“無かった事”にするだけだから」

(マイナス)に、何をしても無駄であっただけである。

 

「うわあああ!!!」

半怨霊。ユーノの意識は名状しがたい何かに彩られて、反転した。

 

「さて、行くか」

こうして、(マイナス)の存在は、歩を進める。この先の惨劇を知る由も無く。

 

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