とある市民の自己防衛   作:サクラ君

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第55話 蘇りし者

赤神や八神たちの行方も気になるが、あの2人なら大丈夫だろう。と言う事で、先に進んだ。

 

「ここが、折り返しか…」

理事長の顔が堂々と描かれた看板に『折り返し』と書かれていた。取り合いず近くにあったハチミツの着いた泥を投げつける事にする。

 

「人の痛みを知るがいい。悪党が」

これまでの恨みを込め散っていった強敵の為に言う。

 

「人は…来ないか」

最初は、あれ程いたライバル達も今は、誰一人として影すら見えなかった。恐らく俺が通って来たトラップ以外にも罠があったのだろう。ラッキーと言うべきか…。そう思いながら、坂道を再び登る。理事長の銅像の頂上に到着すると海鳴の街が一望出来た。海の見える町。海鳴。生まれてからずっと住んでいるが、正直キレイな町だと思う。

 

「…」

まあ、普段なら、こんなカッコイイ事など思わないのだが、ついついそう思ってしまうのは…。

 

「… … … … ゲボ…」

 

「…」

目の前にハチミツまみれの悪魔が降臨なすったからだろう。最早ハチミツ人間と呼んでも違和感が無い程の存在に成り果てた後藤がそこにいた。

 

「ぶ…無事だったか…後藤…」

 

「…」

取り合いず軽く話しかけながら後ろへ後退する。ハチミツ繋がりの対策である。後藤に効くかはともかく。

 

「いやー別に助けなかった訳じゃ無くてな…」

 

「…」

 

「ほら、お前なら大丈夫だと言う委員長の信頼の…」

 

「…ヴィ…」

 

「ヴィ?」

 

「ヴィ た ん と デ ー ト …標的排除…」

何故に漢字のみ流暢?って!

 

「うわ!」

とっさに身を伏せると後藤は、なにかパチパチと光る棒の様なモノを突き出してきた。空振りした棒は、坂道に設置してあった手すりに命中したかと思うと手すりを粉砕した。 何?アレ?

 

「殺す気か!!」

今の当たったら確実に死んでたよね?何あれ?スタンガン?

 

「チィィィ!!!!!!!!!!!!!!」

殺す気の様です。むしろ“デス”

 

「ちょ!話し合おう!同じ小学校の仲間じゃないか!何も行き成り特殊な空間に閉じ込められて、急に殺し合いを強要されてる訳じゃないんだから!話し合おう」

「ヴィ…たーん!ウワワワ!!!!」

 

「今度は、なに!」

見ると後藤の体の周りに先程ユーノにまとわりついていたモノと同じ黒い何かが発生していた。よく目を凝らすと俺等と同年代位の子供の姿が見える気がする。3人程。

 

『ワタシノメェ!!!!」

 

『アハマ…カエヒヘ…カエへェェ!!』

 

『ヘロ…ホフノ…ヘロ…』

気のせいか、全く別の理由で襲われている感がすごい。だが、好きにさせる気も無い!

 

「後藤!眼を覚ませ!何か亡霊みたいなのにとり憑かれてんぞ!」

 

「ヴィ…たんとデート!」

いかん!このままでは、後藤と八神(小)は、どこぞの呪われた小学校へ招待されかねん!そして、必然的に俺の優勝も塵と消える。

 

「…」

このままコイツをかわし、小学校へ戻る事も出来るだろう。だが、先程のユーノと言い鉄製の手すりを粉々に砕いた棒を持つ危険人物を放置するのは、どうなのだろうか?それ以前に、このままだと後藤がこの世から消える恐れもある。

 

「くそ!」

あの亡霊がなんだか知らんが、止なければ!あんなのがコースにいたら、次の女子の部に支障をきたすだろう。そうなると月村さんやアリサに危険が及ぶ。なら、ここは、優勝を捨ててでも止める!

 

「やってっやる!やってやるよ!」

構え後藤の一撃をかわす。

 

「!」

攻撃をかわされたのが驚きなのか、後藤の動きが少し遅くなった。そこへすかさず打撃を加える。

 

「!!」

 

「ふっ!」

昔アリサと出会ったばかりの頃にバニングス家の黒服のお兄さん(60代男性)に習った護身術である。その黒服のことは、敬意を持って、シャーク・アイランドと呼んでいる。今でも親交があり最近のアリサの態度がキツくなったと電話で3時間程相談されたのは記憶に新しい。取り合いず『反抗期』で全て解決したが。

 

「チョイヤ!」

 

「ガ…」

腕をとり柔道の背負投げの様に後藤を地面に叩きつける。一つ言っておく。絶対にマネをしてはいけない。後藤の頑丈さは、普段の八神(小)から受けているバットの殴打によって、良く分かっている。恐らくこれくらいなら大丈夫だろう。…たぶん。

 

「…」

 

「… … …」

動かなくなった後藤をジーと見つめる。後藤は、動く気配は無かった。

 

「終わったのか?」

どうやら、終わったらしい。俺は、ため息をつくと取り合いず後藤を抱え坂を降りそこで見つけたビニール紐で後藤を柱へと縛りつける。これで大丈夫だろう。あとは、医者なり霊能力者なり連れて来ればいい。アリサに頼めば、何とかなるだろう。

 

「じゃな。後藤」

そう言って、もう一度後藤の方を見ると…何故か、光る棒を持った後藤が目の前にいた。

 

「へ?」

 

油断した。

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

アレ?俺は、何してたんだ?えっと…ユーノが変で…赤神達が穴に入って…坂を昇って…。

 

「あ、そうか!今は、折り返しだった!」

どうやら、一瞬意識が飛んでいたらしい。何故か、身体に疲れが溜まっているが…。まあ、いいか。

 

「急がねえとな」

俺は、理事長の銅像に石を投げつけると再び走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「行ったか…ハアー」

 

斎藤が、走り出すのを確認し、俺は溜め息をついた。“大嘘憑き”によって、気配を“無かった”事にした、俺が適当に走っていると、ふざけているとしか思えない巨大理事長のオブジェの上で後藤と斎藤がガチバトルを繰り広げていた。天使のアイテムを使用する後藤の前に苦戦していた斎藤だったが、知恵と人間離れした動きで、辛くも勝利していた。その後、後藤を橋の下に縛りつけていたが、斎藤が後ろを向いた隙きに後藤が紐を力づくで引きちぎりホラー映画の様に斉藤の真後ろへ回り込み、丁度振り向いた斎藤と目があっていた。驚愕の表情の斎藤にスタンロットを突きつける寸前に後藤を“ベクトル操作”で蹴飛ばし、驚いていた、斎藤に“大嘘憑き”を使い、先程の後藤の件を“無かった”事にした訳である。

 

「…しかし…さっきの男の子といい。後藤といい。なんなんだ?“黒化”か?んな、バカな」

 

「…ヴェー弾 …」

先程の男の子は、自滅寸前であった為に気軽に“無かった”事に出来ていたが…。

 

「流石に…厄介だな…」

蹴り飛ばした際に後藤の“超電磁スタンロット・ドウルンダンテ”によって、消し炭と化した足を見ながら呟く。痛みが酷い分気絶しなかったのは奇跡だろう。“不慮の事故”も使えば、ダメージは防げたのだろうが…斎藤に命中した日には、エライ事にになるので、今回は、遠慮させて頂いたのだ。

 

「さて、このバカを正気に戻すには、倒すしか無いか…そう言えば、こいつとガチでやるのは、久しぶりかも知れん」

 

前回は、途中退場を食らったが…。

 

「今回は、勝たせてもらうぞ!」

 

「…」

先手必勝とばかりに先手を取る。基本的に防衛タイプの俺だが、奴に先手を取られると言う事は“アレ”に繋がりかねない。

 

「くらえ!」

全力で電撃を発生させ後藤へ向ける。電撃は全て後藤のいた位置へと命中し激しい爆音を響かせた。

 

「ハハハ!どうだ!」

立ち込める土煙。

 

「なに!」

その中で、悠然と立つ人影。

 

「…」

 

「…」

その人影は、ゆっくりと後藤に肉厚の肉切り包丁を叩きつける。後藤は、それを回避しとある方向へと顔を向ける。

 

「あ!惜しい!」

その人物は、漆黒の犬にまたがり、ゆっくりと俺の隣へやって来た。

 

「夢か」

 

「うん!手伝いに来た!」

 

「日野さん?」

 

「うん!“えいせい”で見てるって!」

慌てて上空に眼を凝らす。へ?“衛星”そう言えば、前回もそんな事があったような…。

 

「あと、ナギサお姉ちゃんからの伝言。あのね“無闇に能力を使うな!アンタの能力で誤魔化しきれると思ってんの?”だって」

 

「…反省しております」

確かに、個人に“大嘘憑き”を使うなら楽だが、さっきの電撃の様に目立つ攻撃は不味かったのかもしれない。

 

「あと、“後でね♪”だって」

どうしよう?今すぐ逃げたい。まあ、夢がいる以上逃げる事など不可能なのだが…。それにしても恐るべきは夢の能力だろう。話によると、雷撃の直後に学校からここまで一瞬で来たのだから。

 

「空間の隔離完了!良いよ~」

底抜けの明るさの最強少女の声に我に帰ると、知らない学校のグラウンドにいた。これが、噂の“ナイトクラス”って奴か…。

 

「眠った覚えが無いんだが?」

 

「寝なくても行けるよ?」

さりげなく恐ろしい事を言うな。昔より明らかにパワーアップしてやがる。

 

「まあ、これくらいのハンデは、良いよね」

そう言って、後藤を見据える。後藤は、白い箱を持っていた。既に手遅れだった。

 

「2人がかりで行くぞ…じゃないと死ぬぞ」

 

「なんで?」

夢が、首を傾げる。そんなの決まっている。

 

「“天使”が来るからだ!」

マラソン大会の会場で、文芸部の部員による最終決戦が幕を開けた。

 





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