あれから数年後
南と月村さんは、今でも仲が良く最近では、二人で何処かへと出かけている様だ。アリサがそんな事をよく話題に上げるので嫌でも耳に入る。
そう。全ては、あの大会からだった。
これが、俺の初恋の顛末である。
「ふ…フフ…」
見苦しく涙をこらえ歩く俺に一つの影が近付く。俺は、顔を上げ確認する。
「…ユーノ…」
それは、数年前の友人だった。彼は、俺に手を差し伸べる。
「行こう…」
「…」
俺は、彼の手を取る。そうか、お前は、あの時から…。
「こう言う世界を見ていたんだな…」
「うん。でも、良いんだ、彼女が幸せなら…」
「…そうだな。行こうか…」
友よ
俺達の戦いは終わった。
END
「斎藤!まて!何処へ行くんだ!!」
瞳に生気が無い斎藤が、フラフラと何処かへ旅立つのを原田とバニングスのお嬢様が慌てて止めている。そんな光景を見ながら私はため息をついた。原因はコイツである。
「南…アンタって奴は…はあ…」
「えっと…どういう事?」
全ての元凶である南は、訳の分らないと言った表情で固まっていた。全校生徒からブーイングを受けていた南を安全な日野家特設ステージに無理やり連れ込み現在はブーイングは止んでいる。
「日野さん?」
「はあ…まあ、取り敢えず優勝おめでとう。良かったわね…これで、誰かとデート出来るわよ?」
「へ?」
いまだに事態の把握が出来ていない南に簡単に事の顛末を説明する。すると、南の顔色が面白い様に青くなった。
「え!ちょ!辞退する!優勝を辞退するよ!」
「さっき確認したけど…それ、無理」
確認した所、やり直しの電話が学校に殺到したらしいが、混乱を避けるために校長が南の優勝を確定のモノとしたらしい。理事長もこれ以上の混乱は避けたいらしく口を出さなかったらしい。
「そんな…」
この世の終りの様な表情で、呆然と立ちすくむ南は、どう見ても優勝者には見えない。
「て、言うより。なんで、アンタがここに来れたの?後藤は?夢ちゃんと押さえ込んだんじゃ無かったの?」
「アハハ。ご冗談を天使と悪夢のとの戦いに首を突っ込む馬鹿はいないぞ」
「…」
「3分も戦ったんだから…正直あの二人の戦いは、次元が違う…」
南がどこか遠い目で言った。それ程の戦いになっているらしい。
「ほら、見てみなよ。外は、吹雪だ…」
「異常事態ね…」
「恐らく後、数分で決着だろうな…今回は、夢の勝利らしい」
どうやら、異常気象の原因は後藤らしい。まあ、南が言うんだから間違いは無いだろうけど…。
「いっそ…後藤が勝って全てを無かった事にしてくれないかな?」
「アンタの得意分野でしょうが?」
「ハハハ…ハア…」
南がため息をつくと、放送が流れ始めた。内容は、大会の中断だった。
後日女子の部が行われた。結果は…。
「…まさか、男女共に我が文芸部の優勝とはね…」
日野さんが、部室に置いてあるトロフィーを見ながら呆れる様に言った。
「これで、我部も一躍有名になったわね…」
「俺は悪役だけどな…」
表彰台に上りデートの相手を引くクジを全校生徒の殺気を感じながら引く事になったが…まあ、対処さえ間違わ無ければ大丈夫な相手だった。何故か、月村さんを引けば命が無いと日野さんが忠告していたが…。
「しかしまあ、まさか鈴音がアレだけ速いとはな」
今大会3位のヴィータが、苦笑しながら言うと、大会の優勝者である時田さんは、照れるように笑った。
「…走るのは…楽しいから」
「いや、アレは見事な走りだったぞ」
リンも感心した様に頷く。
「昔は、マラソンクラブにいたらしいからね。にしても1年の時の瞬足少女が鈴音ちゃんだったとはね…人は見かけによらないって、本当ね」
日野さんが、そう言って時田さんをなでる。時田さんはくすぐったそうに笑った。そんな平和な光景を見ながらフッと外を見ると季節はずれの桜が満開に咲いていた。一体あの天使は悪夢の世界で何をやっているのだろうか?
「そろそろ出してやるか…」
「そうね…これ以上」
日本の四季をこれ以上いじられるのも問題だろうしな…。
こうして、マラソン大会の幕は下ろされた。
しかし、これは俺にとっての始まりに過ぎない。本当の戦いはこれからだ!
「斎藤!何処だ!」
「斎藤!」
「日野さん…」
「分かってる…斎藤は必ず見つけるわ…」
日常編…完
次回からは南?が日野様の本家とデートするためにさまざまなことをする話です。若干違うところもあると思いますが、よろしくお願いします。