とある市民の自己防衛   作:サクラ君

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最近「シークレットゲーム リべりオン」というゲームにはまっています。前作「シークレットゲーム ポータブル」のとある人の過去の話でやっていたら結構面白いです。もし、興味がある人はやってみる事をお勧めします。因みにこのゲームはノベルゲームです。
ということで、本編に入ります。


第66話 脱出

 

カラカラ~。と言う音が耳に大きく響く。

 

「…」

俺は、今大量のシーツに埋もれて運ばれていた。機材庫には、病院で使う物が結構収められており、松葉杖やワゴン。点滴台や空気のボンベ等が所狭しと置かれていた。その中で、只今俺が、復讐してやりたいランキング1位の謎の少女は、汚れたシーツを運ぶシーツ車に目をつけた訳である。その際に俺との悶着があったが、そこは割愛させて貰う。

 

「…」

カラカラと言う音に耳を澄ませながらゆっくりと辺りに気を張る。恐らくは、中に人が居ると外側からはバレないだろうが、押しているのは俺と変わらぬ年齢の小学生である。もし止めれたらそこでアウトになりかねない。最悪俺は、汚れたシーツに塗れた変態だろう。

 

「安心してください。そうなったら私は、貴方に脅されたと泣ますから」

 

「何一つとして安心できねえよ!」

 

「…私は、嫌だと言ったんです…でも…この人が…「へへヘ…汚れたシーツ…揉瑠璃って」…無理やり…」

 

「なんで、漢字?つうか、俺はどんなキャラクターなんだよ!」

それ以前にこの女に此処まで弱々しい声が出せるとは…女って怖い。

 

「そうですね…女の子に汚れたシーツを掛けさせて喜ぶ変態さんですかね?」

 

「完全に今の状況を言ってるだけじゃねえか。本当に頼むぜ…これ以上俺は人間として道を踏み外す訳にはいかねえんだからな」

 

「人間として、ですか…」

どこか、“人間”と言う言葉に一種の同情の色が在った様に思えた。まあ、きっと気のせいなのだろうが。そんな時だった。

 

「あら、クダキちゃんじゃないの?どうしたの?シーツ台なんて押して」

お世辞にも若いとは言えない中年くらいの女性の声が聞こえてきた。って!不味い!

 

「………」

俺は、この時、無我の境地に至ったと自負した。

 

「ああ。少し頼まれまして」

 

「そう?全く誰かしらね?私がやりましょうか?クダキちゃんはこの病院の事は解らない事も多いでしょう?」

 

「あ、いいえ。大丈夫ですよ。“あの人”の手術が終わるまで、どうせ暇ですし」

 

「でもね…。本当は、そんな事をさせたらいけない決まりなのよね」

 

「そうなんですか?」

 

「ええ。」

病院のシーツや病衣などは、感染の恐れなどがある為、変えるときなどは特別な場所に置く必要があるらしい。特にシーツ等は、血液や排出物などの付着が多い為、普通は、一般人が触れる事はあまり無い。今使っているシーツは、近くにあった、新しいモノだが、わざとグチャグチャにしている為、古い物との見分けが難しいのだろう。

 

 

 

さて困った。コレでは、完全に詰みである。どうする?このまま出て行くか?かくれんぼをしていた事にすれば、多少のお灸を据えられるだけで済むだろう。…でもな…。

 

 

 

「あ、遠藤さん」

 

「あら、どうしたの慌てて」

 

「実は、女子トイレや更衣室に侵入した男の子を捜しているんですよ。全く何処の子でしょうね」

 

「あら、それは、大変ね」

多少のお灸は、恐らくクダキと言う女の子だけだろう。俺は、前科2犯である。多少所か、焼死しかねない。

所で、クダキって、苗字だろうか?名前だろうか?管木?砕?どっちにしろ変わった名前である。

 

「さあ、後は私に任せて。ね?」

遠藤さん。恐らく看護師さんが、笑顔でクダキに迫るのが目に浮かぶようだ。

 

「…」

さしものクダキも結構悩んでいる様だ。頼むクダキ!見捨てないで!俺は祈った。神に仏にクダキにそして、月村さんに。

 

「…解りました」

この世に神なんていない。心の中でそう叫んだ時だった。一瞬後ろへ引かれる様な感覚がした。次の瞬間。

 

「手が…」

本当に偶然と言った感じにクダキが言うと急に台車は発進した。

 

「のわ!」

流石にコレは予想外だった。完全に暴走列車と化した台車は、俺を乗せ突き進んだ。

 

「ヤバイ!なんか、ヤバイ!」

声を潜めることも忘れ、シーツを退けて、外を見ると…そこは、奈落でした。

 

「階段!!」

現在位置は、4階つまり階段があるのは当たり前だった。不味い!これは、非常に不味い!

 

「俺のストーリーは、此処で終わりなのかよ!」

自分のストーリー。諦めたくない!そんな、願いが天に通じたのか、奇跡は起こった。階段横のエレベータが開き中からベットが出てきた。そのベットに激突し台車の軌道が階段から外れた。

 

「『にぎゃー!!』」

ベットに乗っていた人物はどうやら衝撃で転落したらしい。つうか、どんな力で押したんだ?あの女は?

 

「先生!患者が!傷口が開いて!!」

 

「『何事?何事?』」

どうやら、麻酔の影響か痛みは感じないらしく辺りの状況に困惑していた。どうやら俺は捕まれば、殺人未遂も追加されそうである。

 

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」

 

「『え?なに?この声!症候群?ヒナミザワ症候群!』」

俺の謝罪が届いたことを確認し俺は、即座に病院食を運ぶエレベーターに飛び込んだ。時間が良かったのか、エレベーターは、あっさりと起動してくれたのだった。

 

 

 

 

 

「お疲れ様でした。トロミ付きの麦茶です」

 

「…」

病院の外にやって来た俺にクダキはそう言ってお茶を差し出した。俺は、受け取り一口飲む。

 

「因みにサービスでホットにしときました」

 

「あちゃ!」

トロミのせいで舌に粘りつくような麦茶。熱さも相まって最悪なハーモニーが奏でられている。

 

「いらんサービスだ!」

舌を冷ましながら訴えると、クダキはまた笑った。

 

「さっきの人は、大丈夫かな?」

逃げるのを優先したので、確かめる事が出来なかったが、周りにあの慌てっぷりから見て、大惨事だったのだろう。

 

「大丈夫ですよ。あの人がそう簡単に死ぬ訳が無いですからね。死太さについては、私が、保証しますよ」

 

「知り合い?」

 

「ええ」

そう言えば、手術が終わるまで暇とか言っていた様な…。

 

「まさか…わざととか?」

あのタイミングと押しの強さ。まさか、この女、計ったんじゃ…。

 

「さあ、どうでしょうね…こういう“運命”だったんじゃ無いんですかね?」

 

「“運命”?」

 

「悪人は、正義に殺される。それが、悪人の“運命”。神が定めた確定事項だって昔言ってましたから」

 

「は?」

意味が解らない。

 

「あ、そういえば、今思い出したんですけど…」

クダキは、そう言うとおもむろにポケットから携帯電話を取り出した。

 

「私、電話持ってました」

 

「あ…」

一瞬頭が白紙になった。そうだ…そうだった!何故思い出せなかったんだ!こいつは最初に携帯で電話してた事を!あの後、色々な事があったとは言え忘れるなんてアホ過ぎるだろう!俺!

 

「ちょっと貸せ!」

目にも止まらぬスピードで携帯をひったくり、“斉藤進捜索本部”へと連絡する。

 

「まだ、貸すとは言っていませんが…」

後ろからクダキの抗議に声が聞こえるが、無視だ。

 

『はい。こちら、斉藤進捜索本部ですが』

オペレーションのプロと思わしき女性の声が聞こえたので、早速俺は、用件を伝える。

 

「えっと、俺は、斉藤進です!この手配書の様な捜索願いを取り下げてください!」

心の底からの言葉を言うとオペレーションの女性は、淡々と言葉を紡いだ。

 

『えー斉藤進さんですね。失礼ですが、幾つか確認事項がありますので、質問に答えてください』

 

「…はい」

まあ、この場合、悪戯などもあるのだろう。それに俺関連の質問なら答えられるだろうし。

 

『では、質問です。斉藤進さんの誕生日は?』

 

「5月25日」

 

『ファイナルアンサー?』

なぜか、ミリオネアみたいになった。

 

「ファイナルアンサー」

 

『………』

 

「…」

 

『…』

長い!溜めが長い!

 

『正解!』

電話の向こうで、軽快な音楽が聞こえた。

 

『では、第二問。月村家の令嬢のストーカー予備軍で有名な斉藤君ですが…』

 

「はい。待った!俺はストーカーじゃねえぞ!」

 

『初めて、月村家の令嬢に会ったのは?』

 

「小学校の入学前。正確には、校門の前で写真を取っていた月村さんを見かけたとき。時刻は、7時38分21秒!」

月村さんとの出会いを忘れる訳が無い!

 

『…正解』

今回は、確認無しだった。どこか、引いた感じすらある。

 

『では、第三問。斉藤進君の幼馴染であるバニングス家の令嬢。アリサちゃんですが、始めて斉藤君に会ったのは?』

 

「………」

…。困った。付き合いが長すぎていつ会ったのか忘れた。えっと、たしか…。

 

「乳児検診の時だった様な…」

俺とアリサは、母親同士が知り合いだったらしくその縁で知り合ったのだ。恐らくその時に会ったのだろうと俺は、予想する。

 

『ファイナルアンサー?』

 

「ファ…ファイナルアンサー」

電話の向こうでは、ズズン!!と言う音楽が聞こえてくる。

時計の音がやけに大きく聞こえ、風の音すらやかましく感じる。

 

「…」

クダキは、近くにいた子猫と遊んでいた。

 

「…」

俺は、電話を片手に結果を待った。そして…。

 

『………残念!!正解は、お腹の中に居た時でした~』

 

「そんなん、分かるか!!!!」

知るかよ!自我すら形成されてねえよ!恐らく先に生まれた方が授乳の時間にまだ、お腹の中に居た方を見た。って、事だろうが、なんか納得出来ねえよ!引っ掛け問題か!

 

『そんな訳で、またの挑戦。お待ちしております~』

ヒラヒラと笑顔で手を振っているイメージがダイレクトに脳内へ伝わって来た。ついでに殺意も湧き上がってきた。

 

「どうでしたか?斉藤進(偽)さん?」

 

「その(偽)は、止めて!」

 

「自分の質問に三問も答えられない人に(偽)をつけて、問題でも?」

 

「うぐ…」

クダキの言葉に胸が抉れる。だが、聞いて欲しい!あの質問に答えられる人は一体何人いるのか?

 

「因みにこの質問は、最大で9問答えた人が居るそうですよ?」

 

「俺以上!」

 

「まあ、この世には、本物より本物らしい偽者もいますし、その逆もしかりですからね」

子猫を抱いてしみじみとクダキは、語った。

 

「まあ、やはり私が、目撃情報と言う事で連絡した方が良いのかも知れませんね」

 

「…そうなのか?」

なんか、今一つ納得出来なかったが、この際は、仕方ないだろう。

 

「じゃあ、頼むわ…はあ~」

ため息が、やけに大きく聞こえた。まあ、この際家に帰れば嫌でも俺が、斉藤進と分かるだろう。電話に固執してしまったばっかりに要らん被害を出してしまった。

 

「よしよし…」

子猫を地面に下ろし、クダキは、携帯を受け取る。

 

「じゃあ、ここにいるのも不味いし、もう行くわ」

 

「そうですか。あ、そういえば!」

すると、クダキは、ポンと手を打ち思い出した様に言った。

 

「今日って、確か斉藤さんを破った人のデートの日でしたね。たしか…バニングスとか言う人とデートになったとか…」

 

「バニングス?」

アリサの事か?大会の後の記憶が曖昧だったから、南の相手が月村さんじゃない所しか覚えていなかったが…これは…。

 

「斉藤さん?何故か、表情が邪悪ですが?」

 

「ん?そんな事ねえさ…デートか…そうか…」

これは、面白い物が見れるかもしれないな…腐腐腐。

 

「蛇亜又菜!砕!」

 

「言葉が、厨二傍チックに!しかも、表情が清清しい。これは、サイトウハザードのクリーチャーより気味が悪いですね…」

こうして、俺は、クダキと別れ、面白そうな物が見れる筈の場所へ向かった。何故分かるって?小学生のデートなど俺の脳内では、常に構成されているからだよ?

 

 

 

 

結果と言うかオマケ。

 

 

 

 

病院内を漆黒に多い尽くす蠢く何かがあった。目を凝らせばそれが何か分かる。

蟲。

大量の本当に小さな蟲が蠢いていた。

 

「『ったく。今回は本気で死に掛けたぜ』」

“悪意”は、本当に青い顔をしてそう言った。その視線の先には、クダキと言う少女と斉藤の姿があった。

 

「『で?一体全体どう言うつもりだい?ファースト?一応クダキちゃんは僕の仲間なんだけど?』」

ガラス越しに映るファーストに“悪意”は不機嫌そうに言う。しかし、ファーストは、表情ひとつ崩さない。

 

「少し、お願いしただけだ…特に危害を加えてはいない」

 

「『…よく言うぜ』」

振り向きはしていないが、“悪意”は、ファーストを睨みつける。

 

「『脅しとお願いじゃあ、天と地程ある』『大方、“僕”を人質に取られたのか…それとも』」

 

「まあ、余計な話は止めておこう。セカンド、私が、此処に来た理由を話そう」

蟲が蠢く中異様な雰囲気の二人を気にする者はいなかった。まるで、そこには、誰もいないと言った感じに辺りは動いている。大量の蟲の存在すら気が付いていない様に。

そして、ファーストも蟲など気にせずに言った。

 

「非戦協定を結ばないか?」

その言葉に“悪意”は不気味に笑った。

 

 

 

 

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