とある市民の自己防衛   作:サクラ君

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第67話 文芸部の雑談

 

南とアリサのデートの様子がカメラを通じて、画面に送られてくる。この時代の監視の技術には、関心させられる。なにせ何処にいようと全てが筒抜けになるのだ。

ある意味で、恐怖も感じる。

 

「しかし、あのゲームは、誰が作ったんだ?」

サイトウハザードを最終局面まで続けているアリサを見ながら誰とも無く呟く。時々近くのテーブルから菓子を取り口にいれる。

 

「さあ?ウチじゃ無いわよ?そんな需要の無さそうなマイナーゲームを作る余裕なんて、今の日野には無いからね」

ナギサも菓子を食べながら答えた。

 

「しかし、良いのか?南はともかくバニングスの監視を行っても…立場は、悪くならないのか?」

 

「良いんじゃないの?どうせ本家の方も監視してるでしょう」

 

「そう言う問題か?」

私は、ため息を吐くと視線を再び画面に向ける。どうやらラスボスの登場らしい。

 

『来たわね!斉藤ZW!!』

 

『言ったよね!今ハッキリと漢字の斉藤の表記を使ったよね!!』

 

『くらえ!顔面3段撃ち!』

画面の中では、ゲームに熱中しているアリサと意味の分からない事を言っている一夜がいる。かなり鮮明な画面の様で、ゲームのキャラクターまでクッキリと映っている。

 

「ただいまー」

その時、玄関から声が聞こえた。玄関を見ると、夢と後藤とヴィータが立っていた。

三人には、一夜の暴走を止めるために一旦監視体制を取ってもらっていたのだ。

 

「あれ?鈴音は?」

 

「買い物だ。正確には、残虐描写を見せないための非常手段だがな…」

いくら、人外集団に慣れているからと言って、まだ子供である鈴音にとって、残酷な映像をそうそうに見せる訳にはいかないだろう。

 

「ふーん…所でどうだ?南の様子は?」

ヴィータが、画面を覗き込む様にすると、他の2人も続いた。

 

「あれ以来おとなしくなったわ…まあ、常に見張られているって分かっただけ良いんじゃない?」

ナギサは、新しくお菓子の袋を開けた。それを見て夢もお菓子に飛びつく。

 

「わ~限定味だ!」

目をキラキラさせてお菓子をほうばる姿に皆苦笑した。

 

「はいはい。そんなに詰め込むな。ほら、水を飲め」

 

「うん!」

超能力者がお菓子を喉に詰まらせて死ぬとは思えないが、夢の見た目からつい過保護になってしまう。

 

「リンちゃんって、時々おばあちゃんみたいに見えるわよね…」

 

「まあ、実年齢が年齢だからな…」

 

「ロリなら問題ないけどね!」

後ろから聞こえてくる声は無視の方向で行こうか。これが、大人のマナーだ。だが、あえて言うなら、ヴィータよお前の年齢は私とそうは変わらない。

 

「でもまあ、この様子だと何も起こらないだろうね。しかし、サイトウハザードか…フムフム…ヴィーたんとのデートに使えそうだな…」

 

「そうだな…って!待て!後藤!」

 

「家庭版なら貸すわよ?1から全部そろってるし」

 

「おお!ありがとう!これで、クリーチャーの出現ポイントをチェック出来るよ…一発クリアーしてヴィーたんに凄いって言ってもらうぞー!」

 

「本人を目の前にして堂々というお前が凄ぇよ!」

会話の乗りがいつもの文芸部に戻った所で、何かに気配を感じた。

 

「ん?」

気配の方向の目を向けると、ナギサの至近距離に一人の老人が立っていた。

 

「楽しそうですね。お嬢様」

 

「ん?って!キャー」

どうやら今気づいたらしくナギサはらしくもない悲鳴を上げた。

その姿を見て老人もイタズラっぽく笑った。

 

「熊おばあちゃん!いつの間に!」

 

「デート云々の時からですかね?お掃除の時間でしたので勝手に入らせて頂きましたよ?後、お菓子ばかり食べていては、成長に異常をきたしてしまいますよ?」

 

「むう…」

 

「ですので、このお菓子の山は、このお熊めが引き取らさせて頂きましょう」

 

「…それって、熊おばあちゃんが食べたいだけなんじゃ…って!まとめるの早!」

熊という老人は、風呂敷にお菓子を次々に詰めていった。

 

「えっと…ナギサ…この方は…?」

私の質問に夢以外の他のメンバーも気になった様にナギサを見た。一方のナギサは、乾いた笑いを上げていた。

 

「熊おばあちゃんだよ!」

そんな中、夢は熊おばあちゃんと言う老人に自分の分のお菓子を渡しに行っていた。

 

「日野の家に昔から仕えてくれている使用人よ…たしか、ジィより長いはず…」

 

「ええ。私は、アキトより長く仕えておりますよ。立場も私の方が上と自負しております」

なんと、あの人外に匹敵すると一夜が言っていた執事より立場が上とは…あれ?

 

「そう言えばナギサ…」

 

「何?」

 

「今日は、朝からいつもの執事を見ていない様な気がするのだが…」

いつも、ナギサの背後から脈絡なく現れる印象があったので、気にしていなかったのだが…本人の話題が出ると気になってしかたない。

 

「ん?ジィなら今日は休みよ?」

 

「休み?あのじいさんって休みを取ることもあるのか?」

ヴィータが、少し驚いてそう言うと、ナギサは呆れた眼をして言った。

 

「そりゃあね。機械じゃあるまいし、休みくらい必要じゃないかしら」

 

「…まあ、そう言われたらな…」

 

「超人でもない限り休みは必要だろうしね…」

 

「そうよ…だいたい360日くらい働いてるからね」

どうやら、盆と正月分くらいは休んでいるらしい。

 

「まあ、あの人は休みでも来ますからね…厄介な事に」

お熊おばあちゃんも呆れた笑いを上げていた。そして、パンパンと手を打った。

 

「はいはい。それでは、部屋の掃除に移りますので、一旦外へ」

 

「「「「「はーい」」」」」

ここで、逆らっても良い事は無いので、素直に外へ出る。監視も良いが、たまには外の空気を吸うのもまた良いだろう。

 

 

 

 

監視を一旦取りやめ、ナギサの家のリビングに値する部屋に全員で集まった。因みにスズネは先に来るように言われていたらしく普通にジュースを飲んでいた。

 

「…どうだった?南君の様子」

 

「変わらずと言った所か」

 

「まあ、頑張っている方じゃねえか?」

 

「暴走でもしない限り大丈夫でしょう」

 

「フムフム…ウへヘ…」

何かしらの本を熟読している後藤とメイドの手伝いをしている夢以外の感想であった。スズネは、「そうなんだ」と言って、再びジュースを飲み始めた。

 

「それにしても平和だよな…」

お菓子を口に含みながらヴィータが誰とも無く呟いた。

 

「まあ、時代が時代だからな」

情報や見張りなど、戦いの時代ならば物騒な結果しか付いて来ない物だった。しかし、今は、只の遊びや興味で行っている。結果はどうあれ悲惨な事にはならないだろう。多くの戦場を戦士として駆け抜けて来たヴィータにとって今の時代の変化は楽しいし興味深いのだろう。

 

「…ふう…」

窓の外に広がるこの町の風景を目にしながら日々の平和について思いをはせる。これまでの戦いの中でずっと望んで来た光景が今はそこにあった。平和と言ってもそれは、今この時と場所だけだろうが…それでも。

 

「戦いとは、無縁か…リン」

ヴィータが、相変わらず外を見ながら私に話しかけてきた。私も同じく外を見据える。

 

「今、私たちが管理局に協力している事って、本当に正しいのかな?」

 

「…」

主が管理局に協力するのは、我らの罪の清算の為。その事は分かっているのだ。しかし、本当にそれしか無かったのかと時々思ってしまうのだ。

 

「はやてが、私達の為に利用されたりしないのかな?」

ヴィータが恐れているのは、自分たちのせいで、主の将来が滅茶苦茶になってしまう事なのだろう。

我々という枷の為に主の歩む道が選択肢が無くなってしまう。

戦いに無縁だった主が更なる戦いに身を置く事になる。

そんな不安があるのだろう。

 

「主の道は既に決めれれているのだろうな…最早運命の様なモノだろう」

書の主となった時点で。

死を回避した時点で。

いや…。兄が魔道師であった時点で。その運命からは逃れられなかったのだろう。

 

「…」

 

「…」

気まずい沈黙が訪れた。

 

「後藤君。前から気になってったんだけど…いつも何読んでるの?」

 

「ん?幼女のバイブルかな?」

 

「…私達とは無縁ね…」

 

「…たしかに…ヴィーたん以外には、無縁かな?」

 

「あ、ヴィータちゃんの絵だねコレ?何だろう?なんかタコに絡まれてる」

 

「ヴィータちゃんが、この馬鹿に出会ったのは、本当に良かった事だったのかしら?」

 

「もちろんさ!」

 

「なんか、後藤君ってヴィータちゃんをダシに良い様にされてるよね?」

 

「こいつの性癖は既に末期よ。最早運命ね」

ある意味で気まずい沈黙だった。ヴィータが立ち上がり、無言で後藤の本を取り上げ本を見据える。そして、真っ赤になり本を床に叩き付けエスカリボルグで完膚なきまでに叩き潰した。そして、後藤も叩き潰した。

 

「後藤の死。コレも運命だったんだな…」

ヴィータが目の色を完全に無くし無言でザクザクと身体を耕した。

 

「さて…ヴィータちゃん。後藤をちゃんと処理しておいてね」

 

「…」

ザクザクと無言のヴィータが手をあげる。

 

「スズネ…行くぞ」

 

「う…うん…」

この惨劇を出来るだけ見せないように私達は足早に部屋を出たのだった。

 

 

 

「…少しは気が紛れた?」

 

「…」

血まみれの後藤が、そんな事を言ってくる。付き合いの長さからコイツの性格は良く分かっているんだ。

 

「なんか…ワリィな…こんな空気にしちまって…まだまだ、弱いな…私って…」

 

「誰でも不安はあるよ。こんな平和な世界にもね」

後藤はヘラヘラと笑って私を見据えた。

 

「だからさ…不安なら僕や皆に相談しても良いんだよ?絶対に力になるからさ」

 

「…うん…」

後藤は不安に囚われた私を安心させるためにあんな馬鹿な事をしていたのだ。何気に気使いの出来る男だった。そして、満足そうに微笑むと。

 

「…白か…」

 

「死ね…」

私は、後藤の顔面にバットを叩き付けた。この惨劇は暫く続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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