南一夜と言う超能力者に助けられた後、精神的に危なくなった超能力者を助けた。
どうやら、高町なのはに何らかのアレルギー的なものがあったらしい。
「マテリアル?」
「ハイ。ですから私は高町なのはとは別人と考えて頂いて結構です。」
私は、南一夜にマテリアルの事を掻い摘んで話した。別に無視しても良かったのだが、この南一夜は、魔力は感じないがそれ以上の力を持っている可能性があるため話した方が無駄に興味をもたれるより良いと判断したからだ。ついでにお腹も空いたからである。
「???」
南一夜は、話を理解しようとしているようだったが、所詮子供の様だ。
表情から、4割も理解出来ていないのが分かる。
「まあ、こんなことをアナタに言っても分らないでしょうけどね。」
「まあね。」
南一夜は、八つ当たりとばかりに私の食べかけの肉まんを奪い取りほうばった。
「・・・・・・。」
私の記憶(知識)が確かなら、これは関節キッスと言うのではないのか?
そう思ったが、私は優しくスルーすることにした。
「では、私はそろそろ行きますね。肉まんありがとうございました。」
「ああ。気をつけてな。もうあんな酔っ払いに絡まれるなよ。」
「ええ。最後にちょっとだけ嬉しかったです。人になれたみたいで。」
そう。本当ならこんな事などせずに戦いで死んでいただろうから。
最後の最期で、人の様に会話が出来た。食べ物を味わえた。助けられる事の嬉しさを知った。
もう十分だ。私は、涙を隠せる様に空へと飛び上がった。
「さよなら。」
私はもう一度手を振っている南一夜を見た後、自分の死地へと向かった。
「こいつは運がいいぞ。5匹目だ。」
「焦るなよルンガ。ゆっくりと痛ぶってやろうぜ。どうせ、もう殆どあのガキ共が殺っちまってんだがらよ。」
「ちげえねぇ。」
私が戦場に入り最初に遭遇したのたそんな2人組だった。見ると、彼らの背後には砕けて闇に戻っているマテリアルがいた。
「”ユーノ・スクライア”のマテリアル・・・。安らかに眠って下さい。」
自身の本体である、”高町なのは”の師匠である”ユーノ・スクライア”のマテリアルがボロボロになりながら消えていく。
「ごめん。なのは。先に行くよ。」
「ええ。私もすぐに行きますよ。この2人を倒したらね。」
私は、彼が消えたのを確認すると、”ルシフェリオン”を構えた。
「ヒュー威勢が良いねぇ~。」
「見た感じボロボロじゃねえか。」
「すみません。アナタ達より良い方がモデルなので、問題有りませんよ。」
「・・・上等じゃねえか!俺らもガキ共からナメられるのにうんざりしてたんだよ!」
「ああ。どうせマテリアルだ。八つ裂きにして晒してやろうぜ!」
こうして戦いは始まった。私は、残りの力からどれだけ戦えるのかを計算し魔力弾を放つ。
2人はプロテクションを張りそれを防ぐが、残念ながらそれはフェイクだ。
「な!」
魔力弾を直前で破裂させ簡易煙幕を張る。そして、その間に設置型バインドをいくつかセットしておく。
「テメェ!!」
案の定1人が飛び出して来た。バカめ。
「かかった。」
「なっ!!!」
バインドにはまり脱出出来ない男に魔力弾を撃ち込む。本来なら、”ブラストファイアー”か”ルシフェリオン・ブレイカー”を撃ち込みたい所なのだが、魔力の残量の関係で諦めた。
「スフィア!」
「あぶねえ!ガルン!」
と此処で、もう1人の男が出てきて魔力弾を防いだ。
「助かったぜ。ルンガ。」
「全く簡単な罠にハマりやがって!」
「へへ。」
そんな友情を繰り広げる2人に更に魔力弾×19をプレゼントして差し上げた。
「「うお!!」」
それを避ける2人。外しましたか、かなり無茶をして仕留めにかかったのですが。
「テメェ!行き成り卑怯だぞ!」
「戦場で同じ言い訳が通るとでも?」
「ち、やっぱ、残りカスには友情が理解出来ねえか。」
ルンガと言う男が、そう言って舌打ちする。友情?そんなものは要りませんよ。必要なのは、闇の復活です。
そう思ったその時。”雷刃”の魔力が消失した。
「・・・・・・!」
”雷刃”逝きましたか。私は、先程”ユーノ・スクライア”のマテリアルが消えた時と同じ感情を感じた。
”雷刃”は本体である”高町なのは”の友である”フェイト・テスサロッサ”のマテリアルだったからだろうか。
まるで、自分の半身が引き裂かれる様な痛い様な切ない様な気持ちがした。
「グッ・・・あっ」
その時、体中に衝撃が走った。何事かを確認するとどうやら相手の魔力の一撃を受けてしまったらしい。
「戦い中に考え事とは余裕じゃないの?」
「誰か死んだか?ヒハハ。」
そうでした。今は、この人達と戦っていたのでしたね。私は、自分の状態を確認する。よし、まだ行けそうです。
「すみません。ちょっと本気で行きますね。」
そう言うと、私は魔力を中程度消費し”ルシフェリオン”の先端に魔力を収縮させる。そして相手に狙いを定め
「”ブラストファイアー”!」
を発射する。まともに受ければ、あの程度の相手ならダウン間違い無しの攻撃である。・・・だが、運命は私に厳しい様である。
2人は、意外と高った機動力で除けきる。
「く・・・。」
力の半分を使い切った私は、そう呻くと
「・・・・・・・・・。」
ルンガと呼ばれていた男がプスプスと煙を出しながら落下していった。
「バカな、ルンガは、ちゃんとよけたハズだぞ!」
「・・・偶然?なのですか。」
私は、今起きた現象に混乱していると、半分理性を失ったガルンと言う男が突っ込んで来た。
「ち、闇の書の残りカスの分際で・・・とっととくたばりやがれ!」
そう言って来るガルン。しかし元からそのつもりです。
「たとえ、残りカスであろうと、私は闇に帰ります。」
「そのまま、死んじまえよ!」
でも、今は死ぬわけには行きません。せめて、マテリアルがいたと言う事だけでも。私達だって生きている事ででも分かってもらえない限り死ぬ訳には行けないんです。
「―――ブレイカー!」
「遅せいよ!スフィアー!」
「あぅ!!」
私の最後の力を込めた一撃もかわされ私は地面に打ち付けられた。
「止めだ。――――!!!」
光の塊が直ぐ目の前まで迫っている。
「終わりですか。」
すると、生まれてからこれまでの事が蘇ってきた。俗に言う走馬燈という奴だろうか?
大半は、”高町なのは”としての記憶だった。当然だ元は彼女の闇なのだから。そして、直ぐ前の事件から記憶が黒く染まり
次に見えたのは影だった。どうやら、ここからが私の記憶の様だ。
「うわー暗いですね。」
凄まじく暗い色しか見えない記憶だった。まぁ、生まれてから太陽と呼べるモノも見てないから当然だが。すると、突然画面が切り替わり、先程あった男の子の姿が浮かんできた。
「・・・。」
たいして格好良くなければ、魅力的とも言えない男の子。そんな彼の笑顔が、浮かんだ。
「肉まん・・・。」
そう呟いた時不思議な暖かさが体を包み込んだ。
「ぎゃあああ!!」
「え?」
すると次の瞬間には、ガルンと言う男が悲鳴を上げながら落ちていった。そして突然の浮遊感が私を襲った。
しかし抵抗はしなかった。何故か分からないが、とっても暖かかったからだ。そう思っていると
「どうも。良い夜だな。」
と言って、あの男の子が立っていた。その顔には心配そうな感じが浮かんでいた。
「え?・・・どうして、アナタが?まさかさっきのは。」
さっきの事態は・・・いや、その前の事もまさか彼が助けてくれたのだろうか?
「いいや、あんなのは、ただの”不幸な不慮の事故”ですよ。」
しかし、彼はそう言うと笑って言った。
「ちょっと、散歩をしててな。やばそうだったから、顔を見せただけだ。因みにもう帰る。」
そんな、ふざけけいる様に言う彼に私はとっても泣きたい気持ちになった。何故か分からなかったけれど私はもう一度だけ彼に会いたかったのだ。でも今私を助けたと言う事は、下手をしたら管理局に目をつけられてしまうのかもしれない。
私は、そう思いこの場を立ち去ることに決めた。
「ありがとうございました。では。」
「ちょい待ち。」
立ち去ろうとする私に彼は手をかざす。何を・・・そう聞こうとしたとき、体から痛みが引いた。いや、なくなった?
「はい。終わり。」
彼が、そう言うと、痛み所か、キズすらなくなっていた。まるで最初から無かった様に。服までも元に戻っていた。
恐らくこれは、彼の能力なのだろう。すると、彼は真剣な眼差しで聞いてきた。
「なんで、戦ってんの?」
その目には興味とかそんなお遊びの心など無くただ一心に心配が浮かんでいた。・・・言ってもいいかな・・・。
私は、全てを話す。
「・・・アナタなら良いですね。闇のためです。」
彼に全てを話し、私の心は少しだけ軽くなった。そして私は、彼から逃げた。これ以上彼といれば、私は戦えなくなると思ったからだ。何故そう思ったのか分らな・・・・・・いや、私は、彼に好意を持ってしまったのだ。全く我ながら単純な性格だと思う。
「・・・一夜・・・。」
私は、自分が”高町なのは”ではなく、”星光の破壊者”として”私”として初めての初恋の相手の名前を呟いた。
「・・・全く・・・不幸な不慮の事故ですよ。」
もうすぐ私は消える。
この物語はバットエンド。
でも、私は・・・・・・。
「幸せでしたよ?一夜。」
その夜は一日中赤い光が満ちていたと言う。その光はとても力強くとても美しく、そして、とても儚い光だったと言う。
その光は、とある少女の初恋の残滓。
その光は、闇をも照らし、とある人物に・・・・・・。