とある市民の自己防衛   作:サクラ君

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大変更新が遅れて申し訳ありませんでした。

これからも遅れる事がありますが、どうか見守っていてください。




第73話 デートの終わり

目が覚めると、知らない天井だった。

 

「まあ、慣れてますけどね」

なんだか、理不尽に酷い目にあった様な気がする。最初の撃たれた時以外の記憶は曖昧だが、その後も身体に激痛が走った様な気がした。

 

「…さて、動くか…」

身体の動き辛さから、どうやら拘束されているらしい。目を下に向けると白い布で体中をグルグル巻きにされており傍目から見ればミイラの様に見えるだろう。

 

「誘拐犯の仕業か…しかし何で、拘束を?俺は、完璧に死んでいたはず」

比喩でも演技でもない。完璧な死体であったはずである。ばれるはずは…無いと思う。

そもそも、死体の定義とは、心拍の停止に始まり瞳孔の拡大、身体の損傷、その他諸々等多くあるが、俺の力によってそれらはクリアーされているはずである。特に身体の破損については、もっとも自身がある。

 

「まさか!…俺を標本に?…いや…ミイラに加工するつもりか!」

映画などで、殺した相手をミイラにや標本にして、売り飛ばすと言うのを見たことがある。バニングスさんを誘拐するような組織だその位しているだろう。

 

「標本やミイラなんぞに加工か…“大嘘憑き”で元に戻れるかな…」

なにせ、標本やミイラに加工されるなど人生初体験である。能力にも限度と言うものがある以上流石に無理かも知れないな…だって、ミイラや標本って、脳と別離するし…。

 

ならば、標本に変えられる前に脱出した方が良いだろう。

しかし…問題は、バニングスさんだ。彼女を見捨てて帰ってしまえば今後の俺の学校生活が暗黒面に堕ちる事は最早確定だろう。

助けるべきか…いや、しかし…最初の能力が完全に発動出来なかった事を考えれば敵は俺の能力を知っているか、弱める事が出来ると言う事だ。

そんな、得体の知れない相手を敵に回すのは危険だろう。

 

「やはり、ここは撤退か…どうせ、俺のなんて友達も居ないし…今更無様に帰って来ても…フフフ…どうせ、死んだ事を知っているのは、バニングスさんと犯人くらいだ。例えバニングスさんが無事に帰って来てもきっと…精神的なショックだと思われる…エヘヘ…エヘヘへ…」

そうだ、見捨てても良いじゃないか?そうだろう?南一夜。

 

お前は悪くない。

 

悪いのは、バニングスさんだ。

 

悪いのは犯人だ。

 

そうだ…。

 

そうなんだ。

 

『「“僕は悪くない”」』

 

「流石ね。その外道的思考は…」

 

「っ!」

早速逃げようと行動しかけた時、突然そんな声が聞こえてきた。まさか…黒幕か?

 

「………」

心臓に冷水が浴びせられた様に一気に体から体温が失せる。ここで、生きている事がバレる訳には行かない。意識を集中し死んだフリを続行する。

 

「南?死んだフリは、止めなさい」

 

「…」

やはり、奴らは俺の力の事は把握しているらしい。頭にまで、巻かれた包帯の所為で、声が聞こえづらいが、犯人は女性の様だ。声を聞くたびに心臓が悲鳴を上げている気がする。

 

「警告。止めなさい…」

 

「…」

死んだフリ。死んだフリ。

兎に角死んだフリ。

 

「…あ、そう。私の言う事が聞けないのね…」

凄まじい殺気が、全身に襲い掛かる。何だ?この殺気は?只者じゃねえ!

 

「さっさと…返事をしなさいよバカ!」

瞬間。俺の腹部に深刻なダメージが襲い掛かってきた。どうやら何者かが、腹部へと重い物を叩きつけたらしい。

 

「グフ…」

腹部。特に肋骨に深刻な被害があったらしく、耐え切れず悲鳴を上げてしまった。

ヤバイ。

 

「…おはようございます」

 

「はい。おはよう」

観念した、俺の言葉に普通に答える犯人。…つうか…。

 

「日野さん?」

 

「何?」

目の前に何食わぬ顔をした日野さんが腕を組んでいた。表情は、少々機嫌が悪い様だ。

ヤバイ。命の危険を感じる…。

 

「で?」

 

「えっと…」

日野さんが此処に居るという事は、誘拐の犯人は…日野家?

つまりは、バニングスさん…いや、バニングス家の令嬢を誘拐する作戦に利用されたのか?…いや、日野さんがそんな事をするか?

 

「…誘拐犯は…日野さん?」

 

「…」

その後、満面の笑みで、再び腹部に重い物を叩きつけられたのは、言うまでも無い。

 

 

 

腹部へのダメージを若干残しつつ何故この様な状態になっているのかを日野さんから軽く説明を受けた。

 

「つまり、俺の能力が発動しなかったと?」

 

「そうね。アンタの唯一の長所である能力が発動しなくて、全身の骨が在り得ない事になっていた上に顔面も粉砕されてて、心臓の弱い人には見せられない状態だったのよ?」

あまり想像したくない光景だな…。自分の事ながら感じるぞ。

しかし…俺の能力が発動してなかったとは…仮にも神様の様な人から貰った力だぞ?

“過負荷”の能力が消せない様に能力の無効化なんて出来るのか?

たとえ、“無効”の能力でも夢の例がある様に完全に無効に出来るとは思えない。

特に欠点である“大嘘憑き”ならば、なおさらだ。

 

「…まあ、良いか。考えた所で答えは出ないだろうしな。所で日野さん」

 

「何?」

 

「俺が元に戻らなかったのは、十分に分かった。でも、なんで、俺は包帯なんかでミイラの様に梱包されたんだ?」

正直、首しか動かせない様に縛られている為、時折やって来る日野さんの攻撃を防御出来ない。

 

「ああ、それね。リンちゃんが、南が元に戻らないって、慌てて駆け込んできてね。手遅れの人に処置するように医務室にあった包帯やら薬品で蘇生を試みたみたいなのよ」

 

「…成る程な。通りで、包帯の中から薬品の匂いがする訳だ…」

「まあ、本人に悪気は無かったと思うわよ?私は、放置してたら自然と元に戻るって言ったんだけどね」

鋭利な鋏を取り出し包帯をジョッキリと切ってくれたお陰で体が自由になった。起き上がり身体を観察すると薬品の為すこし赤くなった皮膚が現れた。

 

「むう…」

試しに赤くなった部位を“無かった事”にすると、皮膚の色は元の肌色へと変化した。今の所は異常なしらしい。

 

「リンは何処にいるんだ?」

俺の能力が発動していなかった時の状況を詳しく聞きたい。

バニングスさんに聞くのが実際は一番だろうが、今は事件後だ聞くのは酷だろう。それに原作キャラに関わるのは出来るだけ避けたい。

 

「リンちゃんなら、アンタが起きる少し前に疲れて眠ったわよ?3日間位眠らずに看病(?)してたみたいだから」

 

「3日間?俺は、そこまで元に戻ってなかったのか?」

 

「そうね。流石にヤバイと思って葬儀の手配をする所だったわ」

燃やされる前に目覚めて助かった。いや、本当に。

 

「まあ、半分冗談はこのくらいにして、」

 

「何が冗談だったの!」

 

燃やす事?それとも葬儀の事か?

 

「南…ゴメンね」

 

「はへ?」

やがて来る衝撃の言葉に身構えていた俺は日野さんの以外な言葉に思考が停止した。

謝った?あの日野さんが?

 

「今回の事は、完全にこちら側のミスよ。完全に犯人の力を見誤ってた」

日野さんは、こちらに背を向け淡々と言葉を続けた。

 

「その所為で、アンタが死んでしまった…死んで無かったけど…結果だけ見れば死んだも同じだった。…私の所為でアンタは…」

 

「えっと…日野さん?」

日野さんの言葉に何故か、冷たい汗が背中を伝った。訳が分からない…日野さんが一体何を言いたいのかが分からない。

 

「…つまり?」

 

「アンタは、暫く入院って事よ」

 

「へ?」

入院?何故?俺の体は既に全快してますが?

 

「今までの様に直に復活したなら、誤魔化せたんだけど…ほら、3日間も死んでたじゃない?医者とか看護婦さんとかの噂が結構広がちゃってね…アハハ…」

守秘義務は何処にいった?

 

「こっちからも圧力をかけたんだけど…既に時遅し…バニングスにも伝わってると思うし…」

バニングスの情報網がどれ程か分からないが、それに瀕死とあって、学校に登校したとなれば、確実に人外だと思われるだろう…原作キャラや転生者達に目をつけられかねん。

 

「あ…アハハ…」

 

「アハハ…」

日野さんと俺の乾いた笑いが部屋に響き渡る。互いに今回の失敗について、頭で考えているのだろう。俺自身ももっと気を付けていれば良かった。自分の力を過信しすぎたのだ。結果は、この有様だ。

 

「と、言う訳で…はい」

日野さんはそう言って、紙の束を渡してきた。表紙には、見た事の無い建物が写っている。

 

「…なに?コレ?」

 

「流石にこの病院は、不味いでしょう?アンタの能力を知らない人が見たら軽くアンデット扱いよ?サイトウハザードならぬミナミハザードよ?」

確かにそうだろうが、なんか、言葉だけ聞くと新手のイジメっぽいな。学校でミナミ菌だ~感染するぞ~とか言われそうだ。

 

「この病院だったら、完全に日野の支配下にあるからその心配も無用よ。スタッフもウチ出身だけだし」

 

「?」

ウチ出身?どう言う意味だろうか?

だが、俺の能力がバレる危険性が無い方が良いに決まっているし…それに…。

 

「因みに…全治何ヶ月?」

 

「…資料とかを見ても…最低1年って所かしらね…」

 

「い…1年…」

早く学校に復帰したいしな…アハハハ…はぁ…。

 

 

 

 

こうして、俺の始めてのデートと言う一大イベントは、俺の知らぬ所で勝手に進み、そして終わった。

 

このデートで俺が手に入れたモノは、1年の禁固刑の様なモノだった。

 

 

 

 

 

 

デートなんて…もうしない…したくない!

 

 

 




次の話で、日常編は終了です。

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