令和のモリアーティ   作:オッパッピー

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File.14 もう一人の探偵

スーパーでの事件から数日後。

 

帝丹高校。

 

昼休み。

 

小西浩平は職員室で中間試験の採点を進めていた。

 

「小西先生」

 

椎名小春が温かいコーヒーを机へ置く。

 

「ありがとうございます」

 

「先日の件ですが」

 

「目暮警部から、お礼のお電話がありました」

 

「ああ」

 

小西は採点の手を止めることなく答えた。

 

「事件が解決したなら、それで十分です」

 

「感謝されるようなことはしていません」

 

椎名は苦笑する。

 

「ですが、小西先生がいらっしゃらなければ、解決まで時間が掛かっていたと思います」

 

「そうかもしれませんが」

 

小西は赤ペンを置いた。

 

「疑われるより早く終わらせた方が合理的だった」

 

「それだけです」

 

椎名は、それ以上何も言わなかった。

 

それが小西の本心であることを知っていたからだ。

 

---

 

その日の夕方。

 

毛利探偵事務所。

 

蘭は夕食の支度をしながら、数日前の出来事を思い返していた。

 

「ねえ、コナン君」

 

「ん、なに?蘭姉ちゃん」

 

ソファでテレビを見ていたコナンが振り返る。

 

「この前ね、スーパーで事件があったの」

 

「ああ」

 

ニュースで見ていた事件だ。

 

「その場に、帝丹高校の先生が居合わせてたんだけど……」

 

コナンは何気なく聞いていた。

 

「すごかったの」

 

「警察がまだ何も分かってないうちに、試食が原因だって見抜いちゃって」

 

コナンの表情が変わる。

 

「先生?」

 

「うん」

 

「数学の先生なんだけど」

 

「小西先生っていう人」

 

その名前を聞いても、コナンに心当たりはなかった。

 

六月にはすでに高校を離れている。

 

当然、その教師を知るはずもない。

 

「その先生ね」

 

「現場を見ただけで、警察が調べるべきことを全部当てちゃったの」

 

「新一みたいだなって思っちゃった」

 

コナンは黙ったまま話を聞いていた。

 

「へぇ……」

 

短く返事をする。

 

だが、頭の中では別のことを考えていた。

 

(警察より先に事件の本質を見抜く高校教師……)

 

(ただ者じゃないな)

 

---

 

夜。

 

阿笠博士の家。

 

コナンは事件の記事を机へ広げていた。

 

「博士」

 

「何じゃ」

 

「蘭が言ってたんだけど」

 

「帝丹高校に、すごい数学教師がいるらしい」

 

博士は少し驚く。

 

「ふむ、探偵みたいな先生か」

 

「ああ」

 

コナンは記事を見つめる。

 

「今回の事件だけなら偶然かもしれない」

 

「でも」

 

「もし、次も同じようなことがあったら」

 

「その時は偶然じゃない」

 

証拠はまだない。

 

だから調べることもしない。

 

ただ、一人の教師の名前だけが、コナンの記憶に刻まれた。

 

小西浩平。

 

---

 

同じ頃。

 

小西は帰宅し、ネクタイを外して椅子へ腰掛けていた。

 

「今日は静かな一日でしたね」

 

椎名が夕食を並べる。

 

「ああ」

 

「その方がいい」

 

小西は静かに答える。

 

「事件が起きないことが、一番平和だ」

 

その言葉とは裏腹に、小西は気付いていなかった。

 

数日前のスーパーでの出来事が、一人の名探偵の記憶へ、自分という存在を刻み始めていたことを。

 

まだ互いを知らない二人。

 

しかし、運命の歯車はゆっくりと噛み合い始めていた。

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