「こいつの魅力に気付いてるのアタシだけでしょw」って舐めてたら、NTRれて精神崩壊するヒロインたちの様相   作:破滅

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第1話

 谷山 俊一は、陰キャである。少なくとも、自分ではそう思っている。

 

 目元が隠れるほどに長い黒髪に、不格好な黒縁眼鏡を掛けており、猫背で背格好から陰気さが漂っている。

 

 趣味は、ゲーム。と言ってもやるのは非協力型対戦ゲームと、協力型非対戦ゲームばかり。SNS投稿は非精力的で、交流が広がらないので世間のオタクと呼ばれる人たちほどネットも充実していない。

 

 言わずもがな、リアルでもぼっちである。

 

 絡みがあるのは反抗期の義妹と、パシリにしてくるギャルと、ネットで非生産的な会話を共有するフレだけである。

 

1.

 

 義妹の名前は、谷山 あずき。

 

 生意気盛りの中学三年生。最近髪をライトブラウンに染め始めたり、イキってピアッサーも買って背伸びはしているけど穴はまだ開けれてない。

 

 家ではショートパンツとお腹が出るくらい短いキャミソールという、俊一を異性として全く意識してないか襲われるために誘惑しているとしか思えないほど挑発的な格好で、無防備にゴロゴロしている。

 

 されど無自覚じゃない。

 

 チラチラと向けられている太腿や背中への視線に、あずきは内心ドキドキしている。

 

「ねえ、おにぃ。アイス」

 

「アイスがどうしたんだ?」

 

「食べたい。取ってきて」

 

「なんで? 自分で取りに行けよ」

 

「なに? おにぃのくせにアタシに逆らうの?」

 

 ソファの上でだらだら漫画を読んでいたあずきは、足をそのままもさもさとしている俊一の頭に乗せてぐりぐりする。

 頬を浮かべながら笑みを浮かべるその表情は悪戯を楽しむ子供のそれである。

 

「な、なに? 怒ったの?」

 

 ずいっと立ち上がられて怯えつつも、何かを期待するような目をしている。しかし黙ってアイスを取りに行き、ポンと丸出しの腹にアイスを投げられた。

 

「ひゃっ、なにすんの!?」

 

 急に冷たいアイスを乗せられて、涙目になりながら恨めし気に睨む。

 

「食べさせて」

 

「は?」

 

「アタシ今漫画読んでるから、おにぃが食べさせて!」

 

 アイスを差し出して我儘を言う。

 

「お前、本当に我儘だな」

 

 差し出された棒アイスを、唇で食んでしゃぶるように舐め始めた。漫画を読みながらという口実だったくせに、その視線はまっすぐ俊一に向いてる。

 

「いや、その、お前さ……」

 

「な、なに?」

 

 ただのアイスとはいえ、顔の整った女が棒状のものをしゃぶるという行為はどうしても卑猥な連想をしてしまう。が、それを指摘すれば卑猥な想像をしていることがバレてしまうので注意を出来ない。

 

「そういう我儘は家の中だけでしとけよ」

 

「ずるわけないでしょ。あと、おにぃが食べて、もう飽きた」

 

「お前なぁ……」

 

 舐められた食べかけの棒アイスを見る。あずきは漫画を読んで続きを食べる気はないらしいし、開封したアイスを冷凍庫にしまうのも、ましてや捨てるなんてとんでもない。ため息を一つ吐いてから、アイスを食べる。

 

「(あっ♡ アタシがぺろぺろ舐めたアイス、おにぃが食べてる♡ こんなの間接キスってか、間接ディープキスじゃん♡ ってかこれ、躊躇なく食べるとかもうアタシのこと大好きなの確定じゃん♡)」

 

 思い立ったように身体を起こして、俊一の眼鏡を外し前髪を手で退けた。

 

 眼鏡の奥には、整った眉と切れ長の目、そして筋の通った鼻と、整った容姿が隠れていた。

 

「ねえおにぃ、家でくらい外したら? その眼鏡。ない方が格好良いよ」

 

「外したら何も見えなくなるんだよ、アホか」

 

「じゃあコンタクト……」

 

「それは家で着けるもんじゃないだろ」

 

「……ばか、ばーかばーか」

 

「子供か……」

 

 漫画で隠されたあずきの顔は赤く染まっていた。

 

 隠されているイケメンな素顔を家の中でだけで見せて欲しい。

 

 晒せば、顔目当ての変な虫が寄り付いてしまうかもしれないから。でも、俊一はその人見知りな性格ゆえに外ではその目立つ顔を見せないし、ただの陰キャにしか見えない彼が外では全くモテないとあずきは知っている。

 

「(おにぃの魅力を知ってるのなんてアタシだけ♡ 早く押し倒せ、ばか♡)」

 

 無防備過ぎる薄着も、生意気な我儘も全部わざとやっている。これは、あずきなりの誘惑だった。

 いつか堪忍袋がぷっつんした俊一にわからせられることを、いつも期待している。

 

 あずきは、義兄に恋するドMなのである。

 

 

2.

 

 ギャルの名前は竜ヶ水 姶良。母親譲りらしい天然金髪とエメラルドグリーンの瞳、理事長の孫娘という家柄。そして本人が兼ね備えたカリスマ性から、誰も逆らえない学園の女王様の地位を揺るがぬものにしている。

 

 千円札を取り出して、指先で弄ぶようにひらひらさせる。

 

「ねえ、俊一。これでパンと飲み物買って来て、ダッシュで」

 

 姶良のカリスマ性の本質は飴と鞭。

 ただ、言う事を聞かせるだけでなく、従う者にはおつりと姶良のお気に入りという地位を与え、逆らえば女王の機嫌を損ね、平穏な学園生活が脅かされるという恐怖を与える。支配者の風格。

 

 千円札ではなく、それを持つ手首を掴んだ。

 

「は? なに、どういうつもり?」

 

「一緒行くぞ」

 

「……わかった(は? は? 何こいつ、また逆らって来たんだけど♡ 手首掴んで一緒にって、陰キャのくせに生意気♡ そんなされたらアタシが逆らえないじゃん♡ 好き、やっぱこいつ好き♡)」

 

 クラスの女王にただの陰キャが逆らう。最初のうちは教室を多少ざわめかせたこの光景も、最近はただの日常になりつつあった。

 

「ねえ、いつまで掴んでんの? 手首」

 

「あっ、悪い」

 

「(あっ、余計なこと言った。離さないで♡ でも恥ずかしかった。アタシがこんなやつにみんなの前で手を引かれるの)……それで、俊一はなに食べるの?」

 

「弁当あるから」

 

「あっそ(弁当あるのに一緒来てくれたんだ♡)」

 

 姶良は購買で自分の分のパンとイチゴミルク、そしてコーヒー牛乳を買う。俊一に渡した。

 

「えっ、なにこれ」

 

「一緒来てくれたから。それともアタシに恥掻かせるつもり」

 

「いや、じゃあ、ありがとう」

 

「(受け取ってくれた♡ 良かった♡ もう、早く告れ♡ 付き合ってくださいって頭を下げろ♡ そしたらいっぱい可愛がってあげるし♡ 何ならお金もあげるし♡)」

 

 竜ヶ水 姶良はお嬢様だった。

 

 それ故に、言う事を聞かせて、対価としてお金を払う(物を渡す)ということでしか人と関わる手段を知らない。

 

 幼少期より淑女教育を叩き込まれた故に、はしたない、という価値観があり、最終的な愛の告白は男性からという古い考えが頭をしめている。

 

 つまり、彼女にとってパシリにするという行為はシンプルな愛情表現であり、要するに好きな男に貢ぎたいからその口実の為に色々要求を吹っ掛けているだけの、不器用な恋愛初心者ギャルなのである。

 

 




※第三話にて俊一は他の女と付き合います
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