「こいつの魅力に気付いてるのアタシだけでしょw」って舐めてたら、NTRれて精神崩壊するヒロインたちの様相 作:破滅
3.
『はい、雑魚乙~。しゃっ! ざぁこぉ!』
画面に映るのは赤ゲージギリギリで残っているキャラクターと、YouLoseの文字。俊一は歯噛みし、対するボイチャの向こうの『クシキノ』(本名、市来 夏生)はソプラノボイスで雄たけびを上げていた。
「辛勝したメスガキ助かる」
『は? 雌雄を決するって言葉知らないの? つまり、勝ったボクがオスで、負けたshun1がメスってわけ。ドゥーユー、アンダスタン?』
俊一だからshun1、極めて単純なハンドルネームであった。
「くぅ、学校ちゃんと行ってる分のワンタッチの差だな。不登校の暇人強すぎる」
『何を言ってもボクの勝ちだもんね。約束通り、自撮り送ってよ♪』
「自撮り撮るのあんまり好きじゃないんだよ」
『あれれ? 負けたのに、出来ませんって? だっさ。じゃあ、お許しください、クシキノ様。って丁寧に謝罪してくれたら、考えてあげても良いけど?』
「はぁ、まあ俺から言い出した賭けだし良いけどさ」
俊一は、ゲーミングPCのカメラをONにした。
ビデオ通話モードが開始される。
「賭けは顔を見せる。だから、これでも良いだろ」
カメラに映し出されたのは長い前髪がヘッドホンによって更に押し下げられ、前髪と眼鏡に顔の半分を隠された見るからに陰キャそうな少年だった。
『うわっw 見るからに陰キャ。学校でも友達とかいないタイプでしょ! 何ならイジメられてるタイプでしょ!』
「クシキノさんみたいに不登校になってないってことは、つまりイジメられてないってことなんだよな」
『は? でもこの前、ヤンキーにパシられてるって言ってたくない?』
「ぐっ……」
厳密にはギャルに、ではあるが、陰キャにとってはそう変わらないものだった。
『ねえ、折角だしその前髪あげて眼鏡も取ってさ素顔全部見せてよ』
「は? そこまでは賭けの対象じゃないだろ」
『ケチ。良いじゃん減るもんじゃないし』
「それだったらお前の顔ももったいぶらず見せろよ。平凡クソ陰キャの俺と違って、お前、アルビノなんだろ?」
『……shun1は、本当にボクの顔、見たいの?』
「見たいだろ。嘘なら嘘で面白いし、本当なら珍しいし」
クシキノとshun1がネットで知り合いよく遊ぶようになってから、凡そ一年の月日が経とうとしていた。クシキノは自分が不登校であること、アルビノが原因でいじめられていること以前打ち明けていたのだ。
モラルとデリカシーに欠けるshun1は「アルビノとか中二病乙w 嘘松じゃないなら証拠うpよろw」と煽り、今回の賭けの流れになったのだ。結果は負けてしまったわけだが。
クシキノにとって、shun1は現在唯一の交流相手である。
現在ひきこもり歴は二年に到達しようとしており、親からも疎まれつつあるクシキノにとって、shun1は唯一の理解者ともいえる存在だった。
そんな彼に嘘を吐いていると思われたくないし、何より、社会に否定された自分の姿をshun1にだけは受け入れて欲しいという願望があった。
『その、見てもボクのことブロックしたりしない?』
「なんで? 正体暴かれたらゲーム弱くなるタイプの敵的なやつってこと?」
ゲームをする関係性は変わらない。という言葉を当たり前のように、ひねくれた形で伝えられてクシキノは少し緊張が緩んでカメラをONにした。
映ったのは、真っ白な髪に赤い瞳、ずっと暗い部屋に引き籠ってるからなのか、その体質故か病的に真っ白な肌と折れてしまいそうなほどに細い腕、首。そして、やたら整った顔立ち。
「はぁぁ」
アルビノ美少女と言ったクシキノの風貌に、shun1は露骨にがっかりしたような溜め息を吐いた。
『な、なんで? ボク、嘘吐いてなかったよね? 何が気に入らなかった?』
「別に。俺は、不細工のアルビノを期待してたのに。だって、髪も肌も真っ白なのにデブだったり顔面が不細工だったりしたら、滑稽で面白いじゃん。ああ、こういう可哀想な境遇の奴もいるんだって優越感に浸れたのに。何だよお前、普通に可愛いのかよ」
『は? えっ、どゆこと? 褒められてるの? 貶されてるの?』
「どっちでもないよ、ただの感想」
言ってることはガチでただのカスだった。
差別的で、人が見た目が原因で虐められてたと聞いて哀れむでもなく同情するでもなく、ただ嘲笑するためだけに顔を見たかったと打ち明け、美形だと知るや否や露骨にがっかりする。
圧倒的にクズの立ち回りなのに、夏生はそれが嬉しくて仕方がなかった。
だってそれは、彼女がどんな見た目であろうとも、今まで通りどんなことも明け透けに喋れる気の置けないフレ、クシキノとして接するという証明に他ならないから。
不易で、絶対的なshun1との関係性が、今まで裏切られ続けて来たクシキノにとって救いでもあった。
『そ。あっそ』
「なんで照れてるの?」
『う、うっさい!』
クシキノは慌ててカメラをオフにする。素っ気ない言葉とは裏腹に、口元はカメラが消えた後も変わらず手で隠されていた。赤く染まった頬は、その生まれつきの白さゆえに残酷なほど目立っていただろう。
『で、約束。shun1も、眼鏡と前髪。どかしてよ。アタシも見せたんだから』
今まで男を装ってたボクの一人称が、女の子のそれに変わったのはクシキノにとっても無意識だった。
俊一は眼鏡を外し、前髪をかき上げる。
その目は切れ長で瞳は鋭く、その鼻筋は良く通っている。
『……嘘。普通にshun1顔整ってんじゃん。なんで隠してんの?』
「別に良いでしょ」
『いやだって、そのコンタクトでオシャレして行けば普通に友達も出来るだろうし、女子にもモテるだろうし。いや。そしたらアタシと遊ぶ時間とか無くなっちゃうかもしれないけど』
「その予定はないよ、今のところ。そもそも俺、人見知りだし。性格も知っての通り最悪だからな近づかれてもどうせ嫌われる。なら最初から目立たないで、無関心でいられる方がマシだ」
『まあ、そうだようね! shun1みたいなやつアタシみたいに付き合う相手選べないやつしか相手しないんだから。これからも毎日アタシのゲームの相手しとけ』
そう言いながらも、クシキノの心臓はバクバクうるさかった。
自分の容姿を晒すことで、shun1の態度が変わることを恐れていた。でも逆なないと思っていた。彼の顔を見ても、自分の顔を見られても、クシキノ自身は今まで通りでいられると思っていた。
なのに……。
「(ヤバ、どうしよ。本当に好きになっちゃった♡)」
次回、俊一は別の女と付き合うことに……!