「こいつの魅力に気付いてるのアタシだけでしょw」って舐めてたら、NTRれて精神崩壊するヒロインたちの様相   作:破滅

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第6話

1.

 

「おにぃおかえりー」

 

 家に帰ると、薄着にハーフパンツのあずきがソファを陣取ってゴロゴロしている。中学三年生にもなり、太腿はどんどんむっちりしてきて、食いこんだショートパンツからはお尻の形が丸わかりである。目に毒だ。

 

「あずき、その年頃なんだから薄着でうろつくのやめろよ」

 

「えっ、なに? キモっ、おにぃ、妹のお尻見て欲情してるのー?(おにぃがアタシを心配してる♡ 意識してる♡ 全部わざとだから♡ 触って良いよ♡)」

 

 あずきが脳内でそんな卑猥なことを考えてるとは露とも思わない俊一は、無防備過ぎる妹のことが普通に心配だった。

 幼い頃からずっと寝食を共にしてきた家族ではあるが、血の繋がりはない。

 

「(甘えてるのは理解るけど、俺が間違いを起こさないとは限らないだろ……)」

 

 あずきは幼い頃に両親を亡くして、縁があった谷山家が引き取ることになってから俊一の義妹になった。俊一は優しいお兄ちゃんというわけではなかった。

 

 小学生の頃はすぐ泣く妹に厳しく当たったりしたし、おやつの訳合いで多めに搾取もすれば、くだらない言い合いの発展から手を出したこともある。

 もちろん、一緒に遊んだり同じテレビを見て笑ったりしたこともある。

 

 あずきは他人の夫婦に引き取られ、養われている立場だ。谷山夫妻はあずきを実の娘のように扱おうとしているけどやっぱり他人だし、本当の親のように思うのは亡くなったあずきの両親を忘れることと同義な気もしてそれはできない。

 

 その点俊一は違った。

 

 性別問わず、あずきは兄妹というものに元々憧れがあった。別に俊一を兄と慕うことは両親への裏切りでもないし、それに引き取られたあずき相手でも血の繋がった兄妹みたいに普通に仲が良くなったり悪くなったりという関係は、あずきにとって居心地が良くて、俊一は唯一遠慮をせずに甘えられる相手なのだ。

 

 ……という、あずきの心情を俊一は理解している。

 

 自分が、親を喪ってしまったあずきにとって唯一の甘えられる相手であるということを。だから多少傍若無人に振る舞われたり、我儘を言われても腹は立たない。

 むしろ可愛いというか嬉しいというか愛おしいというか、例えるなら捨て犬に向けるものに似た情のようなものを抱いている。

 

 ただし、その甘えと信頼が恋愛感情にまで発展していることだけ知らない。

 

「ほーれほれ、悔しかったら叩いてみなよ(ほら襲っておにぃ♡ 昔みたいに、悪いことしたらめっ、ってお尻ぺんぺんしてよ♡)」

 

 あずきは、ふりふりとお尻を振って俊一を挑発する。

 

 如何に、俊一があずきの信頼を理解していても。家族として接しなければならないと自制していても、性徴が出始めた女の身体に全く欲情しないなんて不可能である。

 

「(こいつマジで、俺の気も知らないで……)」

 

 俊一の中にあるのは、妹をそう言う目で見てしまう抗えない衝動への罪悪感と、それを知らずに挑発するこのメスガキへの怒り。

 

 このまま何もしなければあずきはどこまでもエスカレートすることを経験上理解していた。

 

「挑発すんな、アホ妹」

 

 俊一はあずきの背中を尻に敷き、太腿に手形をつける。

 

「あっ、痛い、何すんの馬鹿おにぃ! 重いんだけど!」

 

 キャンキャン吠えるあずきだけどその内心は

 

「(お、重いっ♡ おにぃが乗ってる。お、お腹がソファで潰れてんお゛っ♡ あっ♡ 太腿もジンジンする。おにぃちょっと容赦ない♡ 最近わがまま言い過ぎたから、ストレス溜まってた?♡ もっと、もっと叩いて♡)」

 

 こんなものである。あずきはドMだった。

 

 性癖が目覚めたきっかけは約二年前。

 SNSで知り合った知らない人に下着の写真を送ろうとしていたところを俊一に見つかり、こってり叱られた後に叩かれたことだ。

 

「(はぁ♡ はぁ♡ こうして乗られて叩かれると、屈辱の分だけアタシがおにぃのモノになってるって感じて、それと同時に構ってもらえてアタシのこと大事にしてくれてるって思うから凄く気持ち良い♡)」

 

 あずきのドMは、ある種、その寂しさの裏返しでもあった。

 そして、あずきはただ被虐趣味というわけではない。

 

「重い! 痛い! おにぃ酷い! お母さんに言うから!」

 

「ちょ待て、お母さんはズルくね? お前が始めた物語なのに」

 

 慌てて腰を浮かした俊一ににぃっと悪戯っぽい笑みを浮かべる。

 

 妹の背中に乗って太腿を叩いたなんて家族会議ものである。その理由が薄着でお尻を振って挑発してきたから……なんて言えるはずもない。

 

「内緒にしといてほしい?」

 

「そりゃまあ」

 

「じゃあ、代わりに明日アタシとデートして! 一日中ショッピングを回ったり、ご飯食べたり、あっ、水族館とかも行きたいかも!」

 

 ここまでがあずきの計略だった。

 

 俊一が手を出して来るまで挑発をし続け、お母さんへの報告を盾にデートへ誘う。素直に誘っても俊一は断ることはないだろうけど、それは反抗期的にはやっぱり恥ずかしいし、それに手を出されるという過程はドMにとってのご褒美でもある。

 

 趣味と実益を兼ねた完璧な計略。

 そしてそれが、照れ隠しを兼ねたあずきの誘いであるという暗黙の了解。

 

「おにぃにとっても悪くないでしょ? 無為にゴロゴロするしかない休日が、こんな可愛い義妹とのデートになるんだから! 良かったね、アタシがいて!」

 

「自分で言うか? 否定はせんけど……」

 

 俊一は頷こうとして、約束を思い出した。

 

「あ、ごめん。明日は約束があるから無理」

 

「は? 約束? えっ、嘘、誰と!?」

 

「え、いや、学校の……」

 

「誰誰誰? アタシの知ってる人? ……まさか、女?」

 

 あずきの鋭い指摘に、俊一は内心ギクリとする。いや別にギクッとする必要なんてないんだけど。別にやましいことはしていないのだし、俊一も男子高校生である。そろそろ彼女の一人や二人出来てたって不自然じゃない。

 

「まあ、そうだけど」

 

「嘘……」

 

 崩れるようにソファに突っ伏したあずきの脳内はしばらくフリーズして、それから高速回転を始めた。

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