「こいつの魅力に気付いてるのアタシだけでしょw」って舐めてたら、NTRれて精神崩壊するヒロインたちの様相   作:破滅

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第7話

2.

 

 いつも通りの黒縁眼鏡と、ジーパン、英字のプリントがされた白いシャツ、黒いカーディガン、千円くらいの安物のチェーンネックレス。

 中二病拗らせた痛い陰キャが買いそうな私服を具現化したようなファッション。

 

 猫背で、目元が隠れるもさい髪型でどう見ても陰キャだけど、細身の身体がやさぐれホストのような雰囲気を醸し出してなくはないような気がする。

 

「うわ、おにぃ格好ダサッ。それで出掛けるの?(私服のおにぃちょっとエロい。でもアタシが好きだからそう思ってるだけなはず♡)」

 

「仕方ないだろ、これしか持ってなかったんだから」

 

「えー、女の子とデートなんでしょ?嫌われちゃうかもよ?」

 

「まあ、それならそれで別に良いよ」

 

「えっ、おにぃはその娘のことあんまり好きじゃないの?」

 

「んー、まあ苦手寄りなタイプではあるかも」

 

「(えっ♡ おにぃデートに乗り気じゃないの? じゃあ、すぐ解散するかも♡ 解散したら偶然遭遇した体でアタシとデート出来るじゃん♡)」

 

「早く帰って来ても良いんだからね?」

 

「はいはい、行ってきます」

 

「いってらー」

 

 手を振って俊一を見送ったあずきはサングラスとマスクを装着し、こっそり後を追った。

 

「(まああの格好な上に、おにぃデート自体にもそんな乗り気じゃなさそうだしこれは邪魔するまでもなく失敗しそう。ってか失敗しろ♡)」

 

 これが、絶望の始まりだとこの時のあずきは思ってすらいなかった。

 

 

1.

 

「はぁ(なんか気怠いな……)」

 

 俊一の休日は家でだらだらするのがデフォルトである。

 実際にはあずきが我儘を言って外に連れ出させてくるので完全に引き籠って終わる休日は殆どないけど、それでも約束して遊びに行くというのが面倒だった。

 

 というのも約束をしたら前日からそのことを意識しないといけない。

 

 明日休日だし♪ というノリで朝までゲームしたり、無意味に夜更かししたりとか出来なくなるし、アラームならなかったらどうしようとか不安になっていつもより、眠りが若干浅くなるような気もする。

 

 そうでなくとも、恋人という関係値の女の子とデートをするという行為は俊一を緊張させていた。

 

 気怠いと言いつつ、俊一はデートに緊張しているのである。

 

 約束の20分前に集合場所に着いた俊一は、一度離れてその辺をうろうろし始める。あまりに早く着きすぎていると、無駄に気を遣わせたら申し訳ないし、楽しみで気持ちが急いたって思われたら癪だし、緊張してるのバレたら恥ずかしいし。

 

 だから、三分前になるまで近くをうろうろして、ギリギリで来た感を演出する。

 

 それでも早く来ているのは、アクシデントでも遅刻したくないからだった。

 一応恋人との初デートでもあるわけで。礼儀的にもそうだし、遅れたら後で根に持たれそうというか弱み握られそうだからというのもある。

 

 苦手なタイプと言った割に、今後の関係性を考える辺り、別れたいと思っているわけではない俊一なのである。

 

「おはよう、俊一くん」

 

 なんてことを考えていると、後ろから声を掛けられる。

 

 振り返ると、むにっと人差し指が頬に刺さる。

 

 レースがついた白いトップスに、胸が強調される位置まで上げられている黒いスカートと厚底の涼し気なサンダル、学校ではしていなかったナチュラルなメイク、ワンポイントの真珠のイヤリング。

 

 清楚でありながら、地味ではなくしっかりおめかししている、明らかに男が好きそうな格好をした心春が悪戯をして嬉しそうに笑っていた。

 

 あざとい、そして可愛い。

 

 明らかにこれが効くのを理解ってやってる、ということまで理解ってるのにそれでもくらっと来てしまったことが、俊一は少し悔しかった。

 

「おはよう。早いな」

 

「ええ、俊一くんとのデート凄く楽しみだったから。でもまさか先に着いてるとは思わなかった。いつ来たの?」

 

「今来たばっかだよ」

 

「嘘。だってずっとこの辺うろうろ歩いてたでしょ」

 

「見てたの?」

 

「ねえ、なんでうろうろ歩いてたの? もしかして私とのデートに緊張して落ち着かなかったとか?」

 

 違う、と否定したいけど、うろうろしているところを見られている以上じゃあ何でですか?と追撃されたら手詰まりになってしまう。

 ここは素直に認めた方が傷が浅いと判断して、俊一は両手を緩く上げた。

 

「ああ、そうだよ。デートなんて初めてだからな」

 

「(嘘。アタシとのお出かけはデートじゃなかったの!?)」

 

 尾行して盗み聞きしていたサングラスとマスクの義妹はショックを受けていた。

 

「本当に? やった、じゃあ良いデートにしないとだね」

 

 腕を後ろに組んで、上目遣いで可愛いことを言ってくる。たったこれだけのやりとりだけで、俊一の「(デート面倒くさい)」の感情は完璧に吹き飛ばされていた。

 更に、心春はさりげなく俊一に手を伸ばして手首をちょんと触る。俊一は少し逡巡してから手を繋いだ。

 

「(手、繋いだ。おにぃから繋いだ。……って言うか、何あの女。どう見てもビッチじゃん。あのナチュラルメイクも、清楚系ファッションも、あざとい仕草も。男から好かれるの熟知してる。おにぃ、ダメだよ。その女、絶対悪いから。騙されないで)」

 

「ねえ生見さん」

 

「心春。心春って呼んで」

 

「……心春」

 

「はい、なんですか?」

 

「いや、とりあえずどこ行くの? このまま直で水族館?」

 

 あずきの内心はおろか尾行されてることすら露と知らない俊一は、心春を名前で呼んだ挙句にデートのプランまで聞き始める。しかも水族館に行くつもりらしい。

 昨日、あずきが行きたいって言ったのも水族館だった。先約があるって断ったけどまさか行先まで狙ったように同じなんて。

 

「(アタシが行きたかった。まさか、カフェも行くのかな……)」

 

 当然行く予定である。

 

「その前に、服屋さん行かない?」

 

「えっ、もしかして俺の? やっぱりこの格好ダサい?」

 

「別にダサくはないですよ。俊一くん手足細くて長いし、これはこれで格好良いと思う。けど、単純に私好みの服着て欲しい……んだけど、ダメかな?」

 

「いや、でも服代とか持ってきてないし」

 

「勿論、私が出すので」

 

「いやそれは流石に悪いし」

 

「好きな男の子に、私好みの服を着て貰えるだけでお礼は十分だよ。もしかして、迷惑?」

 

「迷惑、じゃない。その、じゃあありがたく」

 

「はい」

 

 心春はにっこりと笑って、俊一に肩を寄せた。

 まだ一回目のデート、それも始まったばかりだというのに心春はどんどん俊一に距離を詰めて行く。

 

 デートの流れは既に心春が掌握しつつあった。

 

 その様子をあずき以外にも見ている人が、もう一人……。

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