ポケモン現代入り   作:ささみ

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第55話

 

 

 

 

「……だいぶ上がったな」

 

 山の開けた場所まで来てから、俺は図鑑アプリに表示したポケモンたちの情報を上から順に眺めていた。

 

『ポリゴン2 レベル50』

 

『リングマ レベル48』

 

『ゲンガー レベル46』

 

『ニョロボン レベル46』

 

『リザードン レベル44』

 

『スピアー レベル44』

 

『バタフリー レベル43』

 

『モルフォン レベル43』

 

『ニョロゾ レベル40』

 

『ロトム レベル34』

 

『サーナイト♀ レベル32』

 

『キルリア♂ レベル29』

 

『ギャラドス レベル28』

 

 少し前までの数字と比べれば、大体5から10くらいは上がっている。それだけでなく、進化して姿が変わった奴も多かった。

 

 ポリゴンはポリゴン2に、リザードはリザードンに。慎重だったキルリアもレベル30を越えてサーナイトになり、戦いたがりのラルトスも今はキルリアだ。

 

 その中でも、一番見た目が変わったのは――

 

「お前だよなぁ」

 

「ギャォォ……」

 

 少し離れたところで長い身体を横たえているギャラドスを見る。

 

 コイキングだった頃の面影がない。

 

「跳ねてるだけだったのに」

 

「ギャォ!」

 

「褒めてるって」

 

 育てていれば進化するのは知っていたが、実際に目の前であのコイキングがギャラドスになると、さすがに印象が違う。

 

 最近は山のことや新しく増えたポケモンのことで動くことが多く、俺自身が複数のポケモンへ指示を出して戦わせる機会はかなり減っていた。レベルも進化状態も変わっているなら、数字を見るだけでなく今の動きも確かめておきたい。

 

「最初はバタフリーとスピアーがそっち。モルフォンとサーナイトはこっちな」

 

「フリィ」

 

「サナ」

 

 4匹を左右へ分ける。

 

「バタフリーとスピアーは基本、自分たちでやってみて。危なかったら俺が止める。モルフォンとサーナイトは俺が指示出すから」

 

 向かい側でバタフリーが羽を鳴らし、その横ではスピアーが細い羽を高速で震わせる。

 

 モルフォンもすぐ空中へ浮いたが、サーナイトは相手との距離を少し広く取った。

 

「サーナイト、そこまで離れなくていいよ。訓練なんだから」

 

「……サナ」

 

「進化してもそこは変わんないな」

 

 姿も能力も大きく変わったが、慎重な性格は以前のままだった。

 

 少し離れたところでは、雄のキルリアがこちらをじっと見ている。その横にはロトムもいて、2匹とも自分が呼ばれるのを待ちきれない様子でこちらを見ていた。

 

「まだ入ってくんなよ」

 

「キル!」

 

『ロト!』

 

「返事だけはいいな」

 

 さらに後ろにはリングマとニョロボン、ニョロゾ、ギャラドスもいる。

 

 リングマは地面へ座り、こちらの様子を眺めていた。以前なら目の前で戦いが始まれば勝手に混ざってきてもおかしくなかったが、今は自分の番ではないと分かっているのか、落ち着いて待っている。

 

 向かい合った4匹がこちらを見る。

 

「ひんしまでやる必要はないからな。俺が止めたら終わり。それじゃ、始め!」

 

 最初に動いたのはスピアーだった。

 

「速っ」

 

 一気にモルフォンの側面へ回り込む。

 

「モルフォン、上!」

 

 大きな羽を強く動かしてモルフォンが高度を上げる。その下をスピアーが通り抜ける頃には、バタフリーがもうサーナイトとの距離を詰めていた。

 

「サーナイト、横!」

 

「サナ!」

 

 サーナイトが斜めへ動き、直前までいた場所へバタフリーの粉が広がる。

 

「モルフォン、ちょうおんぱ!」

 

「モルル!」

 

 空中からモルフォンが振り向き、触角を震わせる。バタフリーはすぐに高度を変えて音の届く範囲から外れた。

 

 俺が指示しているのはモルフォンとサーナイトだけだが、向こうの2匹は互いの動きを見ながら自然に相手を分担している。バタフリーがサーナイトへ寄ればスピアーはモルフォンへ向かい、片方が追われればもう片方が空いたところへ入ってくる。

 

 昔なら、自分へ飛んできた攻撃を避けるだけで精一杯だったはずだ。

 

「サーナイト、モルフォンの後ろ!」

 

 急降下してきたスピアーを見て、サーナイトがすぐモルフォンの後ろへ回る。

 

「モルフォン、前!」

 

「モルッ!」

 

 モルフォンがスピアーへ向かい、真正面からぶつかる手前でスピアーが横へ抜けた。

 

「今、サーナイト!」

 

「サナ!」

 

 モルフォンの陰から攻撃が飛ぶ。

 

 スピアーは身体を捻って避けたが、完全には外しきれず片側の羽が僅かに流された。

 

「惜しい。そのくらいの距離でいいよ」

 

「サナ!」

 

 サーナイトが一歩踏み込んでバタフリーを見る。

 

「モルフォンは右! サーナイトはバタフリー!」

 

 2匹が左右へ分かれると、バタフリーとスピアーもほとんど同じタイミングで相手を入れ替えた。

 

「……やっぱ俺の指示の出し方まで覚えてるな」

 

 付き合いが長い分、こっちが何を狙っているのかもある程度読まれているらしい。

 

 何度か攻撃が交差し、バタフリーがサーナイトの頭上へ回る。サーナイトは距離を取ろうと一歩下がりかけた。

 

「サーナイト、前!」

 

「サナ!?」

 

「大丈夫、前!」

 

 迷いながらも踏み込み、頭上のバタフリーへ向き直る。

 

 下がると思っていたのか、バタフリーの反応が僅かに遅れた。

 

「そこまで!」

 

 4匹が動きを止める。サーナイトだけは勢いを殺しきれず、少し前へ出てから立ち止まった。

 

「うん、いい感じ。ちゃんと前出れたじゃん」

 

「サナ……」

 

 声をかけると、サーナイトは少しだけ嬉しそうに目を細める。

 

 戻ってきたバタフリーとスピアーにも目を向けた。

 

「お前らはもう、俺が細かく言わなくてもかなり動けるな」

 

「フリィ」

 

 スピアーも羽音を鳴らす。

 

「しかも俺がどう指示するかまで知ってるから、相手にすると普通に面倒だわ」

 

 バタフリーが得意そうに羽を広げた。

 

「褒めてるよ」

 

 

 

     ◇

 

 

 

「キル!」

 

「だからまだだって」

 

「キル!」

 

「次でもない」

 

「キル!?」

 

「進化してもほんと変わんないなお前」

 

 休憩に入ると、雄のキルリアがすぐ寄ってきた。

 

 ラルトスだった頃から戦いたがりだったが、レベル29まで上がって進化してもそこは全く変わっていない。

 

 ロトムまで後ろから飛んでくる。

 

『ロト!』

 

「お前も今日はまだ。俺と組んで戦った経験が少ないから、別でちゃんと見る」

 

『ロト?』

 

「後でやるって」

 

 ロトムは納得したのかしていないのか、俺の周りを一度回ってキルリアの横へ戻っていった。

 

「ポリゴン2とゲンガー、こっち来て。リザードンは向こうな」

 

『ポリ』

 

「ゲンゲン」

 

「グォ」

 

 少し離れた場所で待っていたリザードンが前へ出る。

 

 大きな翼を広げると、巻き起こった風で周囲の草が大きく揺れた。

 

「こういう時に見ると、ほんとでかくなったな」

 

「グォ?」

 

「ヒトカゲだった頃と比べたら別物だろ」

 

 リザードンが少し得意そうに首を上げる。

 

 ポリゴン2がレベル50、ゲンガーが46、リザードンは44。数字だけを見れば2対1でかなり厳しい組み合わせだが、勝敗を決めるための訓練ではない。

 

「俺がポリゴン2とゲンガーに指示出す。リザードンは自分でやってみて。危なくなったら止めるから」

 

「グォ」

 

「ゲンゲン」

 

『ポリ』

 

「始め!」

 

 リザードンが翼を打ち、最初から空へ上がった。

 

「やっぱそこからか。ゲンガー、影! ポリゴン2は離れて!」

 

 ゲンガーが地面へ沈み、ポリゴン2が横へ飛ぶ。上空から放たれた炎が2匹の間を走った。

 

「ポリゴン2、右!」

 

『ポリ!』

 

 身体を滑らせるように移動して避ける。

 

「ゲンガー、今!」

 

「ゲンッ!」

 

 リザードンの真下からゲンガーが飛び出したが、リザードンもすぐに気づいて視線を下へ向ける。

 

「もう見てるか。戻れ!」

 

 ゲンガーが影へ沈むのに合わせて、ポリゴン2のあやしいひかりが飛ぶ。

 

 リザードンは翼を傾け、横へ流れるように避けた。

 

「飛べるようになったの、やっぱ大きいな」

 

 リザードだった頃なら、避ける方向は地面の上に限られていた。今は高さまで使って距離を取れる。

 

 その代わり、まだ空中での旋回は少し大きい。

 

「ゲンガー、左!」

 

「ゲンッ!」

 

 影から飛び出したゲンガーへ、リザードンが身体を向ける。

 

「ポリゴン2!」

 

『ポリ!』

 

 反対側から攻撃が飛んだ。

 

「グォッ!」

 

 リザードンは身体を捻ってぎりぎりで避け、着地せずに大きく回りながら高度を取り直す。

 

「今のも避けるか。でもちょっと大回りだな」

 

「グォォ!」

 

「そこはこれからだって。悪いって言ってるわけじゃないよ」

 

 ゲンガーもポリゴン2も浮くことはできるが、空中でリザードンを追い回すのは効率が悪い。

 

「追わなくていい。ポリゴン2は下がって待つ。ゲンガーも隠れて」

 

 2匹が地上付近で構え直す。

 

 上空を旋回していたリザードンは追ってこないと分かると、高度を落としてポリゴン2へ向かってきた。

 

「まだ」

 

 ポリゴン2は動かない。

 

 ゲンガーも影の中にいる。

 

 距離が縮まり、リザードンの口元から炎が漏れる。

 

「ゲンガー!」

 

「ゲンッ!」

 

 進路の真下から飛び出したゲンガーへ、リザードンが反射的に視線を向けた。

 

「ポリゴン2、あやしいひかり!」

 

 横から飛んできた光を避けようと身体を捻るが、距離が近すぎた。

 

「グォッ!」

 

 光が身体を掠め、リザードンの飛び方が僅かに乱れる。

 

「入った!」

 

 着地しかけたリザードンへポリゴン2が距離を詰める。その背後では、いつの間にか影から出ていたゲンガーが笑いながら手を振っていた。

 

「ゲンゲン」

 

「グォ!?」

 

「お前、ほんとそういうの好きだな」

 

「グォォッ!」

 

 リザードンがゲンガーへ向きを変える。

 

 ゲンガーは地面へ潜って少し離れた場所から顔を出し、追ってきたリザードンからまた逃げる。

 

 同じ誘いをもう一度繰り返そうとしたところで、リザードンは足を止めた。

 

「ゲン?」

 

「グォ」

 

「そりゃ何回もやったらバレるって」

 

 ゲンガーを無視したリザードンがポリゴン2へ向かう。

 

「ポリゴン2、受けて!」

 

『ポリ!』

 

 勢いの乗ったリザードンを正面から受け、ポリゴン2の身体が大きく後ろへ飛ばされた。

 

 地面へ落ちる前に姿勢を戻し、すぐリザードンへ向き直る。

 

「それ耐えるのか。硬くなったな」

 

『ポリ!』

 

 ポリゴンだった頃より明らかに余裕がある。

 

 リザードンがもう一度距離を詰めようとしたところへ、横からゲンガーが姿を見せた。リザードンがそちらへ向き、ポリゴン2も既に次の攻撃へ移れる体勢に戻っている。

 

 まだ戦えそうだったが、確認したかった部分は十分に見られた。

 

「はい、そこまで!」

 

 3匹が動きを止める。

 

 リザードンだけは少し不満そうだった。

 

「今日はここまで。続きはまた今度」

 

「グル……」

 

「ゲンゲン」

 

『ポリ』

 

「お前らも楽しそうだな」

 

 俺も久しぶりに、ちゃんとポケモンバトルをした気がした。

 

 

 

     ◇

 

 

 

 訓練を終えて周囲のポケモンたちを見ると、数字だけ確認していた時より変化が分かりやすかった。

 

 昔なら俺が避けろと言ってから動いていたような場面でも、今は自分で危険を見て避ける。短く指示を出せば、そこから先はそれぞれが考えて動いてくれる。

 

 バタフリーとスピアーは、俺の指示の出し方まで覚えていた。サーナイトは慎重な性格こそ変わらないが、指示すれば以前より踏み込める。リザードンも空中での動きにはまだ粗さがあるものの、飛べるようになったことで戦い方そのものが大きく変わっている。

 

「思ってたより、ちゃんと強くなってるな」

 

『ポリ』

 

「レベル上がっただけじゃなかったわ」

 

 近くでは雄のキルリアが、まだ自分も戦わせろとこちらを見ていた。

 

「キル」

 

「今日はもう終わり」

 

「キル!?」

 

「ロトムも次。リングマたちもまた今度な。全員今日やってたら日が暮れる」

 

『ロト!』

 

「グマァ」

 

 ニョロボンやニョロゾもいるし、ギャラドスもまだまともに戦わせていない。今日の2戦だけでも古参組がどれくらい動けるかは分かったから、残りは別の日に見ればいい。

 

 図鑑アプリを閉じる前にボックス側も確認すると、長く預けたままになっている名前が目に入った。

 

『バンギラス レベル58』

 

「……こいつか」

 

 捕まえてからレベルは変わっていない。ボックスの中では冬眠に近い状態になるのだから、そこで勝手に育つはずもなかった。

 

 捕獲した頃は、元気な状態で暴れられたら手持ち総出でも止められる自信がなかった。

 

 今はポリゴン2がレベル50まで上がり、リングマも48。ゲンガーとニョロボンは46で、リザードンも44まで育っている。バタフリーやスピアーたちの動きも当時よりずっと良くなり、リングマまで俺の指示を聞くようになった。

 

「そろそろ出してみてもいいかもな」

 

『ポリ……』

 

「何その間」

 

 捕まえた時のバンギラスを思い返してみても、久しぶりに外へ出されて大人しくしている姿は想像しづらい。

 

「……出した途端に暴れたりしないよな?」

 

『ポリ』

 

「その反応やめろよ」

 

 どうなるにしても、実際に出してみなければ分からない。

 

 今日訓練に使った場所を見回してから、もっと広い場所を探すことにした。

 

「バンギラスはそっちでやるか」

 

 画面に残る『バンギラス レベル58』を確認して、図鑑アプリを閉じた。

今後の展開として伝説ポケモンのサイズどうしよっかなって思ってるんですよね〜

  • 図鑑通りのサイズ
  • 図鑑よりかなりデカくしてもいい
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