ポケモン現代入り 作:ささみ
新環境に移ったからかなかなか続きができねえ
パソコンの画面には、ここ数日のニュースが並んでいた。
『各国、ポケモン情報提供者の特定へ関心』
『中国・ロシア、日本政府の情報管理を批判』
『海外SNSでも“日本の匿名有識者”に注目』
『情報提供者は何者なのか――各国専門家が分析』
「……さすがに目立ちすぎたな」
椅子の背へ身体を預ける。日本政府に探られていること自体は前から知っていた。政府へ正体不明の人間が大量の資料を送りつけているのだから、調べない方がおかしい。
だが今までは、あくまで日本国内の話だった。アメリカにもポケモンが現れ、国際会議まで開かれた結果、俺の存在そのものが海外へ知られ始めている。中国やロシアは表立って情報源を問題視しているし、アメリカや欧州だって興味がないはずがない。
「ポリゴン。しばらく掲示板に書き込むのやめようか」
『ポリ?』
「完全に何もしないわけじゃないよ。政府には必要な情報送るけど、わざわざ表に出てヒント増やす必要もないし」
家から出ないという意味ではない。匿名有識者として、しばらくネット上から姿を消すだけだ。
それに、俺が黙ったところで今さら情報不足にはならない。
「全国図鑑、もう全部渡してるもんなぁ」
『ポリ』
名前、姿、生態、特性、進化、飼育方法、危険性。きのみや回復道具、進化に必要な道具、繁殖、特殊な現象についても一通り送った。1000種類を超えるポケモンの資料である。
ここから先、一匹ずつ俺が解説して回る必要はない。それを現代社会でどう扱うかは、政府なり研究者なりに頑張ってもらえばいい。
「ただ、こっちはまだ送ってなかったな」
世界地図を開く。
20○○年4月1日。
関東地方に、カントー地方のポケモンが現れた。
5月1日にはジョウト地方。
6月1日にはホウエン地方。
ここまで来れば、今後の流れも分かる。
「順番も日付も場所も分かってるんだし、そろそろまとめて渡した方がいいよな」
『ポリ』
新しいファイルを開く。
『今後のポケモン出現地域について』
『4月1日 カントー地方――関東地方』
『5月1日 ジョウト地方――関西地方を中心とする地域』
『6月1日 ホウエン地方――九州地方』
『7月1日 シンオウ地方――北海道』
『8月1日 イッシュ地方――ニューヨーク都市圏を中心とする地域』
『9月1日 カロス地方――フランス』
『10月1日 アローラ地方――ハワイ』
『11月1日 ガラル地方――イギリス』
『12月1日 パルデア地方――イベリア半島』
「……今年中にだいぶ広がるな」
『ポリ』
「北海道まであと1か月切ってるし、これは早めに渡しといた方がいい」
ここに予想という言葉は付けない。出現する地方、順番、日付、対応する地域。それ自体は分かっている。
問題は、それだけで終わらないことだった。
「6月1日でややこしくなったのはこっちだよな」
九州へホウエン地方のポケモンが現れたのと同じ日、中国地方ではフィオレ地方に対応するポケモンが確認された。伊豆・小笠原方面にはナナシマ、アメリカ南西部にはオーレ地方。
一度に増えるのは一地域だけとは限らない。
「同じような追加がこれからもあるなら、一応候補は教えといた方がいいか」
予定表とは別に項目を作る。
『同時出現の可能性がある地域』
「7月ならアルミア。来るなら北海道南西部方面。オブリビアは島根、隠岐辺り」
『ポリ』
「8月はランセ……これはかなり怪しいな」
ランセ地方は過去の日本を思わせる地域ではあるが、現代のどこに対応するのか分からない。そもそも、過去の地方まで別枠で追加されるのかも不明だ。
「一応載せるけど、可能性は低い。対応地域も不明、と」
『ポリ』
「9月はフェルム。こっちも場所は分からないから地域不明。11月はヨロイ島がマン島方面、カンムリ雪原がスコットランド方面かな」
レンティルも対応地域が分からないため、場所は指定しない。
「ヒスイは……北海道だけど、シンオウと同じ場所なんだよな」
昔のシンオウ地方だ。7月に北海道へシンオウ地方のポケモンが現れた後、数か月して過去の同じ地方がもう一度追加されるのかは分からない。
「これも可能性低。北海道、と」
『ポリ』
「12月はキタカミ。これは東北でいいな」
候補は候補として載せる。ただし、確定している予定とは明確に分ける。
『上記4月1日から12月1日までの各地域については、出現日、出現順、現実世界側の対応地域を確定情報として扱ってよい』
『別記した地域については、6月1日に複数地域が同時出現した事例を基にした候補であり、出現の有無および時期は保証しない』
「これなら変な読み方はされないだろ」
『ポリ』
「特に7月1日の北海道は今のうちから準備してもらわないとな」
今まで野生のポケモンが一匹も確認されていなかった北海道へ、一気にシンオウ地方のポケモンが現れる。事前に分かっているのと、当日いきなり知らされるのとでは全く違う。
「あと伝説関係も地域ごとに付けとくか」
全国図鑑の資料にも存在や基本的な危険性は入れてある。ただ、今後どこへ何が現れるか分かっているなら、その地域で特に警戒すべき相手をまとめておいた方がいい。
名称、外見、大まかな性質、危険性、関連する自然現象、遭遇した場合の対応。そこまでは出す。
呼び出す方法、封印の解除方法、特定の道具を使った接触方法、特殊な場所への入り方。そういう情報は出さない。
「北海道ならディアルガ、パルキア、ギラティナ、ヒードラン、クレセリア、レジギガス。この辺は特別警戒で」
『ポリ』
「全部が7月1日にその辺歩き始めるって意味じゃないけど、存在を知ってるのと知らないのじゃ違うしな」
不用意に近づかない。攻撃しない。広範囲の異常現象が確認された場合は、通常のポケモン災害とは分けて考える。
それくらいでいいだろう。
「普通のポケモンについては全国図鑑見て頑張ってもらおう」
『ポリポリ』
「1000種類以上渡したんだから、俺もそろそろ全部面倒見るのやめていいだろ」
必要であれば各国へ安全対策用として共有して構わない旨を添える。ただし伝説や幻に関する制限資料だけは、一般公開せず必要な機関内で扱うよう注意を入れた。
「じゃあ政府に送って。いつも通りこっちには繋がらないように」
『ポリ!』
ポリゴンが画面の中へ入り、ファイルが送信されていく。
その様子を眺めながら、ふと思う。
「そういやさ、最近そっち大丈夫なの?」
ポリゴンが振り返る。
「追跡。日本政府だけじゃなくなってるだろ? ニュース見る限り海外も本気で探し始めてるし」
『ポリ』
「結構増えてない?」
するとポリゴンが別のウィンドウを開いた。
「……何これ?」
画面いっぱいに並んだ項目が整理されていく。日本、アメリカ、中国、ロシア、欧州圏。政府機関らしきものから、大学、企業、報道関係、個人による解析まで混ざっている。
過去の掲示板投稿、政府へ送った資料、公開された画像や映像、投稿時間、通信経路。それぞれ別方向から情報を集め、俺の正体へ近づこうとしていた。
「……これ全部、俺を探してんの?」
『ポリ!』
「いや、元気に返事するとこじゃないから」
日本政府に追われているのは前から知っていた。ポリゴンが通信経路を切り、必要なら偽物の痕跡を残し、相手が何をしているのか逆に観察していることも知っている。
ただ、規模が以前とは違いすぎる。
「日本のも前より増えてるよな。しかも海外まで追加されてるし……お前、これ全部一匹でやってたの?」
『ポリ』
「掲示板とかSNSの監視も続けながら?」
『ポリ』
「目撃情報の整理も?」
『ポリポリ』
「工場とか政府とのやり取りも?」
『ポリ!』
「元気だなぁ……」
ポリゴンが処理状況を表示する。大量の項目が動いているが、全体から見れば使用している領域は一部だけだった。
「……まだ余裕あんの?」
『ポリ!』
「マジで?」
何なら楽しそうだった。
ちょうどその時、新しい追跡が追加される。ポリゴンがすぐに反応し、しばらく相手の動きを眺めた後、全く別の経路へ誘導していく。
「お前、もしかして新しい追跡方法来るの楽しみにしてない?」
『ポリ』
「否定しないのかよ」
本人からすれば、新しい問題でも届いているくらいの感覚なのかもしれない。
それでも少し心配にはなる。
「余裕ならいいけど、無理してるならちゃんと言えよ? 一匹で全部やる必要ないんだから」
『ポリ?』
「その顔やめろ。俺が過保護みたいじゃん」
とはいえ、これから追跡が減るとも思えない。俺がしばらく表から消えれば多少は落ち着くだろうが、正体を知りたい連中が諦める保証もない。
「……そろそろ進化させるか」
『ポリ?』
「ポリゴン2。今すぐ必要ってわけじゃないけど、余裕あるうちに進化しといた方がいいだろ。お前の場合、戦闘だけじゃなくてこういうのにも関係ありそうだし」
進化条件は知っている。アップグレードを持たせて通信交換。
交換装置はある。
問題はアップグレードだった。
「アップグレードってシルフカンパニー製なんだよな」
頭の中にある知識を引っ張り出す。ポリゴンをより優れた形へ更新するために作られた道具で、内部にはポリゴンへ作用するためのデータが記録されている。
「なら、重要なのは中身か」
『ポリ』
「シルフが作った更新情報を再現できれば、代用品でもいけそうだな」
どういう情報が入っているのかは分かる。問題は、それを何に入れるかだった。
記憶の中にあるアップグレードの姿を思い出す。
四角い形。
中央の円形部分。
「……どう見てもフロッピーなんだよな」
ネットで検索する。
3.5インチフロッピーディスク。
表示された画像と記憶の中のアップグレードを比べれば、かなり近い。
「形だけならこれだな」
『ポリ』
「ただ……」
自分のパソコンを見る。
「俺、フロッピーに書き込む機械持ってないわ」
『ポリ』
「そりゃそうだよ。今どき付いてるわけないだろ」
ディスクだけ買ったところで、中に何も入れられなければ意味がない。
今度はフロッピーディスクドライブを検索する。
「外付けあるじゃん」
USB接続のフロッピーディスクドライブ。
パソコンへ繋げれば、昔のディスクを読み書きできるらしい。
「これなら今のPCでも使えるな」
さらに未使用の3.5インチフロッピーディスクを探す。
「新品も残ってる、と」
『ポリ』
「令和にフロッピーディスクとフロッピードライブをセットで買うことになるとは思わなかったわ」
USB接続の外付けドライブ。
未使用のフロッピーディスク。
両方をカートへ入れる。
「届いたら、まずこのドライブで普通に書き込みできるか確認。問題なければ、シルフカンパニーのアップグレードに入ってた情報を再現する」
『ポリ!』
「データ作るところはお前にも手伝ってもらうからな。俺が知ってる内容をそのまま放り込むだけじゃ駄目だろうし」
ポリゴン自身へ適用する更新情報なのだから、形式まで合わせる必要がある。
俺が持っているシルフカンパニー側の知識を元に構成を作り、ポリゴンに確認させながらデータへ落とす。
それをフロッピーへ書き込む。
そこまでやって、ようやくアップグレードの代用品になるかどうかを試せる。
「まあ、届いてからだな」
『ポリポリ!』
「そんな楽しみ?」
『ポリ!』
「そりゃ良かった」
注文を確定する。
画面の隅では、また別の追跡が始まっていた。ポリゴンが即座にそちらを向き、こちらへ伸びようとする経路を遮断していく。
「……まあ、休めとは言えないか。止めたら普通にこっちまで来るもんな」
『ポリ』
「だから無理だけはすんなよ。余裕なくなったらちゃんと教えてくれ。俺もしばらく表に出ないから、少しは追ってくる数も減るだろ」
『ポリ!』
「その返事なら大丈夫そうだけどさ」
しばらく、匿名有識者として表へ出るのはやめる。その代わり政府には、12月までの予定表と、その横にいくつかの追加候補を置いてきた。
あとは、それを使って準備してもらえばいい。
俺は俺で、世界中から飛んでくる追跡を遮断し続けている相棒を、一段階進化させる準備から始めることにする。
ここまでかなり閑話多いけど、こんなんでいい?
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本編進めやがれ
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これでいい
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どうでもいいからはよ