ポケモン現代入り 作:ささみ
前話のやつ、2番目は一応ムウマです。かなり図鑑説明を拡大解釈したせいか分かりづらかったですね……
最初に広まった映像は、山中からの生配信だった。
4人の男が笑いながら山道を歩いている。背後には送電鉄塔が並び、空には低い雲が垂れ込めていた。
「昨日もここで撮られてるんだって。黄色いでっかい鳥」
「まだいるの?」
「移動してなきゃいるんじゃね?」
配信者がスマートフォンを持ち上げ、遠くの尾根を映す。一度画面が大きく揺れ、それから何かを見つけたらしく拡大された。
黄色い影があった。
距離があるため細かいところまでは分からない。それでも、普通の鳥にしては明らかに大きい。
「いた。ほら、あれ」
「おお、マジじゃん」
「これ捕まえたらやばくね?」
4人とも、すでに何匹かのポケモンを捕まえていた。腰にはネット上へ広まった製作方法を参考にした自作ボールが下がっている。形も仕上がりもばらばらだったが、それで捕獲に成功したことはあるらしい。
「電気使うんだろ、あいつ」
「そのためのサンドパンじゃん」
「サイホーンもいるしな。無理なら逃げりゃいいって」
「まあ、最初から全力でやる必要もないし」
そう話しながら山道を進んでいく。
尾根にいた黄色い鳥は、その間も場所を変えなかった。
近づくにつれて、身体の形まで分かるようになる。黒と黄色の鋭い羽。閉じている翼だけでもかなり大きく、スマートフォン越しでは距離感が掴みにくい。
「……思ってたよりデカくね?」
「これ以上寄んの?」
「サンドパン出して、ちょっと様子見るくらいでよくね?」
「電気なら平気だろ」
自作ボールが開き、サンドパンが地面へ降り立った。少し遅れてサイホーンも出される。
黄色い鳥は動かなかった。
「サンドパン、いわなだれ!」
岩が跳ね上がり、尾根へ飛ぶ。そのいくつかが黄色い翼の周辺へ落ちた。
鳥がこちらを向いた。
「お、当たっ――」
そこで映像が白く潰れた。
破裂するような音が重なり、配信の音声まで一瞬途切れる。画面が戻った時、スマートフォンは地面へ落ちていた。
草の隙間からサンドパンが見える。先ほどまでいた場所から離れたところに倒れていた。サイホーンも地面へ伏している。
「サンドパン! おい!」
「戻せ、早く!」
「車行け!」
「待って、スマホ――」
雷鳴が響いた。
映像が激しく乱れ、誰かの悲鳴が混じる。間を置かずにもう一度、今度はさらに大きな音が入った。
地面へ転がったカメラの端を、黄色い影が横切る。
次に映った時には、鳥は空にいた。
低い雲の中で何度も白い光が走る。
そこで配信は切れた。
翌朝、4人のうち3人が山中で救助された。サンドパンとサイホーンも回収され、いずれも治療を受けることになった。
残る1人は、捜索の末、送電鉄塔から離れた斜面で見つかった。
すでに死亡していた。
周囲には幹の裂けた木が何本もあり、一部は内側まで黒く焦げていたという。
あの黄色い鳥が、その後どこへ行ったのかは分かっていない。
◇
青い大型ポケモンの写真が登山者の間で広まり始めたのは、それからしばらく後だった。
雪山の稜線に、見たことのない鳥が立っている。
遠くから撮影された写真だったが、青い翼と長い尾は確認できた。
山へ入ったのは5人。
全員に登山経験があり、そのうち2人は冬山にも何度か入っていた。目的は、写真に写ったポケモンを探し、可能なら捕まえることだった。
「昨日撮られたの、この辺らしい」
地図を開いた男が、少し先の稜線を指した。
「見つけても急に寄るなよ」
「分かってるって」
「天気崩れたら即戻るからな」
「そこはマジで。鳥追って遭難とか笑えんし」
自作ボールのほか、ゴローンやイノムー、レアコイルも連れてきていた。冬山用の装備も揃えている。
午前中は風も弱く、見通しも悪くなかった。
昼を過ぎ、予定していた地点へ近づいたところで、先頭を歩いていた男が足を止めた。
「……いた」
稜線の上に青い鳥が立っていた。
雪景色と近い色をしている。それでも、長い尾が風に揺れるたびに姿がよく見えた。
「近いな」
「まだ出すなよ」
「少し回ってからにしよう」
5人が進路を変えた頃から、雪が舞い始めた。
初めは気にするほどでもなかった。
10分ほど経つ頃には風が強まり、遠くの景色が白く霞んでいた。
「これ以上やめよう」
「戻る?」
「戻る。今のうちに」
来た方向へ向き直る。
ところが、さっきまで目印にしていた岩や木が、雪の向こうに見えなくなっていた。
GPSを確認しながら進む。風はさらに強まり、前を歩いている仲間の姿さえ、雪に隠れて見えなくなることがあった。
「離れるな! 前の奴ちゃんと見とけ!」
叫んでも声が風に流される。
しばらく進んだところで、風が一瞬弱くなった。
雪の向こうが見える。
少し離れた場所に、さっきの青い鳥がいた。
「……あいつ、さっきより近くない?」
「もういいって。戻るぞ」
「今ならボール届くんじゃね?」
「やめろって、天気見ろよ」
「1回投げるだけだって」
男が自作ボールを取り出した。
「おい――」
ボールが飛んだ。
青い鳥はその場から動かなかった。
翼が開く。
その直後、視界が白く消えた。
風に身体を押され、何人かがその場に膝をついた。起こそうと伸ばした手も、相手の身体へうまく届かない。
「どこだ!」
「こっち!」
声は聞こえる。
けれど、どの方向からなのか分からない。
手袋の中で指先の感覚が鈍くなり、足を上げるのにも時間がかかるようになった。
それでも5人は移動を続けた。
翌日、捜索隊が最初の遺体を発見した。
そこから数百メートル離れたところで2人目、そのさらに下った斜面で3人目が見つかった。
4人目は雪に半分埋まっていた。
最後の1人は見つからなかった。
連れていたポケモンも、すべては回収できなかった。
捜索が打ち切られる前日、救助隊員の1人が、遠くの稜線に青いものがいたと話している。
双眼鏡を向けた時には、そこには何も見えなかったという。
◇
炎をまとった大型の鳥が道路沿いで撮影された頃には、サンダーやフリーザーの件もネット上で知られるようになっていた。
ただ、その3匹をひとまとめに考える者ばかりでもなかった。
「火のやつも鳥じゃん。黄色いのとか青いのと関係あるんじゃね?」
「見た目全然違うだろ」
「デカい鳥ってだけじゃん」
そんなやり取りもあった。
写真が撮られた山へ入った6人も、その鳥を探していた。
車は2台。
小型のドローンも持ち込み、手分けして上空を探す。
「いた。北側飛んでる」
タブレットを見ていた男が声を上げた。
「こっち来そう?」
「いや、向こう行ってる」
「先回りできそう?」
「林道このまま行けばいけるかも」
山中の開けた場所へ出ると、炎をまとった鳥が低いところを飛んでいるのが見えた。
ドローンを近づける。
鳥が進路を変えた。
「避けた?」
「もうちょい寄せてみる?」
「2台で挟めば下がるんじゃね?」
もう1機を飛ばす。
鳥はさらに向きを変えた。
「降りてくんないかな」
「ゴルダック出す?」
「1回やってみるか」
自作ボールからゴルダックが出された。念のため連れてきたゴローンもその近くへ出る。
「ゴルダック、みずのはどう!」
水が空へ放たれた。
最初の一撃は外れる。
「もう一回!」
2発目が、炎をまとった翼のあたりへ飛んだ。
「当たった?」
「下がってきた!」
鳥の動きが止まる。
まとっていた炎が大きく揺れた。
「……やばくね?」
熱風が吹き抜けた。
顔を庇った男の横で、乾いた草から火が上がった。
「火!」
「ゴルダック、水!」
「こっちも燃えてる!」
ゴルダックが水を浴びせる。
一度は小さくなった炎の横で、別の草が燃え始めた。
風が吹くたび、火は少しずつ場所を広げていく。
「もういい! 戻れ!」
「車!」
ポケモンを自作ボールへ戻し、6人は車へ走った。
頭上では、炎をまとった鳥が山の向こうへ飛んでいく。
それを追う者はいなかった。
その日のうちに消防が入り、周辺道路が封鎖された。
翌朝になっても火は残っていた。
2人が重度の火傷を負い、1人は煙を吸って搬送された。
鎮火までには数日を要した。
あの鳥が放った炎によるものだったのか、戦闘中に周囲へ燃え移った火が広がったのか。当時の映像だけでは、細かいところまでは分からなかった。
◇
その後、グラードンとカイオーガが現れた。
広い範囲で天候や環境に異常が起こり、2匹の争いへジガルデも確認されている。
それまでに起きたポケモン絡みの事故とは、被害の広がり方が違っていた。
事件の後、以前から各地で目撃されていた珍しいポケモンについても、以前とは違う扱いをされることが増えた。
サンダー。
フリーザー。
ファイヤー。
そして、各地で時折目撃されていた3匹の獣。
それらをグラードンやカイオーガと同じものとして扱っていいのか、この時点で一般人に判断できる材料はほとんどなかった。
ただ、少なくとも「見つけたから捕まえに行こう」と軽く考える者は、以前より目立たなくなった。
だがいなくなったわけではなかった。
◇
スイクンを追っていた7人は、3日かけて湖の周囲を回っていた。
見つけて近づくと離れていく。
少し時間を置いて別の場所へ行くと、また姿が見つかる。
それを繰り返すうちに、7人は進む方向を絞れていると考えていた。
「この先、川だろ」
「向こうにも2人いるから、そっち出ても分かる」
「今日でいけそうじゃない?」
「無理なら引くぞ。あの鳥の連中みたいになるのは勘弁だからな」
連れてきたのはレアコイル、モココ、ウツドン、ラフレシア、ピカチュウなど。
自作ボールも多めに持ってきた。車は少し離れた場所に停めてある。
「いた」
湖畔に青い姿があった。
スイクンは水辺に立っている。
「向こう回れ」
数人が左右へ分かれ、自作ボールが開いた。
レアコイルとモココが前へ出る。少し離れたところにはウツドン。反対側からはラフレシアとピカチュウが回り込んでいた。
「レアコイル、でんきショック!」
電撃が水辺へ走った。
水飛沫が上がる。
「どこ行った?」
直後、横から水が飛んだ。
モココが転がる。
「そっち!」
振り向いた頃には、今度はウツドンが水を受けて倒れていた。
「レアコイル、もう一回!」
「ピカチュウも!」
何匹ものポケモンが技を放つ。
その合間を、青い姿が走り抜けた。
ピカチュウが倒れた。
続いてレアコイルが地面へ落ちる。
ラフレシアが身体を向けたところで足元から水が跳ね上がり、そのまま横倒しになった。
「待て待て、戻せ!」
「もういい!」
残っていたポケモンも自作ボールへ戻される。
水辺にはスイクンが立っていた。
先ほどまでと同じ場所ではない。
それでも7人との距離は近かった。
スイクンが歩き出す。
「待て」
1人が空の自作ボールを握った。
「やめろって」
「投げるだけなら――」
「今ので分かっただろ」
それでも男はボールを投げた。
スイクンが振り返る。
水が弾けた。
男の身体が持ち上がり、数メートル先へ転がった。
「おい!」
近くにいた2人が駆け寄る。
意識はあった。
「腕、動かすなって!」
「痛っ……」
顔を上げた時には、スイクンは湖の向こうを走っていた。
追う者はいない。
◇
ライコウを狙った8人は、先に起きた事例を調べてから現地へ入った。
「電気ならじめん系多めでいいだろ」
「サンドパンとドンファン2匹いる」
「ヌオーも出せる」
「サイホーンは道塞ぐ方に回す?」
「その方がよさそう」
ドンファンが2匹。
サンドパン。
サイホーン。
ヌオー。
ゴローン。
イワーク。
ほかにも何匹かのポケモンを連れてきていた。
逃走用の車両は少し離して停め、どの方向から姿を見せても囲めるよう、人も分かれて待っていた。
「来た」
雨上がりの道路へ、黄色と黒の獣が姿を見せた。
紫色のたてがみを揺らしながら、ゆっくりと道路へ入ってくる。
「まだ出すな」
「もう少し」
全員が待った。
ライコウがさらに進む。
「今!」
自作ボールが次々と開いた。
道路へドンファンとサンドパンが出る。反対側にヌオーとゴローン。サイホーンが前へ回り、イワークも長い身体を道路へ伸ばした。
「囲め!」
次の瞬間には、道路の中央にいたライコウの姿が見えなくなっていた。
「え?」
雷鳴が響く。
後ろでサンドパンが倒れた。
「後ろ!」
黄色い影が一瞬見えた。
「ドンファン、そっち!」
ドンファンが身体を向ける。
また雷鳴。
今度は別のドンファンが大きく体勢を崩した。
「どこだよ!」
「サイホーン、前!」
「ヌオー、みずでっぽう!」
水が道路を横切る。
岩も飛ぶ。
イワークが身体を大きく動かした。
どの攻撃も、黄色い影がいた場所を少し遅れて通り過ぎていく。
次に音がした時には、ゴローンが倒れていた。
「じめんでも駄目じゃん!」
「電気食らったのかも分かんねえよ!」
「戻せ! もう無理!」
自作ボールを構える。
その時、少し離れた道路の中央にライコウが現れた。
動かず、こちらを見ている。
「……来ないよな?」
「戻せ、早く」
残っているポケモンが次々とボールへ収められていく。
ライコウはその間も動かなかった。
最後の1匹が戻されたあと、黄色い獣は道路を横切り、そのまま林へ入っていった。
後から映像を確認しても、誰かの攻撃がライコウへ当たっている場面はない。
◇
エンテイを狙った者たちは、最初から近づくつもりがなかった。
「280くらい」
「これなら届くよな」
「試射だと300はいけた」
荒れた採石場の向こうに、大きな赤茶色のポケモンがいた。
岩場をゆっくり歩いている。
男たちが持ち込んだのは、自作ボールを遠くから飛ばすために組んだ投射装置だった。
ゴルダック、ニョロボン、サイドンなども連れてきていたが、外へ出してはいない。何かあった時に使えるよう車内へ置かれていた。
「少し右」
「そこ」
「いける?」
「入ると思う」
装置の向きが変わった。
機械音が響く。
遠くにいたエンテイが足を止めた。
「止まった」
「音聞こえた?」
「この距離で?」
エンテイが顔を上げる。
こちらを向いた。
「……見てない?」
「見てるだろ」
「装置下げる?」
「まだ撃ってないぞ」
「いや、ちょっと待った方が――」
エンテイが口を開いた。
直後、低い音が採石場に響いた。
車の窓が割れる。
「うわっ!」
伏せた男の横で機材が倒れ、投射装置も大きくずれた。車内からは何かがぶつかる音が続けて聞こえる。
「ボール!」
「中のやつ暴れてる!」
「もういい、車出せ!」
「装置どうすんだよ!」
「置いてけって!」
再び、低い鳴き声が響いた。
足元の砂利が震え、斜面から小石が転がり落ちる。
男たちは装置を残して車へ乗り込んだ。
発進してから1人が後ろを見る。
エンテイは追ってこなかった。
岩場に立ったまま、こちらを向いているように見えた。
車が採石場を出るまで、それ以上何かが起こることはなかった。
置き去りにされた投射装置が回収されたのは、数日後の話である。
今後の展開として伝説ポケモンのサイズどうしよっかなって思ってるんですよね〜
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図鑑通りのサイズ
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図鑑よりかなりデカくしてもいい