流星街。
世界中からあらゆるものがゴミとして捨てられる街にエックス=バルーニングという少年がいた。
エックスは流星街に数多くいる、産まれてすぐにゴミとして捨てられた孤児達の一人であったのだが、ただ一点だけ他の孤児とは違う点があった。
念能力。
全ての生物が持つ「オーラ」と呼ばれる生命エネルギーを使うことで身体能力を劇的に向上させたり、時には物理法則を超えた超常現象を起こしたりする超能力。エックスはこの念能力に関して天才的な才能を持っていた。
十歳になる前に体内のオーラを体外に出すための穴「精孔」が自然に開き、誰に教わるまでもなく直感で念能力の使い方と鍛え方を理解したエックスは、念能力に目覚めて一年程で自分だけの念能力を開発した。この時彼が開発した念能力は戦闘用ではなく移動や敵からの逃走のためのもので、これは奪い奪われることが日常という流星街の環境と彼の生来の臆病な性格からきていて、結果としてそんな逃走特化の念能力がエックスの命を救うこととなる。
エックスは念能力を開発してしばらくした後、彼はとある事件に巻き込まれて流星街から外の世界へと逃げ出すことになってしまった。個人情報がなくて公式では「存在しない人物」とされている流星街の住人であったエックスは外の世界ではまともに働くことができず、生きる手段は他者から物や金を盗むことしかなかったのだが、それでも彼は自身が開発した念能力で捕まることなく逃げ続け、気がつけば流星街から逃げ出して三年の月日が経過していた。
X ◇ X
ジリリリッ!
夜のとある街にあるビルの内部に警報が鳴り響く。その警報が鳴り響くビルの中を奇妙な格好をした小柄な一人の男が走っていた。
ビルの中を走る男は暗い青を基調としたジャンプスーツを着ており、背中にバックパックを背負い、両腕にはそれぞれ背中のバックパックとホースで繋がっている奇妙な機械を装着していて、顔はガスマスクみたいなマスクで素顔は分からなかった。
そしてガスマスクの男が肩からかけているカバンからは大量の札束が顔を覗かせていて、彼の背後には強面の男が憤怒の表情を浮かべて追いかけてきている。
「テメェ! 逃げるんじゃねぇ!」
強面の男が叫ぶが当然ガスマスクの男が止まるはずがなく、ガスマスクの男はビルの上から上にと逃げていき、ついにはビルの屋上にまで逃げて行ってしまう。
「はぁ……! はぁ……! あの野郎、一体何処に……って、え……?」
ガスマスクの男から少し遅れてビルの屋上にやって来た強面の男が乱れた呼吸を整えてながら辺りを見回したその時、強面の男は信じられないものを目にする。
ガスマスクの男はビルから少し離れた街の上空を飛んでいた。
背中のバックパックと両腕の機械にある噴出口から眩い光を放ちながら物理的に空を飛んでいるガスマスクの男の姿はまるで漫画やアニメに登場するヒーローみたいで、強面の男はそんな現実離れしたガスマスクの男の姿に理解が追いつかず思わず固まってしまう。
「な、何なんだ、アイツ……は……?」
空を飛ぶガスマスクの男の姿を見て思わず呟く強面の男は、言葉の途中で更なる衝撃的な光景を目にすることになる。
なんとガスマスクの男から肩にかけたカバンから札束を取り出すと、それを次々と下へとばら撒き始めたのだ。すると街中を歩く人々は突然降ってきた大量の紙幣を拾おうとして、ガスマスクが飛んでいった先では熱狂の声が上がり、そんな現実とは思えない光景を目にした強面の男は以前聞いた噂話を思い出す。
「まさか……アイツが噂の空を飛ぶ怪盗『流星』だっていうのか……?」