「オイ、ちょっと待てよ、ウボォー!」
エックス達がガルベスの屋敷に盗み入った翌日。幻影旅団の拠点代わり使っている廃墟からノブナガの焦った声が聞こえてきた。
ノブナガの目の前には、明らかに苛立ちが限界まできた表情のウボォーギンの姿があり、ウボォーギンの左手には昨夜エックス達が盗んだクラム・オブ・ヘルメスが握られていた。クラム・オブ・ヘルメスを無事盗み出したエックス達であったのだが、肝心の筒を開けて中の秘伝書を取り出す方法が全く分からず、一晩中様々な方法を試しても成果が出なかったことでウボォーギンの我慢の限界がきたのであった。
「うるせぇよ、ノブナガ! こんな金属の筒なんぞ俺様がぶっ壊してやらぁ!」
「馬鹿! お前の馬鹿力でぶっ壊したら、中の秘伝書まで……!」
「オラァ! 『
ノブナガの止めようとする声も聞かずウボォーギンはクラム・オブ・ヘルメスを地面に叩きつけると自分の発、オーラで身体能力を極限まで高めた状態での渾身の右ストレート「超破壊拳」を繰り出す。直後、廃虚が崩壊しそうな衝撃が発生し、それに伴う轟音が周囲に響き渡る。
もしクラム・オブ・ヘルメスの筒が通常の金属であればウボォーギンの「超破壊拳」の威力に耐え切れず、ノブナガの言う通り中の秘伝書ごと跡形もなく吹き飛んだであろう。ノブナガを含めた旅団の全員がクラム・オブ・ヘルメスが粉々に砕かれる未来を予想したのだが……。
「〜〜〜っ!? いっっっ、てぇーーーーー!」
しかしクラム・オブ・ヘルメスはウボォーギンの「超破壊拳」を受けてもヒビ一つ入っておらず、逆にウボォーギンの方が拳を痛めて盛大に顔をしかめる。これは完全に予想外であり、この場にいる全員が驚いた。
「ウソ……? ウボォーの『超破壊拳』をくらっても壊れないだなんて……!」
「あの金属の筒……中の秘伝書に書かれている世界で一番硬い金属で作られているってこと?」
破壊力だけで言えば幻影旅団一のウボォーギンの「超破壊拳」で破壊できないものがあったことにマチとパクノダが驚きながら呟き、シズクがエックスに尋ねる。
「ねぇ、エックス? 私は昨日寝ちゃったからよく知らないんだけど、エックスの能力であの金属の筒を開くことはできないの?」
「それが無理なんだ。俺の『
「そうなんだ。それじゃあどうしようもないってこと?」
「……そうなるな」
エックスの言葉を聞いたシズクは、痛む手を押さえるウボォーギンと彼の足元に転がっているクラム・オブ・ヘルメスを見て首を傾げる。
すでに思いつく方法は全て試したが駄目だったし、最終手段の「後先考えずに全力で攻撃して破壊する」もたった今ウボォーギンが試して失敗に終わった。シズクの言う通りもうどうしようもないため、エックスは最終的な判断を幻影旅団団長のクロロに下してもらうことにした。
「どうしたらいいと思う? 団長」
「そうだな……。錬金術の秘伝書というのには興味があったのだが、中身が取り出せないのだったら仕方がないな。元々、ガルベスからクラム・オブ・ヘルメスを盗んだ目的は幻影旅団の名前を売るのと、マフィアに錬金術の技術が渡らないようにするためだ。その目的が達成されたのなら、中身にこだわる必要はないだろう」
「あらら? せっかく手に入れたお宝の中身を諦めるのかい? 泥棒だったらもうちょっと頑張ってみたらどうだい?」
クロロがクラム・オブ・ヘルメスの中身を諦める言葉を言った時、廃墟の奥から一人の男の声が聞こえてきた。突然聞こえてきた声にこの場にいる全員がそちらを見ると、廃墟の奥から昨日エックス達が出会った長身痩躯の男、ルパンが現れた。
「ルパン……!」
「何……? コイツがルパン三世か?」
エックスがルパンの姿を見て呟くと、昨日の話をエックス達から聞いていたクロロがルパンに視線を向ける。他の団員達も臨戦態勢を取りつつルパンを見るのだが、ルパンは特に緊張した様子を見せず口を開く。
「昨日はどうも、幻影旅団の皆さん。それにしても昨日は驚いたぜ」
ルパンは口元に笑みを浮かべて言うとエックスに視線を向ける。
「まさか最近売り出し中の義賊、空飛ぶ怪盗流星がチームを組んでガルベスの屋敷に盗みに来るだなんてな? だけど怪盗流星は一匹狼だと聞いた気がするんだが?」
「……別に義賊とも一匹狼とも言ったつもりはありませんよ。今まで一人だったのは信頼できる仲間がいなかっただけですよ」
「なるほど。それでその周りにいるのが信頼できる仲間達ってことか……羨ましいね」
「そんなことよりも一体どうやってここが分かった? というか何の用だ?」
エックスの言葉にどこか羨ましそうに呟くルパンにフランクリンが話しかける。するとルパンはズボンのポケットから小さな機械を取り出して見せる。
「ああ、それ? それはコイツのお陰、発信機。昨日返したカードにちょっと発信機を、ね?」
「何ぃっ!?」
昨夜シャルナークはルパンに名刺代わりに幻影旅団のカードを投げ渡し、それをルパンはウボォーギンに投げ返していた。そのカードに発信機が仕込まれていると聞いたウボォーギンが慌てて自分のポケットから昨日のカードを取り出すと、確かにカードの角に小さな機械が取り付けられているのが分かった。
「ぬふふ、駄目だよ? 他人から簡単に物をもらっちゃ。何が仕込まれているか分からないだから。ああ、そうそう、俺がここに来た理由なんだけどね……」
ルパンは悔しそうに歯噛みするウボォーギンに揶揄うように言うと、クロロの方に視線を向ける。
「アンタがここの頭だな? ……一つ、勝負をしないか? そこにあるクラム・オブ・ヘルメスとそれを開くことができる『鍵』を賭けてな」